アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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朝鮮民衆の社会発展史

2007年12月28日 08時53分53秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 少し遅くなりましたが、下記のニュースについても。いずれも、是非記事に取り上げなければ、と思っていた事です。

・第17代大統領に李明博氏、10年ぶりの政権交代(YONHAP NEWS)
 http://japanese.yonhapnews.co.kr/pe/2007/12/19/9200000000AJP20071219005500882.HTML
・大統領選:李明博氏、531万票差で圧勝(朝鮮日報)
 http://www.chosunonline.com/article/20071220000007
・保守への政権交代か 韓国大統領選挙まで1週間(上)(JANJAN)
 http://www.news.janjan.jp/world/0712/0712127145/1.php
・左右イデオロギー対立の終焉 韓国大統領選挙(下)(同上)
 http://www.news.janjan.jp/world/0712/0712130164/1.php
・疑惑よりも経済手腕 新大統領は保守ハンナラ党(半島浪人レポ)
 http://blog.livedoor.jp/yorogadi/archives/51043090.html

 まず最初は韓国大統領選挙の話題から。然る19日に行われた第17代韓国大統領選挙で、保守野党ハンナラ党のイ・ミョンバク(李明博)候補が、中道左派連立与党・大統合民主新党のチョン・ドンヨン(鄭東泳)候補に圧勝しました。民主化後の90年代後半に野党に転落したハンナラ党が、これで再び与党に返り咲く事になりました。

 このニュースは日本でも多くのマスコミが取り上げました。その中でも、とりわけ産経・読売などの右派メディアは「国民の保守回帰」という論評を早速流していますが、私はこの見方は余りにも皮相的過ぎると思っています。
 何故ならば、今の韓国与党は確かに反軍政・民主化運動の流れを引継いだ人たちで構成されていますが、これは単に反軍政というだけであって、その中には保守から中道左派までいます。韓国左翼は寧ろ、民主労働党に代表されるように、与党を左から批判しつつも、さりとて旧軍政勢力(ハンナラ党)に組するような真似だけはしない、という立場に立っています。

 つまり、今の韓国与党は保守穏健派、せいぜい中道左派といった所で、決して左翼革新政権なんかではありません。北朝鮮に対して宥和的だとも言われていますが、これも与党に限った事ではありません。ハンナラ党も、程度の差こそあれ、今や同じ立場に立っています。そういう意味ではハンナラ党も、かつての軍政色は陰を潜め、今や中道右派政党に衣替えしたといって良いでしょう。
 イラク参戦・米軍再編協力についても、与野党のどちらも韓米同盟維持の立場に違いはありません。今の韓国与党を敢えて日本の例に準えるならば、かつての細川政権時代の非自民連立与党や今の小沢民主党の様なものでしかありません。

 今回の韓国大統領選挙の争点になったのは、イ・ミョンバク(李明博)候補の株価操作関与疑惑などもありましたが、基本的には格差社会問題でしょう。
 韓国では日本以上に経済格差が広がっています。彼の国の全労働人口に占める非正規雇用の割合は、今や日本の3割台をも遥かに凌ぎ、5割台にも達しようとしています。その上、民主化されてまだまだ日の浅い韓国では、日本以上に前近代的労使関係が蔓延り、それに今の経済グローバル化・新自由主義化の影響も加わり、あちこちで露骨な搾取や不当解雇がまかり通っているのが現状です。

 先日のNHKスペシャル・ワーキングプア特集第3弾の「海外のワーキングプア特集」番組でも取り上げられていた、ヒュンダイ(現代)百貨店のパート解雇問題一つとっても、それがよく分かります。せっかく非正規雇用規制法案が成立しても、その施行前に非正規職の大量解雇を断行し、経営者はそれがさも当然であるかのように、「日本の企業家も同じ事をするだろう」などと言い放っているのですから。これはもうホリエモンやグッドウィル会長の折口と同じで、会社の経営責任や従業員の生存権の事など、全然眼中に無いのです。片や政府も政府で、基本路線が新自由主義に賛成なものですから、それ以上は何も言わないし、しない。
 そんな中で、現実の格差拡大には何ら有効な手が打てず、相変わらず「民主化継続か軍政復活か」の旧来の枠組みにしがみついていた政府与党が、今回とうとう有権者から見放されたという事でしょう。大統領選挙の投票率が史上最低だったのも、今まで民主化を支持し、キム・デジュン(金大中)やノ・ムヒョン(盧武鉉)に投票してきた層が、今回はかなり棄権に回ったからでしょう。

 それで「保守派」のイ・ミョンバク(李明博)に今回お鉢が回ってきたのですが、この人は元々ヒュンダイ(現代)財閥の会長だった人です。それが、ソウル市長時代にドブ川の暗渠だったチョンゲチョン(清渓川)を親水遊歩道として復活するなどして、目に見える部分で人気を博してきた事もあって、「この人の企業家としての手腕に期待しよう」という事で当選したのです。先述のパート解雇断行の親玉でありながら。敢えて日本の政治家に例えるならば、「韓国の小泉純一郎」ともいうべき人物でしょう。
 そして、その「韓国の小泉純一郎」圧勝の呷りを受けて、かつての保守本流たる「韓国の安倍晋三」イ・フェチャン(李会昌、旧ハンナラ党総裁)候補は、今回は僅か15%ほどしか得票出来ずに惨敗しました。だから、今回の大統領選の結果は、決して<保守回帰>なんて復古的なものではなくて、それよりも寧ろ<格差社会批判を逆手にとってのネオリベ(新自由主義)勢力の巻き返し>とも言うべきものです。

 ここで誰しも疑問に思うであろう事は、<格差社会批判が争点になりながら、なぜ新自由主義者が大統領に当選したのか?>という事でしょう。更に言えば、その経済格差拡大をもたらした90年代後半のアジア通貨危機と韓国のIMF傘下入りの時に与党だったのが、何を隠そう当のハンナラ党自身であり、その時の危機に有効に対処し得なかったが為に、その後の選挙で民主化勢力(今の韓国政権与党)の後塵を拝する破目に陥ってしまったのでしょう。それなのになぜ新自由主義者が当選したのか?

 それに対しては、私は次の様に見ています。韓国は軍政時代から外資を導入して高度経済成長を続けてきた。遅れていた民主化への歩みも80年代後半からは本格的に始まり、今もその実現過程にある。その後90年代後半のIMF危機などで一頓挫あったが、それもどうやら乗り越えた。今後も経済の上昇と民主化は続くだろう。丁度、昭和30年代・40年代の日本がそうであった様に。そういう中で、日本の例に準えるならば、60年安保闘争後の池田内閣の登場と、橋本不況や森KY政権の後の小泉政権の出現という、らせん状の社会変化が、韓国社会で同時に進行しているのではないか、と。
 つまり韓国では、日本が戦後60年余りかけて経験した政治の民主化、経済の高度成長、経済のグローバル化、新自由主義への流れが、同時並行で進んでいるのです。だから、88ウォン世代と総称される韓国ワーキングプアのうちの、少なくない人々が「コリアン・ドリーム」実現の夢を託してイ・ミョンバク(李明博)を支持し、残りの人たちも経済無策で「民主化支持」一辺倒のチョン・ドンヨン(鄭東泳)には愛想を尽かしたのでしょう。
 もとより、新自由主義者で規制緩和論者のイ・ミョンバク(李明博)では、経済格差は広がりこそすれ縮まる事はありません。韓国民衆も早晩それに気付く筈です。日本でも、高度経済成長や細川政治改革、小泉改革の化けの皮が次第に剥れていったのと、同様に。

 以上俯瞰してみて気付く事は、韓国政治と日本政治のある種の相似性とともに、韓国政治の意外な健全さです。確かに韓国は、日本以上に縁故社会で賄賂が蔓延り、儒教社会特有の封建制もそこかしこに残存しています。しかし、その一方でイ・ミョンバクはソウル市長時代にチョンゲチョンを実際に復活させました。それだけでも、ウソとハッタリの道路公団民営化・郵政民営化や「美しい国」の謳い文句だけで票を掠め取った小泉や安倍よりは、まだよっぽどマシでマトモに見えます。

 「歴史はらせん状に発展する」というのは、元々はドイツの哲学者ヘーゲルや英国の歴史家トインビーの言葉だそうで、社会発展史(史的唯物論)の重要な命題の一つでもあります。その言葉の意味する所は、「歴史は単なる同じ事の繰り返しではない」「一見そう見える事柄でも、実はらせん階段を上るように、確実に変化発展しているのだ」という事ですが、今回の韓国大統領選挙の流れを見るにつけても、今更ながらその事を強く感じました。
 同様の「歴史のらせん状発展、社会発展史」は、そのお隣の北朝鮮でも、下記のニュースから垣間見る事が出来ます。情報鎖国社会で官製報道一色だった北朝鮮にも、脱北者が触媒となって、北朝鮮の民衆自身が参加・情報発信する独立系メディア「リムジンガン」が、遂に誕生したのですから。この動きが、芽吹く事無くしぼんでしまうのか、はたまた北朝鮮人民自身の手によるジャーナリズムとして広がっていくのかは、全て今後の活動・支援如何にかかっています。
  
・韓国大統領選挙と『リムジンガン』(朝民研)
 http://www.asiavoice.net/nkorea/2007/12/post_223.html
・北朝鮮からの通信 リムジンガン
 http://www.asiapress.org/rimjingang/

 このニュースは、先の韓国大統領選挙の陰に隠れて余り目立ちませんでしたが、社会の根本的変革を促すものとして、ある意味では、所詮は為政者交代劇でしか無い大統領選挙よりも、もっと重要なニュースであるとも言えるのではないでしょうか。既にケソン工業団地を舞台とした南北の経済交流が実際に始まっています。この「リムジンガン」創刊については、その流れとも相まって、南北朝鮮それぞれの政治支配者の思惑をも乗り越え、真に民衆と社会の自由化・民主化に繋がる動きにしていかなければなりません。映画「パッチギ」の中で歌われた同名の曲の様に。
コメント (4)
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