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順法闘争の芽生え

2013年08月26日 22時29分08秒 | 職場人権レポートVol.3
  

 前回の記事で、DAS(ダス)という新しい作業システムの導入が職場で進められている事を書きました。コンベヤで一定振り分けられるものの、最後は人力頼みだった商品の仕分け作業を、最後まで完全にデジタル化する事で、作業の精度・スピード向上に繋げようというのが、DAS導入の目的です。しかし、ハード面で幾らこのような新システムが導入されても、それを支える人材育成や作業管理といったソフト面での向上が全然伴っていないのですから、お話になりません。折角のこの新システムも、この会社では所詮「猫に小判」「宝の持ち腐れ」に終わるだろうと予想しています。

 その第一の理由は、応援で来ている人たちの戦力アップが全然図られていない事です。新システムの立ち上げに伴い、多くの人が他の部署や派遣会社から応援に来ていますが、もう来てから一ヶ月以上にもなろうというのに、全然レベルがアップしていません。相変わらず来た頃と同じ様な状態で、ガタガタな積み方で、壊れやすい物の上に重量物を平気で積んだりしています。
 確かに商品の種類は千差万別で積み方も人それぞれです。でも、いつも必ず出る定番商品については、出る量や積み方もある程度決まっています。それらの基本を何故最初にきちんと教えないのか。「天地無用」表示の意味(上下を逆に置いてはいけない)も含め。勿論それはバイトも教えますが、基本的には社員の仕事でしょう。そして、社員にバイト教育の環境を整えてあげるのが会社の役割でしょう。でなければ、何の為の社員や会社なのか分かりません。
 その一番肝心な事を放置したまま、「将棋の定石」も教えずにいきなり名人と対局させたり、「算数の九九」も教えずにいきなり方程式を解かせるような真似をしても、「猫に小判」「宝の持ち腐れ」にしかなりません。
 どうせ「派遣なんて使い捨て、とりあえず頭数さえ揃えれば良い」としか思っていないから、ろくに教育もしないのでしょう。そういう人権無視・人間蔑視のメンタリティは、戦時中の「特攻」「玉砕」と全然変わりません。

 そして第二の理由は管理不在です。誰も現場を仕切る人間がおらず、銘々がただ上から言われた事をやるだけ。
 元々、建屋の柱の配置などはそのままに中の設備だけを入れ替え、作業しながら工事を進めて来たので、レイアウトに無理があったのでしょう。物流センターなのに納品の一部は収納庫で行われるようになり、後で運ぶ手間を厭い他の商品も無理やり作業場に突っ込まれるので、狭い場所で身動きが取れなくなってしまいました。でも、検品者もピッカー(仕分け作業者)も目の前の自分の仕事をこなす事しか考えない。その結果、待機場所が一杯になっても商品がどんどん放り込まれ、カゴ車やカートのジャングルの中で作業しなければならなくなっています。それでも誰も何も言わず、互いに相手に八つ当たりするばかり。(記事冒頭の写真参照)

 こんな状態でどうやって満足に作業が出来ますか。どうやって新人に教育が出来ますか。管理者はいても名目だけで、下に偉そうに威張り散らす奴はいても、誰も責任もって作業管理や人材育成する人はいません。それで万一事故が起こっても、以前の私とMとの労災トラブルの時の様に、会社は多分言い逃れに汲々とするだけでしょう。

 

 DASか何か知りませんが、幾ら新しいシステムを導入しても、現場がこんな状態では所詮「猫に小判」「宝の持ち腐れ」に終わるだけです。
 もうやってられないので、私も含めて数人のバイトは、社員の残業指示なぞ無視して、普段は定時の18時に、忙しい週末でも残業1時間後の19時には、どんなに忙しく、仕事が残っていようとも、タイムカードを押して勝手に帰る事にしました。上記の状態では、幾ら残業しても効率が落ちるばかりで「焼け石に水」にしかならないし、いつ何時どんな事故やトラブルにも巻き込まれるか分かりません。もはや長居は無用、最低限の生活費さえ稼げたら後はとっとと避難した方が無難です。
 これは何も私が順法闘争(注)を扇動した訳ではありません。また、所属する地域労組の方針で動いている訳でもありません。私が組合に入っているのは、過去の行きがかり上、「掛け捨ての保険」代わりに組合費を払い、何かあった時だけ相談するのみで、職場での日頃での行動については一切ノータッチです。その様な、言わば自然発生的な成り行きで、誰ともなく定時で帰りだした状態に、私もちゃっかり便乗しているだけです。

(注)順法闘争:1970~80年代に、旧国鉄の労働組合(国労・動労)などが、法令・規則違反の過密ダイヤが組まれる中で、敢えて安全確認や規定順守を徹底する事で、職場の劣悪な労働条件や当局の安全軽視を世に訴えようとした争議戦術。残業拒否もその一環として取り組まれた。

 でも、ここで「36(サブロク)協定」に足元をすくわれる可能性がある事に注意しなければなりません。

 労働基準法の第32条には「休憩時間を除いて1日8時間、週40時間以上働かせてはならない」とあります。これが雇用の基本ルールです。この基本原則に則る限り、労働者に残業を強制する事は出来ません。
 しかし、政府や財界はその規定を骨抜きにしようと、今まで例外規定を一杯作って来ました。出退勤自由な(実際には会社の好き勝手に出勤させられる)フレックスタイム制度や、昔は病院や消防などにしか認められなかった夜勤を普通の職場でも出来るようにする為の変形労働時間制などがそうです。

 「36(サブロク)協定」もその例外規定の一つです。「労働組合や職場の代表者と別途協定を結べば、その範囲で会社は労働者に残業される事が出来る」という規定で、同じ労働基準法の第36条に書かれています。この協定は、職場の過半数で組織する労働組合や、労組が無い職場では選挙で選ばれた代表と締結し、労働基準監督署にもその内容を届け出なければならない事になっています。これが所謂「36協定」です。(上記写真はその見本:大阪労働局の監修パンフレットより転載)
 この協定は大抵の会社にあります。労働組合の無い職場でも、誰かを代表者に仕立て上げれば締結出来るのですから。多分、私の会社にもある筈です。社員が何も知らないだけで。

  

 元々この「36協定」は、やむを得ず残業させる場合でもそれを一定時間内に制限する為に設けられた規定でした。しかし、日本の大企業はこれを逆手に取って、組合選挙に介入して労働組合を会社派の人間で乗っ取ったり、会社の言いなりになるイエスマンにメクラ判をつかせたりして、労働者に事実上残業を強制してきたのです。「ブラック企業」や「過労死」がここまで広まったのも、企業がこの規定を悪用してきたからです。

 2008年に、居酒屋チェーン「和民」の女性従業員が、「1日24時間365日働け」と教え込まれ、月140時間以上も残業させられた上に、夜勤明けや休日にも研修やレポート提出を強制されたのを苦に、自殺に追い込まれました。それでも和民の元会長は「あれは労災ではない」と居直り、今度の参議院選挙では自民党からぬけぬけと当選まで果たしてしまいました。こんな無法がまかり通るのも、「36協定」みたいな抜け穴が一杯あるからです。(上記写真は、その女性が残したメモ書きの遺書と、元会長・渡辺美樹の居直りツイッター投稿)

 この「36協定」のせいで、「正当な理由なくして残業を拒否できない」といった会社寄りの判決が出た事もありました(例:日立製作所武蔵工場事件・平成3年11月28日最高裁判決)。しかし、これは逆に言えば、健康保持や安全確保などの「正当な理由」さえあれば、たとえ「36協定」が結ばれていても残業は拒否できるという事です。実際、それで逆に労働者側が勝訴の判決も出たりしています(例:トーコロ事件・平成9年11月17日東京高裁判決) 。
 http://www.work2.pref.hiroshima.jp/rouqa1/rouqa514.html

 和民みたいな会社が大手を振ってまかり通る、今のようなご時世では、「抜け穴だらけの労働基準法」を嘆くよりも、その抜け穴を少しでも埋めるべく、法律でも憲法でも利用できる物はとことん利用してやる(順法闘争)位の気構えが必要なのではないかと痛感します。
コメント (1)
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