やっと実家の整理に出かけられた。夏は猛暑、秋は取材が始まり、落ち着くと身体が動かない。やはり何事にも「時がある」と思った。時は向こうからやってくる。想像以上に前のときに片付けてあったので、今日は予定が早く終わった。しばらくはこのままにしておこうと思った。
帰りの電車でうとうとして目が覚める黒と黄緑色の大きな派手なバックが目の前に見えた。ゴルフバックにしては変だなぁ とぼやけた頭で考えた。えっ!バックに足がある。黄緑色に英文が書かれていた。”GO GUIDE DOGS" ああ、盲導犬だ。なんとぼけているのか。東海道線はラッシュ時ではないが混んでいた。盲導犬に小さな声で英語の指示が出る。なんと賢い犬なのだろう!その混んだ車内の盲導犬の周りだけは10センチ以上の空間がある。大きな荷物をもった人も必死でその空間を空けている。
「思いやりは想像力と知性から出てくるものだと思う」と言ったのは、教会のお友だちだ。私にはその両方が欠如していたのだろうか。家族の気持ちを想像できていなかった。もと夫とは、毎日一緒にいたのに・・・・。彼の寂しさやつらさを思いやっただろうか。両親や弟に対してはどうだっただろう?年老いてから実家でひとり暮らしていた母の気持ちをどこまで想像できただろうか。
あなたと私の間に10センチの空間があるとしたら、それは想像力と知性からできたもののだろうか。黒い盲導犬も周りの10センチの空間はなんとあたたかいものだったのだろう。