モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

朝日の中で微笑んで。光の中のオオムラサキ(妻女山里山通信)

2011-07-30 | アウトドア・ネイチャーフォト
 今回は、光にこだわって撮ったオオムラサキの写真を選んでみました。テーマは、「朝日の中で微笑んで」(by Hi-Fi SET)。実際は、朝日の頃はまだ朝露に濡れていて気温も低いのでオオムラサキは葉の裏や小枝にぶら下がって休んでいます。朝日が昇って体が温まって来ると活動を始めます。オスが縄張り争いをし、メスを追いかけるのもこの頃からです。

 掲載の写真は、主に逆光のものを選びました。オオムラサキは、ウスバシロチョウやアサギマダラのように翅が透けているわけではありませんが、逆光で見ると翅の薄黄白色のスポットのところや前翅の縁のところが透けてたいへん奇麗です。上の三点は、レンズとオオムラサキまでの距離が約3センチと非常に近く、触覚が触れそうなほどの距離です。一眼レフだと物理的なシャッター音で逃げてしまいます。電子音のみだとなんとか大丈夫。それでも近づき方にコツがあり、普通に近づくとやはり飛び立ってしまいます。この辺りが難しいところで、別に秘伝ではないのですが、説明しても誰にでもできるというものでもないかもしれません。

 今回は、樹液を吸うために木の穴に口吻を挿しているところではなく、口吻を巻いているものを選んでみました。樹液を吸っているときの方が、そちらに集中しているので撮影し易く、口吻を巻いているときは、周囲に気を配っているときなので逃げられ易いのです。また、ルリタテハなど、人の気配に敏感なチョウが一緒だと、それらが飛び立った時に一緒に飛び立ってしまうので、より神経を使います。さらにスズメバチやオオスズメバチが飛来した時はこちらが要注意。目の前30センチに突然オオスズメバチが飛来するとドキッとします。そんな時は、素早く連射して速やかに退散します。

 一番下のメスのオオムラサキが翅をいっぱいに広げているカットは、下にある樹液バーめがけて一目散に駆け下りて行こうとしているところです。腹部がかなり膨れているのは卵が入っているからなのでしょうか。それとも卵に加えて、交尾して精子をたくさん貯蔵しているからでしょうか。いずれにしても、産卵のために栄養をたくさん摂取しないといけないんでしょうね。オオムラサキのメスは、数回に分けて約400個の卵をエノキの葉に産みつけます。

 一番上と二番目のカットが分かり易いと思いますが、オオムラサキは昆虫なのに脚が4本しかないように見えます。これはタテハチョウ科のチョウは、みなそうなのですが、前脚が退化して胸に小さく折り畳まれているのです。眼の下から伸びているのがそれですが、これだとティラノザウルスの小さな前脚より使い物にならないでしょう。味を見るときに使うらしいのですが、まだその瞬間を見たことがないので、今度注視してみたいと思います。4

 こんな美しい里山の自然も、健全な環境があればこそ。放射能や農薬で汚染されたらあっという間に消滅します。【必見!】原発情報(妻女山里山通信)で最新情報を発信しています。欧州ではあまりにも危険ということで、各国で禁止されている、ハチの中枢神経を冒し絶滅に追いやるネオニコチノイド系の農薬。日本では空中散布や除草剤で相変わらず使われています。これらの影響は乱獲などの比ではありません。ぜひ関心を持って自ら調べて勉強してください。

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オオムラサキの生と死 (妻女山里山通信)

2011-07-28 | アウトドア・ネイチャーフォト
 樹液バーに来たメスのオオムラサキを撮影して山道に戻ると、熟年夫婦のハイカーが下りてきました。色々話しをしているうちに、「登る時、道の真ん中にオスのオオムラサキが死んでましたよ」と。「後翅がなんだか縮れていて奇形のような感じもしましたけど」とのこと。詳しい場所を聞くと、どうもうろ覚えではっきりしません。そこで、おそらくあの辺りだろうと思い当たる場所をつぶさに見て回りました。

 すると、ある開けた場所でオスのオオムラサキの青い翅が目にとまりました。近づくと既に夫婦が目撃してから2時間は経っているからでしょうか、奇形かもしれないと言っていた後翅は既になくなっていました。屍骸にはトゲアリと黒光りする一見ダンゴムシの仲間と思われるようなものが取り付いていました。まるで三葉虫のようなこの奇怪な虫は、大扁死出虫(オオヒラタシデムシ)の幼虫です。死出虫、または埋葬虫とも書きますが、都内の公園などでも普通に見られる甲虫目カブトムシ亜目シデムシ科の昆虫です。所謂森の掃除人で、生物の屍骸を食べます。

 もうひとつのトゲアリですが、主に山地の木の樹洞(うろ)に棲むアリの一種で、クロオオアリやムネアカオオアリの巣に一時的社会寄生を行うことで知られています。というと居候みたいな感じですが、実際は巧妙で非常に緊張感溢れる生命行為なのです。トゲアリの新女王は、結婚飛行を終えて翅が落ちるとクロオオアリの巣に侵入します。働きアリの背中に乗り、クロオオアリの臭いを纏います。そして、クロオオアリの女王を見つけ殺し、自分の卵をクロオオアリに育てさせるわけですが、攻撃性の低い羽化直後のクロオオアリの働きアリが育ててくれればよし、失敗すれば逆に殺されてしまうこともあるようです。

 そうして子孫を増やして行きある程度の数になると、本来の生息地である木の樹洞に移動します。先日はオオムラサキの撮影中に、そのクロオオアリの巣から木の樹洞への大掛かりな引っ越しと思われる場面に遭遇したので後日アップします。以外と知られていないかもしれませんが、アリの食性の基本は肉食なので、こういった屍骸も餌とします。写真のトゲアリは、この10メートルほど離れた所のクヌギの樹洞に巣がありました。

 このオオムラサキのオスですが、残念ながら後翅はなくなっていましたが、二人の話では片方が縮れていて奇形のような感じだったということなのですが、稀にそういう個体もあるようです。翅の感じから羽化直後に死んだというよりは、寿命かもしれません。蛹の状態の時に人が触ると奇形が生まれるという説もあります。蛹を見つけてもなるべく触らないでください。バタバタと暴れます。あるいは、自然界の中でも物理的な刺激が加わって奇形が生まれてしまうことがあるのかもしれません。蛹化不全が起きる要因は他にもあるかもしれませんが。翅のキズは死後できたものか、激しい縄張り争いを現すのかは分かりません。

 オオムラサキの一生は、約一年。成虫での日数は、一ヶ月もありません。そのわずかな期間にペアリングをし、交尾・産卵をして次世代へとつなぐのです。エノキ(榎)の葉に産みつけられた卵から孵化すると、まず卵の殻を食べ、エノキの葉を食べて成長しますが、最初の天敵はアリです。冬までに三回脱皮して四齢幼虫になり、木を下りて葉の裏で越冬します。越冬幼虫は暑さと乾燥に弱いので、エノキの北側の根元に固まっていることが多く見られます。若葉が芽吹く頃に、再びエノキノキに登りますが、中には登れないものもいて、それらは生き延びる事ができません。木に登ってから二回脱皮して六齢幼虫(終齢幼虫)になると、かなりおおきくなるため天敵の鳥に狙われるようになります。

 六齢幼虫は25日位で前蛹になり葉にぶら下がります。この頃の天敵はカメムシで、教われると体液を吸われて死んでしまいます。前蛹期は短く2日ぐらいで脱皮し蛹になります。ホルモンの作用により細胞分裂を繰り返して羽化の準備をします。15日位すると羽化が始まりますが、オスはメスより10日ほど早く羽化します。メスは長く蛹でいるためオスより大きくなりますが、産卵のためといわれています。オスの求愛行動は、メスに近づき腹部を内側に曲げて交尾器を突き出す仕草をします。メスは気に入れば交尾に応じますが、気に入らなかったり既に交尾が済んでいると翅を開いて拒絶します。前の記事で書いた様に、メスがオスに求愛するということもあるようです。

 樹液バーに戻ると、大きなメスがやってきました。今日は樹液の出が悪いのか、多勢に無勢でオオムラサキが苦手なアオカナブンの団体さんは現れません。木の樹洞に頭を突っ込んで思う存分樹液を飲んでいました。いずれアップしますが、ここにカブトムシやスズメバチ、ミヤマカマキリにルリタテハなどが一同に集まると、それはもう上へ下への大騒ぎとなります。その仁義なき戦いは、見ていて飽きる事がありません。

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そんなに見つめないで。オオムラサキの偽瞳孔 (妻女山里山通信)

2011-07-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
 オオムラサキをマクロ撮影すると、大きな目の中に黒い点があって、いつもこちらを見ているような気がします。これは複眼の偽瞳孔(擬瞳孔)というもので、名の通り瞳孔ではありません。偽瞳孔は、カマキリのものが有名で、いつもこちらを睨んでいるような気がします。オオムラサキの場合は、濃い偽瞳孔の周囲に薄い色の偽瞳孔がいくつもある構造になっています。

 瞳ではないとはいえ、いつもこちらを向いているので、なんだか見つめられているような気分になります。実際は複数の個眼が光をすべて吸収してしまうので黒く見え、オレンジ色の光を反射する部分がその他の部分という光学現象ということです。しかし、上から二枚目の写真のように右目(向かって左)の目には濃い色の偽瞳孔が見られないといったことがあったり、目の縁で半分欠けてしまうことがあったりと、不思議なことがままあります。

 複眼といっても実際は、ひとつに統合された画像を見ているようで、画素数はそんなに高くないようですが、紫外線が見えたり、動体視力はいいようです。なので蝶に近づくには、なるべくゆっくりと動くことが逃げられないコツです。

 チョウの頭部は小さいので、相当に拡大しないとどういう構造になっているのか分かりません。特に小さなシジミチョウなどはマクロで撮影して拡大してもなかなか細部までは。それに比べるとオオムラサキは、頭部が大きいので分かり易いといえるでしょう。チョウの口は口吻といって樋がふたつ合わさったようなストローですが、花の蜜や樹液を吸うのに特化した構造となっています。使わないときは内側に巻き込んでおきます。口吻は顎が変化したもので、羽化した直後は二つに分かれていますが、次第にファスナーでつなぐようにひとつになります。中には筋肉、神経、気管が通っています。

 口吻を挟んで上に突き出した二本の角のようなものは、下唇鬚(かしんしゅ)といって触覚と同じく匂いを感じ取ったり、複眼や口吻を掃除したりするのだそうですが、オオムラサキに関しては、まだそのシーンを目撃したことはありません。口吻の先では匂いを感じないので、樹液が吸える穴を探して口吻を突き刺してみては、樹液がないとウロウロしているところをよく目撃します。

 スズメバチを追い払ったり、ツバメを追いかけたりと気の強いオオムラサキですが、団体でくるカナブンやアオカナブンは苦手のようで、アオカナブンが真っ逆さまになって吸っている穴に、おこぼれ頂戴の形で吸っている姿も目にします。アオカナブンを次々とひっくり返して落としてしまうのはカブトムシの親分です。

「オオムラサキの一生」

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*訂正;右上から三番目にブドウドクガとあるのは誤りで、正しくはナチキシタドクガです。

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ニホンカモシカのシロと久しぶりに邂逅 (妻女山里山通信)

2011-07-24 | アウトドア・ネイチャーフォト
 長坂峠(東風越)から妻女山(赤坂山)ヘ向かって下り始めると、猪害対策で除伐された森の林道の足下から、突然一頭の獣が駆け下りました。ニホンカモシカだなと思ってオーイッと声をかけると、20メートルほど下の斜面で止まりました。白っぽい毛皮のその姿は、この辺りをテリトリーにしている三頭のカモシカの母子の二頭の子供のクロとシロのシロの方です。冬毛はグレーなのですが、夏毛はかなり白いので、通称シロ。

 夏場は緑が生い茂り、里山でのニホンカモシカとの遭遇は非常に困難になります。糞場に行けば毎日真新しい糞があるので、棲息は確認できます。
ねぐらは糞場の近くにあり、早朝か夕方行けば会えるのですが、その時間は彼らの大事な安息時間なので、あまり邪魔したくないところです。そんなわけで、夏場はなかなかお目にかかれないので、今回の邂逅は幸運でした。

 母親がいると、非常に警戒するのですが、このシロはクロよりも警戒心が薄く、というか好奇心が強く、側まで寄る事ができます。声をかけながら除伐された小枝が煩い急斜面を下って行きます。シロは興味を示しながらも一応警戒して右上の斜面にゆっくりと登っていきます。そちらは、三頭がいつも落ち合う場所のある方向です。

 手を振ったりして撮影しながら、さらに間合いを詰めて6メートルぐらいになりました。どうしようかなという感じです。なぜか突然下向きになりました。万一の場合下に逃げた方がいいかなと思ったのでしょうか。警戒心を解くためにしばらく動かずにいて、また上を向いたところで近づきました。その距離約4メートル。もう限界距離です。

 上へ歩いて行きそうになったので声をかけました。そして振り向いたのが最後のカットです。体毛がかなり白くて、遠目から見るとまるでヤギのようです。顔が少し黒いので、一番上のカットなどは羊のサフォーク種(ウォーレスとグルーミット)のようです。サフォーク種は、信州新町のジンギスカンでも有名ですが・・。

 撮影後、上の林道へと戻りました。好奇心お旺盛なシロといえども、やはり緊張の時間です。あまりストレスを与えてもいけないので、必要以上に長くならないようにしています。シロは結局母親や兄弟のいる森へは行かずに、その辺りで葉を食べ始めました。

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樹液バーではオオムラサキの三角関係が勃発・・・ (妻女山里山通信)

2011-07-22 | アウトドア・ネイチャーフォト
 盆地は34度の連休中日、オオムラサキの樹液バーに遠征しました。今日はアオカナブンの団体さんはいないものの、カナブンとアオカナブンが一匹ずつ樹液ホールに上半身を突っ込んで飲みまくっていました。どれどれとレンズを近づけると、いきなりお尻から勢いよくおしっこの噴水が飛び出しました。

 しばらくすると上空からバサバサという激しい羽音が。見上げるとクヌギの梢の間をクルクルと二頭のオオムラサキが回りながら下りてきます。二回ほど樹液バーのあるクヌギの木の周りを回ると樹液バーにご来店。するとごこからともなくもう一頭のオオムラサキが登場。オスがメスを奪いに来たのかと見ると、そうではありません。もう一頭もメスでした。両手に花!? いえいえ。

 ここで一頭のオスをめぐるメス同士の戦いが始まりました。オスは最初からいたメスをずっと見ています。初めからいたメスは、後から来たメスに脅しをかけます。二頭は舞い上がりました。もう一頭のメスも「待ってぇーっ!」と言わんばかりに二頭を追いかけます。二頭は木々の間を抜けて、10メートルほど先のヤマザクラの梢に留まり、見つめ合っています。

 すると、後から来たメスが、下からオスにすがりつくような恰好になりました。オスは翅をバタバタさせて追い払っています。自分の相手は最初の彼女と決めている様です。後から来たメスは何度もすがりつくのですが、全く取りつく島がありません。やがて二頭は飛び立ちましたが、その後どうなったかは不明です。無事に交尾できたか、もう一頭のメスに邪魔されて不発に終わったか・・。ただし、写真のようにメスがオスと対峙しているのは拒絶のサインということなので、このメスは既に交尾が済んでいるのかもしれません。

 ひょっとしたら、後から来たメスは、実は最初にオスとお見合いしたメスで、メスはOKだったのにオスが気に入らず立ち去ったということはあり得ないのでしょうか。ものの本には、オスが求愛行動をし、メスが受け入れると交尾すると書かれていますが、オスが拒否するということは、全くないのでしょうか。そうするとオスはせっかくの交尾のチャンスを自らつぶしたということになります。クヌギの森の恋愛ドラマは、不思議に満ちていました。

 オスは求愛するときに腹部の先端をメスの方に曲げて誘います。さしずめ人間なら、OTINTINを出してさあどうだ!てな感じなんでしょうかね・・。ちなみにオオムラサキの交尾は、小枝にぶら下がって行われる場合は、翅を閉じて互いの腹部の先にある交尾器を連結させて行います。邪魔者が入ると翅を広げて威嚇します。交尾は受精に時間がかかるため数時間にも及びます。また、オスは交尾後まもなく死に、メスは産卵後その一生を終えます。

 クヌギにある樹液バーの樹液ですが、カミキリの幼虫が穿けた穴からにじみ出ます。それをカナブンやアオカナブン、スズメバチやオオスズメバチが大きくし、オオムラサキはそのおこぼれを頂戴するのですが、他の昆虫が吸っていると、オオムラサキは翅を広げて威嚇します。スズメバチをどかしてしまうシーンを見た事もありますが、アオカナブンの団体にたじろいで、樹液を吸えずに立ち去ったのを目撃したこともあります。

「オオムラサキの一生」

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樹液バーにはオオムラサキとアオカナブンの団体さん! (妻女山里山通信)

2011-07-20 | アウトドア・ネイチャーフォト
 前回遠征して見つけたオオムラサキの集まる樹液バーへ、再びクロメマトイとヤブ蚊に悩まされながら登りました。今日は樹液の出がいいようで、大きな節穴からは樹液が染み出ています。そのせいか樹液バーには、次から次へとお客が訪れます。しかもそのほとんどが、森の宝石アオカナブン。入れ替わり立ち替わり訪れるその数はいつも十数匹。大賑わいです。

 そんな中、大きなオオムラサキが二頭やってきました。いずれもメスです。初めはアオカナブンの団体さんに驚いた様子で、周りで様子をうかがっていましたが、やがて意を決したように中に割り込んで行きます。元々気が強く体も大きなメスですから、アオカナブンを蹴散らして樹液の穴に口吻を差し込みます。アオカナブンも一度位オオムラサキのマダムに蹴散らされても、めげる事もなく別の穴へと突進して体を半分位突っ込んで夢中で樹液を吸っています。

 二頭のメスが去るとアオカナブンだけになりました。20分ぐらい経った頃でしょうか、一頭のオオムラサキのオスが飛来しました。さっきよりアオカナブンの数は増えています。メスより小さいオスは、翅が青く奇麗なのですが、ちょっと弱気か。周りでジッと見ていますが、なかなか中に入るタイミングがつかめないようです。アオカナブンは、どんどん集まってきます。穴に体を突っ込んだまま尻からおしっこをするものもいれば、樹液をなめているメスに重なって交尾をするものまでいる有様です。もうなんでもありか・・。そんな酒池肉林の様子にすっかり怖じ気づいたのか、そのオスは樹液を一滴も吸えないまま、今日は日が悪い出直そうとばかりに飛び去って行ってしまいました。

 そんな様子をマクロ撮影しているときを狙ってヤブ蚊が撮影している指に留まります。叩くわけにもいかず刺され放題。虫除けズプレーなんか全く効きません。経験ではむしろ市販のものより、息子達が小さい時に手作りしたハーブで作ったものの方が効いたような気がします。ヤブ蚊はともかく、ブーという羽音と共に目の前30センチに止まったのはスズメバチ。これはいけません。素早くしゃがんで後ずさり5メートル。夏の里山でなにが一番の脅威かといえば、熊でも猪でも蛇でもなく、このスズメバチなのです。オオスズメバチだともっと危険。大声を出したり、払いのけたりしたら命取り。無言で素早く去るのみです。

 数分でスズメバチは去り、再び撮影に戻ります。樹液を吸っているオオムラサキとの距離は、レンズからたった3センチです。普通はそんなに寄ったら逃げてしまうのですが、秘伝木遁の術を使います(笑)。それにしても、アオカナブンは森の宝石というほど美しいのですが、当人達はまったくそんな自覚はないようで(当然)、樹液バーにたむろする、ただの飲んだくれ親爺のようで可笑しいですね。やがて風が出て来て樹冠が騒ぎ始めました。遠くでは雷鳴の音がします。後ろ髪を引かれつつ山を下りました。

 自然というのはリアリズムの世界です。未だにアニムズムやシャーマニズムの観点で自然を理解しようとする人がいますが、それは歴史として学ぶのであればいいのですが、人類が積み重ねて来た膨大な思惟の成果としての自然科学を全く学ぼうとせずに、安易にそういう世界を信ずることは、思考の停止を意味し、オカルティズムや神秘主義に陥る最も危険な道程です。自然を絶対視したり最高のものと賛美したりする人は、一度湿度100パーセントのクロメマトイとヤブ蚊とスズメバチや蛇のいる里山に一日中居てみるといいのです。自分の考えがいかに観念的なものか分かるでしょう。エアコンの効いた快適な人工空間にいたら絶対に分からないことです。

 自然というのは24時間一年中ニッチ(生態学的地位)のせめぎ合いが起きている現場です。非常に微妙なバランスで成り立っているもので、ちょっとした変異でバランスが崩れたりします。修復力もあるのですが、環境の変化に対応できずに絶滅して行く種も出ます。そういう微妙なバランスの危うさや強かさが、里山に通い続けると少しずつ見えてくるのです。一度くらい屋久杉を見に行ったからといって、それは観光以上のものにはなりません。リテラシー(読解力)を獲得する努力が必要なのです。自然は、不完全な人間が直ちに理解できるほど単純ではないのです。人類はまだたった一枚の葉を0から作る事も、オオムラサキが次にどの葉に留まるかも予測すらできないのです。チンパンジーとさして変わらない進化の(進歩ではない)過程にある地球上の一生物に過ぎません。
 信じた瞬間に思考は止まります。自然科学は万能ではないからこそ、知ろうとすることを止めてはいけないのです。

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なでしこジャパン女子W杯優勝! おめでとう! ありがとう!

2011-07-18 | サッカー
 まさに伝説となる死闘でした。二度も勝ち越しされて、それを跳ね返しての優勝は本当に素晴しい。勝利へのイメージが全員に共有されていたのでしょう。諦める感じがまったくありませんでした。1点目の永里からの鋭いクロスを潰れながら受けた丸山。そのことでアメリカが苦し紛れのクリア。逃さずつめた宮間の左足アウトの技ありゴール。2点目は、宮間と澤の阿吽の呼吸によるコーナーキックからの後ろへそらす難易度の高いボレー。得点シーンは、個人の力に頼ったアメリカよりも高レベルのものでした。

 日本がW杯で優勝するには、スペインのような、バルセロナのようなサッカーでなければならないという共通認識が、この優勝を導いたのでしょう。そして日本にはもうひとつ、絶対に勝たなければならない理由がありました。それを本当に現実のものとしてくれたなでしこジャパンには、最大級の賛辞と感謝を送りたいと思います。ひたむきな努力が報われた瞬間でした。なでしこの花言葉は「純愛」、「大胆」、そして「勇敢」。まさにそれを体現したチームでした。男子にも最高の刺激となったでしょう。

 それにしても澤。得点王、MVP。バロンドールも夢じゃない。アメリカリーグがなくなるとき、サッカーを止めて結婚してアメリカに残ろうとした澤に米政府環境保護局捜査官の彼は、「君は本当にそれで満足できるのか?君には退屈な専業主婦は似合わない」と言われ、「分かった。あなたは結婚しなさい」と言って帰国。愛を捨ててサッカーを取ったと言われた彼女でしたが、そうではない。愛故にサッカーを選んだのです。最初に日本選手に抱擁に行ったワンバックも素晴しい選手でした。女性も30歳からですね。二人ともプレイヤーとしても人間としても最高でした。勇気と力をもらった涙涙の最高の決勝戦でした。優勝の興奮冷めやらぬまま、日中は糞暑い中オオムラサキの撮影に行きました。いいカットが撮れました。ヤブ蚊に刺されて顔はボコボコ。そんなわけで激しく眠いzzzzz・・・・・・。

なでしこジャパン FIFA女子ワールドカップドイツ2011総集編


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オオムラサキの樹液バーは大盛況! (妻女山里山通信)

2011-07-16 | アウトドア・ネイチャーフォト
 オオムラサキの集まる樹液バーを求めて遠征し、山歩きを1時間余り。やっと見つけました。林内の気温は32度で、ジッとしていても汗が噴き出します。気温が高すぎるためかクロメマトイが少ないのがなによりでした。林内に見つけた幹周りが2mはありそうなクヌギの大木には、ちょうど目の高さ辺りに節があり樹液が流れ出ています。樹液バーに集まっているのは、カナブンやアオカナブン。オオムラサキはまだいません。それでも、15-20mの樹冠辺りを見上げると、時折オオムラサキが天空を横切るのが見えます。ここはじっくりと腰を据えて待つ事にしました。

 凍らせて来たウーロン茶を飲みながら、どれほど待ったでしょうか。バッサバッサという派手な翅音と共に二頭のオオムラサキが飛来しました。大きい! 二頭ともメスでした。まずはアオカナブンを追い払い、ヒョコヒョコ歩いて樹液が吸えるすき間を探します。見つかると丸めていた口吻を差し込んで吸液を始めます。吸い始めたところでレンズを近づけます。このタイミングが大事です。オオムラサキ嬢は、こちらをガン見しながらも樹液を吸い続けています。レンズとの距離はわずか3センチ。少しでもおかしな行動をとると即座に飛び立ってしまうので、気配を殺しての撮影です。

 複眼には黒い点(偽瞳孔)がありますが、写真でも分かる様に、それらは見る方向へ動くので、まるで見つめられているような気がします。これらの偽瞳孔は蝶が死んでしまうと、複眼が黒や茶色に変色して消えてしまいます。つまり、標本では決して見られない模様なのです。見えている画像は知るべくもありませんが、複眼といっても実際はひとつの画像として認識しているようです。画素数の低い魚眼レンズで見ているという感じでしょうか。ただ動体視力は人間よりもいいようです。また、紫外線も見える様です。

 あまりに夢中になって吸っているので、最後に残った一頭の翅をつまんでみました。*グイッと広げて逃げようとします。その力は想像以上で、去年は驚いて思わず手を放してしまったほどでした。彼女は「なにするのよ!」といった風に眼を飛ばします。スーパーマクロで何カットか撮影してからお帰りいただきました(笑)。そんな感じで撮影していたのですが、スズメバチの旦那がやってきました。オーッとという感じで一時退散ですが、そのスズメバチはいとも簡単にオオムラサキのマダムに翅で追い出されてしまいました。オオムラサキは強いんです。縄張りに入って来た鳥を追いかけて追い払うことも度々あります。相当に気が強いんです。

*翅の端をつまむと引き千切って逃げてしまい傷つけるので、かなりコツが必要です。むやみに真似をしないでください。

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粘菌のクダホコリの未熟に萌え!だが・・・(妻女山里山通信)

2011-07-12 | アウトドア・ネイチャーフォト
 信州でさえ最高気温が34度を記録した梅雨明けの週末、某里山へ粘菌ハンティングにでかけました。なにもしていなくても汗が噴き出す気温でしたが、以外に北風が気持ちよく、遠く蓼科山から八ヶ岳の稜線が霞むをぼんやりと眺めながら車中で昼食をとり、再び撮影にでかけました。気持ちがいいのは見晴らしのいい駐車場のみで、森に入るといきなりクロメマトイがまつわりつきます。

 クロメマトイは、夏に里山に行ったひとなら必ず襲われた経験のあるやっかいな虫です。ヒゲブトコバエ科クロメマトイ(ヒゲブトコバエ)やハエ目ショウジョウバエ科マダラメマトイ、オオマダラメマトイなどで、十数種類います。クロメマトイは黒目纏と書き、要するにしつこく黒目を狙って纏わりつく3ミリぐらいの虫なのです。といっても黒目が目的ではなく涙などの体液なのです。刺されることはないのですが、目に入ると非常にやっかいです。そのため、夏の里山ではメガネかゴーグルが必須なのです。クロメマトイで検索すると、Amazon.co.jpで、"クロメマトイ"の検索に一致する商品はありませんでした。 と出るのが可笑しいです。実際は、山用や釣用でハッカスプレーなどの虫除けが売られていますが、効果は抜群とはいきません。ゴーグルが一番です。でもこのヒゲブトコバエの幼虫はオオワラジカイガラムシの捕食者だそうで益虫ともいえるのです。

 しつこくしつこくまとわられて森を行くと、倒木上に直径5センチぐらいのお煎餅のようなものがあるのに気づきました(写真)。ちょっと乾き始めてているようです。手に取ると倒木に接着はしておらず、置かれているような状態でした。古い赤松の樹皮が剥がれたつるつるの表面に発生したため、乾燥とともに基部が剥がれてしまったのでしょうか。二番目の写真がそれです。ゴミのように写っているのは、近くにあったサビムラサキホコリの子実体のかけらがなぜかついてしまったものです。

 直径は50ミリほど、高さは最も厚いところでも5~6ミリ程度。半分に割ったのが三番目の写真ですが、擬着合子嚢体は柄がなく、個々の単子嚢体は奇麗な円筒形をしているのが見えます。直径は約0.4ミリで、それぞれが密着しています。一番下は、よく見るクダホコリの未熟で、非常に可愛く「萌え」なんですが、ばらけています。密着したまま成長するものとの違いはなんなのでしょう。成長過程での強風によるものなのか、湿度のせいなのか・・。この変形膜は白色で海綿質であることが写真からも分かると思います。変形体は無色-白-桃色(または紅色)-肌色-褐色(黄褐色・暗紫褐色など)と変化します。子実体形成まで時間がかかるため、ピンクまたは紅色の未熟体がよく観られます。

 4番目と5番目の写真は同じもので、倒木の側面に発生していました。暗紫褐色で、いわゆるチョコレート色の子実体なのですが、自重で滑り落ちそうになっていました。5番目は、それを外して割ってみたものです。黄褐色になると胞子を飛ばし始めます。クダホコリは、ドロホコリ科クダホコリ属で、世界的に分布します。他にコモチクダホコリ、エツキクダホコリ、オオクダホコリが知られています。エツキクダホコリは、名前の通り4~6ミリの柄がついたもの。オオクダホコリは、単子嚢体の中央に擬細毛体をもつことが多く、子嚢壁内面に粒状・噴火口状の二種類の紋があるというのですが、まだ見た事がありません。

 蒸し暑い森での撮影は、大きな三脚が使えないため、木の枝を組み合わせたりして固定しますが、超小型の使い易い三脚はないかと探しているのですが、まだ気に入ったものには出会えていません。撮影中は、今度はヤブ蚊の襲来を受けます。山にいるのはヒトスジシマカ、ヤマトヤブカやオオクロヤブカですが、刺すのはメスのみです。血液型により刺され易い人がいるというのは全く科学的根拠のない迷信です。もっとも血液型による性格や相性も全く科学的根拠はなく、むしろそれを持ち出す事でその人の知能程度が知れるようなものでしかありませんが・・・。

 梅雨明けとともに豪雨ともいえる夕立が降る様になりました。こうなると運が悪い粘菌は、せっかく子実体になっても洗い流されてしまいます。少々の雨滴が当たったくらいなら修復しますが、豪雨ではどうしようもありません。また、撮影をしていると小さな虫が変形体を食べているところに遭遇します。よく見るのはテントウムシの幼虫で、マメホコリの桃色の未熟にかじりついているのを何度か撮影しました。また、ベニボタルやキノコムシなども粘菌を食べるようです。では、粘菌は食べられるかというと、有名な話ではメキシコである種の粘菌が、フライの衣として利用されたとか、中国では「太歳」と呼ばれる地中にできる大きな粘菌が、バラの香りがし肉のような歯触りといわれていますが、どうなんでしょう。私はクダホコリやツノホコリを舐めたことがありますが、いわゆる樹液臭く美味しいというものではありませんでした。思わぬ毒性がないともいえないので真似しない方がいいと思います。

 また、カビやキノコを食べる粘菌もいますし、粘菌の食べ物であるバクテリアを育成するというある粘菌の実験結果がNatureに発表されたこともあります。食物連鎖というのは、必ずしも大が小を食べるというような一方的なものではなく、実はかなり複雑だということが分かります。進化(evolution)という和訳から、なにか進化は進歩のように誤解しがちですが、進化は単に、生物の形質が世代を経る中で変化していく現象のことであって、進化は進歩の意味はありません。進化の結果、絶滅することもあり得るわけです。また、進化に目的はなく、突然変異に自然選択がはたらいた結果にすぎません。ですから、粘菌がこれからどう進化していくかというのは全くの未知なのです。ただ、愚かな人類の営みによって増えた放射性物質を生き延びる粘菌が出て来る可能性はあるといえます。もう既にいるかもしれません。

★ネイチャーフォト・ギャラリー【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】に200点余りの写真を追加しました。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。樹木、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真(3に虫倉山と京ヶ倉から)などを追加。粘菌の写真はこちらにたくさんあります。









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真夏日に蝶を求めて遠征すれば・・・ (妻女山里山通信)

2011-07-09 | アウトドア・ネイチャーフォト
 盆地は34度になろうという週末の朝、蝶を求めてとある里山まで行きました。車を置いて朝から蒸し暑い林道を休み休み歩く事1時間。やっと目的の場所につきました。春先と晩秋は月の輪熊も出るところですが、さすがにこの季節は大丈夫でしょう。熊鈴はつけませんが、周囲には気を配ります。クロメマトイがつきっきりで目を攻撃してきます。この季節メガネやゴーグルは必須です。

 満開のオカトラノオの白い花が青海波を描いています。青海波とは鱗状の波の文様で、ペルシャ・ササン朝様式(226~651年)の文様が中国の青海地方の民族文様となり、日本に伝播した文様です。 どおりでどこかイスラミック文様のような幾何学的なデザインでエキゾチックです。日本での名称「青海波」は、舞楽「青海波」の装束に使われた文様が起源です。

 なにかいないかなと探すと、マルバハギにルリシジミが舞っています。蒸し暑さの中で凍らせてきたウーロン茶をすすりながら留まってくれるのをひたすら待ちます。網で捕るなら簡単ですが、撮影それも近接のマクロ撮影となると、もうひたすら忍耐です。留まったかなと思ってレンズを近づけると逃げる。また留まったかなと・・・。その繰り返しで、アプローチしては逃げられる女の子を追いかけているような虚しい気持ちになりかけますが、諦めたら終わりです。蝶も女の子も・・。

 そんな感じで暑さで意識が朦朧となりかけた頃に、やっとマルバハギの花に留まってくれました。いやあ絶好のシャッターチャンスです。気配を殺して近づきます。このとき絶対に肉眼で直視しないこと。視線は眼力というように力ですから、逃げてしまいます。極力液晶ファインダーでチェック。仕方なく直視する時は、眼力を消して無心の境地で。てな具合で撮影したのが冒頭のカットです。黒目の奇麗な瑠璃蜆のお嬢さんでした。(翅表が、オスは明るい青藍色、メスは外縁部が広く黒褐色。似たヤマトシジミは目がグレー)

 クズが巻き付いたエノキの森に出ると、オオムラサキが十数頭乱舞していました。いずれも活性が高く、クズやクヌギの葉に留まっては飛ぶことを繰り返しています。時折二、三頭がくんずほぐれつで舞い踊ります。たまに通りかかっただけの小鳥が、思いっきり追われて逃げていきました。そうなんですオオムラサキはかなり強いんです。ツバメを猛スピードで追いかけていくのを見た事があります。クヌギの樹液バーで、スズメバチを追い払うのを見た事もあります。なかなか気の強いお嬢さんです。オスもそうですが・・。

 マルバハギにキマダラセセリが来て留まりました。留まるときのはねの閉じ方が特徴的で、地味なセセリチョウの中では、ひときわ派手なチョウです。ルリシジミを撮影中の私の手に留まったこともあります。どこからともなくアカシジミが舞ってきました。割と活性が高く、なかなかジッとしてくれませんでした。日向を色の濃い蝶が舞ってきました。私の周囲を舞った後で地面に軟着陸。ジャノメチョウです。暗褐色で地味な蝶ですが、割と日向を好みます。

 奇麗な緑色の蝶が舞って来て葉の裏に留まりました。こういう状態での撮影は厄介です。葉の裏へ回り込んで撮影しましたが、逆光になるし、撮影の姿勢も相当無理があります。そんなこんなで撮影したのがカギシロスジアオシャク。ペパーミントグリーンに白の線が入った美しいガです。

 最後に夏のキノコ、ヤマドリタケモドキです。フランスではセップ、イタリアではポルチーニと呼ばれる高級キノコの仲間です。信州では夏に採れます。夏にキノコ狩りをする人は稀なので、これらはみな私のものになります。天ぷら、フライはもちろん、スープやパスタ、オムレツ、バターソテーなどに。クリームパスタに入れたりやカルボナーラにソテーをトッピングすると絶品です。刻んでハンバーグに入れても美味。ポイントはキノコの風味を損なうような強い味のものを入れないことです。

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★ネイチャーフォトのスライドショーやムービーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌や森のあんずのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。チョウのスライドショー製作中。

★新信州郷土料理は、MORI MORI RECIPE(モリモリ レシピ)をご覧ください。山菜・キノコ料理、内臓料理、ブラジル料理、エスニック、中華の込み入った料理などの「男の料理レシピ集」です。特に本格的なアンチョビーの作り方を載せているのは、当サイトだけだと思います。手作りオイルサーディン、手作りソーセージもお薦めです。山菜料理も豊富です。豆料理もたくさんあります。
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登山道や林道の管理と自然保護。蝶の食草を切らないで!(妻女山里山通信)

2011-07-06 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨が明けようかというころになると、里山のあちこちで除草や除伐が行われます。登山道や林道のための除草が行われるのもこの頃です。この間も茶臼山へ行った折にハイキングコースがきれいに除草されていました。それはいいのですが、棚田の方へ下りて行き、蝶や昆虫がたくさん群がり産卵もするイボタノキのある場所へ行って愕然としました。そのイボタノキが跡形もなく全て切られているのです。

 少しハイキングコースの道にはみ出ていたのと、蝶だけでなく蜂も集まるので危ないと思って切ったのでしょうか。恐らくその木が、ある蝶の唯一の食草であることを、整備する人達は知らなかったのでしょう。しかし、知らないとはいえ数百、あるいは千を越えるかもしれない卵が一瞬で消えたのです。
 同様に、妻女山山系も長野市や千曲市が除伐したり林道脇の除草をしますが、草刈り機で一様に切って行ってしまうので、蝶の食草も希少な植物(野生ランなど)もすべて刈り取られてしまうのです。除伐もそうですね。有用材しか残さない。そんな訳でブナは切られてしまったわけですし、今は、例えばオオムラサキの食草であるエノキなども切られてしまいます。除草前に詳しい人に切って欲しくないない木にマーキングをしてもらえればいいのですが・・。

 週末、妻女山の奥で、蝶の卵の定点観測を続けているTさんと久しぶりに邂逅したので、今年の蝶の状況などを聞きながら、天城山の奥までご一緒しました。途中、色々な蝶の食草を見ながら、また教えてもらいながら林道の終点まで歩きました。途中には蝶や昆虫の採取を禁ずという標識が立っています。終点まで行くと、千曲市の林道整備の老人達がいました。Tさんの捕虫網を見ると、なんだか不審者を見るような目つきです(笑)。やはりハイキングコースの整備に来たようです。

 この人達に限らないのですが、どうも昆虫採取が悪い事の様に思っている人達が増えているようで困ります。教育現場でもそういう風に思われていた時期がある様です。自然保護と昆虫採取は二律背反のものではありません。昆虫採取は、適切に行われている限り、それが原因で絶滅することはありません。それは、こちらを読んでもらうと分かると思います。「蝶の保護について
 確かに、蝶の食草ごと卵をごっそり盗掘したり、減らせば自分の持っているものの価値が上がるとばかりにとんでもない破壊行為をする人がいるようですが、これは犯罪者であり、一般の昆虫マニアとは一線を画する極一部の者です。
 一般的な昆虫採取よりも大規模な森林破壊やダムなどの人工物、林道建設などの方が自然に与える影響はずっと大きいのです。鹿の大量移動に奥山まで網の目の様に建設された林道が使われているなどは、そのいい例です。また、一般車が入れるところは売買目的の盗掘や、意図しない帰化植物の持ち込みなどが起こります。

 当然絶滅危惧種など禁止されているものを捕獲することは厳禁ですし、合法的であっても欲張ってはいけません。しかし、産卵された食草を切ってしまうことのほうが、捕獲よりもはるかに大きな減少につながるということを、行政やハイキングクラブなどの人達には知ってもらいたいのです。むしろ、昆虫採取を禁止したり悪者扱いすることで、子供達が自然と遊び学ぶ機会を奪うこととなっていることを知るべきだと思うのです。
 子供の遊びで命を奪われる昆虫が可哀想だというなら、極言すれば人類は何も生物を食べずに生きろということになります。命を奪う事で知る命の重みというのもあるわけです。カブトムシが死んだら「電池を交換して」などという子供が出ることが正常とはとても思えません。「実際の生き物に触れなければ、そこから先の関心や問題意識が生まれるはずはない」(wiki)。リアリズムは必要です。但し強制はいけませんが。

 昔夜店で売られていた赤と青の溶液がついた注射器とメス、ピンセットつきの昆虫採取セットの溶液が、防腐剤でもなんでもなく、ただの色付きの水だと知ったときにはぶっ飛びましたが・・。それにしても、「夏休み」に麦わら帽子に捕虫網の子供は、田舎でも見なくなりましたね。それこそ絶滅危惧種です。昔も熊は出たのですが、それでも子供達は山へ遊びに行っていたものでした。

 というわけで、そのようなことをTさんと話しながら時には熊も出るようなポイントを回ったわけですが、彼曰く蜂はともかく(CCDなどもあるので)、蝶については経年変化の値が非常に乱高下するので、増減の原因は種によっても違うし特定はできないということでした。捕獲して採卵し成長を観察して放つこともしているそうです。妻女山山系は特に珍しい種がいたり大量に発生する地域ではなく、いたって普通の信州の里山ですが、だからこそ大切なのです。Tさんも雑木林が手入れされずに荒れて暗くなり生育環境が悪くなっていると心配していました。

 梅雨明けが近くなって梅雨前線が北上してくると、今までは空梅雨気味だった信州がすこしジメジメしてきます。先日行った湘南は既に海開き。放射能を心配してか、さすがに海に入っている人は少なめですが・・。ライブカメラは見られるのですが、潮の香りと波の音がありません。夏といえばしょっちゅう湘南へ行っていた頃を思い出して、無性にあの人と海が見たくなる今日この頃です。

*掲載の写真は、記事とは直接関係ありません。あちこちの山で撮影したものです。

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粘菌ハンティングのスライドショーアップ! (妻女山里山通信)

2011-07-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
 粘菌ハンティングに茶臼山へ。川中島合戦の折に武田信玄が布陣したという伝説の残る今は地滑りで山頂が崩壊した茶臼山南峰(有旅茶臼山)から茶臼山北峰にかけて、森の中を探索しました。同じ場所の朽ち木に粘菌が三種類発生。クダホコリ、タマツノホコリ、キフシススホコリ(いずれも推定)のようです。クダホコリは、胞子を飛ばし始めたものや、まだピンク色のものなど発生時期にタイムラグがありました。中には落ちて来た水滴でパックリ割れてしまったものも。もっとも多く見られたのは、やはりツノホコリ。赤松の樹皮がはげた倒木に大量に発生していました。

 Youtubeに山梨県小菅村の松姫峠から牛ノ寝通りを大マテイ山へ粘菌ハンティングした折のスライドショーをアップしました。大菩薩峠へと続く牛の背中の様に広いブナの尾根は粘菌の宝庫です。ハイビジョンで制作しています。BGMは、ジャズピアノの巨匠オスカー・ピーターソン。




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★【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】ニホンカモシカに遭遇したトレッキングも数多くあります。Youtubeのトレッキング&ネイチャーページもご覧ください。
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The Myxomycetes Hunting at Mt.Saijo in Ngano! (妻女山里山通信)

2011-07-01 | アウトドア・ネイチャーフォト
 週末は粘菌ハンティング。もっとも多く見られるのはツノホコリの仲間。朽ちた赤松や落葉松の樹皮がはげたところにたくさん発生していました。大きなカットの三番目は、一見キノコの幼菌のようにも見えますが、2ミリほどの大きさからすると、やはり粘菌か。サビムラサキホコリのダイナミックな動きはどうして生ずるのでしょう。成長過程での風でしょうか。

 林道脇ではイチヤクソウが小さい地味な白花を下向きに咲かせています。昨年より2週間ほど遅れて萩が咲き始めました。これでゼフィルスが大発生してくれると嬉しいのですが・・。イチモンジチョウが日向ぼっこ。クジャクチョウとルリタテハ、テングチョウもいましたが、活性が高すぎて撮影できず。網で捕るのは簡単ですが、撮影となると困難を極めます。オカトラノオも咲き始めました。

 林道脇の草がだいぶ伸びてきたので刈らないといけません。ということで後日草刈りをしたのですが、肩をムモンホソアシナガバチに刺されてしまいました。一昨年は4回でしたが、昨年は0回。今年は少しは復活したかなと思い安心しました。刺されたところは少し腫れましたがたいしたことはありません。でも痛痒い。直径2センチぐらいに赤く腫れています。オオスズメバチにはまだですが、子供の頃からムモンやアシナガ、ジバチには何度も刺されています。なんといっても蜂の子は大切な食料でしたから(笑)。先日、茶臼山奥の集落を通ったら、「山菜、きのこ、地蜂とるべからず」という看板が至る所に立っていました。今でも、地蜂の子を楽しみにしている人がたくさんいるんだなあと思いました。

妻女山の変形菌1


妻女山の変形菌2


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