公休日に所用で大阪市内まで。ランチは西成・天下茶屋の下町洋食・とたん屋のサービスランチで。他の客はほとんどこれより少し大振りのメガ盛りオンザライスを注文していたが、このサービスランチも割とボリュームが。
この下町洋食店はご飯の量が多い事で有名で、「ガツ飯系」雑誌にもよく取り上げられている。ハンバーグ、トンカツ、エビフライにパスタやサラダ、スープまで付いて850円。これは結構お得。
夕食は難波千日前の食堂しみずでお袋の味を堪能。チェーン店よりも割高な難点も、おかずの選択を工夫する事で何とか切り抜ける事が出来た。
大衆食堂では自由におかずを選べるが、見栄えの良いおかずは大抵値段が張る。下手すれば直ぐ千円以上になってしまう。それを防ぐには、造り等の高価なおかずを避け、卵焼きや冷奴、じゃこ卸し、納豆、味噌汁等の、比較的安価なおかずや、焼き飯や丼物中心に注文すれば良い。
今日のメニューでも、これだけ注文しても、たった750円。脂の乗った秋刀魚にボリュームたっぷりの冷奴、じゅん菜入りの味噌汁も、チェーン店では絶対に味わえない。
下町洋食の流れを継ぐ「とたん屋」も、大衆食堂の雰囲気を残す「食堂しみず」も、残念ながら今のご時世では次第に淘汰されゆく運命にある。幾ら「庶民の味だ」「健康志向だ」と言っても、やっぱり1円でも安い店に客は流れる。そういう廉価販売が出来るのは、資本力や宣伝力にたけた大手のチェーン店に限られる。
そういう大手チェーン店は、得てして原材料費の無理な切り詰めや、生産者への買い叩き、従業員を酷使したりしているものだが、そういう「影の部分」は客にはなかなか見えない。過労死や食中毒事件が起こってから、ようやく問題が明るみに出るが、それも、ほとぼりが冷めればまた元の木阿弥だ。
私のように「昔ながらの庶民の味」を求める人も確かに一定いるが、それ以上に「安けりゃあ何でも良い」という人の方が多い。それに、たとえ今は「昔ながらの味が良い」と言っていても、今より更に生活が切羽詰まって来ると、人間どうしても「安けりゃあ何でも良い」という方に流れてしまいがちだ。「悪貨は良貨を駆逐する」のたとえ通り。
それでも、繁華街の難波にあって吉本帰りの客や外国人観光客も来る「食堂しみず」は、まだ経営を続けていける可能性があるが、下町・天下茶屋の地元客が中心の「とたん屋」は、今後更に経営が厳しくなるだろう。
この流れを変えるには、経営者の個人的努力だけでは、もうどうにもならない。まず、私たち消費者自身が、「安けりゃあ何でも良い」という発想から抜け出さなければならないし、国や自治体も、消費者・国民の生活支援や格差是正に、もっと本腰を入れなければならない。
ところが、国のやっている事はどうだ。アベノミクスと称して、株価対策にばかり力を入れ、日銀債券や年金資金を投入してまで株価を買い支えて来た。これらの原資は全て国民の税金だ。株なんて買えるのは、経営者や大企業に勤める正社員だけだ。その一方で、労働者の実質賃金は低下の一途をたどっている。社会保障費は年々値上がりするが、肝心の給付は切り下げられる一方だ。年金なんて、その最たる物だろう。株価バブルで有効求人倍率は上がったが、求人内容は非正規の低賃金雇用かブラック企業の名ばかり正社員求人ばかり。何の事は無い。国民から搾取した税金で、大企業の経営を買い支えているのだ。これでは、「タコが自分の足を食う」ような形で、その場しのぎの対策でお茶を濁しているだけじゃないか。
そして、グローバル化(国際化)やEPAと称して、海外から出稼ぎ目的の外国人を、留学生や技能実習生と偽って雇い入れ、安い賃金で違法に長時間こき使ったり、TPPと称して、海外から農薬まみれの農産物や粗悪品の医療薬をどんどん輸入して、国内産業を衰退させ産業空洞化を推し進め、「安かろう悪かろう」を更に推し広げるような事ばかりしている。これでは、ブラック企業の「すき家」や「ワタミ」の様な「悪徳」大手チェーンばかりが栄え、「とたん屋」や「食堂しみず」の様な「良心的」個人経営のお店は、ますます寂れる一方だ。
その現実から目を背けて、選挙で与党の自民・公明や準与党の維新に投票したり棄権したりしながら、テレビの安上がりなB級グルメ番組で自分を慰め誤魔化し、「昔は良かった」「和食が一番」等とほざく「偽善者」や「ニセ愛国者」の何と多い事か。「三丁目の夕日」を懐かしんでいる暇があるなら、それをぶち壊す政治に早くストップをかけろ。