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アバターとクロッシング

2010年02月15日 23時02分30秒 | 映画・文化批評
 今回は標記の2つの映画を取り上げます。とは言っても、どちらもまだ観ていないので、現時点でとりあえず自分の思う所を、簡単に書くだけに止めておきます。

映画「アバター」予告編


 今人気の米国映画「アバター」。何でも3Dの技法を駆使したバーチャル・リアリティが売りだとか。映画のあらすじは比較的単純で、未来の地球がいよいよ宇宙軍拡に乗り出し、パンドラという衛星の鉱物資源を狙って、そこのナヴィという宇宙人と戦争になる。その地球人兵士の化身がアバターで、ナヴィに成りすまし当地で破壊工作を行う任務を帯びる。ところがそのアバターがナヴィに次第に同情的になり、最後には共に地球の侵略者と戦う・・・というもの。
 その地球侵略者の台詞がイラク戦争を煽ったブッシュと瓜二つという事で、米国保守派のネオコンが当該映画を「反軍・反戦気分を煽る反米作品」と決め付けられているのだそうな。少し前の映画「靖国」騒動と同じ事を、また繰り返すのかと思うと、もううんざりする。
 そもそも「反米作品」の何が悪いのか。そんな事を言い出せば、「プラトーン」も「地獄の黙示録」も観れなくなってしまう。逆に「ランボー」はどうなるのか。あれこそレーガン軍拡賛美映画ではないか。要は、反米だろうが親米だろうが、芸術性の有無が一番肝心だろう。作品に芸術性があれば感動を呼ぶし、なければ只のプロパガンダとして廃れるだけの事。それを、いつもいつも上から一方的に、やれ「あれはケシカラン」だの何だのと、いちいち言論統制するな。
 更に面白い事に、その「反米」映画が中国政府からも忌避されているのだと。資源争奪戦の描写が、アフリカに進出する中国の姿と二重写しになっているのだとか。米帝からも中国スターリン主義からも嫌われるとは、これ以上に公正・中立で理想的な「反戦」映画があるだろうか。

(参考記事)
・「アバターは反米・反軍映画」保守派いら立ち(読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100130-OYT1T00839.htm?from=top
・中国は「アバター」がお嫌い(産経イザ!)
 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/entertainment/movie/347586/
・映画「アバター」公式サイト
 http://movies.foxjapan.com/avatar/

脱北者:『クロッシング』Crossing


 先の「アバター」は、もう劇場公開期間があと数日を残すのみという事で、観る機会を逃してしまったが、次の「クロッシング」は公開予定も未定だとか。中国を経て韓国に亡命してきた脱北者を描いた作品で、帰国事業を時代的背景とする「血と骨」や「パッチギ!」とはちょうど対照的。「アバター」とは違いまだまだ無名の映画だが、私個人としてはSFよりも寧ろこちらのノンフィクション映画の方に惹かれる。是非観てみたい。
 それにつけても、ネオナチ「在特会」や「維新政党・新風」などの街宣右翼、それと共同歩調を取る平沼・安倍などの極右政治家は、その表面上の「反北朝鮮」言動とは裏腹に、逆に金正日でもっているようなものだ。平沼赳夫の蓮舫「日本人でない」発言一つとってもそうだが、何故あそこまで国籍とか帰化とかに拘るのか。その様子は、民族だの国防だのに拘る金正日と、まるで合わせ鏡だ。
 人権は国境を越えた普遍的価値を持つものだ。本当に彼の人たちが北朝鮮難民救援の立場に立つならば、救援対象者が帰化しようがしまいが、それが在日コリアンであろうが帰化日本人であろうが、そんな事は関係ないだろう。
 日本国籍を取得した帰化日本人の中にも北朝鮮工作員はいるし、逆にかつての植民地宗主国・日本への帰属を断固拒否する在日コリアンの中にも、今の北朝鮮には反感を抱く人もいる。問題は、その当人が今どういう気持ちでいるのかが大切であって、国籍の有無なんて無関係な筈だろう。況してや朝鮮人排斥を叫ぶしか能のない街宣右翼に、北朝鮮人権問題を語る資格なぞ在ろう筈がない。

(参考記事)
・脱北者を描いた映画「クロッシング」ついに日本公開(守る会)
 http://hrnk.trycomp.net/news.php?eid=00174
・脱北者の現実を描いた映画『クロッシング』 女性脱北者が「空腹よりも親を亡くしたときがつらかった」と涙(シネマトゥデイ)
 http://www.cinematoday.jp/page/N0022048
・映画「クロッシング」公式サイト
 http://www.crossing-movie.jp/index.html
コメント (4)
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