午後2時という一番暑い時間にサッカーの練習を取材していた。暑さなど関係ないように練習に集中している。うつくしいなでしこたちだった。取材の帰り、駅まで車で送ってもらった。気持ちのいい青年と思っていたら、今月末には二人目の子どもが産まれるという。うれしそうに話していた。男の子だそうだ。「父になる」ってこんな風に喜ぶんだ と思った。母になれない私は、父になる夫がそんな喜びを持つことを知らずに終わった。渡辺淳一が「男というもの」のなかで書いているように、自分の体で自分の分身が育っていることを知ることができない男は、ただおろおろとその分身の誕生に期待し喜ぶのだろう。素直な青年のよろこびように「父なる」とはこういうことなのかと思った。私の父もこんな風に喜んでくれたのだろう。
