モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

今回の妻女山SDPは、カラコギカエデと悪戦苦闘。癒しの天使がまた(妻女山里山通信)

2014-09-24 | アウトドア・ネイチャーフォト
 今回の妻女山里山・デザイン・プロジェクトは、立枯した樹木の伐採や、以前伐採して枯れるまで放置してあったカラコギカエデの除去、そして除草でした。里山の雑木林というのは、理想的には葉が一層がいいのですが、二層三層となると、地面にはほとんど光が差さず、暗い森になってしまいます。特に、株立したカラコギカエデやダンコウバイは、森を暗くします。加えてヤマフジやミツバアケビが絡みつくと、樹木の葉を覆ってしまい、立ち枯れを引き起こします。そこで、除伐をするのです。
 昔は、木山といって、薪の採取や山の畑のために常に除伐や除草が行われていたので、里山は整備されていました。現在は、人の手が入らず荒れ放題。しかし、リテラシー(読解力)がないと、それも分かりません。整備されることで繁栄してきた生物達もたくさんいるのです。その代表的な例が、国蝶のオオムラサキです。

 株立して複雑に絡み合ったカラコギカエデは、下の枝が枯れ死します。それを伐採して取り除くのですが、生木だと難しいので、2年ほど前に切って枯らしたものを引き抜きました。かなり乾燥しているのでいい薪になります。既に腐朽菌のキノコが繁茂していました。真ん中は、ノイバラやミツバアケビに巻きつかれて枯れ死したズミ。主幹は生きているので、枯れ死した太い枝を切り落とします。右は、二層になった下の部分のカラコギカエデを切り落とし、光を入れます。

 ノイバラの除草をしています。ノイバラも森の縁に繁茂すると高さ3m位になり、幹も太く木質化。森へ入ることができなくなってしまいます。西洋の数々の新種のバラを作り出すためにこの日本のノイバラが使われたそうですが、里山ではなかなかに厄介なしろものなんですよ。シューベルト作曲、ゲーテ作詞で有名な「野バラ」なんですが・・。真ん中は、2本に株立したカラコギカエデの1本を伐採したところです。左から斜めに生えたヤマザクラに掛かり木になりましたが、これは計算済みで、この後ヤマザクラを伐採して両方共倒しました。これで暗かった森に光が入りました。右は、ヤマグワの高木ですが、真ん中に枯れた株があったので、これを伐倒。ヤマグワの実は森の動物や昆虫たちの大切な食料です。林下には、ガマズミなどがあるのですが、これも適度に除伐。ガマズミの赤い実は、果実酒にすると抗酸化作用のあるいいリキュールになります。カラコギカエデは、旺盛に株立するので、年に3回ぐらいは株立を切る必要があります。

 除伐した木は、適当に玉切して積み上げます。伐倒した木にはミツバアケビの実がたくさん成っていました。これはまだ熟れていませんが、紫色に熟しているものもありました。昼のおやつになりました。少し手の込んだ料理ですが、「アケビのブルーチーズ入りミソバーグ」はおすすめです。酢水に浸けてアク抜きの塩梅がポイントです。抜きすぎると味も落ちます。
 2時間ほどで作業は無事に終了。森にも適度に光が差すようになりました。当日の朝の冷え込みのためか、煩いクロメマトイが姿を消したので、作業もイライラすることなく快調に進みました。そこいらじゅうに付くヒッツキムシを除いては。

 そして、昼餉の準備。今回も7月に来てくれたYさん親子を招待しました。今回は、前回来られなかったお兄ちゃんも一緒です。K氏がミツバアケビの中の果肉を口に含んで甘い果汁を吸ったあとで、大量の種をブブブッと吐き出す技を披露してくれましたが、失笑されていました。
 今回は、K氏が作った幻の小麦、伊賀築後オレゴン(通称イガチク)で焼いたパンをS氏やN氏なども焼いて持ってきてくれました。そこへ私が作った手作りベーコンを焼いて、ガーリックトーストに乗せたり、S氏が作ったローストビーブを乗せたりして頂きました。ベーコンやローストビーフは、二人のキッズに大好評でした。タマネギを炒めたり、丸ナスを焼いたり。更には秘密のシロで採ったウスヒラタケ(除染済み)をベーコンとガーリックバター炒めに。これも絶品でした。
 最高気温は25度で、里は暑かったようですが、山は風もあり日陰は涼しいほどでした。そして、食後は私が汲んできた鏡台山の縄文の名水で入れたコーヒー。超軟水なので、非常に柔らかい味のコーヒーになります。

 食べるだけ食べてお腹がいっぱいになったところで、今回の隠し球、ハンモックを吊りました。これは私が南米アマゾンを旅していた時に使っていたものです。これで、小さい頃の息子達も遊びました。適当に吊る木と場所がないので、林道を塞ぐ形で吊ることにしました。ずっと雨もなくキノコも出ていないので、キノコ狩りの車も来ないだろうとの判断です。ハンモックはメチャクチャ気に入ったようです。もっと揺らして!下ろして!乗せて!と大はしゃぎ。オフロードバイクの二人が来ましたが、笑いながら端っこをくぐり抜けてくれました。ありがとう!
 挙句に地面を覗いていた次男のR君が、砂の中に大量の茶色いウジ虫が隠れているのを発見して大騒ぎ。ヨトウガの幼虫、ヨトウムシの一種でしょうか。このハンモックは、後でお母さんも乗っていましたが、大変気に入ったようです。ハンモックを森に吊って読書したり、お昼寝したりって最高の贅沢です。ちなみに森林組合に勤めている長男は、お昼休みにこれをやっているそうです。
 更にオオスズメバチの死体を発見して大騒ぎ。持って帰る持って帰るとわめくので、K氏が針だけ抜いてくれました。周囲には死体が散乱。なにがあったのでしょう。気がかりです。初夏にスズメバチが多いとハイカーに危ないのでハチトラップを仕掛けることもあるので、ハチのサンプルはたくさん持っていますが、千曲市のネオニコ(神経毒)空中散布もあるので、今年は仕掛けませんでした。ミツバチが全滅すると、人類も4年で絶滅するとアインシュタインが言ったとか。愚かです。無知なるが故に、静かに滅亡は迫っているのです。

 そんなこんなで、ゆるゆると午後が過ぎて行きました。妻女山から見た松代の城下町と里山。奥に根子岳と四阿山が見えます。左の奇妙山の右上や、空に見える黒い粒は、アキアカネです。ヤマザクラが色づき始めました。まだミンミンゼミとツクツクボーシが鳴いていますが、夜は家の周りでコウロギが鳴いています。少しずつ少しずつ秋が深まっていく信州です。

★『伊賀筑後オレゴン種(通称イガチク)』は、 三重県伊賀上野市の農林省関西試験場が、筑後平野で作っている小麦と、アメリカ西部のオレゴン州の小麦を交配して作った硬質小麦です。日本の小麦は、軟質小麦。アメリカのオレゴン種はグルテンが多い硬質小麦です。この二つを交配して作られたのが伊賀筑後オレゴン種で、準強力粉です。信州の善光寺平から上田にいたる間の千曲川の沿岸で、大正時代から戦後まで作られた人気の小麦でした。 わが家でも父が昭和30年代半ばまで作っていました。60俵も収穫していたそうですが、イガチクは小麦の粒がこぼれやすく面積あたりの収量も少なかったので、新品種に取って代わられたということです。現在、その懐かしい味を再現しようと、有志の方々が再び作り始めています。わずかに市販もされていますが希少です。これで食べる、埴科更科名物の郷土料理「おしぼりうどん」は絶品です。うどん通垂涎の、幻の小麦です。本当のうどん通ならぜひイガチクを食べてから薀蓄を語ってください。

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◆この度、「信州 山の日」制定に伴い、「信州 山の達人」の募集がありましたが、私がそのひとりに選ばれました。妻女山SDP(里山デザイン・プロジェクト)の活動や、ブログ「モリモリキッズ」や当サイトでの情報発信活動が、「独自性」「継続性」「有効性」「発信力」の観点から優れていると認められ、選考されたということです。今後も、里山保全活動や、里山インタープリター、ネイチャーフォトなどに力を入れていくつもりです。
妻女山SDPの活動記録は、■MORI MORI KIDS Nature Photograph Galleryのインデックスの妻女山SDPか当ブログ「モリモリキッズ」をご覧ください。


必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ:グリホサート剤)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。

★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
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鏡台山の柴平樽滝線で野菊の同定調査。完全にど壺にはまりました(妻女山里山通信)

2014-09-20 | アウトドア・ネイチャーフォト
 聖山で撮影した野菊がなんであるか非常に気になったので、この時期野菊が多い鏡台山の柴平樽滝線やその支線へ調査に行ってきました。その結果ですが、増々分からなくなりました。6倍体とか交雑種もあるらしく、これはDNAレベルまで調べないと完全な同定は無理だと分かりました。そんなですので、割り引いてお読みください。たかが野菊、されど野菊。
 シロヨメナは、ノコンギクの亜種とされシオン属です。ヨメナやカントウヨメナはヨメナ属です。シロヨメナはヨメナとつきますがヨメナ属ではありません。まずこれが混乱の元です。菜とつくのは、若葉が山菜になるからです。

 これは、花の直径が10ミリぐらいしかありません。草高も40センチぐらいで、非常に華奢な感じです。冠毛は短いです。葉には艶があるのですが、針状の毛があります。ヨメナに近いのですが、葉の針のような毛が解せません。ハナビラも非常に細く、枚数が異常に多い。もうこれだけで、なにがなんだか分かりません。ヨメナは、山地で見かけることはまずないという記述もありますが、種が車のタイヤに付いて運ばれたのでしょうか。交雑種でしょうか。でも、これよく見るとヒメジョオン(姫女苑)じゃないですか? そうですよね、このハナビラは。ヒメジョオンももちろんキク科ですが、ムカシヨモギ属ですね。北米原産の帰化植物です。ヒメジョオンは、ハルジオンとともに要注意外来生物に指定されているほか、日本の侵略的外来種ワースト100にも選定されているんです。

 同じ場所の林道の反対側の野菊。花の大きさは20ミリぐらいで倍近くあります。草高も1mを超えるほど。冠毛は長いです。葉はざらついています。ということで、これはノコンギクと断定していいのでしょう・・か。ひとつ前の聖山の記事で、薄紫の野菊を紹介しています。麻績村の説明では、ムラサキシロヨメナと書いてありますが、三和峠で撮影したものは、それほど葉に艶がなかったので、ノコンギクだと思うのですが・・。難しいです。

 そして、支線に入った所に群生していた野菊。花は16~17ミリぐらいで、茎の上部でたくさん分岐して花をつけています。葉の形と付き方が特徴的です。上の野菊の特徴とよく似ています。枝分かれしたたくさんの花がつくところは、ノコンギクやシロヨメナと同じシオン属のゴマナとも似ているのですが、葉はそれほどざらついてはいません。葉が茎を巻き、花の冠毛は長いので、これもノコンギクでいいのかもしれません。ちなみにゴマナの名の由来は、江戸時代の草木図説(飯沼慾斎著)の図に、ゴマナを「葉が胡麻に似る」という記述からだそうです。

 少し標高の低い所の崖下に群生していた野菊です。葉の付き方が非常に特徴的です。花は15ミリぐらいで、茎が横に出る感じです。草高も50センチぐらいと低め。葉の切れ込みが深いものもあるので、ユウガギクかなと思うのですが・・。やれやれ。「野菊の墓」の気分です。

 三滝沢の林道から見た風景。眼下にうねる長野自動車道。左右に伸びる直線は、上信越新幹線。その向こうの山は、茶臼山と姨捨山の中間辺り。山頂に川中島カントリークラブがあります。こんな里山の上にゴルフ場があったら、除草剤で下の地下水は汚染されているでしょう。そういえば、勤めていた知り合いのおばさんが、ジコボウがたくさん出るけど、農薬使ってるから誰も採らないって言ってました。右奥の高い山は、神話の山・虫倉山です。晴れていれば、中央奥に白馬三山が見えるのですが。
 右は、縄文の名水。なぜ縄文なのかよく分かりませんが、真夏でも水温が8度しかなく、非常に美味しい軟水です。今回は8リットル汲みました。これでコーヒやお茶を入れると、驚くような美味しさです。ハッキリ言って、いくつかの日本百名水より遥かに美味しい水です。熊も飲みに来るので、熊鈴を忘れずに。

 支線にキンポウゲ科センニンソウ属のクサボタン(草牡丹)の群生がありました。毒草です。真ん中はシソ科のカワミドリ(河碧・川緑)。野草は切り花にするとしすぐ萎れてしまうものがほとんどですが、カワミドリは強く、蕾で採ってきてもちゃんと花瓶で開花します。茎の断面も四角で丈夫です。全草に強い香りがありますが、オミナエシのように部屋が臭くなることはありません。生薬名は、藿香(カッコウ)で、古くから風邪や頭痛に用いられていた薬草です。
 一番右は。 ユリ科のウバユリ(姥百合)。花期には葉(歯)がないことから姥の百合らしいのですが、結実してもボロボロですが葉はあります。ぎっしり詰まった種の割には群生はあまり見ないので、この種の形も多い割には発芽成長率はあまり高くないのかもしれません。若芽、鱗茎ともに食べられる山菜です。花が咲くのはこぼれた種子が発芽してから6~8年目です。開花すると枯れますが、翌年は鱗茎から芽が出て開花します。

 キノコ狩りに来たわけではないのですが、タマゴタケ(卵茸)。テングタケ科のキノコでは唯一安心して食べられる美味しいキノコ。和風よりコンソメスープやチーズクリームパスタなど洋風料理によく合います。ロシアでは帝王のキノコと呼ばれるそうです。タマゴタケのクリームパスタのレシピをどうぞ。今回は鶏肉とクリームリゾットにしました。
 真ん中は、アミタケ(網茸)。有名な食菌ですが、私は採りません。どうも相性がよくないようで、お腹を壊すのです。
 最後は、食菌のウラベニホテイシメジと間違えやすい毒キノコのクサウラベニタケ。よく似ていますが、軸が細く華奢で枯葉から出るため短め、ウラベニホテイシメジはその下の地面から出るので太く長めです。毒のイッポンシメジも間違えやすいので要注意。
ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケ(毒)の見分け方、食べ方

 バラ科のキンミズヒキ(金水引)。春先の若葉や若芽は山菜になるそうですが、食したことはありません。生薬名を龍牙草(りゅうげそう)又は、仙鶴草(せんかくそう)といい、止血や抗菌、消炎、鎮痛作用があるそうです。
 真ん中は、タデ科のオオイタドリ(大痛取)。高さ3mぐらいあります。オオイタドリは、山菜でもあり関節痛などに効く薬草でもありますが、真夏のトレッキングで、これの藪に行く手を阻まれるとかなり大変です。この鏡台山の三滝沢米子の滝の上から根子岳へ登った時には、本当に難儀しました。トレッキングに鎌が必須となります(笑)。最後は、鏡台山の谷筋に多いタマアジサイ(玉紫陽花)。

★千曲市の林道柴平樽滝線は、全面舗装ですがガードレールがほとんどありません。運転を誤ると谷底です。乾燥した枯葉が積もる晩秋は、雪より滑ります。積雪期、特に春先は溶けて凍結したアイスバーンの路面になり、スタッドレスでも非常に危険です。また倉科側が通行止めになるので、森の沢山側から入っても倉科には下りられません。狩猟期には猪刈りも行われます。全面舗装なので、マウンテンバイクはもちろんロードバイクもおすすめです。倉科から登って、沢山で坂城方面へ登り、和平高原から坂城へ下りるのもおすすめです。熊の生息域なので熊鈴など音の出るものを。私は3回遭遇しています。

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360度の大展望と豊かな植生を誇る麻績村の聖山へ。ジコボウもゲット(妻女山里山通信)

2014-09-17 | アウトドア・ネイチャーフォト
 冠着山(姨捨山)、鏡台山と続いて、今回は麻績村(県外の人はおみむらって読めないでしょうね)と長野市大岡(旧大岡村)に跨る聖山(1447.2m)へ登ってきました。聖という名前の通り、かつては修験の山でした。その大きな山体は、善光寺平からもよく見え、山頂に大きなアンテナがいくつも建っているので山座同定がし易い山です。善光寺平南部では昔から「聖曇れば雨、冠着上がれば晴れ」と言われてきた観天望気の山です。冠着山、四阿屋山と合わせて筑北三山といいますが、360度の大展望は本当に感動ものです。今回は、聖湖から別荘地を登り三和(みつわ)峠に駐車。ここを起点としました。他にかつての「塩の道」を歩く坊平からのコース、聖山パノラマホテルから遊歩道を登るコースなどがあります。聖山登山マップ

 山頂までは、最初と最後に急登がありますが、中間は写真のようななだらかな尾根歩きで、植生も豊かで色々な花が楽しめました。尾根が東西に伸びている山は南北で気候が異なるため植生に変化が大きいのです。山頂までは1時間半とありますが、今回は撮影しながらでも1時間で着きました。帰りはやはり撮影しながらですが、30分でした。初心者や子供でも登れるいいコースだと思います。熊鈴は付けましょう。
 シシウドが咲いていました。帰りに大岡側の聖山パノラマホテルまで行ってみましたが、道沿いのシシウドが高さ3mもあり驚きました。
 最後はシシウドの花で吸蜜するヒラタアブの仲間。蜂群崩壊症候群(ccd)といって全世界的にハチやハナアブが農薬や殺虫剤によって激減しています。「ノアザミでハナアブが鳴らす人類への警鐘

 登山道途中の林下には、キンポウゲ科のサラシナショウマ(晒菜升麻)が咲き乱れて揺れていました。しばらく見とれていました。ナデシコ科のフシグロセンノウ(節黒仙翁)。ポンと咲く(触れた瞬間にポンと開くのを見たことがあります)色も派手な花ですが、日陰を好む植物です。

 シロヨメナと思ったのですが・・。右は、麻績村のサイトにもムラサキシロヨメナと書いてあるのですが、冠毛の感じからするとノコンギクでしょうか。葉も艶がないですし。シロヨメナは、ノコンギクの亜種で、交雑種もあるそうですから、増々混乱します。ヨメナは耕地周辺に多く、山地で見かけることはまずないそうです。野菊の同定は本当に難しいですね。写真だけでなく実際に採取してきてつぶさに観察しないと同定は無理です。
 最後はキク科のキオンの残花。別名は、ヒゴオミナエシ。

 セキヤノアキチョウジ(関屋の秋丁字)。いかにも曰くありげな名前ですが、関屋は、関所の番小屋。関屋のある箱根に多く見られることから関屋の秋丁字と呼んだのだそうです。チョウジは香辛料のクローブのことで、江戸時代は香辛料というより、香料や薬として用いられたようです。風に揺れてピントが定まらず、中途半端なカットになってしまいました。
 中央のヤマトリカブト(山鳥兜)は、全草が猛毒で知られています。キンポウゲ科の花は毒草が多いので要注意です。
 最後はシソ科のジャコウソウ(麝香草)。花ではなく、葉や枝をゆするとジャコウの匂いがかすかにします。

 キキョウ科のソバナ(岨菜・蕎麦菜)。若葉は山菜で、茹でてお浸しや汁の実にしたり、飯に混ぜたりして食べるそうです。
 中はオミナエシ科のオトコエシ(男郎花)。黄色い花の咲くオミナエシより茎が太いのが特徴。オトコエシミフクレフシというゴール(虫えい)ができます。別名は、オミナエシを粟に見立てて女飯と言うように、オトコエシを白米に見立てて男飯とも言います。
 最後はキク科のヤマハハコ(山母子)地下茎で植えるので、林道脇などに群生します。白いハナビラ状のものは総包片で、中央の黄色い部分が花。

 キク科のタイアザミ(大薊)。ナンブアザミの変種。次は、薊に似ているけれどキク科のオヤマボクチ(雄山火口)。根は山菜のヤマゴボウ。信州では飯山市の富倉蕎麦が、この葉の繊維をつなぎに使うので有名です。富倉蕎麦の汁は、現在は普通の蕎麦つゆですが、元々は大根の味噌漬けを煮だした独特のものだったそうです。オヤマボクチの繊維は、上杉謙信が火縄銃の火種としても使ったとか。
 最後は、鏡台山の山頂に群生地があったキク科のハンゴンソウ(反魂草)。これも若芽は山菜です。

 キノコもあちこちにたくさん出ていました。まずはベニテングタケ(紅天狗茸)。幻覚症状の出る毒キノコですが、信州では、これを塩漬けして毒抜きをして(完全には抜けない)食べる人達がけっこういます。友人でも何人かいますが、興味本位で食べるようなものではありません。かのバイキングは、戦の前にこれを食べて士気を上げたそうです。
 次は、絶対に間違っても食べてはいけない世界三大毒キノコのひとつ、ドクツルタケ(毒鶴茸)。だいたいこれ1本で8人分の致死量の毒があります。別名は、死の天使。ただし、これを何本かポットントイレに入れておくと、ひと夏ハエが発生しません。しかも生分解するので環境を汚しません。ネオニコ系の殺虫剤などより、よほど安全です。
 最後はたぶんオシロイシメジ(白粉占地)。これも最近は毒キノコに分類されていますが、友人知人にはこれを好んで食べる人もいます。ただしキノコは、4000種類以上もあり、中には同定されていないものもあります。近縁種の猛毒キノコだってあり得ます。特に白いキノコは要注意です。キノコ屋の言葉に、「どんなキノコも一度は食べられる」というのがあります。でも猛毒だった場合、二度目はありません。昨今は放射能汚染の問題もあります。

 青っぽいキノコ。ベニタケ科のカワリハツ(変わり初)の青緑系か、クサイロハツ(草色初)か。どちらも可食なんですが、アイタケもそうですが、この色は食欲がわきませんね。カワリハツは、赤、紅、白、黄、茶、緑、紫、黒と色々あるのですが、素人は手を出さないほうが賢明です。
 次はカラカサタケ(唐傘茸)。傘の直径が20センチもあります。これは食菌で、私もフライにして食べたことがありますが、近縁種に猛毒のものがたくさんあるので完全に同定できないなら食べない方がいいです。
 最後は、信州人垂涎のキノコ、ハナイグチ(花猪口)。信州では時候坊(ジコボウ)といった方が通りがいいでしょう。但し、ハナイグチは落葉松林にしか出ない菌根菌ですが、赤松林に出るヌメリイグチも地元ではジコボウといいます。今回は20本ほど採りました。甘い香りと強いぬめりがなんとも言えません。除染してからキノコ鍋やキノコうどんにします。ところで、聖高原では、別荘地の敷地内や旧大岡村の財産区ではキノコ狩り禁止なので注意してください。

 最後になんといってもこれが一番の、山頂からの大展望を取り上げなければいけません。当日は結構雲が多かったのですが、それでも北アルプスのスカイラインは綺麗に見えました。蓮華岳、白馬三山。鹿島槍ヶ岳と五龍岳は、最初雲の中でしたが、待っていると雲が切れました。この日の山頂は、男性が4人、女性が4人と同数でした。山ガールが増えましたね。本当に。一緒に山を楽しめるパートナーがいるって素敵ですね。別に百名山でなくてもいいのです。山に優劣などありません。

 眼下に麻績村。長野自動車道の麻績ICが見えます。田んぼの稲穂が黄金色に輝いています。友人の女性と、その小さな子供達が住んでいるんですけど、放射線量も善光寺平より少ないし、自然も豊かなので、きっといい子に育つでしょう。
 真ん中は、長野盆地(善光寺平)南部。左下は千曲川。その右上に鏡台山から妻女山、斎場山、薬師山へと続く戸神山脈が見えています。その奥が象山。その奥が金井山。一番右奥には笠ヶ岳の三角が見えています。そして、聖山が凄いのは、この反対側に行くと安曇野が見えるのです。ひと目千里の聖山。美ヶ原と同様に山頂にアンテナが建つわけです。
 一番右は、左に根子岳、右に四阿山。浅間山と蓼科山、八ヶ岳連峰もいっ時でしたが見えました。中央アルプスも。

 北信五岳の方面は、雲が多くわずかに見えたり見えなかったり。左の高妻山と戸隠連峰は雲の中。その右に妙高、黒姫、飯縄山と続き、その右奥には斑尾山も見えていました。晩秋の空気が乾燥した晴天の日なら、360度の見事な大展望が得られるでしょう。天気がいい日にまた来たいと思います。

京ヶ倉から見た聖山(一番左のアンテナの建っている山)
虫倉山から見た聖山
鏡台山から見た聖山
五里ヶ峯から見た聖山

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安藤(歌川)広重が江戸時代後期に描いた浮世絵『信濃 更科田毎月 鏡台山』へ登る(妻女山里山通信)

2014-09-14 | アウトドア・ネイチャーフォト

 冠着山(姨捨山)の次は、その観月の名所、姨捨から見た浮世絵、安藤(歌川)広重が江戸時代後期に描いた『信濃 更科田毎月 鏡台山』の鏡台山(1269m)へ登りました。といっても麓から登ったわけではなく、坂城方面への用事のついで。普通なら国道18号線を南下すればいいのですが、時間に余裕があったので、千曲市のあんずの里・森の沢山川沿いに林道更埴坂城線を登り、沢山峠(笹平)で駐車。そこからピストンで鏡台山へ登りました。こんなことができるのも信州ならでは。田毎月は、実際にはこう見えることはありません。月はひとつだけです。この絵は時間軸を描いているのです。それが天才広重の技。

 峠から山頂までは、45分から60分ぐらいでしょう。真冬の晴天時には35分で登ったことがあります。鏡台山へは最も短いコースになります。山頂から西方を見た景色。雲がなければ北アルプスのスカイラインが綺麗に見えます。槍の穂先も。

 ナンテンハギ(南天萩)が満開でした。岐阜地方ではあずきな(小豆菜)といって若葉を食用にするそうです。花も食べられるようですね。山頂は、以前に比べると周囲の灌木が成長し見晴らしが悪くなりました。以前この山頂でツキノワグマに遭遇しているので、熊鈴とホイッスルは必須です。山頂にはズミ(コリンゴ)の木が数本あります。富士山が見えるという看板がありますが、まず見られません。どこに見えるのかも書いてないので、見えていても難しいですね。見えるときはこんな風に見えます

 その山頂に咲き乱れていたのは、ハンゴンソウ。若葉は山菜になりますが、あまり美味しくはないかな。例年ならば、数えきれないほどの蝶が何種類も乱舞しているのですが、ミドリシジミとキアゲハ、カラスアゲハが少しいただけ。ゼフィルスは皆無でした。千曲市による松枯れ病のネオニコチノイド系農薬の空中散布の影響でしょう。ベトナム戦争の枯葉剤と、ほぼ同成分の神経毒の農薬(農毒)を撒くなど狂気の沙汰としか思えません。先日荒砥城跡で出会った管理の人も、全く効果が無いと言っていました。

 麓では既に枯れ始めたツリフネソウ(釣舟草)が満開。いつ見ても妖艶な花です。花言葉が「私に触らないで!」というのもなんだか意味深。ホウセンカの仲間なので、触ると種がはじけ飛ぶという特徴があることに由来するのでしょう。右はノコンギク(野紺菊)。花言葉は「忘れられない想い、長寿と幸福」。ずいぶん違います。鏡台山のノコンギクは、花が薄紫のものもあり、大きくなるものは2mぐらいになります。

 アザミ。ノハラアザミ(野原薊)です。花の下の総苞が粘るので、春から夏に咲くノアザミ(野薊)と区別ができます。この粘る総苞に、よく森の掃除屋のザトウムシ(座頭虫)脚がちぎれてくっついているのを見かけます。小さな虫を食べに来て、ミイラ取りがミイラになるというあれですね。最後は、ツリガネニンジン(釣鐘人参)。花言葉は「詩的な愛」。亡き父がよく「山で美味いはオケラにトトキ」と言っていましたが、春の若芽がそのトトキなんです。残念ながらまだ食したことはありません。

 ヨツバヒヨドリは、既に咲き終わり種になっていました。けれども日陰に一輪咲いていました。海を渡ってきたアサギマダラがよく吸蜜に訪れる花です。
 帰路は同じコースを駆け下ります。登山道脇のリョウブが大きくなり、以前よりコース全体が暗くなりました。この辺りでも前方を熊が横切ったことがありました。

 イグチ科のアミタケが群生していました。食菌ですが、私は食べるとお腹を壊すので採りません。次はベニタケ科のツチカブリでしょうか。傷つけると白い液がでるのですが、辛くてとても食べられません。ベニタケ科は猛毒でなくても、そういうキノコが多いです。キノコは、他にはドクベニタケ、アイタケ(食菌)、ザラエノハラタケなどがありました。ミズナラの葉が逆光で光って透けて綺麗です。

 帰りは、和平高原経由で村上義清の坂城に下りました。坂城町も空中散布をしています。大合併するまで大林山は、上田市の最高峰でした。地味な山ですが、ほぼ360度の展望があるいい山です。岩井堂山は自在山ともいいますが、秋はマツタケ山になり入れません。坂城神社から葛尾城跡に登り、五里ヶ峯へ。今回の登山口の沢山峠経由で鏡台山へのコースもおすすめです。里山は、通年続けて登り続けると、その本当の魅力や危機が分かります。

★鏡台山へのトレッキングルポは、MORIMORIKIDSに四季折々のものがたくさんあるので、興味の有る方はご覧ください。十分注意が必要ですが、積雪期も魅力的です。
 
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必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ:グリホサート剤)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。

★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。

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冠着山(姨捨山)ハイキングと荒砥城跡(妻女山里山通信)

2014-09-08 | アウトドア・ネイチャーフォト
 週末に用事のついでに冠着山(姨捨山)に登ってきました。姨捨山については、数々の伝説や歴史があるのですが、それを書き始めると、膨大な量になってしまうので、興味のある方は是非Wikipediaの姨捨山を読んでください。なかなかよく出来ていると思います。冠着山への登山道は、千曲市の坊城平からの1時間コース、筑北村坂井の鳥居平からの30分コース、千曲市戸倉上山田温泉の大正橋の佐良志奈神社から尾根伝いに登る3時間コース、本来の表参道の久露滝コース、大林山や八頭山からの縦走コースなど色々ありますが、今回は最も楽ちんな鳥居平からの30分コースです。

 国道403号線を姨捨駅の上へ登って行くと、知る人ぞ知る「アラレちゃんコーナー」があります。そのすぐ上から左の大池方面へ向かい、一本松峠を経て鳥居平の登山口へ行く方法と、403号線を聖湖まで登り、湖の先で左折してスラーイダー方面へ。スライダーには行かず、右の498号線をひたすら辿ると、一本松峠を経て鳥居平へ。今回は後のルートで行きました。鳥居平で登山靴に履き替えていると、新潟ナンバーのSUVが。秋の団体登山の下見だそうです。
 ここから山頂までは、わずか1100mの距離。登山というよりもう散歩です。林道を歩き始めると、ミンミンゼミの鳴き声のシャワーを浴びました。まだ夏かなと思いながら登って行くと、サラシナショウマ(晒菜升麻)とヤマトリカブト(山鳥兜)の群生地がありました。やはりもう秋です。

 マムシグサ(蝮草)の実。いずれ真っ赤になりますが、毒草で、誤って食べると口中がただれます。漢方薬に用いられる生薬のひとつでもあります。アザミが咲いていました。タイアザミでしょうか。アカソの葉に留まるヒトリガ。翅を広げると下から鮮やかなオレンジ色の後翅と胴体が現れます。幼虫は、山桑やニワトコの葉を食べます。ヒトリガは、一人でいる蛾ではなく、火取蛾、燈取蛾、灯取蛾、火盗蛾、灯盗蛾と記される光に集まる蛾です。

 20分ほどで山頂の神社広場に出ると、北の斜面にはサラシナショウマの群生地があり風に揺れていました。眼下には姨捨のサービスエリアと棚田が見えます。シシウド(猪独活)の残花。高さは2mぐらいあります。真っ白に咲く花は、高原の線香花火。色々な昆虫が吸蜜に訪れます。それよりずっと小さいシラネセンキュウ(白根川芎)の花にはアリが吸蜜に訪れていました。

 曇っていて、北アルプスなどは見られませんでしたが、眼下には姨捨SAとスイッチバックで有名なJR東日本・篠ノ井線の姨捨駅(左上にある駅は森の陰で見えていません)と棚田。姨捨駅からの風景は、日本三大車窓のひとつです。特に夕暮れの景色と夜景は特筆ものです。星の観察にも最適な場所です。現在は無人駅なので、ホームの展望台まで無料で行かれます。姨捨で画像検索すると、美しい夜景の写真がたくさんヒットします。おすすめのスポットです。その下の長楽寺には、姥岩があります。

 前夜に雨が降ったので、蜘蛛の巣には水滴がたくさんついていました。山頂にたくさん見られたゲンノショウコ(現の証拠)。下痢止めや胃薬に用いられる有名な生薬のひとつです。秋の種を飛散させた後の形が、神輿の飾りの様に見えることから、ミコシグサとも言われます。最後はヨメナ(嫁菜)。小さな甲虫が吸蜜していました。山頂にはキアゲハ、ミドリヒョウモン、ヤマトシジミなど蝶もたくさんいたのですが、時間の制約もあり残念ながら撮影できませんでした。

 冠着山山頂から南の展望。尾根伝いに八頭山、大林山と続きます。大林山は地味な山ですが、ほぼ360度の大展望が魅力です。晴れていれば、蓼科山や八ヶ岳、美ヶ原も見えます。

 帰路についてアブラチャン(油瀝青)の木が多いことに気づきました。昔、果実や樹皮の油を灯油にしたそうです。実は、傷をつけるとメントールの様な爽やかな香りがします。これでリキュールも作れるとか。枝を折ると、白檀の様な香りがします。登山道にヤマボウシ(山法師、山帽子)の紅い実がいくつも落ちていました。甘くて美味しい実は、熊や蜂の大好物。ひとつ食べてみました。これのジャムや果実酒も美味しそうです。
 雨粒を溜めたキツリフネ(黄釣舟)。

 マルバハギ(丸葉萩)の残花。萩は秋の七草ですが、実際は信州では夏の花ですね。万葉集では一番多く詠まれた花なんですが、萩の花というのは、女性生殖器の隠喩であり、よく対に出る鹿は、男性生殖器の隠喩なんだそうです。どおりで艶っぽい歌が多いわけです。
「をとめらに行き逢ひの早稲(わせ)を刈る時になりにけらしも萩の花咲く」万葉集 詠人知らず
 往路にオオスズメバチに付きまとわれて威嚇されて撮影できなかったコマメホコリかマメホコリの子実体です。所謂粘菌(変形菌)です。小さな甲虫が食餌におとずれています。ヤマハッカ(山薄荷)の小花。

 鳥居平に戻り、498号線を戸倉上山田温泉に下りました。その途中で、いつも通り過ぎていた荒砥城跡に立ち寄りました。入場者は私だけでした。ゆっくりと砦を見ていると、施設の管理をしている男性が登ってきました。なかなか話し好きの面白い方で、色んなことを話しました。予算が削られて管理がままならないこと。千曲市の松枯れの空中散布ほど無駄で危険なものはないこともご存知でした。石垣の上にアオダイショウの脱皮した皮がありました。荒砥城跡は、大河ドラマのロケ地にもなったので、訪れる人も多いそうです。この秋にはイノシシ鍋や甲冑を着てのイベントもあるそうです。以前は弓矢を作る教室も開いていたそうです。子供達はやりたがるのだそうですが、親が道具を全く使えないので、やがて中止になったそうです。

 少し下って、善光寺大本願別院、男女和合の神、御神体が男女の性器の澳津神社。今は廃墟となってしまった日本歴史館。そこから眼下に戸倉上山田温泉と千曲川を見下ろして。向こうには村上義清の葛尾城跡と五里ヶ峯。遅い昼を、信州小麦ラーメンの亀屋さんで。さらしなラーメンと餃子を頂きました。どうも信州は、私には塩辛いラーメンが多いのですが、ここのはピッタリでした。限定メニューの味噌カレーつけ麺を隣の方が食べていましたが、これはいずれ是非。幻の伊賀築後オレゴンのつけ麺も。伊賀築後オレゴンは、友人が作っているので、是非亀屋さんに提供してもらいたいですね。それと信州では、うかつに大盛りを頼んではいけません。普通盛りが既に尋常ではない量の店が普通にあるからです。量をたくさん供することが、何よりの御持て成しだった名残でしょう。

★冠着山の鳴海新道を鳴海さん達と共に登った時のスライドショーです。カタクリが綺麗でした。ぜひご覧ください。そして、登って見てください。登山後は、善光寺精進落としの湯・戸倉上山田温泉で疲れを癒してください。ぼこ抱岩のぼこは、信州の方言で赤ん坊のこと。大岩が赤ん坊を抱いているように見えたらしいのいですが、その赤ん坊は善光寺地震の時に落ちてしまったそうです。現在はロッククライミングの名所になっています。


◉追記
冠着山の鳴海新道も、拙書『信州の里山トレッキング東北信編』川辺書林にて紹介しています。鳴海さんの写真も。カラー668枚の写真と私自身が国土地理院の地形図を加工したコース地図も分かりやすいと評判です。信濃毎日新聞の記事と書評に次いで新潮社『SINRA』の本のコーナーでも高い評価を頂きました。平安堂やAmazon等でお求めください。
 
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必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ:グリホサート剤)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。

★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
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信州の伊那谷と木曽谷散策。森林浴三昧、諏訪立川流彫刻三昧の週末(妻女山里山通信)

2014-09-02 | アウトドア・ネイチャーフォト
 週末に仕事も兼ねて伊那谷へ向かいました。途中色々と寄りたい所があったので、今回は高速を使わずに全て下道で行ったのですが、信州は広いとしみじみ感じました。大町市の旧八坂村では、秋に仲間と登る予定の大姥山の登山口を探したのですが、入る林道を間違えてしまい、危うく遭難するところでした。夜は息子達とレトロな建物がたくさん残る伊那の旧市街を散策。ローメンとソースカツ丼が有名ですが、次男の希望で、「いーらぐーら」の濃厚な鶏白湯ラーメンを堪能しました。私は鶏白湯の醤油を頼んだのですが、濃厚なスープは後引き。塩は麺のかん水の味が出るので、私的にはキリッと香ばしい醤油がおすすめです。店主に次男が東京から各停で来て、小淵沢からは自転車で伊那まで、このラーメンを食べに来たんですと行ったらたまげていました(笑)。伊那では、高遠蕎麦とすんき蕎麦もおすすめです。

 翌日は木曽谷へ。まず上松町から15キロも山中に入った日本の森林浴発祥の地という赤沢自然休養林へ。森林鉄道もあるのですが、アマゴの泳ぐ川沿いを歩いて檜林に入りました。大型バスも何台も来て大賑わいなんですが、歩いて森に入る人はほとんどいませんでした。もったいないですね。歩きましょう。森林浴を楽しみましょう。

 森はヒノキが中心で、林床にはヒバ(アスナロ)の幼木がたくさん生えています。ヒバは光がなくても生えるので、自然にこうなるそうです。森林組合に勤める長男が今回は先生です。他にはサワラ、アカヤシオやホウノキ、ネズコ、コウヤマキなども。真ん中はヒノキの根本に生えていた艶のある葉のソヨゴと、右上がシロモジ。右は、三つ紐伐りという伝統の伐採法で来られた杉の切り株。伊勢神宮の建て替えに使われた御神木を斧だけで伐採した跡です。木曽では、この伝統技法を絶やさぬよう保存会が結成されたそうです。木を切ったことがありますか。100年生きた木は、100年使える様にしてあげないといけないのです。生命にひとつとして無駄なものはないのです。

 渓流に掛かるフウリンウメモドキ(風鈴梅擬)モチノキ科の艶のある赤い実。ヤマボウシ(山法師・山帽子)ミズキ科の青い実。熟すと紅くなります。蜂と熊も大好きな甘くて美味しい実です。最後はオオヤマレンゲ(大山蓮華)モクレン科の実。赤沢には多く、初夏に白い花が満開の様はたいそう美しいとか。

 ヤマハハコ(山母子)キク科で吸蜜するベニシジミ(紅小灰)。白い小花はシラネセンキュウ(白根川芎)セリ科シシウド属。最後は、ヨメナ(嫁菜)キク科。ノコンギク、カントウヨメナ、ユウガギク、シラヤマギク、シロヨメナとか皆似ていて、私は区別がつきません。同定は、キジムシロやミツバツチグリなどの春の黄色い花より困難です。でも大事なのは知識ではなく、生態系の相互連関を観察で知ることなのです。一本のブナの大木には、4000もの生物が共生関係にあると言われています。それをつぶさに観察して体感することが大事なのです。専門家が全て分かっているほど自然は単純ではないのです。新たな発見は、誰にでもそのチャンスはあります。

 最後に森林資料館へ。ここは端にあるためか面白いのに訪れる人がほとんどいないのが残念です。まずニホンカモシカとツキノワグマの剥製。両方共山中で出会ったことがありますが、できれば熊にはあまり出会いたくないものです。森林鉄道のジオラマ。よくできているのですが、故障していて動かないのが残念。ソーラー使って動かせばいいのにと息子達。最後は、昔の伐採の様子と木製の楽器。こきりこ節に使われるこきりこささら(びんささら、板ささら)もありました。右端にあるのは、江戸時代に木に刺したまま忘れたらしいという錆びた斧。他には伐採に使った斧や鋸、チェーンソーなど。木材の搬出方法も。蝶や昆虫の標本もありました。

 木曽に戻って次に訪れたのは、木祖村の藪原宿。中山道35番目の宿場です。ここの「おぎのや」さんで、ざる蕎麦二枚をいただきました。築120年の古い町家で、天井の高い内部は黒い梁が幾重にも交差しています。蕎麦は細く白めの二八蕎麦です。大変美味でした。食後に出る梅シャーベットが爽やかです。食後は、店の裏手の中央西線上にある薮原神社へ。目的は、ここの立川流彫刻を見るためです。諏訪立川流の立川和四郎富昌の作で、写真の様にそれは見事な宮彫です。最後は、薮原神社下から見る藪原宿。島崎藤村の長編小説『夜明け前(リンクはラジオドラマ。秀逸)』の書き出し「木曾路はすべて山の中である」を思い出します。

 最後は、定番の奈良井宿へ。少し観光化されすぎた感はありますが、やはり趣があります。空は晴れて陽も指しているというのに雨。狐の嫁入りですね。天気雨と動物を合わせる表現は世界中にあるそうです。秋桜が咲いていました。嫁菜でミドリヒョウモンが吸蜜。帰りに奈良井ダム辺りで大雨になりましたが、伊那谷に戻ると雨は降っていませんでした。夜はなぜかブラジル料理三昧。長男が手際よくリングイッサ(腸詰め)を焼いたりしてくれました。

 翌朝、長野に向けて出発です。蕎麦の白い花が壮観です。小林一茶の句で、「山鼻や そばの白さも ぞっとする」というのがあります。真っ白な妖気漂う蕎麦畑の描写かと思うと、前書きに「老いの身は 今から寒さも 苦になりて」とあるので、蕎麦の白い花を雪に見立て、雪深い北信の厳しい冬の到来を詠んだ句の様です。ちなみに有名な、「信濃では 月と仏と おらが蕎麦」は、一茶の句ではないそうです。「赤椀に 龍も出そうな そば湯かな」蕎麦湯を詠んだ句は珍しいですね。椀の朱漆をバックに蕎麦湯の湯気の中から龍が出そうという想像力豊かな洒落た句です。新蕎麦の季節が待ち遠しい。

 帰り道に、辰野町の旧三州街道(国道153号)沿いにある矢彦神社に寄りました。隣は小野神社。この矢彦神社は、諏訪立川流の元祖で富昌の父、立川和四郎富棟の彫刻があります。信濃国二之宮ですが、立川和四郎富棟の出世作となった信濃国一之宮の諏訪大社秋宮に引けをとらないほど立派なものです。隣り合う両社の境内は広く、大木が生い茂り、荘厳な雰囲気を醸し出しています。信州には、この天才親子と言われた二人や弟子達の作品がたくさん残っています。山を木を知り尽くした信州の達人達が生み出した世界に誇れる作品群なのです。
 
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必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ:グリホサート剤)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。

★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

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