モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

猛暑の妻女山。何もいない樹液バー。クロメマトイの猛攻撃で退散。土用の丑の日ということで伊賀筑後オレゴンの手打ちうどん(妻女山里山通信)

2023-07-31 | アウトドア・ネイチャーフォト
 猛暑日が続く信州です。高原へ撮影に行きたいところですが、なにせ長野県は全国一ガソリン代が高いのです。県境の人は皆隣の県に給油に行っているそうです。ガソリン税は二重課税だし政府の無策には本当に腹立たしい。ということで久しぶりに妻女山山系へ。麓よりは3、4度低いのですが、今回はクロメマトイの猛攻撃に遭い1時間足らずで退散しました。とにかく雨が降らないので山はカラカラです。

 開けた場所でヤマトシジミが吸蜜中。花は蕾が立っているのでヒメジョオン(姫女苑)です。牧野富太郎博士が命名したハルジオン(春紫苑)は、寝ているし葉の根元が茎を巻いています。どちらも侵略的外来種ワースト100です。陣場平では見つけたら全部抜き取ります。

 コバギボウシ(小葉擬宝珠)。リュウゼツラン亜科ギボウシ属の多年草。一日でしおれる一日花なので、ちょうどいいところに出会えました。擬宝珠の名前の由来となった蕾も見られました。

 陣場平へ。もの凄い数のクロメマトイ(ヒゲブトコバエ)に取り憑かれました。長いタオルを振り回しながら歩きます。油断すると目に飛び込んできます。涙に含まれるタンパク質を狙っているのです。クロメマトイにはオニヤンマくんは役立ちません。ハッカオイルを塗って行ったのですが、効果ありませんでした(涙)。メマトイはマダラメマトイやカッパメマトイなど10種類ぐらいいるそうです。

 貝母(ばいも・編笠百合)はすべて種が飛んでいました。来年の発芽が楽しみです。

 セリバオウレンは葉がツヤツヤしています。株が大きくなってくれるといいのですが。

 ご天上の樹液バーへ。樹液はいつになくたっぷりと出ているのですが昆虫がいません。一種類の昆虫が激減は経年変化であるのですが、この様にすべての昆虫がいないというのは、極めて異常です。5月には咲くはずのウツギ、エゴノキ、ネジキの花が咲きませんでした。気象的なこともあるのかも。ただ3、4年前から明らかに昆虫が減っています。何が起きているのか非常に心配です。今年は3キロ離れた茶臼山の昆虫も減っています。

 2020年7月下旬の同じクヌギです。オオムラサキのメス、カブトムシのオス、アオカナブンがいます。

 2013年7月下旬の同じクヌギです。オオムラサキのメス2頭が吸蜜中、そこへオス2頭が忍び寄っています。オオスズメバチとカブトムシとアオカナブン。他のクヌギではオオムラサキのオスのグループが。他にはカナブン、ミヤマカミキリ、クジャクチョウ、スミナガシ、ヒメスズメバチ、コガタスズメバチ、チャイロスズメバチなどにハエの仲間もたくさんいました。
 2014年の千曲市による松枯れ病のネオニコチノイド系農薬の空中散布で千曲市側の昆虫は絶滅しました。中止になってから2年ぐらいで長野市側から昆虫が移り始め復活したかに見えたのですが、2020年頃から激減し始めました。理由は不明です。
2014年7月の記事:樹液バーとネオニコの記事が何本もあります

 ヌルデ(白膠木)の蕾。ウルシほどではありませんが、かぶれる人もいます。別名は、フシノキ。生薬名は、塩麩子(えんふし)/塩麩葉(えんふよう)/五倍子(ごばいし)。小葉と小葉の間に翼(つばさ)があるのが特徴。 ヌルデにできる虫こぶ(ゴール)のことを五倍子といいます。これは、ヌルデの若芽にアブラムシ科のヌルデノミミフシが寄生し、枝の翼に卵を産み付け、それが耳状にふくれたものです。
 五倍子は、タンニンの含有量が多く、染め物では空五倍子色(うつふしいろ)とよばれる伝統色として用いられます。古くはお歯黒などにも使われました。
「足柄の 吾を可鶏山(かけやま)の かづの木の 吾をかつさねも かづさかずとも」(詠人知らず) 万葉集(巻14)東歌 *カヅノキ(可頭乃木)=ヌルデ
(足柄の地の私を思うという名の山のカジノキのように私をかどわかして欲しい)


 ヨウシュヤマゴボウ(マルミノヤマゴボウ)。有毒です。繁殖力がもの凄く、妻女山では林道脇に繁茂し、在来植物を淘汰しています。オオブタクサ、セイタカアワダチソウと共に駆除すべき植物です。

 タケニグサ(竹似草)。毒草です。茎が中空で折ると黄色い汁が出てきます。これが有毒なのですが、皮膚病、たむし、みずむしなどの薬で、患部に直接塗るのだそうです。以前除草の際に触れてかぶれたことがあるので要注意。江戸時代にはハエ殺しの薬として便槽に入れたとか。

 振り払っても叩いてもまとわりつくクロメマトイに辟易。昆虫もいないので帰ることにしました。松代方面の眺め。積乱雲は発達していません。今日も雷雨は無いでしょう。

 西の眺め。北アルプスは雲の中。右に茶臼山。その右奥に虫倉山。いずれも拙書で紹介しています。リニューアルした茶臼山動物園は大人気の様です。帰りに桃の集荷場の横を通りましたが、買いに来た車で満車でした。川中島白桃は最盛期です。

 妻女山松代招魂社へ。県外ナンバーの車が3台ほど訪れていました。以前なら今頃はたくさんのオオムラサキが神社の切妻の壁に止まって休んでいたものです。今年はオスメス一頭ずつしか見ていません。

 土用の丑の日ということで、バンドエイドのガーゼの部分ぐらいの小さなうなぎが入った巻き寿司を買いましたが、うがつくものということで夕食は手打ちうどんを。友人が作った幻の小麦の伊賀筑後オレゴンで。麺は白ではなく薄いローズグレー。味は濃厚かつ芳醇。一般的なうどんとは比べられないほど。つけ汁の具は、この時期ならチチタケなんですが雨が降らないもので、今回は昨秋に採ったジコ坊(ハナイグチ)と油で焼いた小森ナス。出しは塩皮鯨、鰹粉、炒り粉、本味醂、醤油で作って冷やしておきます。薬味は父手作りの七味唐辛子。伊賀筑後オレゴンはネットで買える様なので、うどん好きのかたはぜひお試しください。

 信州の郷土料理のひとつ「夏野菜のくじら汁」。夏野菜は、信州伝統野菜の小森ナス、ボタンコショウに、カボチャ、モロッコインゲン。煮汁は、上のうどんつゆと同じです。塩皮鯨は、しっかり塩漬けの固いものと、ブロックの柔らかいものを使っています。おそらくゴンドウクジラとミンククジラだと思います。左上のキュウリは、ポン酢醤油と白出汁に、業務スーパーの人気商品・姜葱醤(ジャンツォンジャン)で漬けたもの。これやみつきになります。
 敗戦後の食糧難の時代、日本人を栄養面から救ったのが鯨でした。1年間に世界中でクジラが食べるエサの量は、3~5億トンだそうです。鯨保護がなされると同時に鯨食害論もあり、世界の海に散らばる鯨の生態調査は非常に難しいものの様です。興味のある方は、Wikipediaのクジラで検索を。
 昔、私がいた編集プロダクションで、C.W.ニコルさんにインタビューしたことがあり、著書の「勇魚」にサインしていただきました。近代日本の黎明と西洋との出会いを紀州太地の鯨刺しの青年の夢と野望を軸に描いた、波瀾万丈、近来まれに見る青春冒険小説傑作!という宣伝文句でした。非常にいい小説です。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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猛暑の中を茶臼山へ。ヒメアカネ、シオカラトンボ、アオイトトンボ、ノシメトンボ。ハンミョウを初見(妻女山里山通信)

2023-07-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
 最高気温の予報が35度の猛暑日、3週間ぶりに茶臼山へ撮影に向かいました。10時過ぎには標高370mの麓は30度ですが、りんご畑の道を登って標高700mの駐車場に着くと気温は26度。時折涼風も拭き上げてきます。しかし、直射日光は痛いほど。撮影の時以外は日陰に避難します。アブがもの凄いのですが、そう思って虫回避の服装。紺と白のボーダー柄のTシャツに白いアームカバー、白いパンツ。シマウマのボーダー柄には虫よけの効果があるそうで、牛に白い縞を描いたら虫が70%減ったそうです。今回も取り憑かれませんでした。白Tは目一杯集られます。黒は蜂に襲われます。山へ行くときはマリンファッションがいいのです。

 アキアカネより少し小さなトンボ。ヒメアカネ(姫茜蜻蛉)。マユタテアカネやマイコアカネと似ているのですが、眉は無いし顔も青っぽくありません。

 腹部の先端の形状からメスでしょう。トンボの翅は、細いパイプ状の翅脈(しみゃく)と、透明な薄い膜でできていますが、全体重の2パーセントほどしかありません。

 トンボの翅は4枚が複雑な動きをしてホバリングや少しなら横移動、後退もできます。筋肉が4枚の翅の基部につながっていて、それぞれを別々に動かせる直接飛翔筋型昆虫です。蜂は筋肉が翅ではなく外骨格につながっていて、筋肉を交互に収縮させて、外骨格全体を変形させて飛ぶ間接飛翔筋型昆虫です。

 シオカラトンボ(塩辛蜻蛉)。オスは成熟すると青くなります。メスはならないのでムギワラトンボと呼ばれます。腹部の第8節が横に膨らんでいる様に見えるのでメスでしょうか。

 アップにするとなかなか獰猛な面構え。肉食で蝶や蛾、ガガンボやハエや蚊などを食べます。成熟したオスは白く粉をふいた様になりますが、紫外線を反射する働きがあるそうです。

 アオイトトンボ(青糸蜻蛉)。

 メタリックな色が美しいトンボです。

 茶臼山は棚田や溜池が多いので色々なトンボが生息します。オオアオイトトンボ、モノサシトンボ、オツネントンボも見られます。オニヤンマも2匹いましたが、餌を捕らえた時しか止まらないので、今回は撮影できませんでした。

 ノシメトンボ(熨斗目蜻蛉)。熨斗目(のしめ)は、江戸時代に、武士が小袖の生地として用いた絹織物のこと。赤ん坊のお宮参りの着物。熨斗目蜻蛉は、腹部の黒い斑紋が熨斗目模様に似ていることが名前の由来とか。アキアカネと似ていますが、翅の先端が褐色なので見分けがつきます。

 少し早すぎるかなと思いましたが、ハンミョウの出る場所に行ってみました。しばらく待っていると一匹が出現。しかし、すぐに何処かに行ってしまい、満足な写真は撮れませんでした。8月に期待します。

 ノアザミ(野薊)。総苞が粘るのでこの後に咲き出すノハラアザミと区別ができます。この総苞によくザトウムシの脚や小さな昆虫が捕らえられているのを見ます。食虫植物ではないのになぜ粘るのかと思いましたが、おそらく受粉に寄与しないアリから守るためではないかと思います。

 先に咲いて散ったノアザミが種をつけています。風が吹く度にケサランパサランが飛んでいきます。

 ノアザミに来たのはヒラタアブ(扁虻)の仲間。

 名前の通り平たいアブ。腹部の文様がはっきりとは見えませんが、クロヒラタアブかも知れません。

 ノアザミで吸蜜するジャノメチョウ(蛇目蝶)。お目当ての絶滅危惧種のナミルリモンハナバチが現れないので帰ることにしました。まだ少し早すぎるのかも知れません。撮影時は息を止めているのですが、さすがにこの暑さでは頭がボーっとしてきました。

 ハルジオンで吸蜜するスジグロシロチョウ(筋黒白蝶)。オスはレモンの様な香りのする香嚢という袋を持っています。

 マメコガネ(豆黄金)。幼虫はブドウ、バラ、ヤナギ、そしてクズやマメ類などの根を食べ、成虫はそれらの葉を食べることから害虫として知られています。北米ではジャパニーズ・ビートルと呼ばれる外来の重要害虫。鳥やスズメバチが天敵ですが、土壌中のバチルス・ポピリエという乳化病菌が幼虫に寄生するため大量発生を抑えているということです。つまり、農薬の空中散布などで土壌汚染されて細菌が死ぬと大量発生の可能性もあるわけです。

 左奥に冠着山(姨捨山)。正午前、山上でも30度を越えています。ただ3時を過ぎると下がり始め、5時以降は涼しい北風が吹き始めるのでなんとかしのげます。夕立が降ると気温は一気に10度ぐらい下がるのですが、高気圧が強すぎて小さな夕立しか降りません。猛暑は信州の高原がいいですね。

 暑いので冷や汁。鯖の水煮缶詰、キュウリ、木綿豆腐、青紫蘇、すり胡麻、手作り信州糀味噌、業務スーパーの人気商品・姜葱醤(ジャンツォンジャン)。バックの手ぬぐいは、朝ドラ「らんまん」のモデル牧野富太郎と関係の深い南方熊楠の粘菌(変形菌)。

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妻女山里山デザイン・プロジェクトの除草作業。昼は絶品パエリアで。原因不明で激減した昆虫が気がかり。スケバハゴロモ(妻女山里山通信)

2023-07-22 | アウトドア・ネイチャーフォト
 貝母(ばいも:編笠百合)の球根の移植作業以来の妻女山里山デザイン・プロジェクトの作業です。今回は除草がメインです。農作業で忙しいメンバーもいるので、今回は4人。梅雨明け間近で蒸し暑く、クロメマトイに纏わりつかれてなかなか厳しい作業です。まずは安全第一で。信州も梅雨明けしました。

 まず長坂峠の除草。ノイバラとススキ、帰化植物のヨウシュヤマゴボウを刈ります。オオムラサキの幼虫が食するエノキが何本かあるのですが、樹下と周囲が藪にならない様に除草します。藪にするとイノシシなどの隠れ場所になってしまいます。また、冬期に幼虫が落ち葉の下に潜り込んで春を待つのですが、藪になると不可能です。ここは、昭和40年ぐらいまでは谷の下まで桑畑や果樹園でした。このすぐ左に東風越えという旧道があります。江戸時代、千曲川が洪水のときには松代藩の大名行列が越えた峠でもあるのです。

 ヨウシュヤマゴボウはヤマグワで根っこ深くえぐり土を被せます。気温は24度ですが、すぐに喉が渇ききつい作業です。

 陣場平のインセクトホテル。制作者が観察していますが、一番活躍するのは冬です。成虫で越冬する昆虫のホテルになります。

 陣場平ではオオブタクサを探して抜き取ります。昨年と前回の作業で徹底的に抜いたので激減しましたが絶滅はしていません。里山保全は帰化植物との戦いでもあるのです。貝母の種はほとんどが弾け飛びました。来年4月の満開が楽しみです。

 作業は11時で終わり、Kさんのログハウスを借りて昼食。まず掃除をしました。今回は久しぶりにパエリア。アルゼンチン赤エビ、ムール貝、ホタテ、タコ、マジックソルトに漬けた鶏肉、紫タマネギ、スナップエンドウ、ピーマン、バジルが具です。なんか米がアルデンテ過ぎましたが、美味でした。岸田売国奴政権、ドリームモータース事件、長野市や須坂市、千曲市の再開発の現状やら、グルメ情報やら、パルセイロの話、私がアマゾン放浪で何度も死にかけた話と話題はつきません。下界は31度ですが、山上は24度。まったりした時が流れました。

 ログハウスの階段が腐っていたので修理してくれました。さすがプロです手際が良い。山仲間で友人だった持ち主が亡くなって10年。家族もほとんど訪れなくなったので、私は撮影のたびに訪れるようにしています。人の気配や臭いがなくなると野生動物がいついてしまうからです。

 2時半ごろお開きに。下界はまだ暑いので息子と拙書の扉にもなっている倉科の三滝に行きました。いやあ涼しいです。この夏は猛暑というので暑い日はここに来て椅子とテーブルと食べ物と本を持って来ようと思いました。たまにツキノワグマも出ますが。

 ナツアカネ(夏茜)かアキアカネ(秋茜)が出現しました。ナツアカネ(夏茜)だと真っ赤になります。ただ未成熟だとこんな色です。区別できる胸部の横の黒い帯がちゃんと確認できなかったので、確実な同定はできませんでした。高校時代は、赤とんぼで校庭の空が真っ赤になるほどでしたが、もうそんな光景は見られません。

 マドガ(窓蛾)。しっかり開張しても12-18ミリぐらいの小さな蛾。幼虫の食草はボタンヅル。

 ニイニイゼミかヒグラシの空蝉(うつせみ)、抜け殻です。全体に艶があって、触覚の4番目の節(せつ)が3番目より長いのでヒグラシ(日暮)ですね。夕方になると山の方から、「カナカナカナカナ‥」と哀調のある鳴き声が聞こえる様になりました。アブラゼミも見ましたが、全体にまだ数は少なめです。
「ひぐらしは 時にと鳴けども 片恋に たわや女(め)我は 時わかず泣く」 作者不詳 万葉集 巻10-1982
 (ひぐらしは時間を決めて鳴くけれど、片想いに悩んでいる弱い私は、いつも泣いています)


 樹液バーには何もいません。千曲市のネオニコチノイド系農薬の空中散布が中止されて全滅した昆虫が2年で復活し始めたのですが。ここ2、3年ほど昆虫が激減しています。原因は不明です。異常です。長野県、長野市、千曲市も私の様に定点観測をしていないので知らないはずです。梅雨明け後にまた続けて観察します。

 イチモンジチョウ(一文字蝶)。 幼虫はウツギ・スイカズラなどの葉を食べます。

 シオカラトンボ(塩辛蜻蛉)。尾部の形からオスでしょう。オオムラサキのメスを一頭確認しました。少ないです。トンボは不退転の勝ち虫として戦国武将に好まれました。兜の前立てに使われましたが、有名なのは前田利家と本田忠勝、武田信玄の武将、板垣信方でしょう。

 ヤマハギ(山萩)が咲き始めました。花枝が長いのが特徴です。古名は、芽子、鹿鳴草など。古くから愛された花で、秋の七草。万葉集には142首詠まれています。鹿が男性の象徴で、芽子(萩)が女性の象徴とされたからでしょうか。鹿が萩の花の匂いを好むという説もあります。左下にアリが取り付いている何かの蛹が見えます。大きさから、おそらくツバメシジミかルリシジミだと思います。
「わが岡に さを鹿来鳴く 初萩の 花妻どひに来 鳴くさを鹿」大伴旅人 万葉集 巻8-1541
 (我が岡に牡鹿が来て鳴いている。萩の初花のような美しい妻を求めて牡鹿が鳴いています)


 載せ忘れたので追加します。除草前に息子のヤマグワに珍しい虫が。スケバハゴロモの幼虫です。カメムシ目でセミやカメムシの仲間です。桑が食草で、昔はこの辺りは桑畑で、現在も山桑があるので今の時期はけっこう見られます。飛んできたのではなく、綿毛のようなしっぽで風に乗ってヤマグワの柄に止まった様です。

 2012年8月に妻女山で撮影したスケバハゴロモの成虫です。成虫は翅が透明で儚く美しい。ほかには似ているベッコウハゴロモもいます。

 松代方面の眺め。帰郷して10年前ぐらいは妻女山でも親子連れでカブトムシや昆虫採取に来た人がいました。ここ数年はまったく見なくなりました。なぜだか分かりますか。親の世代が山遊びや川遊びをした経験がないのです。刃物や火を使った経験もない。キャンプブームとかアウトドアブームとかいわれますが、実態はこんなものです。自然は子供だろうと未経験者だろうと忖度はしません。里山、川、海、野原や湿地帯、観光地。どこだろうと正しい知識と経験がないと大怪我をするか最悪死にます。このブログや拙書ではなるべくそういう知恵やリテラシー(読解力)を記するようにしています。

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復活した小森ナスで作る信州郷土料理、丸茄子のおやき(妻女山里山通信)

2023-07-19 | 男の料理・グルメ
 善光寺平には伝統野菜の丸ナスがいくつかあります。小森茄子、川中島茄子、小布施茄子など沖積地に最も適した果肉が厚くて密度の高い、焼いても、煮ても、蒸かしても良しと何をしても美味しい茄子です。我が家は父が小森ナスを作っていたのですが、苗を作る人が高齢で止めてしまい、長いこと栽培されませんでした。それが近年伝統野菜を復活させようと、有志が栽培を始めたのです。

 写真は2004年8月、父が栽培していた小森ナスです。艶があってヘタの部分に鋭い棘があります。

 畑の様子。かなり大きな株になるので支柱を立てて、ナスが非常に重いので、時には枝を吊ります。 

 今回JAのスーパーの産直売り場で見つけた小森ナス。2個で税込み205円とリーズナブル。大きいのは直径が12センチあり、2個でなんと750グラムあります。

 生地は友人が作った幻の小麦粉、伊賀筑後オレゴン。通称いがちくです。純白ではなくやや灰色味がかっています。味噌は仲間と手作りの糀味噌。唐辛子は、焼いた青唐辛子をみじん切りにして、麹と醤油で漬け込んだものを使いました。ゴマ油でときます。紫蘇の葉で挟むのが我が家流ですが、今回は青紫蘇と赤紫蘇を使いました。

 出来上がりです。9個できました。シーズン初めなのでなんかとっちらかっています。材料すべてが市販のおやきとはまったく違います。コクのある深みとか素材の旨さは、他では味わえません。

●丸茄子のおやき レシピ
■材料(20個分)
信州丸ナス・・・・・・・・5個
中力粉(地粉)・・・・・・600g
水・・・・・・・・・・・・360cc(今回は準強力粉なので6割に)
信州麹味噌・・・・・・・・100g
ゴマ油・・・・・・・・・・大さじ1
青紫蘇の葉の大きなもの・・40枚
青唐辛子・・・・・・・・・1本(好みで)
 粉と味噌はやや多めに作るのがミソ。足りないと面倒ですが、余っても色々な料理に使えますから。

■作り方
1. ボウルに小麦粉、水を入れ、やや柔らかめの耳たぶの柔らかさに練る。
  濡れ布巾をかぶせて1時間以上ねかす。
2. 別のボウルに麹味噌、ゴマ油、好みで青唐辛子(焼いてみじん切り)をよく混ぜておく。
3. ナスを洗ってヘタを落とし、横に4等分の輪切りにする。輪切りにしたものに切れ込みを入れる。
4. 3の切れ目に2の合わせ味噌を、ナスの大きさに応じて小さじ1ほど挟む。
5. 手のひらに水をつけ、ねかしておいた小麦粉を適量手に取る。
6. ナスをのせ、周りから小麦粉をひっぱって包む。包んだら青紫蘇の葉ではさむ。
7. 大きめの蒸し器を火にかけ沸騰させておく。ナスをくっつかないように斜めに重ねていく。
8. 強火で20分ほど蒸して、箸がスッと入ればできあがり。

 2003年、次男が低学年の時に母さんに手伝ってもらって作った小森ナスのピザ。果肉がしっかりしているので、ピザにしても溶けてしまわず歯ごたえがあります。ピザ生地(pizza dough)も彼の手作りです。この頃彼は料理に興味を持って、自由研究でゴーヤチャンプルーを作ったりしていました。

 当時、父が送ってくれた小森ナスや夏野菜。伝統野菜は、化学肥料や農薬を嫌い、売り物にするには歩留まりが低くてなかなか育てるのが難しいのですが、味は大量生産のF1種などとは比べ物になりません。出始めの一番美味しい食べ方は蒸しナス。半分に切り、縦に1センチ幅に切れ込みを入れ蒸します。冷やして辛子醤油でいただくと最高です。アクが出てくる秋口のナスは、油で素揚げして生姜醤油でいただきます。ナスの辛子漬けもよく作りました。小森ナス、キュウリ、ボタンコショウ、ミョウガ、紫蘇の実、大根の味噌漬けなどをみじん切りにして作る郷土料理のやたら漬けも夏の定番です。息子達が育ち盛りの頃は、丸茄子のひき肉挟み揚げフライを妻がよく作ってくれました。
 在京時代、隣のブルーコメッツのジャッキー・吉川さんとは色々物々交換していたのですが、丸茄子も美味しいとすごく喜んでくれました。息子の友だちのお母さんにあげたところ、ナス嫌いの同級生が、お母さん僕このナスなら食べられると言ったと聞きました。もし、長野市や千曲市にいらしたらJAのスーパーや産直売り場で伝統野菜を探してみてください。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

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万葉集にも詠われた合歓の木の花。天女の羽衣雪ノ下。山紫陽花と虫取り撫子。ミナミヒメヒラタアブ、ヤマトシジミ、ベニシジミ。(妻女山里山通信)

2023-07-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨の晴れ間。前日も晴れでしたがかなりの降雨だったので翌日にしました。信州の里山は葉が生い茂り鬱蒼としてきました。鞍骨山に向かうという方と邂逅。しばらくお話をしました。淡竹の筍の季節が終わったので鏡台山からツキノワグマはもう下りてきませんが、オオスズメバチやチャイロスズメバチは要注意。万一刺されたときに備えてポイズンリムーバーは必携です。イノシシのオスも油断できません。運が良ければニホンカモシカに出合えるでしょう。

 ネムノキ(合歓木、合歓の木)マメ科ネムノキ亜科の落葉高木。夜になると小葉が閉じて垂れ下がる就眠運動を行うことで眠る木。
「昼は咲き 夜は恋ひ寝(ぬ)る 合歓木(ねぶ)の花 君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ」 紀女郎(きのいらつめ) 『万葉集』巻八1461
(昼に咲いて、夜には恋しい想いを抱いて寝るという合歓の花を私だけに見させないで。君もここに来て見なさいな):紀女郎が大伴家持に贈った歌ですが、紀女郎は年上の人妻で、戯奴というのは目下の人を呼びかける言葉だそうです。人妻が若者をからかったのか、誘ったのか。背景を知ると、なんとも意味深な歌です。

 ネムノキは高さ10m以上になります。花は葉の上に咲くので、下からはよく見えません。ここは林道下の斜面に根本があるので間近で見られます。化粧の刷毛の様でもあり、線香花火の様でもあり。繊細な花です。なんとも形容し難いかすかに甘い香りがします。赤松と同様に排気ガスには弱く、我が家の山の大木は高速道路ができたら数年で枯れました。葉は合歓皮(ごうかんひ)といって漢方薬です。利尿、強壮、鎮痛、腰痛、打ち身、腫れ物、水虫、手荒れ、精神安定などに効くそうです。貝原益軒は「この木を植えると人の怒りを除き、若葉を食べると五臓を安じ、気をやわらげる」と記しています。
「象潟(きさかた)や 雨に西施(せいし)が ねぶの花」松尾芭蕉 西施は、中国の春秋時代の呉を滅ぼした傾国の美女。その越に滅ぼされた呉のエリートたちが日本に渡来して弥生時代を作ったのです。その後、越も滅ぼされ、また日本に渡来します。詳しくは下のリンク記事を。
中国正史の書を読む梅雨空の好日。『中国正史 倭人・倭国伝全釈』『中国正史の倭国九州説 扶桑国は関西にあった』『西暦535年の大噴火』(妻女山里山通信)
「合歓咲く 七つ下りの 茶菓子売り」小林一茶 江戸の八丁堀の合歓の木が咲く小腹が空く午後4時頃に、茶菓子売りの声が聞こえる様。どんな茶菓子だったのでしょう。茶饅頭か、夏だから水菓子か。

 ヤマアジサイ(山紫陽花)。別名は、サワアジサイ。周辺は装飾花で、中心部は両性花。ガクアジサイに比べると、花の色が色々あります。万葉集の二首。
「言問はぬ木すら味狭藍(紫陽花) 諸弟(もろと)らが練の村戸(むらと)にあざむかえけり」(大伴家持 巻4 773)
  (恋を語らない木ですら、紫陽花のように移ろいやすい。巧みな言葉に私は騙されてしまいました。)
「味狭藍(紫陽花)の 八重咲く如 やつ代にを いませわが背子 見つつ思はむ(しのはむ)」(橘諸兄 巻20 4448)
  (紫陽花が八重に咲くように、ますます長い年月を生きてください。紫陽花を見ながらあなたをお慕いします。)

 ミナミヒメヒラタアブがドクダミで吸蜜しようとホバリング。これは複眼がくっついているのでオスですが、体長が8-9ミリしかないので、まず見つけるのがひと仕事。小さすぎて羽音もしません。胸部と腹部の間の両側に小さなヘラ状の突起が出ています。昆虫は4枚の翅を持っていますが、ハエ目の昆虫は2枚です。これは後翅が退化して平均棍という飛翔の際にバランスをとるための器官に変化したものです。

 ユキノシタ(雪の下・虎耳草・鴨脚草・鴨足草・金糸荷)ユキノシタ科ユキノシタ属。羽衣を着た天女の様な可憐な花です。切り傷の化膿、やけど、中耳炎、扁桃腺、腫れ物、健胃、解毒、解熱、鎮咳、心臓病、腎臓病などの薬草です。葉は天ぷらで。もちもちとした歯ごたえで特に美味でもありませんが、体には良さそう。

 子供の頃はネバネバ草と呼んでいました。ムシトリナデシコ(虫取り撫子)ナデシコ科の越年草。別名は、ハエトリナデシコ、コマチソウ、ムシトリバナ。ヨーロッパ原産の帰化植物で、江戸時代に観賞用として移入されました。学名 Silene armeria Sileneのシレネは、ギリシャ神話の酒の神バッカスの養父の名にちなむもの。茎の茶色の部分が粘るのですが食虫植物ではなく、受粉することなく密だけ食べに来るアリを防ぐものといわれています。

 カタバミにヤマトシジミ(大和小灰蝶、大和蜆蝶)。幼虫の食草がカタバミなので、その周辺で見られます。陣場平へも行きましたが何もいません。そこで急遽、茶臼山自然植物園へ向かうことにしました。最近リニューアルして大人気の茶臼山動物園のゲートの横を進んで植物園の最上部にある駐車場へ。ここは穴場です。

 茶臼山自然植物園のイングリッシュガーデンの様な一角。個人的にはこういうガーデンをトップクラスのガーデナーを呼んでもっと大きく作って欲しいと思います。訪れる人も増えるでしょう。今日は、なかなか蝶や甲虫が見られません。オオムラサキもいませんでした。オオヒカゲとコミスジぐらい。たくさん咲いている白い花は、ガウラといい北アメリカ南部原産。和名は、白い蝶が飛んでいる様なことから白蝶草。

 やっと見つけたのはルリシジミ(瑠璃小灰蝶)。ヤマトシジミに似ていますが、目が真っ黒です。翅の表面は水色から明るい青紫色。瑠璃色ということでルリシジミ。春先から晩秋まで、山地から田畑、人家周辺でも見かけます。幼虫はバラ科、マメ科、ブナ科植物の蕾や花を食べます。

 フランスギク(仏蘭西菊)で吸蜜するベニシジミ(紅小灰蝶)。 幼虫の食草は、スイバ、ギシギシなど。地表近くを飛び、わりとすぐに止まるので撮影しやすい蝶です。

 メスグロヒョウモンのオスでしょうか。それともオオウラギンスジヒョウモンのオスでしょうか。ちょっとこのカットでは同定できません。ツマグロヒョウモンのメスも舞っていましたが撮影できず。

 これはまた随分と翅の色が抜けたヒョウモンチョウの仲間。コヒョウモンかしら。違いますね。同定不可。

 上の2つが吸蜜していたのがこの植物。クガイソウに似ていますが、ヒメルリトラノオ。ヨーロッパ~北アジア原産のベロニカ・スピカータの小型品種です。

 キキョウ(桔梗)キキョウ科の多年生草本植物。根を生薬で桔梗根といい、去痰、鎮咳などの薬効があります。夏から咲きますが秋の七草で、山上憶良の「七種の花」の歌「萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」の朝顔が桔梗であるとの説があります。

 振り返ると丸太小屋の展望台(休憩所)。手前の黄色い花は、北米原産のルドベキアの一種。草丈が180センチぐらいあります。別名は松笠菊。

 展望台から見る善光寺平。左奥に根子岳と四阿山。手前に奇妙山。右奥は保基谷岳、手前は皆神山。日向は灼熱ですが、日陰は湿度が低いので快適です。手前に咲く白百合は、ニワシロユリ。バルカン半島および西アジアを原産とするユリで、バチカン市国の国花です。英名はマドンナリリー。草丈2mぐらいになります。日本のテッポウユリの仲間。

 7月8日、今年も庭にツマグロヒョウモン(褄黒豹紋)のメスがやってきました。赤と黒の鮮やかな幼虫の食草はスミレ類やパンジー、ビオラの葉。南方系の蝶で、昔はいなかったのですが、今では真夏の信州の亜高山でも見られます。

「ニラの挟みおやき」具はニラ7割、新玉葱3割をみじん切りに牛豚合いびき肉。信州糀味噌と鰹出汁と炒り粉をゴマ油で練る。皮は幻の小麦粉、伊賀筑後オレゴンにとろろ、卵、炒り粉に水入れて柔らかめに。とろろを入れると柔らかく上品な仕上がりに。冷めても固くなりません。やや多めのゴマ油と綿実油で蓋をして片面6分ずつ中弱火で焼くとできあがり。具をむきエビにして、豆板醤、甜麺醤、牡蠣油、中華出汁にすると、中華風エビニラおやきになります。

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