モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ワルツを踊る蝶 旅立ちの時

2006-08-27 | 歴史・地理・雑学
朝、ベランダのアピオスの葉の陰で、羽化したばかりの小さな蝶を妻が見つけた。家族一同、どれどれホントかいと覗き込んだ。見ると一頭の小さな蝶が空になったサナギにぶらさがっている。はねの模様からタテハチョウ科のミスジチョウの仲間と分かる。

本当に羽化したばかりのようで、はねを乾かしているのだろうジッとしている。これ幸とカメラを取りだしマクロ撮影をする。たいてい蝶は、朝8時前後に羽化するという。朝日が昇りはねが乾かし易く気温も上がり始めて活性化し飛び立ちやすいからだろう。なにより早朝は天敵の鳥が盛んに活動している。

しばらくするとゆっくりとはねを広げ始めた。開張は30ミリほど。タテハチョウ科タテハチョウ亜科のコミスジ(小三筋)で間違いないだろう。もっとも普通に見られるミスジチョウだ。滑空と羽ばたきを繰り返してワルツを踊るように軽やかに飛び回る蝶だ。マメ科の植物が食草なので、わが家のアピオスに来たのだろう。

やがて、少し上の枝に飛び移り、しばらくすると畑の方へ飛び去っていった。以前、山椒を植えたらアゲハチョウがたくさん卵を産んで、幼虫が山椒の葉をすべて食べ尽くして枯らして飛び去っていったことがあった。今回は、一頭だけだったのでアピオスは無事だった。

いずれにしても、生の輪廻は自然豊かな地球がある限り何事もなかったように続く。一見当たり前のことのようだけれども、環境破壊や生態系のバランスが崩れたらすぐにとぎれてしまう脆い物でもある。この街からコミスジが消えても、だれも気が付かないだろうが、それは実はとても恐ろしいことの前ぶれだったりすることもある。たとえばこの10年で、この街から消えた生物はなんだろうと考えてみたりする。
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月の女神と東京レクイエム

2006-08-23 | 歴史・地理・雑学
息子達の曾祖母の告別式への道すがらのことである。大通りに出る電柱で女子高校生がふたり、なにやら指さして何か言っている。「これなに?きれい」「キモイ!」などなど。

きれいで気持ち悪い?なんだそれはと電柱の向こう側を除くと一頭の大きな蛾が留まっている。開張12センチはある大きな蛾だ。名前を「オオミズアオ(大水青)」という。学名のアルテミスは、月の女神のこと。

最も美しいという人と、不気味という人とに見方が分かれる。なんでこんな町の真ん中にと思われるかも知れないが、ごく普通に市街地でも見られる。透明感のある緑色の幼虫を見たことがある人も少なくないはず。
灯火に飛来することが多いが、日中しかも電柱になぜ留まっていたのだろうか。

よく見ると、電柱のスチールのベルトに左の前肢をひっかけて留まっているのが分かる。何かに追われたのだろうか、蛾というと日陰者のイメージで、同じ鱗翅目の蝶が持て囃されるのに比べて不遇の扱いを受けている。しかし、鱗翅目の9割以上は、蛾が占めているのである。日本には約4800種の蛾がいるそうで、毎年数十種が追加されているそうだ。

中には成虫になると口が退化し何も食べないで一生を終える種もいる。アゲハチョウそっくりな蛾もいる。トラガやマドガのように昼行性の蛾もいる。スカシバ(透かし羽・硝子蛾)などはハチそっくりで、飛んでいても蛾とは気が付かないものもいる。

右下は、新宿野村ビル48階からの夜景。眼下に多摩丘陵まで続く幾万の町の灯りは、曾祖母への送り火のように見えた。こんな夜の町を人知れず、蛾も飛び回っているのである。
蛾は不思議な魅力を持っている。
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烏帽子岳は花と虫の楽園だった!

2006-08-18 | アウトドア・ネイチャーフォト
家族で信州の烏帽子岳(2065.6m)に登った。烏帽子岳は、上田市の小学生が遠足で登る山だが、昔は上田の麓から登ったそうだ。標高差は1400m位ある。現在は、地蔵峠からの往復だそうだから、今と比べたらたいして栄養のある物も食べていないのに当時の小学生の体力は相当なものだったと思う。根性だけでは山は登れないからね。

で、わが家だが、当然地蔵峠からの往復。真夏だし麓からだと熊さんに遭遇する危険性も大きい。そんなことはともかく、帰省のついで登山なので仕方がないのである。ゆっくりと往復5時間、標高差も350mもないのんびり山歩きだが、その分写真撮影や観察にたっぷりと時間がとれるのが嬉しい。

烏帽子岳は、真夏の花が真っ盛り。虫たちの活性も高く、ブンブン飛び回っている。特に2066mの山頂で思う存分飛び回っていたアキアカネの群れは気持ち良さそうだった。秋には真っ赤に色づいて大軍を成して里に下りてくる。
花は、ハクサンフウロ、オオバギボウシ、コキンレイカ、イブキジャコウソウ、マルバダケブキなど。頂上では、1000キロも旅をするといわれるアサギマダラが迎えてくれた。

特に頂上の360度のパノラマは圧巻で、北アルプスから四阿山、志賀高原、浅間山、八ヶ岳、美ヶ原、北信五岳と全部見えるのだ。

写真左上は、シモツケ越しにみる百名山の四阿山。右はノアザミに吸蜜するハナアブ。左下は、キクラゲの仲間のハナビラダクリオキンという難しい名前の菌類である。右は、高原の白い花火、虫たちが大好きな花、シシウドという。猪ウドと書くが、猪が食べたという話は聞いたことがない。ヘビイチゴと同じたぐいのネーミングだろう。蛇苺だって蛇は食べない。

とにかく、モリモリキッズフォトドキュメントをアップしたのでご笑覧いただきたい。絶対行きたくなること間違いなし。
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信州で蕎麦を食らう

2006-08-11 | 歴史・地理・雑学
信州に帰ると必ずどこかの蕎麦屋に寄る。戸隠の「うずら屋」、軽井沢の「水音」、小諸の「富士屋」「草笛」、稲荷山の「つる忠」等々。中でも真田十万国の松代の佐久間象山記念館近くにある「沙羅寿庵」は、お気に入りで、ほぼ毎回立ち寄っている。体育会系のご主人が打つ蕎麦は細く角が立っている。ザルをひっくり返して盛るようなけちなことはしない。並でもかなりの盛りだ。

今回は、田毎の月で有名な姨捨に寄ったついでに、ネットで見つけておいた「まる天」という蕎麦屋に寄った。立つことで人気が出たアライグマがいることで有名になった茶臼山動物園の麓にある。
店の特徴等は、ホームページによると・・・
●長野県信濃町産霧下そば使用●石臼挽き手打ちそばの提供
●普通細切蕎麦●普通太切田舎蕎麦●幻の寒晒蕎麦(3月から6月ころのみの限定)
●健康と美容にも力を入れており、 納豆そば、おろしそば、カモセイロそばなども 用意致しております。
とある。

写真左上は、太切田舎おろし蕎麦。左下がもり蕎麦。右は大盛り。太切田舎蕎麦は、直径が40センチぐらいの漆の皿で出てくる。粋にすすれる蕎麦ではないが、咬めば咬むほどに蕎麦の甘みがにじみ出てくる。出汁はもり蕎麦とは分けているようで、カツオ風味にアジ節やアゴ節のような野趣豊かな風味が加わり、それが田舎蕎麦ととてもよく合っている。おろしは、本来は冬のもので、更級名物の中之条大根(ねずみ大根・辛味大根)を絞った汁に信州味噌を溶いて食べる「おしぼり」が正統だが、夏なので仕方がない。けれども、大根に味噌を混ぜ、出汁を適当にはって蕎麦をからめて食べると絶品である。もり蕎麦は580円だが、大盛りが100円増しというのがなんとも嬉しい。実に良心的な店だ。昨今、江戸では趣向に走った高くて旨い蕎麦屋が増えているが、本来蕎麦は日常食だ。こうでなきゃ。(残念ながら閉店しました)

信濃出身の小林一茶には、蕎麦を詠んだ句が35句あるそうだ。
「蕎麦の花 江戸のやつらが なに知って」とは、粋な食い方はこうだとかと知ったようなことを言う江戸っ子に対する皮肉なのか。
「蕎麦時や 月の信濃の 善光寺」善光寺の屋根越しに昇る月を愛でながら蕎麦をすすったのか。
「山鼻や 蕎麦の白さも ぞっとする」とは、どんなおぞましい事を連想させる風景なのか。
「そば屋には 箸の山あり 雲の峰」洗った箸を積み重ねた様だろう。昔は使い捨ての割り箸は無かった。
「信濃では 月と仏と おらが蕎麦」は、最も有名な句なのだけれど、一茶の句ではないという説があるそうだがどうだろう。うんちくはどうでもいいが、旨い蕎麦がいつまでも食べられるようにと願う。
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粘菌ハンティング

2006-08-03 | アウトドア・ネイチャーフォト
 W杯だ展覧会だ原稿書きだ、子供達は新聞取材やテレビラジオ出演と忙しく、その上雨がちだったので気が付いたら2ヵ月以上山とご無沙汰でした。禁断症状も出そうになる間際の梅雨明け、たっぷりと水分を含んだお山は粘菌がウジャウジャ出ているに違いないということで、夏休みの研究課題に変形菌(粘菌)を選んだ長男と、わが家にはお馴染みの山梨県小菅村の南にそびえる大マテイ山へと向かいました。

 真夏の陽射しなので低山は午前中が勝負です。午後になったら暑くてかなわない。虫の襲来もあります。雷雨の危険もあります。そんなわけで、早朝5時起きででかけました。国道139号線の標高1250mにある松姫峠に着いたのが7時前。慌ただしく朝食を済ませて山登りの開始。5月には次男と霧雨の中、幽玄の鶴寝山北尾根を下から登ったのですが、この時期そんなことをしたら熱中症でぶっ倒れること必至。今回は標高差160m足らずの楽な山歩き。まあ粘菌ハンティングが目的ですから、それでいいわけです。

 さて成果ですが、梅雨が長かったせいか夏の花は全くといっていいほど咲いていませんでした。わずかにナガバノコウヤボウキとマルバダケブキが咲き始めていただけ。お目当てのレンゲショウマは、まだ固いつぼみでした。しかし、狙ったとおり粘菌達はウジャウジャと出ていました。といっても大きさが0.5ミリから3ミリと、ただ歩いているだけでは全く目に入りません。狙った倒木や切り株をひとつひとつ丹念に見ていくという根気のいる作業が必要です。そして見つけたらマクロ撮影しまくりです。

 粘菌の未熟というのは、実は小さな昆虫や幼虫、陸生貝類などの幼生のエサにもなるわけですが、今回はそんなシーンもたくさん撮れました。フォトドキュメントは、モリモリキッズMORI MORI KIDS Nature Photograph Galleryでアップしました。粘菌のオンパレード! ぜひご笑覧ください。

【信州の里山】妻女山の変形菌1


【信州の里山】妻女山の変形菌2


【日本の里山】森の変形菌(粘菌)


【山梨の里山】大マテイ山・粘菌ハンティング
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