原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

メダルを誰がとるかよりも、世界最高の演技が見たい!

2014年02月15日 | 時事論評
 ソチ五輪前半のハイライト「男子フィギュアスケート フリー」が、日本時間本日(2月15日)深夜実施された。

 その生放送ではなく、今朝起きてすぐネット上で速報第一報を確認した私だ。
 順位だけの結果を見て、金メダル羽生結弦選手、銀メダルパトリック・チャン選手(カナダ)の文字に、「まあ、前評判通りの結果か」と特段サプライズするでもなく一旦通り過ぎた。

 その後ネット別ページにて、フリーの内容を確認した私は大いに落胆させられた。
 何でも、金銀メダルに輝いた男子フィギュア第一人者トップ2の両選手が転倒等の失敗を繰り返し、自己最高に程遠い低得点で精彩を欠いた内容だったとの報道だ。 


 とにかく私自身がその演技の内容をつぶさに見て確認しないことには、本日当エッセイ内で論評出来る訳もない。 そこで先程午後12時よりBSフジにて放映された男子フリー録画番組を観賞することとした。

 両トップ2選手に先立ち、銅メダルに輝いたデニス・テン選手(カザフスタン)の演技が一番に放映された。
 確かに失敗のない始終落ち着いた演技で難なくフリーを終えた印象はある。 だたスケーティングスピードが遅いのか、ゆったりとしたスケーティングがこの人の持ち味なのか、とにかく私にとっては特段のインパクトがなく単に無難だったというのが正直な感想だ。

 (中を飛ばして)次に見たのが日本代表 町田樹選手である。
 既に23歳のベテランの域に達している選手だが、そもそも私がこの選手を初めて知ったのがソチ五輪直前期だった。 162㎝と小柄ながらダイナミックさと繊細さを併せ持ち、確実な技術力と演技力を培っている選手とプラス評価させていただいている。 本日のソチ五輪フリーに於いても、その持ち味を余すところなく表現できたのではないかとの印象がある。
 実力より点数が伸び悩むのは「小柄」な体格のせいか? あるいは五輪に於いては無名選手故か??  とにかく五輪と言えども、その種の“不透明さ”が根底に存在するのは否めない事実ではなかろうか。

 そしてその次に見たのは、現在まで我が国男子フィギュア選手のトップに君臨し活躍してきた高橋大輔選手の演技である。
 直前の足の故障をまったく感じさせないような、素晴らしいスケーティングでソチ五輪フリー演技を全うした。 私の目には、むしろ前回バンクーバー五輪にて銅メダルに輝いた時よりもさらにスケーターとして熟成された高橋選手を見る思いだった。  この人こそが「金メダル」と私は一瞬判断した!
 ところが残念ながら解説によれば、4回転後に手をついた場面は回転不足との評価が下されるとのことだ。

 その後見たのが、金銀メダルに輝いた両選手の演技である。

 まずは、羽生結弦選手。
 初っ端の4回転ジャンプに転びしりもちをつく。その後も幾度かジャンプで失敗を重ねる。 それでも体力不足故にフリーを苦手としていた羽生選手も、4分間のフリーを美しく終焉できるプログラム構成のバックアップに恵まれたようだ。 どう見ても息絶え絶えのエンディングにあえて座り込む体勢を組み込んだ事など私の眼には歴然だ。
 それでもこの選手は世界規模でのファンに大いに支えられていると私は判断する。 その第一の理由とは、世界的名コーチであるブライアン・オーサー氏の力量故か?  あるいは今時、この種の“中性的外見選手”をフィギュアスケートに於いても好むファンが多い故か?? 
 それは言い過ぎ、あるいは誤解であるとして、確かに羽生選手とは女子選手の得意技であるビールマンスピンやイナバウワーを難なくこなせる世界に例を見ない特異的な男子フィギュア選手と表現可能であろう。
 その観点から考察するなら、羽生選手が五輪で金メダルをゲットできるのは19歳である今こそが「旬」だったのではなかろうか。 もしも私の論理に誤りがあるとしても、羽生選手がこれから大人の男性としての階段を上り詰める程、肉体面で男性的外見に風変りするであろう。 そうした場合も羽生選手は現在の中性的フィギュア個性を貫くのであろうか?  羽生選手の将来の可能性に向けてこれは“見もの”と私は捉えている。

 最後に見たのが、パトリック・チャン選手だ。
 前回4年前のバンクーバー五輪時に4位に食い込んだ時から4年の年月を経て、チャン選手は外見的には今や立派な“おっさん”と化している。(失礼をお詫びします…)  表現を変えると、チャン選手は体格的にたくましくなったと同時に、フィギュアの実力も世界最高レベルにまでのし上げるに至っている。 もしも今日本の羽生選手が存在しなかったなら、確実にチャン選手が今回金メダルをゲットしたであろう。
 ところが時代の趨勢とは残酷である。 まさに世界には種々雑多な人種が出没してくるものだ。 わずか4年の年月と言えども、世界情勢が目まぐるしいまでに変貌を遂げていることを身を持って体験させられるのも五輪の魅力かもしれない。 
 私個人的にはチャン選手の栄光こそをソチ五輪会場で見たかったのに、残念ながら何故かフリー本番で失敗を重ねることと相成った… 
 それでも、パトリック・チャン選手とは1990年生まれの未だ23歳の若さであるようだ。 どうか、“世界王者”の名の下今後も精進して、次回の五輪にも羽生選手と一緒に出場し競い合うことを期待している。


 前回4年前のバンクーバー冬季五輪に於いて男子フィギュアスケート競技で金メダルを獲得した 米国代表ライサチェク選手を賞賛するエッセイを、私は2010年2月に綴り公開している。

 本日ソチ五輪男子フィギュアの結果を見て、そのエッセイを懐かしく思い出だす私である。
 当時、ライサチェク選手が一度も4回転ジャンプを飛ばなかった事実に関して、何故この選手を金メダルとしたのかとの反対議論が世界中から湧き出る事態となった。

 この世界規模世論に、敢えて反発した原左都子だ!
 とにかく、ライサチェク選手の演技とは「完璧」だったと。
 それは、女子フィギュア代表の韓国金妍児選手も「完璧」さに於いて同様だったと私は4年前に論評し、国内浅田真央選手ファンから大いなるバッシングを受ける事態と相成った。


 その観点から今再び論評するならば、今回のソチ五輪男子フィギュアスケートの場合、金銀メダルを取得した羽生、チャン両選手の演技は実にふがいなく、お粗末だったとしか言いようがないのだ。
 試合中にしりもちをつき、手を床に何度もつく選手の演技が世界で最高な訳がない。

 私は世界最高のスポーツ祭典である五輪には、是非とも世界最高のパフォーマンスを期待したいのだ。
 その観点から、フィギュアの採点基準を今一度見直してはどうかと提案したい思いでもある。