モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

森の宝石オオミドリシジミ。アサギマダラとオオムラサキを初見。クマノミズキの花、ヤマアジサイ、ヤマハギ、オカトラノオ(妻女山里山通信)

2022-06-30 | アウトドア・ネイチャーフォト
 朝からピーカンなので、8時には撮影現場に到着。予想通り、既にオオミドリシジミのオスは舞っていました。ただ数は少ない。原因は分かりませんが、ここ数年で最も少ない発生数です。下りてきてくれるでしょうか。とにかく観察と忍耐が必要です。テリトリーの専有行動でオス同士は体当りしたり、クルクルと円を描いて回ったり。しばらくすると散って休憩します。そんなチャンスを狙います。

 オオミドリシジミは、陽のあたっている葉に必ず止まります。なので、何箇所か確認しておきます。しかし、太陽は動くので日当たりのいい葉も変わります。ちょうど止まってくれたので、逃げられないように後から接近。マクロレンズなのでフードの先端から蝶までは20センチもありません。気配を殺して撮影。

 オオミドリシジミの翅の輝きは、鱗粉の色ではなくオオムラサキと同様に構造色です。なので専有行動のバトルで痛むとこんな感じになります。初見が10日前ですから、傷むのも当然なのです。ちなみにメスの翅の色は、オスの後翅の様な茶褐色です。
梅雨の森の宝石オオミドリシジミを探して妻女山山系へ。雨上がりの粘菌二種を発見。虫こぶも(妻女山里山通信):作年のオオミドリシジミの記事です。梅雨明けが例年並みだったので発生も例年並みでした。この時は十数頭が激しい専有行動をしていました。

 なかなか下に下りてこなくなったので、望遠レンズに替えて撮影。ここまでの三枚は同じ個体です。

 別の個体。何を見ているのでしょう。専有行動は、10時前に終わりました。

 休憩に堂平大塚古墳へ。鹿島槍ヶ岳。例年より雪解けが早いですね。

 貝母の群生地がある陣場平へ。最高気温は36度の予報ですが、24度。セミは鳴いていません。サンコウチョウの鳴き声が聞こえます。目ぼしい昆虫は見られません。ヒカゲイノコズチを刈ったので、例年よりスッキリしています。

 中央にあるクマノミズキの花。例年なら昆虫がたくさん吸蜜に訪れているのですが。猛暑のせいでしょうか。

 貝母(ばいも・編笠百合)は全て枯れました。実もほとんど枯れて弾けていますが、こんな風にまだ緑のものもあります。

 貝母群生地から林道方向。山椒の実も終わりなので、来る人はいません。暑さに慣れてくるとハイカーが来る様になります。例年なら見られるヒメウラナミジャノメやミドリヒョウモンもいません。

 下ってご天上の、先日クヌギに傷をつけたところに樹液が出ていました。白い結晶がそれです。シロテンハナムグリやハエやアブの仲間など。オレンジ色の甲虫は、イタドリハムシ(虎杖葉虫)でしょうか。なにかの幼虫もいますね。これらの同定は、非常に困難です。

 ヒヨドリバナ(鵯花、山蘭)のつぼみ。キク科フジバカマ属の多年草です。咲くとアサギマダラが吸蜜に訪れます。

 ヤマアジサイ(山紫陽花)。別名は、サワアジサイ。周辺は装飾花で、中心部は両性花。ガクアジサイに比べると、花の色が色々あります。万葉集の二首。
「言問はぬ木すら味狭藍(紫陽花) 諸弟(もろと)らが練の村戸(むらと)にあざむかえけり」(大伴家持 巻4 773)
  (恋を語らない木ですら、紫陽花のように移ろいやすい。巧みな言葉に私は騙されてしまいました。)
「味狭藍(紫陽花)の 八重咲く如 やつ代にを いませわが背子 見つつ思はむ(しのはむ)」(橘諸兄 巻20 4448)
  (紫陽花が八重に咲くように、ますます長い年月を生きてください。紫陽花を見ながらあなたをお慕いします。)

 アサギマダラ。しかし、吸蜜する花がなく止まってくれません。次の機会を待ちましょう。

 ウワミズザクラ(上溝桜)の実。つぼみや熟す前の実を塩漬けや酢漬けにして利用します。夏に熟して赤から黒くなる実は、美味しい果実酒になります。新潟や秋田などでは、熟す前の青い実を塩漬けにするそうで、アンニンゴ(杏仁子)というそうです。今回、塩漬け用に少し採りました。

 ヤマハギ(山萩)が咲き出しました。ゼフィルスが好きな花です。妻女山にはマルバハギもあります。万葉集で最も多く詠まれている植物は萩で141種です。鹿が男性の象徴とすると、萩は女性の象徴とされた様です。萩は芽子(めこ)という言葉で出てきますが、妻子のことでも女性器のことでもあるようです。
「さを鹿の朝たつ野べの秋萩に玉とみるまでおける白露」(大伴宿禰家持)
 ひょっとしてルリボシカミキリが出ているかなと椎茸のホダ木へ行ったら、右胸と右の二の腕にバチバチっと痛みが。ムモンホソアシナガバチの巣が近くにある様です。車に戻ってポイズンリムーバーで毒を抜きました。腫れませんでしたが、痛みは薬を塗ってもなかなか取れません。

 オカトラノオ(丘虎乃尾)サクラソウ科オカトラノオ属。花は穂の下の方から咲いていきます。低山や野原ならどこにでも見られるような花ですが、清楚で心引かれる花です。オカトラノオは、みな同じ方向を向いて咲きます。大きな群生地では、花穂(かすい)の波うつ様子がまるで波の文様の青海波(せいがいは)のように見えるほどです。そしてこの後で、オオムラサキのオスを初見しました。

(左)夏のグルメ。新じゃがと牡蠣の燻製とベーコンのスパニッシュ・オムレツ。バックのセミ柄の布は、プロバンス地方の伝統柄です。(右)奥は信州人のソウルフード、塩イカとスギヨのビタミンちくわ、新玉ねぎ、ピーマン、ニンジンのかき揚げ。左下は塩イカの天ぷら。本来は国産の塩丸イカなんですが、不漁でもの凄く高いので、チリ産です。右下は、大分県の郷土料理、とり天。実は、とり天と唐揚げ、竜田揚げの違いが調べてもよく分かりません。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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夏に聴きたい懐かしい曲メドレー。サザン・小川ローザ・ユーミン・あやや・竹内まりや・モーニング娘。・BABYMETAL(妻女山里山通信)

2022-06-27 | BABYMETAL・LOVEBITES・ジャズ・宮本佳林・クラシック
 関東甲信地方が梅雨明け。しかし、長野市は朝から雨。一時晴れたもののほぼ一日中どんよりの曇り空。ただ、週間天気予報は軒並み34度とか35度とか。最低気温が21度なのが救い。曇り空だと里山に撮影に行けないのが辛い。オオムラサキはもう羽化しただろうか。

サザンオールスターズ HOTEL PACIFIC

 伝説の2000年茅ヶ崎ライブの映像を見た人もいるでしょう。途中から1969年丸善石油の「Oh! モーレツ!」のCMで一世風靡した小川ローザのコスプレの女性たちが大勢出てくるのに感激。このCMでスカートめくりが流行ったのです。いや、私は高校生でしたからしませんよ。小学生の話です。実はこのライブの動画を持っていますが、著作権の関係で紹介できません。

小川ローザ / 風が落した涙

 きれいな声。現在彼女は介護士の資格も持ち、ユーチューバーとしても活躍中。激動の人生の後で、息子さんといい人生を送っておられるようで。

研ナオコ 夏をあきらめて (1982)

 サザンのも好きですが、彼女の歌はまたひとしお心にしみます。アンニュイな歌を歌わせればピカイチ。「きっと誰かが恋に破れ噂のタネに邪魔する」

松任谷由実 - 真夏の夜の夢

 シェイクスピアもビックリ。「骨まで溶けるようなテキーラみたいなキスをして〜」情熱をむき出しにした激しい歌詞が魅力的。

松浦亜弥 - GOOD BYE 夏男

 あやや全開。やはり彼女は上手い。竹内まりやが絶賛した歌唱力と表現力。最後のピンアイドル。2009年(23歳)のこのライブは、鳥肌が立つ。完成度がもの凄い!2003年の初々しいライブもアップされているので検索を。

竹内まりや 夏のモンタージュ

 聴かせます。「誰にでもひとつぐらいは 忘れられない夏がある〜」彼女の歌はメロディーもだけど歌詞が素晴らしい。物語がある。80年代シティポップは世界的に評価されています。

モーニング娘。 『ハッピーサマーウェディング』 (MV)

 さすがつんく。メロディーと歌詞もいいけれど、アラビアンな衣装が素晴らしい。当時はエスニックが流行っていた。ハロプロはやはりいい。

Natsu Doki Lipstick (夏Doki リップスティック) by Maimi Yajima HD upconvert

 ハロプロ℃-uteのリーダー、矢島舞美の真骨頂。中島早貴と清水佐紀のダンスも素晴らしい。彼女たちがまだ子供の頃初めて聴いた「まっさらブルージーンズ」の衝撃は凄かった。


メンデルスゾーン 組曲 真夏の夜の夢「序曲」 A Midsummer Night's Dream Overture


 フルバージョンもアップされています。クラシックの夏。シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』が元になっています。中でも『結婚行進曲』 は有名ですね。しかし、これ彼が17歳の時の曲ってマジですか。ドラえもん映画の銀河超特急のあのシーンで使われてた曲。

BABYMETAL - Road of Resistance RSR Fes 2016「BS Fuji HD 最高音質」

 涙がちょちょ切れる懐かしいステージ。高音質のスピーカーユニットかヘッドフォンで、フルスクリーンで視聴して欲しい。

夏に似合うジャズアルバム。「ピーター・キャット」の気怠い夏:村上春樹さんのジャズ喫茶、ピーター・キャットを中心とした70年代のクロニクルまたはスラップスティック:珠玉の夏のジャズ。


『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
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ゼフィルスの季節。ウラゴマダラシジミ・残念オオミドリシジミ・ミズイロオナガシジミ・ウラナミアカシジミ・カシワアカシジミ・ユキノシタの花(妻女山里山通信)

2022-06-25 | アウトドア・ネイチャーフォト
 最高気温がなんと36度。妻女山山中でも32度。風があったのでしのげましたが、汗が吹き出しました。ゼフィルスは元気です。しかし、今日はオオミドリシジミにはふられました。自然相手ですから、そんなものです。7月に入るとオオムラサキとか出てくるはずです。

 ウラゴマダラシジミ。しかし、出現数は少ない。非常に気がかりです。ここ数年、樹液バーに来る昆虫も減り続けています。松枯れ病の猛毒ネオニコチノイド系農薬の空中散布が中止されて数年経つのですが、どういうことでしょう。定点観測をしていると、些細な年変化も感じられます。

 今回の大本命は、オオミドリシジミ。出現場所も分かっていて舞ってはいます。オス同士が専有行動をしながらクルクルと舞います。しかし、数は少ない。下りてきません。翅の表の青緑のキラキラした画像が撮影できません。それが自然ですが、出現数が少ないのが気がかりです。なんとかリベンジしたい。
森の宝石オオミドリシジミの復活。あんずの収穫の季節。オオムラサキ初見(妻女山里山通信):2018年6月23日の、美しい森の宝石・オオミドリシジミを撮影した時の記事です。

 コミスジ。人の気配に敏感でなかなか撮影させてくれないのですが、葉の陰から忍び寄って撮影。私は望遠マクロではなくマクロなので、接近しないと撮影できません。気配を殺します。

 コミスジの日向ぼっこ。湿気が強いと蝶は下に下りてきません。下りてきても日当たりの良い葉に止まります。それがシャッターチャンス。

 松代方面の景色。ゼフィルスを求めて林道を彷徨います。脱水症状にならない様に水分を補給しますが、それだけでは駄目です。生味噌をなめます。長野のスーパーといえばツルヤ。在京時代も帰省時に軽井沢店によく立ち寄りました。ツルヤオリジナルのりんごバタージャムとか紅玉100%のりんごジュース、ドライフルーツとかおすすめです。ロイヤルホテル長野は、インターの近くなので長野観光の拠点に最適です。

 別の場所でウラゴマダラシジミを発見。出現数は多くないです。

 翅を少し拡げてくれました。

 幼虫の食草はイボタノキです。成虫もイボタノキの周辺でよく見られます。

 ミズイロオナガシジミが林道にいました。今年は発生数が非常に少ない。なぜでしょう。

 ウラナミアカシジミ。栗の花で吸蜜するので、栗の花の匂いがするところに行くと出会えます。

 赤い色が薄いカシワアカシジミ(キタアカシジミ)。 ゼフィルスの同定は微妙な地域差があり、非常に難しいのです。

 ユキノシタの花。小さいけれど舞う天女の様で、美しい。花は植物の女性器とも言えますが、その美しさは文学的で古代から称賛と畏敬の対象となっています。

 松代方面の眺め。暑いです。頭が痛くなってきました。温泉へ。気象庁が、ラニーニャ現象の長期化とヒートアイランド現象で、東京では7月末に42度になると警告しました。これは地球温暖化ではないのです。ミランコビッチ・サイクルではむしろ長期的には寒冷化に向かっていて、その間にドラスティックな気象変動が起こり猛暑になったり厳冬になったりするというのです。縄文時代中期に文明が隆盛したのも温暖化。三内丸山遺跡が滅亡したのは寒冷化。そして西暦535年の大噴火では、世界中で文明が滅びたり退化しています。CO2で地球温暖化というのは、嘘。「CO2 地球温暖化 嘘」で検索すると分かります。そうすることで莫大に利益を得られる輩が生み出した嘘なのです。石油が枯渇も嘘。石油は化石燃料ではなくマントルから永久に出てくるもの。石油枯渇まであと40年て何回言われたか知っていますか? 注目の電気エネルギーもそれを作るのには、大量のCO2を出します。太陽光発電も生産廃棄の過程で猛毒のカドミウム、カドミウムテルル、鉛が出ます。その処理方法は始まったばかりですが確率されていません。災害で壊れた有害物質は回収不可能。支配者や巨大企業は息をするように嘘を付く。それにしがみつく政治家やマスコミも。木ばかり見て森を見ないと、真実は見えてきません。

(左)淡竹とサバの水煮缶詰の味噌汁玉ねぎ入り。ソウルフードです。(右)カレーフリークなら知らないはずはない上野デリーの極辛カシミールカレー。鶏手羽元はヨーグルトとクミン、八幡屋礒五郎のガラムマサラで漬け込んで。新じゃが、ニンジン、サヤエンドウと。馬鹿旨ですが激辛です。作年から激辛がだめになってきて、これも半分で撃沈。翌朝にヨーグルトを加えて完食しました。知り合いのタイの女性の店で食べたトムヤムクンも現地並みに辛く撃沈。辛さへの耐性が落ちたのでしょうか。ハラペーニョとか大好きなのですが。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
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湿度90%の妻女山陣場平。粘菌のクダホコリ、ウスヒラタケが発生。ミズイロオナガシジミにミヤマフキバッタ。山椒の実で佃煮。能登群発地震と松代群発地震(妻女山里山通信)

2022-06-22 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨の晴れ間になるかと思ったら、朝からどんよりと湿度も高め。それでも10時過ぎに日が差してきたので妻女山の陣場平へ。前日の豪雨で林道は酷い泥濘状態。タイヤを何度も滑らせながらやっと登りました。まるでアマゾンで行うキャメルトロフィーの様でした。とにかく車が滑ります。コツはアクセルワークをこまめに変えてふかし過ぎない。ハンドルはあらぬ方向へ行きそうになったら逆ハンを素早く、カウンターステアをする。止まったら動けなくなる可能性があるので止まらないなど。若い頃に雪道で四輪ドリフトをやったりした経験が生きています。美大生のときに、ラリーをやってる同級生のナビをやったこともありました。

 長坂峠の丸太に粘菌のクダホコリを発見。遠目で見るとタラコです。

 可愛くて美しい。今夜は夕立はなさそうなので、明日の夜明けを待って胞子を飛ばし始めるのではないでしょうか。梅雨の雨上がりには粘菌が発生します。山の中の倒木や切り株だけでなく、庭や公園でも見られます。探しましょう。

 ヤマグワの枯れ木にウスヒラタケが出ていました。普通は初秋に出るキノコですが、条件が同じなら今頃でも出ます。食菌で美味しいキノコすが、今回はそのままにしました。上にはアラゲキクラゲも。夏には、トマトと採ってきて乾燥したアラゲキクラゲの中華風卵炒めを何度も作ります。馬鹿旨です。

 陣場平に行くと、気温は23度ぐらいなのですが、とにかく蒸し暑い。ホトトギスやサンコウチョウの鳴き声がします。二頭のゼフィルスが激しく舞っています。やっと撮れた一枚。ミズイロオナガシジミですね。あわてて撮影したのでぶれています。さすがのオリンパスの手ブレ補正でも無理でした。

 アカネ(茜)にミスジシリアゲのメス。尾部に赤いタカラダニがいます。節足動物門鋏角亜門クモ綱ダニ目ケダニ亜目タカラダニ科アナタカラダニ属に分類されるダニの一種で、どこにでもいます。セミとかカマキリなどに寄生し、宝物を抱えているように見えることからの命名。食性は雑食で、花の花粉や小型の昆虫を摂食するそうですが、生態はよく分かっていません。

 ヒシバッタかなと思って撮影したのですが、帰って拡大するとミヤマフキバッタでした。翅は退化しています。そのため地域差が激しいのです。これはまだ幼虫で全長が10ミリぐらいです。メスは砂の中に腹を差し込んで産卵します。

 セアカツノカメムシ(背赤角亀虫)。カメムシは臭いので嫌われ者ですね。でもパクチーの匂いと似ていて、これがパクチーを使ったタイ料理や中華料理を食べられるかの分岐点。私は好きですが。カメムシではなくパクチーを使った料理です。長男が1歳の頃、育てていたパクチーを座って葉っぱを全部食べてしまったのには、驚愕しました。

 テングタケの仲間のキノコと考えられます。ハイカグラテングタケ(灰神楽天狗茸)でしょうか。美味しいキノコらしいのですが、似ている猛毒のキノコもあるので食べる気にはなりません。夏には、他にウスヒラタケ、ヤマドリタケモドキ、βグルカンが豊富な幻のハナビラタケ、オムレツにすると美味しいアカヤマドリなどが出ます。

 オオミドリシジミを探したのですが、二頭いましたが湿度が高く樹冠にいて下りてきません。諦めて山椒の実を摘みました。前回、二組の女性たちが摘みに来ていました。まだ採り時です。

 妻女山里山デザイン・プロジェクトが最初に除伐作業をした場所。左に山椒の森があります。除伐以前は、ダンコウバイとカラコギカエデの鳥も昆虫もいない真っ暗な森でした。

 山を下ります。雷雨で林道は酷い泥濘状態。タイヤが横滑りするので轍(わだち)にタイヤを添わせてゆっくりと下ります。タイヤが滑った跡が生々しい。コントロールを誤ると崖下に転落です。

 ガマズミの実。秋には真っ赤になります。ルビー色の美しい酒ができます。抗酸化作用が強く老化防止にも効きます。もの凄く酸っぱいので、ハチミツを入れて炭酸で割ります。

 ウルシ(漆)。個人差がありますが、触れると酷くかぶれて水ぶくれになり2週間ぐらい治りません。触れたらすぐに洗って薬を塗ることです。最も危険なのはツタウルシです。

 これもウルシの仲間のヌルデ(白膠木)。ウルシほどではありませんが、かぶれる人もいます。別名は、フシノキ。生薬名は、塩麩子(えんふし)/塩麩葉(えんふよう)/五倍子(ごばいし)。小葉と小葉の間に翼(つばさ)があるのが特徴。 ヌルデにできる虫こぶ(ゴール)のことを五倍子といいます。これは、ヌルデの若芽にアブラムシ科のヌルデノミミフシが寄生し、枝の翼に卵を産み付け、それが耳状にふくれたものです。
 五倍子は、タンニンの含有量が多く、染め物では空五倍子色(うつふしいろ)とよばれる伝統色として用いられます。古くはお歯黒などにも使われました。
「足柄の 吾を可鶏山の かづの木の 吾をかつさねも かづさかずとも」(詠人知らず) 万葉集(巻14)東歌 *カヅノキ(可頭乃木)=ヌルデ

 能登が群発地震で大変なことになっていますが、原因が地下の大きな水たまりという説が。当地で起きた松代群発地震でも同じ説がいわれました。以前、皆神山の記事で紹介した文章を再掲します。
【松代群発地震】
 皆神山は、1965年(昭和40 年)8月3日から約5年半もの間続いた、世界的にも稀な長期間にわたる松代群発地震の震源地のほぼ中心でした。有感地震は6万2826回、あまりに長期に渡ったためノイローゼになる住民も出たほどです。幸い死者は出ませんでしたが、怪我人や家屋の倒壊はありました。近所の古民家の屋根瓦が全て落ちたり、土塀が倒れたりしました。震度5の時に太い梁が抜けて白い部分が見え、あと5センチずれたら家が壊れるという状況がありました。
 私も目撃しましたが、地震時の宏観現象として皆神山や妻女山などの発光現象があり、大きな話題になりました。このような目撃例は安政の大地震など古くから目撃例があり、岩盤の崩壊による放電が原因のようで特に珍しいことではないそうです。また、この群発地震で山は1m高くなったということです。
 皆神山付近には低重力域があり、地下には、縦800m、横1500m、高さ200mのマグマ溜りが起源と考えられる空洞があって、地下に巨大な貯水池があると推定されています。皆神山溶岩は150m程度の厚さがあることが確認されていて、その下に湖水堆積物が見つかっています。また、山頂には川の跡の河床礫が見られます。
 つまり溶岩がまだ地上に出る前は、ここは池や川があったということです。地蔵峠から流れ出る蛭川と藤沢川が、現在山のある一帯で合流していたのでしょう。山頂に泉があるのも豊富な地下水脈があるからと理解できます。皆神山を形成した溶岩は極めて粘性が強く噴火したり流れ出したりせずに、そのままプリン状に固まったと考えられています。
 ノイローゼ患者が出るほど長期に渡った松代群発地震は、最終的に大量の深層地下水湧出という事態になり、火山性群発地震という当初の想定が、水噴火群発地震であったとの考えに変わりました。しかし、最新の学説では地殻の継続的な変形による応力速度の上昇によって説明できることが分かったということです。


 山椒の実。葉も入っていますが一緒に佃煮にします。蒸し暑い梅雨時や猛暑の夏の食欲が落ちるときに最適です。素麺のつゆに入れたり、冷奴にのせたり、おにぎりに入れたりしていただきます。山椒の実を醤油に漬けた山椒醤油は、これからの鮎の塩焼きとかウグイの塩焼きに合います。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。

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この20年間で翅を持つ昆虫が60%近く減少した。草刈りの天敵ムモンホソアシナガバチ。クジャクチョウ・ルリシジミ・オオミドリシジミ(妻女山里山通信)

2022-06-19 | アウトドア・ネイチャーフォト
 信州に帰郷して10数年、妻女山の動物や昆虫を撮影し定点観測してきました。千曲市の松枯れ病のネオニコチノイド系劇薬の空中散布では、千曲市側の昆虫が絶滅しました。中止してから数年経っても完全には回復していません。それだけでなく、長野市側の昆虫も明らかに減少傾向にあります。そんな現在、非常に気になる研究結果が発表されました。
 イギリスの自然保護トラストBuglife の科学者たちが、英国全土の車のナンバープレートに「ぶつかった虫の数」を計算しました。その結果、この20年間で翅を持つ昆虫が60%近く減少したと発表しました。昆虫の急速な減少の原因は、生息地の破壊、農薬の使用、気候変動などが一因と考えられるということです。
 昆虫は、鳥、コウモリ、爬虫類、魚などの動物の餌となります。また、作物や野花の受粉や養分循環などの重要な役割も果たしています。甲虫、ハチ、トンボ類は、害虫駆除に役立つ捕食者として機能します。
 結果、生態系全体、そして食料生産システムが困窮し、鳥類が激減し人類の食糧危機を招くとしています。農薬、特にネオニコチノイド系農薬やグリホサート剤、放射能、人工電磁波(5G)は昆虫だけでなく人類をも滅ぼすかも知れません。
Insect decline could massively increase food bills, warn scientists

 妻女山の貝母(ばいも)の群生地のある陣場平。上杉謙信がここに本陣を構えた頃には、まだ貝母はなかったでしょう。どんな植物があったのか気になります。ヒカゲイノコズチは鉈鎌(なたがま)で刈っています。今年は例年よりも夏の花が咲くのが遅いのです。夏の昆虫の出現も遅い。おそらく梅雨寒が長く続いたためと思われます。

 貝母はほとんど倒れました。間にある大きな緑の葉がヒカゲイノコズチ。放っておくと50〜100センチにもなります。貝母の球根の成長を阻害するので刈ります。オオブタクサ、セイタカアワダチソウ、ハルジオンなどの有害帰化植物はすべて抜きます。それでも絶滅はしません。里山保全は本当に大変です。

 ムモンホソアシナガバチ。草の低いところに巣を作るため、除草作業で一番刺されることの多いハチです。私はひと夏に四回刺されたことがあります。ポイズンリムーバーで、すぐに毒を抜いたのでたいして腫れませんでしたが、痛いです。

 トンボエダシャク(蜻蛉枝尺蛾)シャクガ科エダシャク亜科。成虫は栗やハルジオンなどで吸蜜。幼虫の食餌植物は、ニシキギ科のツルウメモドキ。

 昼は堂平大塚古墳のログハウスを借りて。立ち枯れの落葉松に多孔菌科のツガサルノコシカケ(栂猿腰掛)。強固に付いているので、ノミと金づちがないと採取はできません。

 キヅタ(木蔦)ウコギ科キヅタ属の常緑つる性木本。フユヅタともいいます。常緑性で、秋に紅葉して枯れるのはナツヅタです。妻女山山系には両方あります。アイビーはセイヨウキヅタ。

 通路に小さな花が。撮影して拡大してみるとハクサンフウロの様な花。ゲンノショウコにしては花が小さすぎるし葉に切れ込みがある。ヒメフウロ(姫風露)の様です。

 昼を食べていたら、割と大きな蝶が二種類。ひとつはヒョウモンチョウの仲間。止まってくれないので撮影できず。もうひとつが、ログハウスのコンクリートに止まりました。タテハチョウ科のクジャクチョウ(孔雀蝶)でした。学名は、Inachis ioですが、亜種名はI. i. geishaです。

 ルリシジミ(瑠璃小灰蝶)。翅の表面は水色から明るい青紫色。瑠璃色ということでルリシジミ。春先から晩秋まで、山地から田畑、人家周辺でも見かけます。幼虫はバラ科、マメ科、ブナ科植物の蕾や花を食べます。

 川中島の戦いで、上杉軍の陣用水だったと伝わる蟹沢(がんざわ)の谷。左に水量豊富な湧き水があります。谷にはサワガニが生息します。子供の頃、獲ってきて祖母に唐揚げにしてもらって食べました。

(左)陣場平下のご天上の太いクヌギ。毎年のことですが、樹液を出すために今の時期ノコギリで傷をつけます。昔の様に薪を取ったりしないので、自然に出るだけの樹液だけでは多くの昆虫が餓死してしまうのです。傷は半年もすると塞がります。(右)山を下ろうとすると顔見知りの女性が二人。少し前に撮った花の名前が分からなくて。帰化植物でしょうかと。写真を見せてもらいましたが、残念花にピントが合っていません。花びら何枚でした?と聞くと4枚。アブラナ科かなと目星をつけて帰って調べると、キバナハタザオ(黄花旗竿)でした。長野県ではレッドリストに入っていない様ですが、妻女山では初めて見ました。貴重です。

 翌日は朝から晴れました。シモツケも咲き始めました。例年なら6月上旬から咲きます。顔見知りの女性二人が山椒の実を採っていました。前回作った佃煮が終わったのでまた採りにきたとか。山蕗の佃煮も美味ですが、山椒の実の佃煮は別格です。市販では味わうことができない滋味です。友人手作りの醤油と奄美大島のキビ糖だけで炊きます。

 シマサシガメ。カメムシの仲間で、蛾や蝶の体液を吸います。ゼフィルスの天敵です。

 イチヤクソウ(一薬草)。別名は 鹿蹄草(ろくていそう)といい生薬。 薬効は急性腎炎、膀胱炎、妊娠時のむくみなど。妻女山山系では貴重な花です。

 草むらに鮮やかな青緑の蝶が。まさかと思いながら追うと林道に止まりました。なんとオオミドリシジミでした。オオミドリシジミ(大緑小灰蝶:Favonius orientalis)は、チョウ目シジミチョウ科ミドリシジミ亜科に属するチョウ。オスの翅は、青緑に輝き非常に美しい蝶です。メスの翅は灰褐色。幼虫の食樹はブナ科のコナラ・クヌギ・ナラガシワ・カシワ・ミズナラなど。例年ならば6月下旬に見られる蝶なんですが、他のゼフィルスが梅雨寒で出現が遅れているというのになんということでしょう。再びよく見ると、これはハヤシミドリシジミですね。橙色の班が一部見られないので。ハヤシミドリシジミも生息するのは知っていましたが、撮影は初めてかも。

 クララ。マメ亜科の多年草。妻女山山系には、明るい場所でよく見られます。天然記念物のオオルリシジミの食草なんですが、妻女山でオオルリシジミを見たことはありません。「草原の青い星」といわれる様に、開けた草原で見られます。

 ヒカゲイノコズチの虫こぶ、イノコズチクキマルズイフシ。イノコズチウロコタマバエの寄生によって形成されます。これを切るとタマバエの幼虫がたくさんいます。

 朽ちた倒木に極小の粘菌が。あまりに小さくて見逃すところでした。中央右下の網状のものは、既に胞子を飛ばした後です。これで直系が2ミリあるかないか。コウツボホコリでしょうか。画像検索すると、以前にアップした私の画像も出てきましたが、高さも2ミリぐらい。そうかも知れません。

 最高気温は32度。しかし、山上は26度でした。それでも汗だらけになったので温泉へ。麦秋の風景。隣ではコンバインで刈り取り作業が行われていました。品種はおそらくユメセイキ。うどんにすると絶品です。『麦秋』といえば、小津安二郎監督による1951年・松竹大船撮影所製作の映画です。嫁に行かない独身娘の結婚話と、それにまつわる大家族の思いを綴った人情ドラマ。 出演者:原節子・笠智衆・‎淡島千景・三宅邦子。小津安二郎の作品はほとんど観ています。個人的には『東京物語』と『秋刀魚の味』が好きです。実は無声映画の『突貫小僧』が一番好きなんですけど。小津ファンでもなかなか観た人はいないかも知れませんが、色々な意味で最高の映画です。『生れてはみたけれど』も最高です。お腹を壊すのでなにもやらないでくださいと背中に紙を貼られた子供で、妻とひっくり返って笑った思い出。
■EARLY SUMMER (Bakushū), 1951


■『秋刀魚の味』予告編 / 小津安二郎監督作品 偉大なる映像作家・小津安二郎の遺作


■A Straightforward Boy / 突貫小僧 (1929) (EN)


 小津安二郎は一度ブログで記事にしたいと考えています。スタンリー・キューブリック、イングマル・ベルイマン、ウッディ・アレン、タルコフスキー、クラウス・キンスキー、グラウベル・ローシャ、鈴木清順、小栗康平とかも。
70年代は、ニューシネマ。そして私はシネマフリークになった」村上春樹さんのジャズ喫茶、ピーター・キャットを中心とした70年代のクロニクルまたはスラップスティック

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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妻女山も蝶や甲虫の季節真っ盛り。ウラゴマダラシジミの悲劇。キツネアザミのケサランパサラン(妻女山里山通信)

2022-06-14 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨の晴れ間の妻女山山系。昆虫があちこちで見られる様になりました。ここのところの大雨で、林道は酷い泥濘状態。何度もタイヤが滑りましたがなんとか陣場平へ。麓はカラッとしていましたが、森の中は湿っていて草には露もついています。

 陣場平で草刈り。主にヒカゲイノコズチを刈りました。そして、オオブタクサの抜き取り作業。50本以上抜きました。貝母(ばいも)は、立ち枯れているのもありますが、多くは倒れました。梅雨明け頃には消えていきます。

 日向ぼっこするヒメウラナミジャノメ(姫裏波蛇目)。タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科。食草はイネ科のススキ、カヤツリグサなど。

 イチモンジチョウ(一文字蝶)アゲハチョウ上科タテハチョウ科。幼虫の食草は、スイカズラ科のスイカズラやタニウツギ、ヤブウツギなど。妻女山山系のものは、オレンジ色の斑紋があります。

 左がヘビイチゴ(蛇苺)で、右がヤブヘビイチゴ(藪蛇苺)。神経痛の民間薬。無毒ですが味はありません。どちらもバラ科キジムシロ属の多年草。黄色い花もキジムシロやミツバツチグリとよく似ています。

 テングチョウ(天狗蝶)タテハチョウ科テングチョウ亜科。翅を閉じてとまることがほとんどですが、雨後で湿った翅を乾かしたいのでしょうね。天狗の鼻の様に見えるのは、下唇ひげ(パルピ)です。幼虫の食草はエノキなど。

 ヒメギス(姫螽蟖)の幼虫。幼虫なのでまだ翅が生えていません。周囲にもたくさんいました。

 腹部の模様が見えないのでもうひとつ確かではないのですが、キンアリスアブ(キンアリノスアブ)。特徴的な触覚と胸部の色や毛の色から。幼虫はクロヤマアリの巣の中で育ち、成虫も巣の周辺で見られます。「キンアリスアブ 幼虫」で検索すると、その不思議な丸い幼虫が見られます。

 貝母(編笠百合)の実に張った蜘蛛の巣。クサグモでしょうか。蜘蛛の巣は、種類によって形が異なるので巣の形状で種類が分かります。網を張らない蜘蛛もいます。

 中央部がかなり膨らんでいます。種が充分に大きくなっているのでしょう。まもなく枯れ初めて、やがてさく果なので弾けて種を飛ばします。羽は6枚ですが、種は縦に三列並んでいます。一列に20個ほどなので、ひとつの実で60個ぐらいです。発芽率は分かりませんが、増え方を見るとかなり高いのかも知れません。球根は翌年から咲きますが、種からの場合は咲くまで数年はかかります。

 蜘蛛の子。ちょっと指で触れると、「蜘蛛の子を散らす」状態に。しばらくすると、また戻ってきます。種類は不明です。

 ヤブキリ(藪螽蟖)の幼虫。幼虫の頃は、花粉や花弁を食べ、成長すると肉食性になり昆虫を捕らえて食べるようになります。

 三本の翅斑があるので、ミスジシリアゲのメス。小動物や昆虫の死骸の体液を吸います。幼虫は土中で虫を食べる肉食性の昆虫。オスは腹端がサソリの様な形状をしています。2億5000万年前のベルム期から生息していたシリアゲムシ目に属する非常に起源の古い昆虫。

 ヤマグワの実。マルベリー(mulberry)と呼ばれ食べられます。生食やジャムやジュースに。子供の頃は、いいおやつでしたが、白いシャツを汚すと落ちないので、母や祖母によく叱られました。鳥や昆虫の餌になります。落ちて潰れた桑の実をオオムラサキが吸汁しているのを目撃したことがあります。

 ガガンボ・オオカ(大蚊)糸角亜目ガガンボ科の交尾。「ががんぼの 脚の一つが 悲しけれ」(高浜虚子)とうたわれる様に、脚がすぐにもげます。ザトウムシもそうですが、いわゆるとかげの尻尾切りで、身を守るすべなのでしょう。成虫は主に花の蜜が主食で、寿命は10日ほどの儚い虫です。

 ウスバシロチョウ。スフラギスを付けているので交尾を終えたメスです。産卵のためにハルジオンで盛んに吸蜜していました。

 ウラゴマダラシジミ(裏胡麻斑小灰蝶)シジミチョウ科ミドリシジミ亜科。何か様子が変です。しばらくすると落下しました。

 翅が裂けている様です。翅の表にはなにか極小の種の様なものが。ニホンカナヘビとか何かに襲われたのでしょうか。この後地面に落下して見えなくなりました。

 キツネアザミの種。風が吹くとケサランパサランになって飛んでいきます。銀色に輝きながら飛ぶ様は美しい。

 梅雨の晴れ間の善光寺平。戸隠連峰の残雪もほとんど消えたようです。千曲川は少し増水しています。梅雨明け近くの豪雨で洪水にならなければいいのですが。梅雨寒ですが、週末は30度の予報。体調管理が大変です。

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「信州の街道」北国西往還(善光寺道)。芭蕉も歩いた林道猿ヶ馬場線を下る(妻女山里山通信)

2022-06-10 | 歴史・地理・雑学
 木曽谷からの帰りは、塩尻から高速に乗り、安曇野で下りて国道403号へ。高速代節約もありますが、高速は途中で寄り道もできないし、単調で飽きるのです。長男が大学で伊那や松本に住んでいたときも、使うのは渋滞する区間だけ。やはり下道の方が楽しい。今回は、以前から下ってみたかった林道猿ヶ馬場線を下ってみました。古道を歩くというのはブームになっていて、私も勘助道とかいくつか探索したことがあります。勘助道については、ある出版社から、古い谷街道(北国街道東脇往還)についてもマニアから、問い合わせを受けたこともあります。

 403号の筑北村にできた新しい滝上トンネル。これができて本当に便利になりました。しかし、こんな岩の塊の山をよくぶち抜けたものだと思います。現在、長野自動車道に筑北スマートインターチェンジを建設中です。これができると益々便利になります。筑北村や麻績村にも善光寺道の見どころがたくさんあり、ブログ記事にしています。

 筑北村、麻績村を通って聖湖(猿ヶ馬場池)で休憩。溜池の様に見えますが、自然湖です。へらぶな釣りの太公望。ここは全国から釣り人が来ます。湖の向こうにそびえるのは拙書でも紹介の三峯山。頂上に展望台。左にスキー場、右にスライダー、麓にキャンプ場、手前に自衛隊の戦闘機やら公園やら。写真の右後方にはピザが美味しいレストラン。のんびりするにはいい所です。

 長野方面へ数百メートル行くと左に林道猿ヶ馬場線の入り口があります。北国西往還は善光寺道と呼ばれ、善光寺詣での参拝者や『東海道中膝栗毛』の弥次喜多、松尾芭蕉も歩いた街道です。古代は冠着山と三峯山の間の古峠が主流で、その後、鎌倉時代に三峯山近くの一本松峠が開かれ、戦国時代に、さらに北の猿ヶ馬場峠(946m)が開通しました。武田信玄の命で配下の馬場美濃守によって開発整備されたと伝わっています。道の幅は、二間(3.6m)ではなかったかと思われます。五街道は四間(7.2m)、場所によっては七〜八間(12.6〜14.4m)と、かなり広かったといいいます。

 林道猿ヶ馬場線は、必ずしも往古の善光寺道をたどっているわけではなく、合流したり善光寺道を横切ったりしています。全線舗装されていますが、林道はもの凄く傾斜が急なので、運転には注意が必要です。冬期は通行不能でしょう。今回も杉の葉が溜まっているのを重機で掃除した跡がありました。林道は、Googleのストリートビューで見られます。全線ほぼ杉林の中なので、眺望は全くありません。また、道幅が車一台分なので対向車に要注意です。

「火打石茶屋跡」。四阿と歌碑があります。「をばすては これからゆくか かむこどり」芭蕉。1688(貞享5)年に更科紀行の際に詠んだ句。

 江戸時代には松代藩から宮下、松崎、大井の三家が各一千坪の山野を与えられ茶屋を営みながら山賊から旅人を守る命を受けていたそうです。松本盆地と長野盆地を結ぶ非常に重要な道であったことが分かります。「姨捨十三景」とは、「冠着山、鏡台山、有明山、一重山、田毎の月、桂木、宝ヶ池、姨石、姪石、甥石、小袋石、雲井橋、更級川」。
信州更級郡姨捨山十三景絵図法光院長楽寺:長野県立歴史館所蔵

 大井の茶屋があった展望所「のぞき」。望遠鏡があったという記述がありますが、江戸時代中期以降でしょうね。左向きの矢印は未舗装ですが、下ると国道403号を渡って姨捨駅に着く道があります。

「くつ打ち場」。草鞋(わらじ)をはきかえさせたというのが面白い。シダ植物が50数種分布するというのが凄い。藻類やコケ類も多いのではないでしょうか。オオバノイノモトソウ(大葉井許草)は見かけますが、今回初めて名前を知りました。

 長野国道事務所が発行する「信州の街道探訪シリーズ」の「北国西往還」の地図。
「信州の街道探訪」郵送料のみで入手できます。また、PDFファイルをダウンロードできます。

 林道猿ヶ馬場線を下ると桑原宿。更に善光寺道を行くと稲荷山宿。そこに鎮座する武水別神社(たけみずわけじんじゃ)。木曽義仲はじめ武田信玄や上杉謙信にも尊崇された信濃国四宮。本殿は諏訪出身の工匠立川和四郎富昌(二代目)によって嘉永三年(1850)に完成しました。
お八幡(はちまん)さんと親しまれる稲荷山宿の武水別神社へ諏訪立川流の宮彫の撮影に(妻女山里山通信):見事な宮彫りの写真を掲載しています。

 国土地理院の地形図の林道猿ヶ馬場線を彩色してみました。拙書の地形図は申請して許可を得ましたが、ブログに掲載の場合は不要です。のぞきから姨捨(おばすて)に至る道も古道で、松尾芭蕉が歩いたのはこの道でしょう。一里塚から中沢川へ尾根を下る山道の破線がありますが、現在も通れるかは不明です。
 右のスイッチバックで有名な篠ノ井線の姨捨駅、長野自動車道の姨捨SA、その上の403号の千曲川展望公園からの善光寺平の景色は必見です。特に夜景が素晴らしい。田毎の月で有名な長楽寺からは、棚田の絶景や拙書にも載せている姨捨山(冠着山)や観月の鏡台山が見られます。

 国道403号の千曲川展望公園からの善光寺平の夕景色。

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木曽平沢の漆器祭へ。御料館と木曽義仲館、義仲と巴御前の墓参へ その2(妻女山里山通信)

2022-06-08 | 歴史・地理・雑学
 午後は木曽福島の御料館(旧帝室林野局木曽支局庁舎)へと向かいました。木曽の森林は、江戸時代は徳川直系の尾張領とし、1665年に留山制度を敷き、木曽五木(ヒノキ・サワラ・アスナロ・コウヤマキ・ネズコ)等の伐採を「木一本、首ひとつ」と言われるほど厳しく禁止しました。明治2年に官有林となり、明治23年に皇室所有の御料林となりました。御料館は、そんな木曽谷の森林文化を発信するための施設です。

 上の興禅寺から見た御料館と入り口。1927(昭和2)年に、大火で消失し、現在の建物は同年に再建されたアール・デコ様式のものです。入場無料で、展示室や子供が遊べる木育ルーム、多目的実習室などがあります。

 二階の支局長室。両隣には大会議室と秘書室があります。制服が明治を感じさせます。母校の清野小にも、妻女山に史跡見学に来る皇室や軍関係者のためにこの様な貴賓室がありました。

 標本展示室。木曽地域に生息する動物や昆虫の標本が展示されています。蝶類は、国蝶のオオムラサキやアサギマダラなど80種。カミキリムシが140種余り、トンボや甲虫も数多く展示されています。木曽は生物も多種多様で、開田高原には長野県ではそこにしか生息していない絶滅危惧IA類のチャマダラセセリがいます。幼虫の食草は、春に咲くバラ科のミツバツチグリとキジムシロ。
希少野生動植物保護回復事業計画 (チャマダラセセリ):長野県の取り組み

 驚くべきはこの「木曽谷模型」です。プラスチックではありません。なんと明治13年に木曽檜で作られたもの。翌年、東京の上野公園での第二回内国勧業博覧会に出品されたものです。その後、長く伊勢神宮に収蔵されていました。作者は、今もある岩屋旅館の当主だった児野嘉左衛門(当時73歳)です。奥の高い山が御嶽山。右手前の白い山が中央アルプスの木曽駒ヶ岳。深い木曽谷に青い木曽川。正確な地形図やGPSもない頃によくこれだけの立体模型が作れたものだと感心します。見飽きません。

「木曽谷模型」制作の元になったといわれる木曽谷の地図。谷の名称が非常に細かく詳しく書かれているのが分かります。嘉左衛門は、御岳参りの講に人々を案内する先達をつとめており、参道の石像も彫っていたそうで、地形に詳しく彫刻の技術もあったのでしょう。制作費として350円を受け取ったそうですが、現在の価値にすると約700万円ぐらいとなります。鉄道も自動車もない時代ですから、上野まで荷車で運んだのでしょう。
木曾山林資料館:歴史の中のエピソードに「木曽谷模型」の詳しい記事があります。

 大正時代の木曽森林鉄道の写真。最盛期には、路線の総延長は400kmにものぼっていました。機関車は、アメリカのボールドウィン製のものと思われます。赤沢自然休養林で保存されています。

 御料館からは中央西線が見えます。ワイドビューしなのと呼ばれる特急「しなの」が走っていきました。現在の車両は、制御付き自然振り子式車両の383系電車です。1995(平成7)年から使用されており、27年の歴史があります。長野寄りの先頭車は前面パノラマ風景も楽しめるグリーン車です。平成感が半端ないデザインと内装が人気です。

 隣りにある臨済宗妙心寺派の寺院・萬松山興禅寺へ。木曽義仲の墓所に参拝。

 大きな枝垂桜は、義仲公御手植の松桜二代目「時雨桜」だとか。脇には、山頭火の「たまたま 詣でて木曽は 花まつり」の歌碑が。この向こうには、1963年に作庭家重森三玲氏により造られた枯山水庭園「看雲庭」という石庭(国の登録記念物)があります。

 興禅寺墓地の説明。

 次に「義仲館 YOSHINAKA MUSEUM」へ。木曽義仲公と巴御前。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、脚光を浴びています。

 館に入って正面に木曽義仲公と巴御前。解説が流れます。資料館といいますが、なにせ戦国時代の遥か昔、源平合戦とか大塔合戦の時代の人物ですし、第一級史料はほとんど残っていません。義仲や巴御前にまつわる話や人物像なども、後年作られたものです。展示品もそういう作品がほとんどです。
「義仲館 YOSHINAKA MUSEUM」

 歌川 豊宣(うたがわ とよのぶ)安政6年〈1859年〉‐ 明治19年〈1886年〉作の「倶利伽羅谷大合戦図」。富山県小矢部市、倶利伽羅峠の南斜面にある深い谷で、平安時代後期の1183年(寿永2年)5月11日に木曽義仲が平家軍に大勝した戦を描いたもの。勇猛果敢に戦う巴御前が描かれています。

 木曽義仲にまつわる各地の写真。これは川中島や塩田平辺りのもの。私がホームグラウンドとする妻女山麓の横田河原や横田城跡も。

 館のガイドの女性にすすめられて義仲の菩提樹、臨済宗妙心寺派の日照山徳音寺へ。山門は、1723年建立の重層楼門。義仲24代後裔の木曽義陳の発願により犬山城(愛知県犬山市)の城主成瀬正幸の母親が施主となって建立されたもの。「徳音寺晩鐘」は、木曽八景のひとつ。他は、駒岳夕照・御嶽暮雪・掛橋朝霞・寝覚夜雨・風越晴嵐・小野瀑布・横川秋月。

 まず目に入るのは、少女時代の巴御前の騎馬像。男勝りだった伝説に基づく像です。微笑ましい。

 木曽義仲公霊廟。内部には義仲の木像を中心に木曽一族の位牌が安置されています。

 義仲公の木像。意外にこの像が一番本人に似ていたりして。

 境内裏手には義仲、巴御前、小枝御前(義仲の母)、今井四郎兼平、樋口次郎兼光の墓があります。徳音寺の元は柏原寺ですが、義仲の戒名 「徳音院殿義山宣公大居士」に因んで改称されました。石段脇には、フタリシズカやシャガが咲いていました。

 境内に珍しい花が。カルミア(アメリカシャクナゲ)。つぼみが金平糖の様で、つぼみの周りの角は、咲くと花の裏側に。1〜3mほどの常緑低木ですが、原産地の北アメリカとキューバでは10mにもなるそうです。花言葉は「優美な女性」、「大きな希望」など。なんとも可愛く愛らしい花です。

 巴御前が少女時代に泳いだという巴淵。木曽川は伊勢湾に流れ込み太平洋へ。奈良井川は日本海へ。そうです。藪原宿と奈良井宿を結ぶ、中山道木曽路最大の難所といわれた鳥居峠(1197m)が、日本海と太平洋への分水嶺なのです。鳥居峠は軍事的な要衝で、何度も合戦が行われています。
鳥居峠 (長野県):その詳しい歴史。

 謡曲「巴」と巴淵の説明。木曽義仲と巴御前には、様々な物語があります。それだけ、いつの時代にも人々を魅了する題材だったのでしょう。川中島合戦の上杉謙信と武田信玄もそうです。やはり第一級史料が少なく、物語が溢れています。巴淵は今は綺麗ですが、恐らく昭和40年代はもの凄く汚かったと思います。千曲川もそうでした。多くの魚貝類や蛍などの昆虫が絶滅しました。里山もそうですが、農薬や放射能、生活用水などで破壊された環境を取り戻すのは大変ですが、それをしないと次に滅ぶのは人類です。
長野県:歴史・観光・見所:木曽町をクリックすると木曽町・歴史・神社・寺院・城郭・古民家が見られます。

 帰路は、塩尻から高速に乗り、雨の安曇野で下りて国道403へ。筑北村から麻績村へ。へらぶな釣りの聖湖から林道猿ヶ馬場線を初めて下ってみました。古道の善光寺道が度々交差する趣のある道でした。番外編でアップする予定です。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。

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木曽平沢の漆器祭へ。御料館と木曽義仲館、義仲と巴御前の墓参へ その1(妻女山里山通信)

2022-06-06 | 歴史・地理・雑学
 長男から木曽の平沢でやっている漆器祭に行かないかと誘われ、連れて行ってもらいました。日帰りとはいえ久しぶりの遠出でした。木曽漆器は、長野県塩尻市の平沢(旧木曽郡楢川村平沢)を中心に作られている国指定伝統的工芸品です。世界最古の漆は日本で、約9000年前のものが北海道函館市で発掘されています。縄文時代前期(約5500年前)には、漆器、飾り弓、飾り太刀、櫛、笄(こうがい)、壷、甕(かめ)など現代に勝るとも劣らない工芸作品が製作されていました。漆の赤は、血や魂の色で、魔除けや再生、繁栄を意味したものともいわれています。漆を発見し、探求して実用化したその高い技術には驚嘆せずにはいられません。「縄文時代 漆」で検索すると分かります。
「全盛期の縄文土器」ー圧倒する褶曲文ー 長野県立歴史館:尽きない縄文の魅力(妻女山里山通信):縄文時代の高度な文化に触れてください。

 奈良井川の橋から見る平沢の町並み。「木曽路はすべて山の中である」という島崎藤村の小説『夜明け前』の言葉通り、山に挟まれています。600mほど上流の屋内運動場横に駐車して、シャトルバスもありますが気持ちのいい奈良井川沿いの小道を歩きました。奈良井川は松本平で犀川に合流し、千曲川、信濃川となって日本海に流れます。

 平沢宿の入り口にある説明。中山道に沿って間口三間の奥行きの長い敷地の家が並んでいます。家は表から店、お勝手、座敷。その奥に二階建て土蔵造りの塗り蔵などがあります。街は、平成18年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

 伝統的な家が並ぶ趣のある町並み。漆器店がたくさんあります。骨董品店も。

 店によって個性があるので、色々覗くと楽しいのです。

 店頭にはセール品が並んでいます。50円100円から数千円、数十万まで。高級品は店の奥にあるので、店内も見るといいですね。目の保養になります。

 レトロな洋館と黒い蔵が並んだお洒落な蕎麦屋さん。木曽檜コーラというのが面白い。まだ昼前なので入りませんでしたが、けっこう混んでいました。窓の桟や壁の装飾が非常に美しい。

 少しずつ人も増えてきました。中央に囲炉裏のある豪華なテーブルは売約済みでした。お椀や箸だけでなく、座卓や座椅子、茶器、こね鉢などなんでもあります。お弁当や山賊焼き、かき氷などの屋台も出ています。

 漆塗りのスバル360は、マスコミでも取り上げられましたが、今日は出張中。その代わりダイハツミゼットが。1957年〜1972年まで生産・販売されていた懐かしい車です。桑田佳祐監督の映画「稲村ジェーン』に出てきました。この店には他にもハイセンスな漆商品が並んでいます。

 小路を入って漆グラスの店へ。街のあちこちにオダマキ(苧環)が咲いていました。

 丸嘉小坂漆器店の非常に美しい漆を使ったグラス。数千円から数万円まで色々あります。漆硝子は、ネットでも買えます。特に若い女性が多く訪れていました。

 長男は、漆塗りのめんぱを買いました。めんぱは、檜の曲木細工の弁当箱です。ここから左の道へ曲がって金西町の通りへ。

 伝統的建築。なかなか凝った作りです。

 焦げ茶と白の繰り返しが美しい。

 小路を抜けて中山道に戻りました。親子で漆塗りの実演をしていたので、色々お話をうかがいました。ひょうたんとうるしの作家・いちだめぐりさん。漆は水分と化学反応を起こして硬化するので、適度な湿気が必要。900mの高地にある周囲を山々に囲まれた木曽の湿潤な気候は、漆を塗るのに適しているのです。手前のはサラダ油で、使う刷毛をサラダ油で漆を洗い落とすのだそうです。かぶれませんかと聞くと、男の子の膝が赤くなっていますが、漆が付くとやはりかぶれるそうです。でも慣れているみたいです。敏感な人は、ハゼノキやヌルデでもかぶれることがあります。お手伝いするとご褒美があるそうで、一生懸命に塗っていました。いい工芸作家になるのではないでしょうか。塗っているのはめんぱです。

 和服の女性も何人もいました。宿場町にはよく似合います。木曽の酒といえば七笑です。ジビエとか鮎などにもよく合います。漆器は英語ではJAPAN(Japanese lacquer)と呼ばれ人気です。今回はコロナで外国の方はほとんどいませんでしたが、治まればたくさん訪れるでしょう。

 奈良井川沿いを歩いて帰ります。中央西線は、奈良井川の左岸や右岸を何度も渡っています。

 河川敷に咲くヒレハリソウ(鰭玻璃草)。別名は、コンフリー。ヨーロッパ原産の多年草で、食用、薬用、牧草として使われましたが、肝機能障害をおこす恐れがあるそうです。他にはマーガレットも咲いていました。

 かなり古い砂防ダムがありました。水が流れ出た跡が赤茶色になっていますが、鉄分が多いのです。その鉄分を多く含んだ錆土(さびつち)が、木曽漆器の下地の材料に使われ、丈夫で高品質な漆器を生み出すのだそうです。

 昼食を食べに向かう途中で、木曽駒ヶ岳が見えました。昼は、鳥居トンネルを抜けて木曽川水系へ。人気の蕎麦店、木曽町の「阿羅屋」へ。こしのある色が濃く細い蕎麦は絶品。かえしとくるみダレがつきます。野菜天といただきました。食後は木曽福島の御料館(旧帝室林野局木曽支局庁舎)へと向かいました。義仲館、興禅寺と徳音寺と合わせて、次の記事で紹介します。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林に掲載の信州の里山のスライドショー(妻女山里山通信)

2022-06-03 | アウトドア・ネイチャーフォト
 拙書『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林に掲載されている山の写真を元に作ったスライドショーです。トレッキングのスタートからゴールまでを時系列で並べてBGMをつけているので、コースの概要がよく分かると思います。動画情報のもっと見るをクリックすると、コースの詳細・工程時間・当日の気温・標高差・注意点が分かります。また、本では掲載できなかったカットもたくさん見られます。興味のある山をご覧ください。ハイビジョンなので、YouTubeへ飛んでぜひ大画面でご覧ください。里山人気は、アルプスを卒業した人や歴史マニア、ロッククライマー、サイクリスト、トレランランナー、バードウォッチャー、フォトグラファー、アーティストなど多岐に渡っています。誰でも自分なりの楽しみ方ができるのが里山です。

 時々、BGMに聴いたことのないフォークソングが流れてきます。これ誰ですかなんてメールが来たこともあります。実は屋代高校の同窓生で美術班の仲間で、現在は妻女山里山デザイン・プロジェクトのメンバーでもあるK氏の学生時代のものなんです。歌詞をよく聴くと、学生当時の悶々とした想いが感じられます。私は美大生で、村上春樹さんのジャズ喫茶でアルバイトをしていました。海外への憧れを抱いていて、彼のアドバイスもあって海外放浪へと繋がりました。ちなみに高校時代、ピットフォール(落とし穴)というバンドを組んでいて、彼がギターでした。私はボーカル。女子校の文化祭でミニライブをした懐かしい思い出があります。
国分寺・国立70Sグラフィティ(村上春樹さんのジャズ喫茶、ピーター・キャットを中心とした70年代のクロニクルまたはスラップスティック):世界中からアクセスが有る人気ブログです。

【信州の里山】妻女山-鞍骨山-象山 Mt.Kurabone at Kiyono in Nagano

 地元はもちろん大河ドラマ『真田丸』でハイカーが激増しました。全国から歴史マニアが訪れます。私もBS-TBSの歴史番組でガイドをしました。今年のGWも、一日20〜30人のハイカーが訪れました。松代城(海津城)が眼下に見えます。47秒から満開の貝母(編笠百合)も見られます。YouTubeで見るをクリックしてご覧ください。

【信州の里山】花の飯縄山 Mt.Izuna in Nagano

 長野市民が誰でも一度は登る山。上杉謙信も武田信玄も尊崇した信仰と修験の山。そして、花の山です。飯縄権現は、大和王権の祖といわれる徐福伝説や八咫烏とも繋がっています。拙書では各山の歴史も記しています。

【信州の里山】京ヶ倉1 Mt. Kyogakura at Ikusaka village in Nagano vol.1

 GWに咲くヒカゲツツジで人気の山。ミニ蟻の塔渡りがあり、里山とは思えないほど厳しい山ですが眺望が素晴らしい。犀川の流れや人家がジオラマの様に見えます。

【信州の山】四阿山カルデラ一周 Mt.Azumaya from The Yonako falls in Nagano

 全長23キロ、約10時間のロングコース。米子大瀑布から滝上を横断し、2000m級の山を3つ(根子岳・四阿山・浦倉山)登ります。自然と歴史の大コース。トレランの人たちにも大人気。

【信州の里山】虫倉山さるすべりコース2 Mt.Mushikura at Nakajo in Nagano 2

 神城断層地震で山頂が4割崩壊。その前の貴重な映像です。今も魅力的な歴史の里山。不動滝には貴重なハコネサンショウウオが生息します。

【信州の里山】真夏の尼巌山 Mt.Amakazari at Higashijo in Nagano

 真田幸隆に攻略された東条氏の山城が山頂。岩を登る急登とほぼ真下に見えるあんずの里の風景が魅力。天の岩戸にも立ち寄りたい。

【信州の里山】五一山脈踏破 Goichi Mountain range in Nagano

 村上義清の葛尾城から森将軍塚古墳までたどる歴史の尾根。BGMのカウント・ベイシー・オーケストラも肝。北アルプスのスカイラインが美しい。山本勘助が作った軍道の勘助道もおすすめ。トレランの人気コースでもあります。

【信州の里山】奇妙山 Mt.Kimyo at Matsushiro in Nagano

 清滝から林道経由で尾根にとりつき、30mの崖登りが楽しいコース。山頂からは北信五岳と晴れていれば日本海も見えるかも知れない。拙書では私も一度しか登ったことがないとんでもないバリエーションルートの清滝・滝上コースも紹介しています。

【信州の里山】冠着山(姥捨山)鳴海新道 Mt.Kamuriki at Togura in Nagano

 姨捨伝説の歴史ある里山で展望も抜群。鳴海新道は長いけれども満足感が得られます。春のカタクリ、秋のサラシナショウマが美しい。

【信州の里山】大姥山 Mt.Ohba in Nagano

 18ある鎖場が楽しい。金太郎伝説の大きな岩屋が見もの。南面は厳しい崖だが北面はサフォーク牧場のギャップが面白い。山姥の滝に駐車してのループコースがおすすめ。

【信州の山】黒斑山 Mt.Kurohu in Nagano

 浅間山外輪山の最高峰。トーミの頭からの浅間山が美しい。夏は花と昆虫の宝庫。火山情報は事前に調べておきましょう。

【信州の山】烏帽子岳 Mt.Eboshi from The Jizoh Pass in Nagano

 小学生が遠足で登る山でファミリー登山のメッカですが、標高は2066m。色々な高山植物が見られます。また、稜線や山頂からは北アルプスの大パノラマが望めます。

 他にも三峯山や大林山、独鈷山、鏡台山などのスライドショーがあります。東京や神奈川、山梨のトレッキング・スライドショーもYouTubeのsaijouzanでご覧いただけます。saijouzanへは、YouTubeがGoogleへ移行する際のトラブルで、現在私はログインできない状態です。コメントやメッセージなどは、別アカウントの
MORIYUKI HAYASHIで行っています。ご了承ください。お問い合わせは、このブログのメッセージからお願いします。

「キッズ・トレッキング」のアドバイス。(信州妻女山里山通信):10歳以下の子供と登る場合の注意点を書いています。非常に重要なことも書かれています。子連れ登山には、ぜひ参考にしてください。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

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 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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