モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

オオムラサキを見た最後の夏の日。そして小さな秋の発見(妻女山里山通信)

2014-08-23 | アウトドア・ネイチャーフォト
 今年は異常な天候続きで昆虫たちにとっては過酷な夏だった様です、8月19日が、今年のオオムラサキを見た最後の日になりました。しかも、通常ならば遅く発生したメスが最後に残るのに、これはオスでした。今年はオオムラサキの発生が非常に少なかったのが気がかりです。スミナガシは2年続けて見られませんでした。ゼフィルスは、ほぼ絶滅状態です。蝶の研究家のTさんの言うように、千曲市によるネイニコチノイド系農薬の空中散布の影響でなければいいのですが・・。もしそうであれば、これは大変なことです。日本中のミツバチやハナアブが絶滅すれば、作物は受粉できず、農業は滅びます。農業が滅びるということは、日本が滅びるということです。

 たった1頭残ったオオムラサキのオス。手前では、コクワのオスが吸汁するメスを抱きかかえて守っています。真ん中は、発酵し、白く結晶化した樹液をむさぼるジバチ(地蜂)。信州ではヘボといって、この蜂の子を珍重します。大きな巣は1万円以上します。信州人が長寿なのは、昆虫食をするからだとも言われています。昆虫食をすれば、世界に食糧危機はないという説もあります。まあ。信州は高山に囲まれて原発がないというのもあるでしょう。原発からは事故がなくても、放射性物質が漏れていますから。
 この夏は、昆虫の大量発生期に樹液があまり出ず、虫達がほとんど消えてから大量に出るという過酷な夏でした。餓死した昆虫も少なくなかったでしょう。
 最後はトックリバチの仲間のスズバチ(鈴蜂)。ドロバチ科で、ドロで固めた巣を作ります。十数個に区切られた部屋には、蛾の幼虫が麻酔を打たれて詰められ、卵が一個ずつ産み付けられます。孵化した幼虫は、蛾の幼虫を食べて成長するのです。

 ハナアブですね。残念ながら未だ同定できません。宿題です。でもほとんど見られなくなったハナアブがいたことにホッとしました。多孔菌科のキノコにキマワリが。森の掃除屋さんの一種です。だれも気にも留めませんけどね。ヒグラシでしょうか。遺骸にトゲアリが群がっていました。アリも森の掃除屋さんなんです。このアリは社会寄生という実に珍しい生態を持っています。秋が近づいたので、ミンミンゼミやツクツクボウシの鳴き声が増えました。

 ミズヒキ(水引)の小花が咲き始めると小さな秋を感じます。茶道で使う茶花のひとつです。上から見ると紅く、下から見ると白い目出度い花。センニンソウ(仙人草)も咲き始めました。これが咲き誇ると、そこいらじゅうがブライダルブーケという感じになります。毒草ですが、扁桃腺の民間薬としても知られています。野草の中では、一二を争ういい香りがします。小さい秋見つけた。
 キツリフネ(黄釣船)ホウセンカと同じように触れると種をはじき飛ばして増えます。和名の黄釣船とは、ぶら下がる花を釣船(吊り舟)、あるいは花器の釣船にみたてたものです。英名は、Touch-me-not Balsam。ツリフネソウは、学名をImpatiens noli-tangereといいます。Impatiensは、「耐えきれない」の意で、noli-tangereは、「私に触れるな」ということ。触れると種が勢いよく弾けるホウセンカの仲間ならではの名前です。

 コミスジが葉の上で休息中。樹液バーには、ジバチに混じって蛾のベニシタバが。近寄ってくる羽虫を追い払うために翅を広げる度に、紅い色がチラチラ見えます。地味な羽織の裏地に鮮やかな浮世絵という様な感じでしょうか。粋ですね。最後は、ヒメウラナミジャノメ。可愛らしい蝶なのですが、アップにすると顔がヒゲだらけでおっさん臭い蝶なんです。

 萩も咲き始めました。これはヤマハギ(山萩)。例年なら吸蜜するゼフィルスがたくさん見られるのですが、今年は1頭もいません。いくらなんでもこれは異常事態です。
 粘菌(変形菌)のキフシススホコリに殻の直径が3ミリぐらいの小さなカタツムリが食餌に訪れていました。意外と知られていないのですが、テントウムシの幼虫は、粘菌を食べに来ます。最後はコマメホコリかマメホコリの変形体に小さな甲虫が食餌に来ています。甲虫が噛ると、中からピンク色の原形質がこぼれてきます。粘菌も栄養があるわけで、小さな虫達の重要な栄養源となっているわけです。

 茶臼山へも行ってみました。アルプス展望台からの眺め。北アルプスは雲の中でしたが、山布施の山村と、青々とした棚田が美しく光っていました。中央の空中に飛ぶのはオニヤンマです。

 クサギ(臭木)の花が咲き始めました。臭い木と書きますが、白粉(おしろい)のような匂いです、枝を折るとピーナッツバターの様な匂いがします。アキノギンリョウソウ(秋の銀竜草)がたくさん咲いていました。別名を銀竜草擬とか幽霊茸とかいいます。腐生植物で、葉緑素が全くないため白い色をしています。
 最後は、別名を死の天使という1本で約8人分の致死量があるという猛毒のドクツルタケ。柄にささくれがないと、やはり猛毒のシロタマゴテングタケ。激しい下痢、嘔吐、腹痛の後に、内蔵が破壊され死に至るという猛毒のキノコですが、里山でも普通に見られます。これをポットントイレに数本砕いて入れておくと、ひと夏ハエが発生しません。しかも生分解するので環境を汚しません。ネオニコチノイド系の殺虫剤は、神経毒で人体にも有毒です。

 帰りに有旅茶臼山の駐車場から南方を見た風景。右端はこの春登った上田市の大林山。左に有明山。間の谷は千曲市から坂城町、上田市と続きます。晴れていれば、この間登った蓼科山が見えるのですが、この日は雲の中でした。広島では集中豪雨で大勢の方が亡くなりました。罹災された方々に心よりお悔やみを申し上げます。信州でもそうですが、あそこは絶対に住んじゃいかんと古老が言う所に新興住宅地はできるんです。その結果が広島激甚災害と言ってもいいでしょう。住宅メーカーや不動産屋は絶対に教えてくれません。古い小字名にその災いの歴史が残っていることがあります。窪とか水とか沼とかつく地名は要注意です。地質も調べるべきですね。人任せではいけません。この秋冬と、更なる異常気象や天変地異が襲うのではと案じています。最大の脅威はもちろん原発ですが・・・。

★Youtubeスライドショー(BGMは、GarageBandで作曲したオリジナルです)
■Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 1of3【オオムラサキ】


◆この度、「信州 山の日」制定に伴い、「信州 山の達人」の募集がありましたが、私がそのひとりに選ばれました。妻女山SDP(里山デザイン・プロジェクト)の活動や、ブログ「モリモリキッズ」や当サイトでの情報発信活動が、「独自性」「継続性」「有効性」「発信力」の観点から優れていると認められ、選考されたということです。今後も、里山保全活動や、里山インタープリター、ネイチャーフォトなどに力を入れていくつもりです。
妻女山SDPの活動記録は、■MORI MORI KIDS Nature Photograph Galleryのインデックスの妻女山SDPか当ブログ「モリモリキッズ」をご覧ください。


必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ:グリホサート剤)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。
 
にほんブログ村 写真ブログへ にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ にほんブログ村 アウトドアブログへ にほんブログ村 アウトドアブログ ハイキングへ にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

蓼科山登山と蓼科神社里宮・南嶽山光徳寺&白馬バレイ探索の夏休み(妻女山里山通信)

2014-08-17 | アウトドア・ネイチャーフォト
 今年の夏山登山は、別名を諏訪富士と呼ばれる蓼科山でした。コニーデ型火山にトロイデ型火山が噴出してせり上がってできた二重式火山です。台風や雷雨が多い毎日で心配しましたが、この日は奇跡的に?晴れました。東御SAから一路蓼科に向けて谷筋を登りましたが、周囲は朝霧に包まれて真っ白でした。大丈夫かなと一瞬不安になりましたが、標高を上げて高原に出ると霧が晴れました。

 御泉水登山口の駐車場に着いたのが8時半前でしたが、既にほぼ満車状態。東京方面のナンバーが多いので、早朝もしくは深夜に出たのでしょうね。蓼科山を見上げながら準備を整えて、鳥居をくぐって出発です。登山道は前夜の雨で水の流れができていました。コメツガとミヤコザサの濡れる苔むした登山道を登っていきます。花は少なめでした。目についたのはイチヤクソウ(一薬草)とハクサンフウロ(白山風露)ぐらい。アイタケなど夏のキノコも散見されました。他には、葉が蟹の甲羅に似ているカニコウモリも咲いていました。

 とにかく登山道は、岩だらけ石ころだらけなのです。登りは面白いです。足の置き場を探すパズルの様な登山です。これがずっと続くのです。花はゴゼンタチバナ(御前橘)。そしてヒカゲノカズラ(日陰葛)。胞子は石松子(せきしょうし)といい、薬用や果物などの人工授粉剤として用いられます。古生代のシダ植物の生き残りともいわれています。
『古事記』の天の岩戸で天宇受売命(アメノウズメノミコト)がたすきがけにしていたのが日陰葛(日影葛)といわれています。古代から注目を集めていたようで、万葉集には下記の四首があります。
「斎串立て 御瓶据ゑ奉る 祝部が うずの玉かげ 見ればともしも」
「あしひきの 山かづらかげ ましばにも 得がたきかげを 置きや枯らさむ」
「見まく欲り 思ひしなへに かづらかげ かぐはし君を 相見つるかも」
「あしひきの 山下ひかげ かづらける 上にやさらに 梅をしのはむ」 

 山頂は、だだっ広い岩塊だらけの火口跡で、ほぼ中央に蓼科神社の奥宮があります。里宮は、立科町にあります。岩の間には、コケモモがたくさん自生していました。ここで適当な座り心地のいい岩を見つけて昼食タイム。爽涼の風が気持ちよく吹いています。残念ながら北アルプスの大パノラマは拝めませんでしたが、槍の穂先は見ることが出来ました。八ヶ岳は、間にひっきりなしに雲が流れて、全貌は撮影できませんでしたが、むしろダイナミックな自然の一コマを堪能できました。
 のんびりと昼食タイムや撮影タイムを過ごして下山です。しかし、この時間に登ってくる人が激増。雷雨の来る蓋然性が高い夏山は、早出早帰という原則を知らない人達ですね。4、5歳ぐらいの子供達が多いのにも驚かされました。雷雨の可能性のある午後二時には下山していることが基本です。赤ん坊を背負ったお父さんも何人かいました。私も昔、高尾山でアルミキャリアーでおんぶ登山をしたことがありますが、最悪のケースを想定して登るべきです。「キッズトレッキングのアドバイス

 御泉水からは標高差も少なく、距離も大したことはないのですが、とにかく岩だらけで浮石も多く神経と筋肉を使うのです。前を行く女性が転倒して一回転しました。幸い大事には至りませんでしたが、あなどれない山です。トリアシショウマにアブや小さなハムシが集まって吸蜜していました。コメツガの森は、湿度がたっぷりです。

 そのため、樹木や岩には苔や藻類、地衣類がたくさん見られます。一般の登山者は目にも留めませんが、実はキノコなどの菌類などと共に、森を構成する非常に重要な一員なのです。今回は、期待していた粘菌(変形菌)が見られなかったのが残念でした。

 下山後、女神湖(農業用に建設された人造湖・赤沼温水溜池)の畔から蓼科山を仰ぎ見て休息しました。美しい形の蓼科山は、女性の乳房のような形をしているからでしょうか、女の神山とも呼ばれてきました。

 帰路の途中で、蓼科神社里宮に立ち寄りました。神代杉がそびえています。平安時代に編纂された歴史書『日本三代実録』に「陽成天皇元慶二年七月十六日信濃國正六位下蓼科神授従五位下」と記されている国史見在社の式外社です。太く高い杉木立に囲まれた趣きのある神社でした。そして隣にある南嶽山光徳寺にも立ち寄りました。ここの山門は、立川流の見事な彫り物が見られます。その後は、立科温泉 権現の湯へ。ジャグジーで疲れた筋肉をほぐしました。露天風呂からは、浅間山が望めます。

 別の日には、白馬バレイへ。あいにくの小雨模様でしたが、仕事がらみの視察目的もあったので、精力的に大町から白馬村、小谷村を回りました。スキーリゾートで有名ですが、実は非常に古い歴史のあるバレイ(谷)なのです。まずは大町市の鷹狩山展望台へ。晴れていれば北アルプスの大パノラマが堪能できるベストポイントなのです。北アルプスは雲の中でしたが、眼下の大町や、東南の京ヶ倉、美ヶ原方面の景色は見事なものでした。そして雨の中を大町山岳博物館へ。ずっと行きたいと思っていた所です。展示は見応えがありました。剥製、特に蝶などは変色してしまうのは仕方がありませんが。針ノ木峠を巡る加賀藩と松本藩の攻防や協力の話は、実に興味深いものでした。化石も見応えがありました。

 そして、白馬五竜、飯森ゲレンデ、47へ。雨まじりでしたが、盛夏の高原を堪能しました。オーストラリア人に人気の八方尾根スキー場へ。なかなか趣きのある旅館街です。白馬ジャンプ競技場へ。間近で見ると、ど迫力ですね。ジャンプが、飛ぶのではなく落ちるのだということが分かります。尋常ではないです。あの角度と高度差は。あんな競技を考えたバイキングの子孫たちは、クレイジーとしか言いようがありません。ノルウェーは、ブラジル人の友人がいるので訪ねたことがありますが、どちらかというと皆控えめで、そんな大それた事をする民族には見えなかったのですが、やはりバイキングの血が流れているのでしょうか。

◆この度、「信州 山の日」制定に伴い、「信州 山の達人」の募集がありましたが、私がそのひとりに選ばれました。妻女山SDP(里山デザイン・プロジェクト)の活動や、当ブログ「モリモリキッズ」やホームページCAPINOでの情報発信活動が、「独自性」「継続性」「有効性」「発信力」の観点から優れていると認められ、選考されたということです。今後も、里山保全活動や、里山インタープリター、ネイチャーフォトなどに力を入れていくつもりです。
妻女山SDPの活動記録は、■MORI MORI KIDS Nature Photograph Galleryのインデックスの妻女山SDPか当ブログ「モリモリキッズ」をご覧ください。


にほんブログ村 写真ブログへ にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ にほんブログ村 アウトドアブログへ にほんブログ村 アウトドアブログ ハイキングへ にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『真夏の樹液バー物語』オオスズメバチが大暴れ!(妻女山里山通信)

2014-08-09 | アウトドア・ネイチャーフォト
 約一週間ぶりに訪れた樹液バーは、様変わりしていました。あれほどたくさんいたアオカナブンの団体さんが姿を消し、入れ替わるように
オオスズメバチが増えていました。2、3匹なら全体が把握できるのですが、ヒメスズメバチも入れて7、8匹となると不可能です。撮影中に顔の真横でホバリングしたり、突然飛び立つ個体が顔に激突したり、威嚇されることもあります。おちおち撮影もできません。今回も二度ほど威嚇されたり体当たりをされました。

 削岩機の様に激しく頭を振って吸汁するオオスズメバチのオス。オスは刺しませんが、鋭い顎で噛み付きます。ミヤマクワガタが樹液バーに登場。オオスズメバチとの格闘が始まりました。一対一ではクワガタなのですが、オオスズメバチは必ずタッグを組んで攻撃してきます。この時も、左のもう1匹と組んで激しい頭突きを浴びせ、退散させてしまいました。下には、そんな生存競争に敗れたカブトムシの死骸。餓死が最も考えられますが、カラスに襲われたのかもしれません。

 樹液バーが殺気立って余りに危険なので、ヒメジョオン(姫女菀)の咲くギャップへ。ツバメシジミが吸蜜していました。縞々のソックスと触覚が可愛らしいゼフィルスです。今年は本当に発生が少なく、心配しています。数年前までは十数種類のゼフィルスが確認できたのですが、今年はまだ数種類しか確認できていません。それも極少数です。千曲市によるネオニコチノイド系農薬の空中散布が原因だとすると大問題です。人的被害も必ず出ます。(予想通り千曲市側の昆虫は全滅しました。散布を中止して2年目で回復し始めましたがダメージは残っています)

 ヒメジョオンで吸蜜するのは、1センチに満たないヒメヒラタアブ。次は糞や腐肉にたかるキンバエですが、こんな風にヒメジョオンで吸蜜もするのです。ヤマハギで吸蜜するキチョウ。例年ならばゼフィルスもたくさん見られるのですが、この日は皆無でした。

 樹液バーに戻ると、オオムラサキのオスが集まっていました。左下でオオスズメバチが触覚を触れ合わせて情報交換をしています。上にいる3匹のアオカナブンとカナブンは、彼らによって排除されてしまったのです。

 そこへ今度は大きなミヤマカミキリがやってきて吸汁し始めました。オオスズメバチが相談しています。このすぐ後で、2頭のオオスズメバチは、ミヤマカミキリとアオカナブンを排除しました。ミヤマカミキリは激しく抵抗したのですが、2匹から同時に攻撃されてはたまりません。そんなわけで、この日はオオスズメバチの天下となりました。

 昼過ぎになるとお腹をすかせたオオムラサキのメスが2匹やってきました。翅を広げているのは、近寄るな!どきなさい!と威嚇しているのです。ヒメスズメバチも2匹やってきました。気づいたオオスズメバチが排除しようとしましたが、オオムラサキのメスは激しく羽ばたいてオオスズメバチを撃退しました。
 樹液の成分は、多数のアミノ酸に、グルコース、ガラクトースなどの糖分、エタノール、酢酸などが含まれています。この中で誘因効果が高いのは酢酸です。そして樹液は染み出ると、すぐに酵母菌によって発酵するので多少はアルコール分もあるのです。樹液バーと言われる所以です。

 樹液をたっぷり吸って満足気のメス。真ん中は、樹液を吸って休んでいるオス。右は、吸汁中のオオスズメバチと、下に見えるのはルリタテハです。樹液を吸いたいのですが、オオスズメバチがいるので様子を見ているのです。この後、この向こう側で吸汁にありつけました。樹液バーといっても、綺麗なお姉さんがお酒をついでくれたり、話し相手になってくれたり、イケメンのホストがちやほやしてくれるわけではないのです。まさに熾烈な生存競争の現場です。観察しているとそれがよく分かります。面白いと思って見ていると、突然いきり立ったオオスズメバチに攻撃されたりします。以前、100mも執拗に追いかけられました。その間、二度転倒して灌木林に転げ込んだら、そこまで追いかけてきて、最後は杉林に回転レシーブよろしく転がり込んで難無きを得ました。ハチは針葉樹の出すフィトンチッドが嫌いなのです。そのため針葉樹の森でハチを見ることはまずありません。

 帰りに撮影した妻女山駐車場の南の端っこから見た松代方面。最高気温35度とか勘弁して欲しいです。この夏はエルニーニョの影響で梅雨明けが8月にずれ込み冷夏になると言った気象庁の言い訳を聞きたいものです。台風11号が接近中。台風の影響で風向がめまぐるしく変わるため、再臨界している福一の放射能が、関東中部東海を襲う予報が出ています。収束どころか膨大な量の放射性物質が空中にも海にも垂れ流し状態です。

必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ:グリホサート剤)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。
 
にほんブログ村 写真ブログへ にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ にほんブログ村 アウトドアブログへ にほんブログ村 アウトドアブログ ハイキングへ にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ショック! ネオニコ空中散布のない茶臼山は、昆虫と花の天国(妻女山里山通信)

2014-08-03 | アウトドア・ネイチャーフォト
 前回記した通り、茶臼山へやって来ました。といっても麓の中尾山温泉から登るとか、茶臼山自然植物園の下から登るとかではなく、尾根上にある信里小学校のところから入って、旗塚の駐車場に車を停めて、ほぼトラバースという楽ちんコースです。なんやかんや忙しく、3月の初旬に大雪の残る時に登って以来でした。

 登山道に入って驚きました、2、3m置きに、所によっては1m毎に足元からヒグラシが飛び立つのです。昨夕あたりに羽化して、ゆっくりと翅を広げ、朝になって翅を乾燥させて飛び立つのを満を持して待っていたのでしょうか。私の足音で次々と飛び立って行きました。しかし、中には乾燥が不十分で飛び立てないものもあり、そういう個体は、すぐにじっとして姿を隠します。そんな草陰に隠れた1匹を見つけました。捕まえて顔面を接写後逃しました。
 羽化したてのセミの羽は、白っぽい薄青緑色です。人間や動物の血は、鉄分を含む赤血球中のヘモグロビンで赤く見えますが、それ以外の生物では薄青色の血(体液)の方が多いのです。これは銅成分を含むヘモシアニンのためです。

 次に発見したのは、これも羽化したてのアブラゼミでした。こちらもまだ飛べないようで、簡単に手で捕獲できました。ひっくり返して腹を見ると、赤い小さなタカラダニの幼虫がいました。タカラダニのついたセミは、子供にとって貴重な宝なので、この名が付いたという説や、セミが宝を持っているように見えるからという説があるそうです。アブラゼミという名前の由来は、その鳴き声が天ぷらを揚げる音の様だから。
 蝉といえば、奥の細道の松尾芭蕉が詠んだ「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」が最も有名ですが、万葉集にも詠まれています。
「ひぐらしは 時と鳴けども 恋ふらくに たわやめ我(あれ)は 定まらず泣く」〔詠人不知 万葉集 第10 1982〕
(ひぐらしは時を決めて鳴くけれども、恋のせいでか、弱い私は時を定めず泣いてばかりいます。)

 セミの中でもヒグラシは、漢字で書くと「蜩」「茅蜩」「秋蜩」「晩蝉」「日晩」「日暮」と色々あるように、その物悲しい鳴き声からか万葉の昔から日本人好みの昆虫でした。俳句では秋の季語ですが、実際はニイニイゼミなどと同じく梅雨から鳴き始めます。季節的には秋のセミではありません。
しかし、カナカナカナと鳴く薄暮の森に佇んでいると、不意にとてつもない寂寥感に襲われます。どこか物悲しいヒグラシの鳴き声は古代から日本人の琴線に触れるものがあったのでしょう。古代中国の敗残兵の末裔が、故郷を偲んで落涙したのでしょうか。虫の鳴き声を左脳で聞くのは日本人(ポリネシア人も)の特性です。他国の人には音にしか聞こえないそうです。虫の音であり、虫の声ではないのです。
 万葉集の中に蝉の歌は10首ありますが、ヒグラシが9首。もう一首は単に蝉と書かれています。

 森を抜けて棚田に出ると、そこは花や蝶の楽園でした。ノアザミで吸蜜するキアゲハ。ノアザミは花の下の総苞が粘るので秋のノハラアザミと区別できます。ダイミョウセセリが翅を広げて休息中。大名とつくだけあって風格があります。ジャノメチョウがアカツメクサで吸蜜中。

 ミヤマチャバネセセリがアカツメクサに。丸い頭部と大きな目が愛らしい。次はツバメシジミ。妻女山山系にもたくさんいたシジミチョウですが、ほぼ絶滅状態です。それどころか、十数種類もいたシジミチョウの全てが壊滅状態です。千曲市による猛毒のネオニコチノイド系農薬の空中散布が原因だと蝶の研究家のTさんは断言しています。ミドリヒョウモンもアカツメクサで吸蜜。

 こちらもミドリヒョウモン。次は、オンブバッタではありません。交尾中のミヤマフキバッタです。写真を撮ろうと近づくと、大きなメスがオスを背負ったまま、茎の周りを逃げるようにニジニジと回転するのです。なんだかオスをおんぶして逃げる様子が可笑しくて思わず笑ってしまいました。

 湿気の多い茶臼山は、あちこちに夏キノコがたくさん発生していました。ほとんどが不食か毒キノコですが。夏キノコの同定は、似たようなものが多く大変です。まず見つけたのは、小ぶりの猛毒ドクツルタケのような真っ白なキノコ。シロタマゴテングタケでしょうか。やはり猛毒です。真ん中はドクツルタケかと思いましたが違うようです。右は茶臼山でよく見るカブラテングタケでしょうか。それともシロタマゴテングタケの幼菌でしょうか。いずれにせよ不食です。

 これもテングタケ科のキノコです。おそらくコテングタケモドキの幼菌でしょう。毒キノコです。真ん中は、可食のオニイグチモドキ。これは食べたことがありますが、特に美味しいキノコではありません。右は栃木県人垂涎のチチタケ。乳茸と書くように傷つけると白い粘着く乳液を出します。とても美味しい出汁が出るキノコで、肉質が固くボソボソしていますが、ナスと炒めてうどんや蕎麦のつゆにすると絶品です。放射能汚染で、栃木県や群馬県のものはもう食べられないでしょう。長野県も犀川以北のものや軽井沢辺りのものは危険です。その他の地域のものも必ず除染して、過食は避けるべきです。
【信州の里山】キノコの汚染と除染について 』除染方法も記しましたが、完全ではありません。チェルノブイリでも、ベリー類とキノコの汚染が最も酷いものでした。高汚染地のものは、絶対に食べるべきではありません。東電は、郷土料理や日本の伝統文化を根こそぎ破壊しました。

 棚田へ下りる路で、紫色に輝くオオセンチコガネを見つけました。糞や腐肉を餌にするいわゆる糞虫で、森の掃除屋さんです。種類や地域個体群によって紫、緑、藍色、金色などの色彩変異がありますが、どれも糞虫などと呼ぶのはもったいないほど美しい甲虫です。
 小さな溜池の縁にムギワラトンボがいました。シオカラトンボですが、メスと若いオスはムギワラトンボと呼ばれます。他にはオニヤンマも舞っていました。茶臼山は、妻女山と違い棚田や溜池があるので、空梅雨でも虫達は元気です。なによりネオニコの空中散布がないことが、生態系を豊かにしています。

 湿った森の中に足を踏み入れると、倒木に粘菌(変形菌)を発見しました。所々小さな塊が盛り上がっているので、どうやらモジホコリ科ススホコリ属のキフシススホコリのようです。原形質流動を起こして盛んに成長しているところです。原形質流動は秒速1ミリ以上で、これは生物としては極めて速いものです。



 棚田の周囲には色々な花が咲き乱れていました。左からカワラナデシコ、ウツボグサ、ヤブカンゾウ。他にはハルジオン、ヤマホタルブクロ、ドクダミ、マツヨイグサ、ハナニガナ、クサフジ、キキョウ等々。ヤブカンゾウやカンゾウの蕾は金針菜といって中華料理の高級食材です。タンパク質、ビタミンA、B、C、リン、ほうれん草の20倍 の鉄分などミネラル成分も豊富です。炒めものや天ぷらで。不眠症、鬱症、自律神経失調症、貧血、健脳等に効くそうです。私も畑の縁で栽培しています。ニッコウキスゲの仲間です。

 茶臼山のアルプス展望台から見た山布施の山村風景。中央やや左に鹿島槍ヶ岳の雪渓が見えます。ここからは見えませんが、鹿島槍の北東に「カクネ里」と呼ばれる、その昔平家の落人が隠れ住んだ(下流の鹿島集落の先祖か)と言われる大きな谷があります。そこに氷河があるのではということで、この9月から調査が始まるそうです。もし氷河であれば、国内では4カ所目、信州では初となります。観光資源として期待されているそうですが、麓からは道路どころか登山道も通じていないので、現在は一般の人が辿り着くのは不可能です。右上にトンボが写っているのが分かりますか。オニヤンマです。ネオニコ空中散布のない茶臼山は、妻女山と違って昆虫と花の天国でした。

必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。

にほんブログ村 写真ブログへ にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ にほんブログ村 アウトドアブログへ にほんブログ村 アウトドアブログ ハイキングへ にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする