◎『安重根事件公判速記録』の由来
昨日のコラムで、『安重根事件公判速記録』第二版(一九一〇年五月一三日)の「緒言」を紹介した。
これによって、『安重根事件公判速記録』という文献の由来がかなり明らかになった。満洲日日新聞社は、安重根事件の公判に速記記者を派遣し、四日間の公判の模様を、その都度、同紙紙上に掲載した。その後、読者の要望に応えて、これを「一巻の冊子」にまとめた。この際、判官、検察官、および弁護士の校閲を経たという。これが同速記録の初版で、発行部数は八〇〇〇部だったという。
しかしこれが、一〇日もしないうちに売り切れた。そこで、さらに再版を出した。その際、再度、判官、検察官、および弁護士の校閲を経て、誤植等を訂正したもようである。再版の部数は五〇〇〇部。
なお、再版の緒言に「故公の二龍山上吊訪」という言葉がでてくる。二龍山は、日露戦争の激戦地のひとつで、旅順にある。吊訪〈チョウホウ〉の「吊」は「弔」に同じ。
今月二三日のコラム「安重根が挙げた伊藤博文暗殺の理由15か条」、二五日のコラム「満洲日日新聞社編『安重根事件公判速記録』緒言」、および昨日のコラム「『安重根事件公判速記録』再版における「緒言」」は、比較的にアクセスが多かった。しかし、本当に読んでいただきたかったのは二四日のコラム「安重根の過激な発言で旅順での公判は傍聴禁止」だった。こちらも、お読みいただければ幸いである。
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