■あまちゃん
■2013年度上期NHK朝ドラ(8:00~8:15)
■脚本:宮藤 官九郎
■出演
能年玲奈、小泉今日子、尾美としのり、宮本信子、蟹江敬三、有村架純
橋本愛、小池徹平、平泉成、八木亜希子、杉本哲太、吹越満、福士蒼汰
塩見三省、でんでん、木野花、美保純、片桐はいり、渡辺えり
松田龍平、古田新太、薬師丸ひろ子
■感想 ☆☆☆☆☆☆
高視聴率のドラマ「半沢直樹」を(録画はしているものの、まだ全話)見ていなかったために「ヒネクレモノ」認定を受けました。けれど、私、今や国民的大人気といっても過言ではないドラマ「あまちゃん」は見ていました。そして、がっつりはまってました。全然、ヒネクレテないのです。(ちなみに半沢さんは挫折しました。無念・・・。)
・・・と書き出してから早3か月。書き上げるまでにえらいこと時間かかりました。好きすぎて、全然、文章をまとめられませんでした。クドカンさんの作品って感想をまとめるのが難しいのです。
大好きな脚本家、宮藤さんが朝ドラを描くと知った時から「絶対に見る!」と息巻いていたドラマでした。そして、いざ始まると、私が抱いていた「楽しみ!」という期待なんて軽々と300倍ぐらい上回る「楽しいっ!!」を与えてくれたドラマでした。毎日毎日、15分間という短い時間で笑って泣いて、やっぱり笑って。朝から喜怒哀楽の中の喜と楽を堪能して、その結果、さわやかに一日を始められる。そんなドラマでした。とにかくすっごく好きだった!
早い段階で登場人物ひとりひとりがいつの間にか「ご近所さんの方々」になっていました。大好きなご近所さん。主役とか脇役とかそういったテレビの中の人ではなく、「アキちゃん」で「ユイちゃん」で「夏ばっぱ」で「眼鏡会計ババア」で「ストーブさん」で「大将」。愛称で認識できるし、周囲の人たちとも愛称で語り合う。それぐらい登場人物が私たちにとって身近な知り合いとなったドラマでした。みんな一癖も二癖もある面倒くさい人たちで、その面倒くささ故に愛すべき人たちでした。彼らがわいわいとやかましく収集がつかないままに文句を言い合ったり、笑いあったり、益体もないことを言い合ったりする様子を見ているだけで、こちらまで笑顔になる。ちょっぴり泣きたいような気持になる。そんなぬくもりを与えてくれる人たちでした。大好きだったなぁ。本当に。
とはいえ、舞台は東北。ドラマ開始当初から、私たちにとって特別な意味を持つようになった「あの日」、2011年3月11日について描くことが公言されていたため、毎日、楽しくドラマを見ていても、未曾有の大災害が襲った「あの日」をクドカンさんがどのように描くのか、心のどこかでずっとずっと気にかけていた気がします。楽しくドラマを見ていたからこそ、見れば見るほど、どのキャラクターにも思い入れが増えて「大切な人たち」がどんどん増えたからこそ、どんどん不安になった中盤。
不安は杞憂でした。「あの日」を安易な描写で見せなかったこと、「あの日」を過剰演出で「悲劇」として描かなかったこと、私たちの想像力や記憶力を信頼して「震災」を描きすぎなかったこと、中途半端に「お涙ちょうだい」な展開にしなかったこと、静かにシンプルに丁寧に「震災」に焦点を定め、そのシンプルさが私たちの記憶を掘り起こしてくれたこと、どれもがとても細やかで丁寧な配慮に満ちた描き方だな、と思いました。
「未曾有の大震災」だったけれど、私はあの日、あの震災が発生したときも、それから数時間後、ニュースで津波の映像を見るまでの間は今、何が起こっているのか、どれだけ被害が深刻か、それすらわかっていませんでした。何が起こっているかよく分からない不安もこのドラマでは丁寧に描いてくれていた気がします。
そして、震災後の北三陸市の人たちの変わらない朗らかさ、風景も環境も変わったけれど、その中で自分も大切なものも見失わない強さは、私が安易に抱いていたこのドラマに対する不安を吹き飛ばしてくれました。「ご心配ねぐ。」たった一言のシンプルなメール。「生きていくのに特に必要のない」俳優業を再開することについて、「なんだか申し訳なくて。」と仕事に復帰できないでいる鈴鹿ひろみに対して「東北の人間が『働け。』って言ってるんです。」と言い切る春子のたくましさ。「自然が人間に牙をむくことは昔からずっとあること」「今までとなんも変わらね。」と言い切る夏ばっぱの静かな口調。「これくらい許されるでしょ、被災地だもの。」とほくそえむ観光協会の面々のしたたかさ。
辛い現実から目をそらさず、日常の一コマ一コマを温もりある視点で丁寧に拾い、その中で笑って過ごしている人たちと「明日」を無邪気に信じるヒロインに強さを感じた後半でした。生きていれば、震災に限らず、辛いことはたくさんある。「あのときに比べれば。」と言われるかもしれないけれど、辛いことに大小なんてない。辛いときは辛いし、誰であれ「今」の「自分」の感情がすべて。それでも「辛いときこそ、辛いからこそ」「いつも通りに」笑って生きていこう、「いつも通り」を大切にしよう、そんな強い意志が柔らかく描かれていた気がします。
「『絆』とか『ひとつになろう』とか言われても息苦しいばかりだった。けど、ここに戻ってきて、分かったことがある。おらはおらのできることをやる。」と宣言したアキは、すごくすごくかっこよかったし、私もそういう地に足の着いた強さを手に入れたい、と強く思いました。
アキの持つ一見、根拠のない自信に見えるこの強さは「今」や「ここ」を肯定する強さ。震災前、東京に憧れるユイちゃんに対して「ここが一番いいのに。」と北三陸の良さに気付いたのも、「でも、ユイちゃんには私に見えてない東京のよさが見えてるんだな。」とユイちゃんの憧れを否定せず受け入れたのも、すべてこの強さにつながるんだろうな、と思いました。そして、それは、きっと今までの私たちが失いかけていたものだったんじゃないかな、と思うのです。今、自分がいる場所を肯定できずに「もっといいもの」「もっと便利なもの」を追い求めてきて足元を見失ってしまったのが今の「地方」なんじゃないかな。
いろんな要素が詰め込まれたドラマだったけれど、私は女性たちの友情がかっこよく描かれているところも好きでした。中盤、ユイがやさぐれていたときに「そういう姿、ユイちゃんはおらに見られだぐねえはずだから。おらも見だぐねえし。つれえけど聞かなかったことにする。親友でも緊張感は必要だ。」と言ってのけたアキに男前だなぁ、とほれぼれしたし、確かにユイちゃんは、アキにだけは自分のそういう姿を見られたくないだろうな、と納得もしました。大好きな友達だから弱いところ、ダメなところを見られたくない、かっこいい自分だけを見ていてほしい、という友情も確かにあると思う。
だからこそ、終盤でユイちゃんがアイドルを「やりたいよ!」と力強く宣言し、かっこいいユイちゃんが本格復活した場面は大好きでした。鳥肌が立っちゃった。その勢いで毒舌早口で他のアイドルを的確に評価し、ライバル視するユイちゃんと、そんなユイちゃんを見てうれしそうに「ユイちゃんが戻ってきた。」と喜ぶアキ、そんなふたりの関係性が大好きでした。
ユイとアキだけでなく、海女さんクラブの面々も、アキの母親、春子さんも大女優、鈴鹿ひろみさんも、出てくる女性陣がみんなみんなかっこよかった。そして、みんなみんな自分の生き様に揺るぎない誇りを持っている人たちでした。悩んだり迷ったり、落ち込んだりすることもあると思うのに、そういった部分を周囲に見せない強さ、明るさで包み込んでしまうたくましさに、心から「カッケー!」と思いました。
でもって、愛すべき男性陣になんとも癒されたドラマでした。ミズタクに駅長にパパさんにストーブさんに組合長さんに市長さん。みんないい年をした大人なのに、というか、どう考えてもいい年をしたオジサンが大半を占めているのに、女性陣が持っていない「キュートさ」満載で、かれらのとぼけたやりとりが大好きでした。かっこよくはないんだよなぁ。どちらかというと、めんどくさいし、ちっちゃい。でも、愛すべき男性陣なんだよなぁ。
■2013年度上期NHK朝ドラ(8:00~8:15)
■脚本:宮藤 官九郎
■出演
能年玲奈、小泉今日子、尾美としのり、宮本信子、蟹江敬三、有村架純
橋本愛、小池徹平、平泉成、八木亜希子、杉本哲太、吹越満、福士蒼汰
塩見三省、でんでん、木野花、美保純、片桐はいり、渡辺えり
松田龍平、古田新太、薬師丸ひろ子
■感想 ☆☆☆☆☆☆
高視聴率のドラマ「半沢直樹」を(録画はしているものの、まだ全話)見ていなかったために「ヒネクレモノ」認定を受けました。けれど、私、今や国民的大人気といっても過言ではないドラマ「あまちゃん」は見ていました。そして、がっつりはまってました。全然、ヒネクレテないのです。(ちなみに半沢さんは挫折しました。無念・・・。)
・・・と書き出してから早3か月。書き上げるまでにえらいこと時間かかりました。好きすぎて、全然、文章をまとめられませんでした。クドカンさんの作品って感想をまとめるのが難しいのです。
大好きな脚本家、宮藤さんが朝ドラを描くと知った時から「絶対に見る!」と息巻いていたドラマでした。そして、いざ始まると、私が抱いていた「楽しみ!」という期待なんて軽々と300倍ぐらい上回る「楽しいっ!!」を与えてくれたドラマでした。毎日毎日、15分間という短い時間で笑って泣いて、やっぱり笑って。朝から喜怒哀楽の中の喜と楽を堪能して、その結果、さわやかに一日を始められる。そんなドラマでした。とにかくすっごく好きだった!
早い段階で登場人物ひとりひとりがいつの間にか「ご近所さんの方々」になっていました。大好きなご近所さん。主役とか脇役とかそういったテレビの中の人ではなく、「アキちゃん」で「ユイちゃん」で「夏ばっぱ」で「眼鏡会計ババア」で「ストーブさん」で「大将」。愛称で認識できるし、周囲の人たちとも愛称で語り合う。それぐらい登場人物が私たちにとって身近な知り合いとなったドラマでした。みんな一癖も二癖もある面倒くさい人たちで、その面倒くささ故に愛すべき人たちでした。彼らがわいわいとやかましく収集がつかないままに文句を言い合ったり、笑いあったり、益体もないことを言い合ったりする様子を見ているだけで、こちらまで笑顔になる。ちょっぴり泣きたいような気持になる。そんなぬくもりを与えてくれる人たちでした。大好きだったなぁ。本当に。
とはいえ、舞台は東北。ドラマ開始当初から、私たちにとって特別な意味を持つようになった「あの日」、2011年3月11日について描くことが公言されていたため、毎日、楽しくドラマを見ていても、未曾有の大災害が襲った「あの日」をクドカンさんがどのように描くのか、心のどこかでずっとずっと気にかけていた気がします。楽しくドラマを見ていたからこそ、見れば見るほど、どのキャラクターにも思い入れが増えて「大切な人たち」がどんどん増えたからこそ、どんどん不安になった中盤。
不安は杞憂でした。「あの日」を安易な描写で見せなかったこと、「あの日」を過剰演出で「悲劇」として描かなかったこと、私たちの想像力や記憶力を信頼して「震災」を描きすぎなかったこと、中途半端に「お涙ちょうだい」な展開にしなかったこと、静かにシンプルに丁寧に「震災」に焦点を定め、そのシンプルさが私たちの記憶を掘り起こしてくれたこと、どれもがとても細やかで丁寧な配慮に満ちた描き方だな、と思いました。
「未曾有の大震災」だったけれど、私はあの日、あの震災が発生したときも、それから数時間後、ニュースで津波の映像を見るまでの間は今、何が起こっているのか、どれだけ被害が深刻か、それすらわかっていませんでした。何が起こっているかよく分からない不安もこのドラマでは丁寧に描いてくれていた気がします。
そして、震災後の北三陸市の人たちの変わらない朗らかさ、風景も環境も変わったけれど、その中で自分も大切なものも見失わない強さは、私が安易に抱いていたこのドラマに対する不安を吹き飛ばしてくれました。「ご心配ねぐ。」たった一言のシンプルなメール。「生きていくのに特に必要のない」俳優業を再開することについて、「なんだか申し訳なくて。」と仕事に復帰できないでいる鈴鹿ひろみに対して「東北の人間が『働け。』って言ってるんです。」と言い切る春子のたくましさ。「自然が人間に牙をむくことは昔からずっとあること」「今までとなんも変わらね。」と言い切る夏ばっぱの静かな口調。「これくらい許されるでしょ、被災地だもの。」とほくそえむ観光協会の面々のしたたかさ。
辛い現実から目をそらさず、日常の一コマ一コマを温もりある視点で丁寧に拾い、その中で笑って過ごしている人たちと「明日」を無邪気に信じるヒロインに強さを感じた後半でした。生きていれば、震災に限らず、辛いことはたくさんある。「あのときに比べれば。」と言われるかもしれないけれど、辛いことに大小なんてない。辛いときは辛いし、誰であれ「今」の「自分」の感情がすべて。それでも「辛いときこそ、辛いからこそ」「いつも通りに」笑って生きていこう、「いつも通り」を大切にしよう、そんな強い意志が柔らかく描かれていた気がします。
「『絆』とか『ひとつになろう』とか言われても息苦しいばかりだった。けど、ここに戻ってきて、分かったことがある。おらはおらのできることをやる。」と宣言したアキは、すごくすごくかっこよかったし、私もそういう地に足の着いた強さを手に入れたい、と強く思いました。
アキの持つ一見、根拠のない自信に見えるこの強さは「今」や「ここ」を肯定する強さ。震災前、東京に憧れるユイちゃんに対して「ここが一番いいのに。」と北三陸の良さに気付いたのも、「でも、ユイちゃんには私に見えてない東京のよさが見えてるんだな。」とユイちゃんの憧れを否定せず受け入れたのも、すべてこの強さにつながるんだろうな、と思いました。そして、それは、きっと今までの私たちが失いかけていたものだったんじゃないかな、と思うのです。今、自分がいる場所を肯定できずに「もっといいもの」「もっと便利なもの」を追い求めてきて足元を見失ってしまったのが今の「地方」なんじゃないかな。
いろんな要素が詰め込まれたドラマだったけれど、私は女性たちの友情がかっこよく描かれているところも好きでした。中盤、ユイがやさぐれていたときに「そういう姿、ユイちゃんはおらに見られだぐねえはずだから。おらも見だぐねえし。つれえけど聞かなかったことにする。親友でも緊張感は必要だ。」と言ってのけたアキに男前だなぁ、とほれぼれしたし、確かにユイちゃんは、アキにだけは自分のそういう姿を見られたくないだろうな、と納得もしました。大好きな友達だから弱いところ、ダメなところを見られたくない、かっこいい自分だけを見ていてほしい、という友情も確かにあると思う。
だからこそ、終盤でユイちゃんがアイドルを「やりたいよ!」と力強く宣言し、かっこいいユイちゃんが本格復活した場面は大好きでした。鳥肌が立っちゃった。その勢いで毒舌早口で他のアイドルを的確に評価し、ライバル視するユイちゃんと、そんなユイちゃんを見てうれしそうに「ユイちゃんが戻ってきた。」と喜ぶアキ、そんなふたりの関係性が大好きでした。
ユイとアキだけでなく、海女さんクラブの面々も、アキの母親、春子さんも大女優、鈴鹿ひろみさんも、出てくる女性陣がみんなみんなかっこよかった。そして、みんなみんな自分の生き様に揺るぎない誇りを持っている人たちでした。悩んだり迷ったり、落ち込んだりすることもあると思うのに、そういった部分を周囲に見せない強さ、明るさで包み込んでしまうたくましさに、心から「カッケー!」と思いました。
でもって、愛すべき男性陣になんとも癒されたドラマでした。ミズタクに駅長にパパさんにストーブさんに組合長さんに市長さん。みんないい年をした大人なのに、というか、どう考えてもいい年をしたオジサンが大半を占めているのに、女性陣が持っていない「キュートさ」満載で、かれらのとぼけたやりとりが大好きでした。かっこよくはないんだよなぁ。どちらかというと、めんどくさいし、ちっちゃい。でも、愛すべき男性陣なんだよなぁ。