違法な働かせ方の末に使い捨て マツダの場合 志位質問 3(09.2.4)
2年前に東京・秋葉原で起こったのと同様の無差別殺傷事件が、また起こってしまいました。この6月22日に、広島のマツダ本社工場で起こった元従業員による11名無差別ひき逃げ事件ですが、前回の秋葉原の雑踏での事件とは違い、今度は容疑者の勤めていた職場で直接起こりました。そういう意味では、容疑者の会社に対する恨みは、秋葉原の場合よりも更に深かったのかも知れません。
しかし、そうであるにも関わらず、そして容疑者自身も「会社に恨みがあった」と言っているにも関わらず、「因果関係不明」「容疑者は実働8日で自主退職」という会社側のコメントが、早々と一方的に流されました。例えば下記の産経記事や、申し訳程度に掲載された会社側の広報コメントのように。
・マツダ社長「因果関係はっきりしない」 11人殺傷容疑者は実働8日(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100622/biz1006221348018-n1.htm
・マツダ本社構内で発生した暴走事件について(マツダ株式会社、PDFファイル)
※HOME>企業・IR・採用>ニューリリースと辿って、やっとここに辿り付ける。
「早くほとぼりが冷めて欲しい」という会社の姿勢が、こういう所に如実に現れている。
http://www.mazda.co.jp/corporate/publicity/release/2010/201006/100622a.html
それを受けて、ヤフー・ニュースのコメント欄には、またしても「自己責任」だの「本人の甘え」だのといった、いつもの版で押したようなネットウヨクの書き込みがあふれ出しました。このコメント欄は携帯インターネットでしか表示されないので、ここにそのまま晒し出す事は出来ませんが、それは醜いものでした。
確かに、容疑者本人の問題も全く無いとは言えないかも知れません。しかし、それが主要な要因ではない事は、ネットで少し調べても下記の様な事例が次々と出てくる事からも明らかです。「自己都合退職」の件にしても、表向きはそうであっても、実際には社内の嫌がらせや退職強要によるものも少なくない事ぐらい、実際にサラリーマンとして働いたり退職された方なら、一番良く知っている筈です。
・マツダ「期間社員」最長3年契約 1年半で2200→260人に減(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100622/biz1006221322015-n1.htm
・派遣社員追いかけ、労組がビラを奪う マツダ正門前の寒々しい光景(JanJan)
http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812073041/1.php
・2010/02/19 広島市議会での中原ひろみ議員の総括質問(マツダ委員会の活動日誌)
http://blogs.yahoo.co.jp/tuyosi_78/24208658.html
まず最初の産経記事で注目すべきなのは、非正規従業員数が短期間に激しく変動している事です。2200人いた(平成20年年11月)のが業績悪化で90人にまで落ち込んだ後(21年7月)、再び業績の持ち直しで260人にまで回復していた(今年4月時点)と、記事にはありますが、人間は機械の部品ではありません。しかし、この数字の極端な変動ぶりからは、この会社が人を機械の部品扱いしている様子が、明確に伺えます。
そして、派遣法によれば、会社は3年を超えて更に勤続を希望する派遣労働者には直接雇用を申し入れなければならないのに、会社側の頻繁な契約変更(派遣→期間工→派遣の繰り返し)によって勤続年数が中断され、ずっと派遣として不安定なまま据え置かれたとして、元派遣社員から地位確認訴訟を起こされたり、広島労働局から指導されたりしています。
記事トップの動画はその問題を取り上げた国会中継ですが、答弁にたった麻生首相(当時)の他人事のような態度には、今更ながら腸が煮えくり返ります。
次のJanJanの記事には、共産党員による「派遣切り」告発ビラ配布を、御用労組の役員が妨害し、ビラを受け取った派遣労働者の後を追いかけて、ビラをひったくるような真似までしている事例が載っています。こんな事までして、正当な権利行使を徹底的に抑圧していたら、無差別テロに走る輩が出てきても、一向におかしくはありません。
確かに、被害に遭われた方は、同じ派遣労働者が大半だったかも知れません。そういう意味では、容疑者のやった事は、単なる「八つ当たり」でしかなかったという指摘は、正しくその通りです。その怒りを、行きずり殺人ではなく労働運動の形で、末端従業員ではなく会社の経営者に向かって、何故ぶつけられなかったのかと、批判するのは容易い。しかし、ではそれを妨害し抑圧してきたのは一体誰だったのか。そうして、正社員中心の御用労組と一体となって、言論・表現の自由を抑圧してきた会社に、今回の事件で無関係を装い被害者面する資格なぞ、私は一切無いと考えます。
最後の共産党マツダ委員会のブログ記事には、マツダで「派遣切り」に遭い、失業保険も切れ最後にはホームレスに陥った労働者や、30回以上もハローワークに通いながらも転職が適わず、自殺一歩手前まで追い詰められた労働者の例が取り上げられています。そして、その問題が広島市議会で取り上げられたのが、今年の2月19日とあります。つまり、最初の産経記事にある、派遣労働者が2200人から90人に落ち込んだ昨年7月から、基本的な事態は殆ど何も変わっていないのです。
そんな中で起こったのが今回の事件です。マスコミ報道の中には、やれ「容疑者がアパートに一人住まいで近所づきあいも殆ど無かった」だの「自己破産歴がある」だのと、ことさら個人の問題に矮小化するような記事が見受けられますが、そんな事を幾ら書き立てても、問題解決には何の役にも立ちません。何故なら、これまで紹介した、人を機械の部品扱いし、その声を封殺する会社の姿勢が変わらない限り、同じような事件がまた起きるに決まっているからです。この事件を引き起こしたのが、今回は「たまたま」この容疑者であったというだけなのです。
そして、これは何もマツダだけの特殊事例ではないという事です。同じような事は、トヨタ・日産や、その他の業種でも、どこでも見受けられます。早い話が、私の職場にしてからがそうです。私も、4月以降の労働強化に際しては、ここまで暴走はしなくても、元請大手企業の社員を殴ってやろうかと、思わず言った事がありましたからね(過去記事参照)。
それがやってはならない反社会的な行為であり、もっと正当な手段で自らの要求を実現しなくてはならない事ぐらい、実はこの容疑者も含めて、みんな頭では分かっているのです。しかし現実には、会社はビラすら読ませようとはしない。それでも「やってはいけない事はやってはいけない」のですが、そうせざるを得ないように仕向けている側に、被害者面する資格なぞ一切ありません。本当にこの容疑者を非難出来るのは、被害に遭われた当人・家族・遺族・知人の方や、この容疑者の家族・親戚・知人だけです。
2年前に東京・秋葉原で起こったのと同様の無差別殺傷事件が、また起こってしまいました。この6月22日に、広島のマツダ本社工場で起こった元従業員による11名無差別ひき逃げ事件ですが、前回の秋葉原の雑踏での事件とは違い、今度は容疑者の勤めていた職場で直接起こりました。そういう意味では、容疑者の会社に対する恨みは、秋葉原の場合よりも更に深かったのかも知れません。
しかし、そうであるにも関わらず、そして容疑者自身も「会社に恨みがあった」と言っているにも関わらず、「因果関係不明」「容疑者は実働8日で自主退職」という会社側のコメントが、早々と一方的に流されました。例えば下記の産経記事や、申し訳程度に掲載された会社側の広報コメントのように。
・マツダ社長「因果関係はっきりしない」 11人殺傷容疑者は実働8日(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100622/biz1006221348018-n1.htm
・マツダ本社構内で発生した暴走事件について(マツダ株式会社、PDFファイル)
※HOME>企業・IR・採用>ニューリリースと辿って、やっとここに辿り付ける。
「早くほとぼりが冷めて欲しい」という会社の姿勢が、こういう所に如実に現れている。
http://www.mazda.co.jp/corporate/publicity/release/2010/201006/100622a.html
それを受けて、ヤフー・ニュースのコメント欄には、またしても「自己責任」だの「本人の甘え」だのといった、いつもの版で押したようなネットウヨクの書き込みがあふれ出しました。このコメント欄は携帯インターネットでしか表示されないので、ここにそのまま晒し出す事は出来ませんが、それは醜いものでした。
確かに、容疑者本人の問題も全く無いとは言えないかも知れません。しかし、それが主要な要因ではない事は、ネットで少し調べても下記の様な事例が次々と出てくる事からも明らかです。「自己都合退職」の件にしても、表向きはそうであっても、実際には社内の嫌がらせや退職強要によるものも少なくない事ぐらい、実際にサラリーマンとして働いたり退職された方なら、一番良く知っている筈です。
・マツダ「期間社員」最長3年契約 1年半で2200→260人に減(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100622/biz1006221322015-n1.htm
・派遣社員追いかけ、労組がビラを奪う マツダ正門前の寒々しい光景(JanJan)
http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812073041/1.php
・2010/02/19 広島市議会での中原ひろみ議員の総括質問(マツダ委員会の活動日誌)
http://blogs.yahoo.co.jp/tuyosi_78/24208658.html
まず最初の産経記事で注目すべきなのは、非正規従業員数が短期間に激しく変動している事です。2200人いた(平成20年年11月)のが業績悪化で90人にまで落ち込んだ後(21年7月)、再び業績の持ち直しで260人にまで回復していた(今年4月時点)と、記事にはありますが、人間は機械の部品ではありません。しかし、この数字の極端な変動ぶりからは、この会社が人を機械の部品扱いしている様子が、明確に伺えます。
そして、派遣法によれば、会社は3年を超えて更に勤続を希望する派遣労働者には直接雇用を申し入れなければならないのに、会社側の頻繁な契約変更(派遣→期間工→派遣の繰り返し)によって勤続年数が中断され、ずっと派遣として不安定なまま据え置かれたとして、元派遣社員から地位確認訴訟を起こされたり、広島労働局から指導されたりしています。
記事トップの動画はその問題を取り上げた国会中継ですが、答弁にたった麻生首相(当時)の他人事のような態度には、今更ながら腸が煮えくり返ります。
次のJanJanの記事には、共産党員による「派遣切り」告発ビラ配布を、御用労組の役員が妨害し、ビラを受け取った派遣労働者の後を追いかけて、ビラをひったくるような真似までしている事例が載っています。こんな事までして、正当な権利行使を徹底的に抑圧していたら、無差別テロに走る輩が出てきても、一向におかしくはありません。
確かに、被害に遭われた方は、同じ派遣労働者が大半だったかも知れません。そういう意味では、容疑者のやった事は、単なる「八つ当たり」でしかなかったという指摘は、正しくその通りです。その怒りを、行きずり殺人ではなく労働運動の形で、末端従業員ではなく会社の経営者に向かって、何故ぶつけられなかったのかと、批判するのは容易い。しかし、ではそれを妨害し抑圧してきたのは一体誰だったのか。そうして、正社員中心の御用労組と一体となって、言論・表現の自由を抑圧してきた会社に、今回の事件で無関係を装い被害者面する資格なぞ、私は一切無いと考えます。
最後の共産党マツダ委員会のブログ記事には、マツダで「派遣切り」に遭い、失業保険も切れ最後にはホームレスに陥った労働者や、30回以上もハローワークに通いながらも転職が適わず、自殺一歩手前まで追い詰められた労働者の例が取り上げられています。そして、その問題が広島市議会で取り上げられたのが、今年の2月19日とあります。つまり、最初の産経記事にある、派遣労働者が2200人から90人に落ち込んだ昨年7月から、基本的な事態は殆ど何も変わっていないのです。
そんな中で起こったのが今回の事件です。マスコミ報道の中には、やれ「容疑者がアパートに一人住まいで近所づきあいも殆ど無かった」だの「自己破産歴がある」だのと、ことさら個人の問題に矮小化するような記事が見受けられますが、そんな事を幾ら書き立てても、問題解決には何の役にも立ちません。何故なら、これまで紹介した、人を機械の部品扱いし、その声を封殺する会社の姿勢が変わらない限り、同じような事件がまた起きるに決まっているからです。この事件を引き起こしたのが、今回は「たまたま」この容疑者であったというだけなのです。
そして、これは何もマツダだけの特殊事例ではないという事です。同じような事は、トヨタ・日産や、その他の業種でも、どこでも見受けられます。早い話が、私の職場にしてからがそうです。私も、4月以降の労働強化に際しては、ここまで暴走はしなくても、元請大手企業の社員を殴ってやろうかと、思わず言った事がありましたからね(過去記事参照)。
それがやってはならない反社会的な行為であり、もっと正当な手段で自らの要求を実現しなくてはならない事ぐらい、実はこの容疑者も含めて、みんな頭では分かっているのです。しかし現実には、会社はビラすら読ませようとはしない。それでも「やってはいけない事はやってはいけない」のですが、そうせざるを得ないように仕向けている側に、被害者面する資格なぞ一切ありません。本当にこの容疑者を非難出来るのは、被害に遭われた当人・家族・遺族・知人の方や、この容疑者の家族・親戚・知人だけです。