礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

ゴーン被告の国外脱出と映画『ミッドナイト・エクスプレス』

2020-01-04 04:35:36 | コラムと名言

◎ゴーン被告の国外脱出と映画『ミッドナイト・エクスプレス』

 昨年末、保釈中のカルロス・ゴーン被告(日産自動車元会長)が国外に脱出したというニュースが流れ、大きな話題になった。このニュースを聞いて、一九七八年のアメリカ映画『ミッドナイト・エクスプレス』を思い出した。
 映画『ミッドナイト・エクスプレス』の主人公は、アメリカ人の若者ビリー・ヘイズである。旅行でトルコを訪れていたが、同国から出国する際に、出来心から麻薬を持ち出そうとして逮捕され、四年の刑を宣告される。過酷な獄中生活に耐え、間もなく釈放されようというとき、検察側の控訴によって、刑期が三〇年に延長される。絶望的になったビリーは、ついに「ミッドナイト・エクスプレス」(「脱獄」を意味する隠語)を決意する。
 この映画には原作がある。ビリー・ヘイズ(一九四七~)のノンフィクション小説『ミッドナイト・エクスプレス』である。ただし、原作と映画とでは、獄中生活、脱獄の方法などに違いが見られるという。
 さて、ゴーン被告のニュースを聞いて、この映画のことを思い出したのは、ゴーン被告の国外脱出と、ビリーの脱獄との間に、いくつかの共通点を見出したからである。
 第一に、ゴーン被告もビリーも、異国の司法制度に対し、強い違和感と不信感を抱いていた。
 第二に、ゴーン被告もビリーも、違法な形で、国外に脱出している。
 その第三。ゴーン被告は、日本を脱出したあと、トルコを経由して、故国レバノンに到着し、家族に温かく迎えられている。ビリーもまた、トルコを脱出したあと、ギリシャを経由して、故国アメリカに到着し、家族に温かく迎えられている。
 なお、映画『ミッドナイト・エクスプレス』は、トルコの監獄の実態を、きわめて過酷、きわめて反人権的なものとして描いた。このことについては、トルコ側からの反発があったとされている(ウィキペディア「ミッドナイト・エクスプレス(映画)」)。現に、この映画の脚色したオリバー・ストーン氏は、二〇〇四年にトルコを訪れた際、映画でのトルコ人の描写について謝罪したという(Wikipedia ‘Midnight Express (film)’)。
 ゴーン被告は、このあと、記者会見などの席で、日本の司法制度が、恣意的にして反人権的なものであることを訴えるはずである。そして、そのメッセージは、全世界に伝わることであろう。これに対して、日本の政府当局は、即座に、有効な反論を、全世界に向かって発信できるのだろうか。そもそも、政府当局は、そういう「危機管理」の発想を持っているのか。このあたりが、今後、注目されるところである。

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