◎二・二六事件「蹶起趣意書」(憲政記念館企画展示より)
先月二五日のブログに、〝二・二六事件「蹶起趣意書」(津久井龍雄『右翼』より)〟というコラムを書いた。その後、憲政記念館で、ミニ企画展示「憲政の資料からみる二・二六事件」というのが催されていることを知ったので、昨日、永田町の憲政記念館に赴いた。
文字通りの「ミニ展示」であったが、なかなか興味深かった。特に、「蹶起趣意書」の印刷物を見ることができたのは貴重であった。非常に細い字で製版されたガリ版刷りで、全文カタカナ文、濁点なし。手持ちのコピーと対照しながら、ザッと異同を確認してきたが、それによれば、蹶起趣意書の「原文」は、次の通り。
謹ンテ惟ルニ我カ神洲タル所以ハ万世一神タル天皇陛下御統帥ノ下ニ挙国一体生々化育ヲ遂ケ遂ニ八紘一宇ヲ完フスルノ國体ニ存ス。此ノ國体ノ尊厳秀絶ハ天祖肇国神武建國ヨリ明治維新ヲ経テ益々体制ヲ整ヘ今ヤ方ニ万邦ニ向ツテ開顕進展ヲ遂クヘキノ秋ナリ
然ルニ頃来遂ニ不逞凶悪ノ徒簇出シテ私心我慾ヲ恣ニシ至尊絶対ノ尊厳ヲ藐視シ僭上之レ働キ万民ノ生々化育ヲ阻碍シテ塗炭ノ痛苦ニ呻吟セシメ随テ外侮外患日ヲ逐フテ激化ス
所謂元老重臣軍閥財閥官僚政党等ハコノ國体破壊ノ元兇ナリ倫敦軍縮条約並ニ教育総監更迭ニ於ケル統帥権干犯至尊兵馬大権ノ僭窃ヲ図リタル三月事件或ハ学匪共匪大逆教団等ノ利害相結ンテ陰謀至ラサルナキ等ハ最モ著シキ事件ニシテソノ滔天ノ罪悪ハ泣血憤怒真ニ譬ヘ難キ所ナリ中岡佐郷屋血盟団の先駆捨身五、一五事件ノ憤騰相沢中佐ノ閃発トナル寔ニ故ナキニ非ス而モ幾度カ頸血ヲ濺キ来ツテ今尚些カモ懺悔反省ナク然モ依然トシテ私権自慾ニ居ツテ苟且偸安ヲ事トセリ露支英米トノ間一触即発シテ祖宗遺垂ノ此ノ神州ヲ一擲破滅ニ墜ラシムルハ火ヲ賭ルヨリ明ナリ内外真ニ重大危急今ニシテ國体破壊ノ不義不民ヲ誅戮シテ稜威ヲ遮リ御維新ヲ阻止シ来レル奸賊ヲ芟除スルニアラスンハ宏謨ヲ一空セン宛モ第一師団出動ノ大命渙発セラレ年来御維新翼賛ヲ誓ヒ殉國捨身ノ奉公ヲ期シ来リシ帝都衛戍ノ我等同志ハ将ニ万里征途ニ上ラントシテ而モ顧ミテ内ノ亡状ニ憂心転々禁スル能ハス
君側ノ奸臣軍賊ヲ斬除シテ彼ノ中枢ヲ粉砕スルハ我等ノ任トシテ能クナスヘシ
臣子タリ股肱タルノ絶対道ヲ今ニシテ尽サスンハ破滅沈淪ヲ飜スニ由ナシ茲ニ同憂同志機ヲ一ニシテ蹶起シ奸賊ヲ誅滅シテ大義ヲ正シ國体ノ擁護開顕ニ肝脳ヲ尽シ以テ神州赤子ノ微衷ヲ献セントス
皇神皇宗ノ神霊冀クハ照覧冥助ヲ垂レ給ハンコトヲ
昭和十一年二月二十六日 陸軍歩兵大尉 野 中 四 郎
外 同 志 一 同
若干、注釈する。改行は原文のママ。「國体」は、この字が使われていた(「國體」ではなく)。第三段落の最初、「財閥」は、挿入の形で、行の右に記されている。「句点」(マル)は、最初のほうで、一回、使われているのみ。「読点」(テン)は、「五、一五事件」というところで、一回、使われているのみだった。
なお、同「ミニ企画展示」は、本年六月二九日(金)まで。
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