◎『国防政治論』を編輯したのは山本勝之助
今月の一四日から一六日まで、石原莞爾の『国防政治論』(聖紀書房、一九四二)を紹介した。本日は、同書の「編輯後記」を紹介してみたい。
編 輯 後 記
この数年来、日本の東亜の「在り方」に対する出版物は汗牛充棟の感がある。然しその「在り方」が世界史的な雄渾な規模をもち、烈々たる理想と確固たる現実性の綜合統一をなしたる内容をもちたるものは五指を数へるに過ぎないと思ふ。
この時石原莞爾閣下の「国防政治論」を剞劂〈キケツ〉に附する〔出版する〕の機会を恵まれたることは右の要請に応ずるものとして欣快〈キンカイ〉の情禁じ得ざるものがある。
但し日本の客観的諸情勢に規制されて第一章第三節全部、第二章第三節の一と二の間に挿入さるべきもの全部と所々多数削除の止むなきに到りたることは甚だ残念と思ふが致し方のない次第である。
この点出版の事務的処理者として閣下及び読者諸氏に深くお詫びする次第である。
終りに一々の御姓名は省略するがこの出版について陰ながら御尽力御支援を賜はつた諸氏に感謝の意を捧げる。
昭和十七年九月末日 東亜連盟協会会員 山本勝之助
短い「編輯後記」だが、この本を編輯し、出版にかかわる実務をおこなったのは、東亜連盟協会の山本勝之助であること、講演「国防政治論」の内容は、同書への収録にあたって、かなり削られていること、などの事実がわかる。
山本勝之助という人物については詳しくないが、もとはアナーキストで、その後、石原莞爾に心酔するにいたったらしい。
山本によれば、講演内容のうち、同書への収録にあたって削除された部分があるという。推察するに、削除された「第一章第三節」において石原は、「日本の国防」について語っていたのではないか。また、同じく削除された「第二章第三節の一と二の間」においては、「支那事変の解決」について語っていたのではないか。そう考えた理由については次回。