◎『猶太人問題を論ず』の同人社書店版と岩波文庫版
書棚を整理していたら、マルクスの『ユダヤ人問題を論ず』の古い訳本が出てきた。久留間鮫造・細川嘉六訳、同人社書店刊で、タイトルは、『猶太人問題を論ず』。初版は、一九二五年(大正一四)一一月だが、私の持っているものは、一九二七年(昭和二)九月の再版である。
初期の岩波文庫に『猶太人問題を論ず』というのがあったことを思い出し、これも引っぱり出してみた。久留間鮫造・細川嘉六訳で、初版は、一九二八年(昭和三)七月だが、私の持っているものは、一九三六年(昭和一一)四月の第三版である。
同人社書店版と岩波文庫版とを比較してみると、全く同内容であり、「訳者はしがき」も全くの同文である。岩波文庫版には、どういうわけか、同人社書店版を底本にした旨の断り書きがない。
ちなみに、同人社書店版は、本文一〇八ページ、定価一円、岩波文庫版は、本文一〇一ページ、定価二〇銭である。
目次は、両版とも同様で、次の通り。
目 次
訳者はしがき
社会批評の意義及方法に就いて
猶太人問題を論ず
一、ブルーノ・バウアー著『猶太人問題』を評す
二、ブルーノ・バウアー稿『現代の猶太人問題及基督教徒の自己
解放の能力』を評す
このうち、「社会批評の意義及方法に就いて」は、一八四三年九月、ドイツのクロイツナハに滞在していたマルクスが、パリ滞在中のアーノルド・ルーゲに宛てた書簡である。「社会批評の意義及方法に就いて」という評題は、訳者の久留間鮫造が付したものという。【この話、続く】