◎筧克彦氏を座長に推して議事に入り
昨日の続きである。日本公法学会の機関誌『公法研究』の創刊号(有斐閣、一九四九年一一月)を紹介している。本日は、同誌同号の巻末にある「学会記事」を紹介してみたい。
学 会 記 事
一 設立の企て 本誌冒頭に宮澤〔俊義〕理事長がのベられているような趣旨にもとずき、公法学の分野において全国的な学会の組織を確立しようという機運が熟し、浅井清、大西邦敏、河村又介、清宮四郎、林田和博、宮澤俊義、山之内一郎、渡邊宗太郎の八氏が発起人となつて昭和二十三年三月末に発起人会が開かれる運びになつた。ついで同年六月十一日、八発起人の名において、多数の公法学者に対し、本会の設立諏意書及び創立総会出席の勧誘状が発送された。
二 創立総会 昭和二十三年六月二十八日午前十時から東京大学法学部長室において創立総会が開催された。まず筧克彦〈カケイ・カツヒコ〉氏を座長に推して議事に入り、発起人代表宮澤俊義氏より設立趣旨の説明及び創立総会開催までの経過報告があり、次いで規約案の審議決定、役員の選任、事業内容の審議を行い、正午頃終了した。出席者約二十名。
(1) 規約 別記(表紙裏面参照)のごとく決定された。
(2) 役員 理事には発起人八氏を、監事には杉村章三郎及び田畑忍の両氏を選任した。なお総会および研究報告終了後直に理事会を開き理事及び常任理事の互選を行つた。結果は次のごとくである。(〇印は常任理事)
理事長 宮澤俊義
理事 浅井 清 〇大西邦敏 河村又介
〇清宮四郎 林田和博 山之内一郎
〇渡邊宗太郎
監事 杉村章三郎 田畑 忍
(3) 事業内容 (イ) 公法学会は年一回ないし二回開催することにし、次回は今秋東京において開催することに決定した。
(ロ) 雑誌の刊行については理事会に一任した。
三 第一回総会 創立総会に引き続き第一回総会として研究報告会を開き、河村又介氏の「最高裁判所の規則制定権について」の報告があり、質疑応答が行われた。なお予定されていた山之内一郎氏の「ユーゴスラヴィアの新憲法」は時間の都合で中止となつた。
次いで午後三時より法文経第二十五番教室で次のとおり公開講演会を開催した。聴講者数百名、盛会であつた。午後五時半散会。
(1) 宮澤俊義氏(東大) 国民主権と天皇制
(2) 清宮四郎氏(東北大) ロックの政治思想と日本国憲法
四 第二回総会 昭和二十三年十一月二十三日(勤労感謝の日)午前十時より早稲田大学演劇博物館一階において会員約三十名出席の下に第二回総会が開催された。まず宮澤理事長より一般的経過報告及び田中二郎編集手任より機関誌発行計画に関する報告があつた。
(イ) 名称は「公法研究」“Public Law Review”
(ロ) 年二回(三月、九月)発行
次いで研究報告会に移り、次の諸氏の報告及びこれに対する質疑応答が行われた。
(1) 大西邦敏氏 法令審査権の比較憲法的考察
(2) 山之内一郎氏(東大) ユーゴスラヴィアの憲法
(3) 雄川一郎〈オガワ・イチロウ〉氏(東大) 行政事件訴訟特例法について
五 第三回総会 昭和二十四年五月二十一日、二十二日の両日にわたり、五月祭になごむ東京大学文学部三階会議室において第三回総会が開催された。全国各地より、また学界官界の各方面より、両日とも五十名をこえる会員が参集し、活溌な討議を行い盛会であつた。
第一日は「地方公共団体の条例に関する諸問題」について次の両氏の研究報告及び質疑応答がそれぞれ午前及び午後にわたつて行われた。
(1) 鈴木俊一氏(総理庁自治課)
(2) 柳瀬良幹〈ヤナセ・ヨシモト〉氏(東北大)
(なお予定されていた俵静夫氏(神戸大)又は原龍之助氏(大阪商大)の報告は両氏とも差支えがあつて欠席のため行われなかつた。)
第二日は、本総会のため東大公法研究会で編集し配布した違憲問題資料について、まず田中二郎氏が全体の概観をなし、次いで比較的重要と思われる左の諸問題について、左の各氏が報告を行い、これを中心として活溌な討議が行われた。
(1) 田中二郎氏 管理法関係
(2) 宮澤俊義氏 国家公務員法関係
(3) 杉村章三郎氏 農地改革法関係
(4) 鵜飼信成氏 行政委員会関係
(5) 雄川一郎氏 司法関係
また第一日報告及び討議終了後、午後五時半より同じ場所において懇親会が開かれた。会員の自己紹介のあつたのち、河村最高裁所判事より浦和充子事件(国政調査権と司法権の独立)のいきさつに関する興味深いテーブル・スピーチなどあり、和気あいあいのうちに会員相互の親睦を深めた。出席者は三十数名であつた。
なお第二日の報告終了後、宮澤理事長より規約付則第十-九条に拘らず、今回は半数交替を行わない旨及び理事として新に園部敏〈ソノベ・サトシ〉氏(愛知大)、俵静夫氏(大阪商大)、大石義雄氏(京大)及び未定一氏(この選任については理事会一任)の追加の提案あり、異議なく可決された。
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