日本におけるアパレル業界大手の 株式会社レナウン が創業したのは、今を遡ること109年前の明治35年(1902年)の事だった。
大阪で創業した㈱レナウンが、一躍日本中にその名を轟かせる事になったのは高度経済成長期の1960年代である。
♪レナウン レナウン娘が わんさかわんさか エ~イ エ~イ エイエ~イ♪
当時まだ子供だった私の脳裏にも、この斬新なテレビCMソングのフレーズは、若い女性モデルが登場したそのポップ調の影像と共に今尚新鮮に刻まれている。
若い女性向け衣料品メーカーとして上記CMの大ヒットにより大いに活気付いたレナウンは、その後1969年には「アーノルド・パーマー」ブランドを日本に投入するなどの方策を打ち出すことにより、家族向け衣料商品展開を基幹として業績を伸ばしてきた。
1990年代に入りバブル経済が崩壊した折には、㈱レナウンも大きな痛手を被ったのは当然の成り行きであったことだろう。 レナウンの場合、特に若い女性向けのブランドが開花しなかったことにより大きく業績を下げ苦境に陥ることと相成った。
2004年には外資系の㈱ダーバンとの連携による持ち株会社㈱レナウンダーバンホールディングスを設立したものの、その後2008年には子会社売却、不採算ブランドの廃止、そして本社ビルの売却を含んだリストラ策を発表するまでに落ちぶれる運命を辿っている。
(ここで少し私論を交えるが)、そんな㈱レナウンの無惨な衰退ぶりに、今を時めく中国ニューリッチ業界が虎視眈々と狙って唾をつけない訳もないと言うものだろう。
2010年5月に中国の繊維会社である某有限公司が、㈱レナウンが経営難に陥りその資金繰りにアップアップしている危機状態を見抜きその買収に乗り込んで来た。 その年7月に開催された臨時株主総会で買収が承認された後、上記中国の有限公司に約40億円の第三者割当増資が実施された事により中国有限公司が㈱レナウンの筆頭株主と相成った。
要するに早い話が、㈱レナウンは中国企業のM&A(買収)によりその企業の傘下となったという訳だ。
さてさて前置きが長くなったが、1週間程前の日曜日(10月22日)夜9時より放送された「NHK特集」に於いて、上記の中国企業による㈱レナウンの買収劇が取り上げられた。
中国企業により買収された身である㈱レナウンが、買収された後の400日どう動いたかに関して綿密な取材をした影像が放送されたのだが、これが過去において「経営法学修士」を取得している原左都子にとっては実に興味深く、50分間食い入るようにテレビ画面を見たものだ。
その「NHK特集」の影像によれば、レナウンの社員は旧態依然とした自社ブランドにこだわり続け、当初中国企業の筆頭株主より注文された課題に沿いたくない意思が固かったようだ。
ところが中国企業側はあくまでも自社のポリシーを貫き、レナウンの中国展開第1店舗をレナウン側が要求する首都「北京」ではなく地方都市の「大連」と決定した。
レナウン側の担当者はこれが大いに気に入らない。 しかも店舗の内装に関しても日本側が要求した重厚な造りではなく、中国側は安普請の壁紙を貼って対応した。
しかもいよいよ第1号店舗がオープンとなった当日、日本側が予期せぬことには買収責任者の娘である若き女性が店舗を牛耳っているではないか。 その若き経営者の娘が中国国内から集めた“どこの馬の骨とも分からぬ”ニューリッチ顧客がその1号店に多数押し寄せ「この商品を我が企業で扱いたい!」との熱い思いを伝えてくる…。
実は、原左都子はこの影像を見た直後に私が昨年訪ねたソウルに於ける「アジア・アートフェア」を思い起こした。 (よろしければ「原左都子エッセイ集」2010年9月バックナンバー 「ソウル旅行記 -ASIA TOP GALLERY編-」 をご参照下さい。)
まさにレナウン中国1号店の影像とは、私に上記のソウルにおけるアートフェアの活気を思い起こさせたのだ。
ソウルにおける上記の「アートフェア」にも、おそらくバイヤーと思しきアジア系の若き年代の実業家が駆けつけ大いに賑わい大混雑状態だった。 日本から芸術作品販促目的でギャラリーを出展していた知人も、「今は日本で商売を展開するより、経済発展が目覚ましいアジア地域のニューリッチ族の購買力に期待する方がよほどプラスの反応がある」との見解だった。
そんな経験がある私が、今回のレナウンが買収された事実のその後を伝える「NHK特集」を見聞して一番に感じた事がある。
それは、レナウンとは創業100年を超える歴史にこだわるがあまり、陳腐で色褪せたプライドの下に過去における“japan as No.1"の栄光に未だ依存するべく歪んだ価値観に囚われ行動しているに過ぎないのではないか、という事だ。
上記のレナウン中国1号店に話を戻すが、何故洋服を売るのにその店舗に本物のレンガを配置せねばならないのか?? 即販売力に直結しそうもないその施策をするがための工事日程や経済的損失に思いを巡らせられないものか?!、とレナウン社員を非難したかったのが第1点。
そして、せっかく買収元である中国企業が集めたレナウン商品を取り扱いたい意向のバイヤーをないがしろにしてまで、自分らが過去に築いた(売れもしない)ブランドにこだわりたいのか!というのが第2点である。(これには、レナウンの社員達とは単に自分らの形骸化した過去の栄光にすがる“馬鹿ども”の集合体との印象しか持てず、怒りに近い感情を抱いた私だ。)
片や興味深かったのは、中国に進出した韓国のアパレル企業はあくまでも中国人が今欲しがっているニーズをとことん研究し尽くした上で販売展開しているが故に、大盛況の実績を上げているとの報道だ。
今頃になってやっと、これを見習う方針が中国企業傘下に落ちぶれて以降400日が経過した現在遅ればせながら㈱レナウンの日本人社員にも芽生えている兆しのようだ。
もっと早くからそうするべきだったと私は思うよ。
最後に余談になるが、今回の「NHK特集」に取り上げられていた㈱レナウンのある程度上部に位置すると思しき男性社員達とは、皆さん一見して実に“カッコイイ”。 (そりゃそうだろうね。アパレル業界とは“ファッション”を売り物にしているのだから自分自身もファッショナブルであることも大事だよね)と思いつつも、私は大いなる違和感を感じたのも事実である……
片や、買収した中国側企業の頭取や娘は至ってダサく見た目が悪いのだ。(失礼!)
私は、この両者の対照的な影像に一つの結論を見出した。
これ程までに世界規模で経済危機に見舞われている現在において、ファッションとは買う側の顧客が満足できればそれこそが営業実績に直結する話であろう。
店舗がお洒落でなくとて、店員さんがおめかしをしていなかろうが、そんなことは今となっては何ら重要な要因ではない。 とにかく顧客が欲するファッションのアドバイスをその商品自体のパワーによって発揮してくれさえすれば、顧客自身が自由な判断で好きなものを購入できる今の時代である。
ファッション業界もいつまでも過去の形骸化したブランドに依存して顧客の動員力とするのではなく、世界規模で既に洗練された顧客本人が欲する商品を得たいとの時代背景へと移り変わっていることを認識するべきだ。
㈱レナウンさん、バブル経済など当の昔に崩壊しているのですよ。
中国傘下になった現在においては、もうそろそろレナウン社員どもの身に浸透していると思しき旧態依然とした“バブル気質”を改めない事には、今後のファッションにおける「世界標準」に追いつけない事は愚か、自滅の道をひたすら歩むのではないですか~~???
大阪で創業した㈱レナウンが、一躍日本中にその名を轟かせる事になったのは高度経済成長期の1960年代である。
♪レナウン レナウン娘が わんさかわんさか エ~イ エ~イ エイエ~イ♪
当時まだ子供だった私の脳裏にも、この斬新なテレビCMソングのフレーズは、若い女性モデルが登場したそのポップ調の影像と共に今尚新鮮に刻まれている。
若い女性向け衣料品メーカーとして上記CMの大ヒットにより大いに活気付いたレナウンは、その後1969年には「アーノルド・パーマー」ブランドを日本に投入するなどの方策を打ち出すことにより、家族向け衣料商品展開を基幹として業績を伸ばしてきた。
1990年代に入りバブル経済が崩壊した折には、㈱レナウンも大きな痛手を被ったのは当然の成り行きであったことだろう。 レナウンの場合、特に若い女性向けのブランドが開花しなかったことにより大きく業績を下げ苦境に陥ることと相成った。
2004年には外資系の㈱ダーバンとの連携による持ち株会社㈱レナウンダーバンホールディングスを設立したものの、その後2008年には子会社売却、不採算ブランドの廃止、そして本社ビルの売却を含んだリストラ策を発表するまでに落ちぶれる運命を辿っている。
(ここで少し私論を交えるが)、そんな㈱レナウンの無惨な衰退ぶりに、今を時めく中国ニューリッチ業界が虎視眈々と狙って唾をつけない訳もないと言うものだろう。
2010年5月に中国の繊維会社である某有限公司が、㈱レナウンが経営難に陥りその資金繰りにアップアップしている危機状態を見抜きその買収に乗り込んで来た。 その年7月に開催された臨時株主総会で買収が承認された後、上記中国の有限公司に約40億円の第三者割当増資が実施された事により中国有限公司が㈱レナウンの筆頭株主と相成った。
要するに早い話が、㈱レナウンは中国企業のM&A(買収)によりその企業の傘下となったという訳だ。
さてさて前置きが長くなったが、1週間程前の日曜日(10月22日)夜9時より放送された「NHK特集」に於いて、上記の中国企業による㈱レナウンの買収劇が取り上げられた。
中国企業により買収された身である㈱レナウンが、買収された後の400日どう動いたかに関して綿密な取材をした影像が放送されたのだが、これが過去において「経営法学修士」を取得している原左都子にとっては実に興味深く、50分間食い入るようにテレビ画面を見たものだ。
その「NHK特集」の影像によれば、レナウンの社員は旧態依然とした自社ブランドにこだわり続け、当初中国企業の筆頭株主より注文された課題に沿いたくない意思が固かったようだ。
ところが中国企業側はあくまでも自社のポリシーを貫き、レナウンの中国展開第1店舗をレナウン側が要求する首都「北京」ではなく地方都市の「大連」と決定した。
レナウン側の担当者はこれが大いに気に入らない。 しかも店舗の内装に関しても日本側が要求した重厚な造りではなく、中国側は安普請の壁紙を貼って対応した。
しかもいよいよ第1号店舗がオープンとなった当日、日本側が予期せぬことには買収責任者の娘である若き女性が店舗を牛耳っているではないか。 その若き経営者の娘が中国国内から集めた“どこの馬の骨とも分からぬ”ニューリッチ顧客がその1号店に多数押し寄せ「この商品を我が企業で扱いたい!」との熱い思いを伝えてくる…。
実は、原左都子はこの影像を見た直後に私が昨年訪ねたソウルに於ける「アジア・アートフェア」を思い起こした。 (よろしければ「原左都子エッセイ集」2010年9月バックナンバー 「ソウル旅行記 -ASIA TOP GALLERY編-」 をご参照下さい。)
まさにレナウン中国1号店の影像とは、私に上記のソウルにおけるアートフェアの活気を思い起こさせたのだ。
ソウルにおける上記の「アートフェア」にも、おそらくバイヤーと思しきアジア系の若き年代の実業家が駆けつけ大いに賑わい大混雑状態だった。 日本から芸術作品販促目的でギャラリーを出展していた知人も、「今は日本で商売を展開するより、経済発展が目覚ましいアジア地域のニューリッチ族の購買力に期待する方がよほどプラスの反応がある」との見解だった。
そんな経験がある私が、今回のレナウンが買収された事実のその後を伝える「NHK特集」を見聞して一番に感じた事がある。
それは、レナウンとは創業100年を超える歴史にこだわるがあまり、陳腐で色褪せたプライドの下に過去における“japan as No.1"の栄光に未だ依存するべく歪んだ価値観に囚われ行動しているに過ぎないのではないか、という事だ。
上記のレナウン中国1号店に話を戻すが、何故洋服を売るのにその店舗に本物のレンガを配置せねばならないのか?? 即販売力に直結しそうもないその施策をするがための工事日程や経済的損失に思いを巡らせられないものか?!、とレナウン社員を非難したかったのが第1点。
そして、せっかく買収元である中国企業が集めたレナウン商品を取り扱いたい意向のバイヤーをないがしろにしてまで、自分らが過去に築いた(売れもしない)ブランドにこだわりたいのか!というのが第2点である。(これには、レナウンの社員達とは単に自分らの形骸化した過去の栄光にすがる“馬鹿ども”の集合体との印象しか持てず、怒りに近い感情を抱いた私だ。)
片や興味深かったのは、中国に進出した韓国のアパレル企業はあくまでも中国人が今欲しがっているニーズをとことん研究し尽くした上で販売展開しているが故に、大盛況の実績を上げているとの報道だ。
今頃になってやっと、これを見習う方針が中国企業傘下に落ちぶれて以降400日が経過した現在遅ればせながら㈱レナウンの日本人社員にも芽生えている兆しのようだ。
もっと早くからそうするべきだったと私は思うよ。
最後に余談になるが、今回の「NHK特集」に取り上げられていた㈱レナウンのある程度上部に位置すると思しき男性社員達とは、皆さん一見して実に“カッコイイ”。 (そりゃそうだろうね。アパレル業界とは“ファッション”を売り物にしているのだから自分自身もファッショナブルであることも大事だよね)と思いつつも、私は大いなる違和感を感じたのも事実である……
片や、買収した中国側企業の頭取や娘は至ってダサく見た目が悪いのだ。(失礼!)
私は、この両者の対照的な影像に一つの結論を見出した。
これ程までに世界規模で経済危機に見舞われている現在において、ファッションとは買う側の顧客が満足できればそれこそが営業実績に直結する話であろう。
店舗がお洒落でなくとて、店員さんがおめかしをしていなかろうが、そんなことは今となっては何ら重要な要因ではない。 とにかく顧客が欲するファッションのアドバイスをその商品自体のパワーによって発揮してくれさえすれば、顧客自身が自由な判断で好きなものを購入できる今の時代である。
ファッション業界もいつまでも過去の形骸化したブランドに依存して顧客の動員力とするのではなく、世界規模で既に洗練された顧客本人が欲する商品を得たいとの時代背景へと移り変わっていることを認識するべきだ。
㈱レナウンさん、バブル経済など当の昔に崩壊しているのですよ。
中国傘下になった現在においては、もうそろそろレナウン社員どもの身に浸透していると思しき旧態依然とした“バブル気質”を改めない事には、今後のファッションにおける「世界標準」に追いつけない事は愚か、自滅の道をひたすら歩むのではないですか~~???