西成区から住之江区に引越した後も、トコジラミ(南京虫)が引っ付いてきたので、昨日遂に駆除業者を呼んで駆除してもらいました。
トコジラミは人間や他の動物の血液だけを餌にしています。ゴキブリ等とは違い、生ゴミは食べません。そして、夜行性なので昼間は物陰に潜んでいます。物陰に潜みながら、人間が呼吸で吐き出す二酸化炭素で人間の居場所を嗅ぎ分け、夜まで待つのです。トコジラミの事を英語でベッドバグ(bed bug)と言うのも、そこから来ています。
だから業者も、ユニットバスやキッチン等の水回りはほとんど無視し、ひたすらベッドとその周辺、物陰になる壁の隙間、書類や段ボールの隙間を徹底的に調べます。大きな噴霧器でエリア全体を燻蒸しながら、小さなスプレーで隙間をピンポイントで駆除していきます。
今のトコジラミは市販の殺虫剤では駆除出来ません。薬剤に対する抵抗力が身に付いてしまっているからです。バルサンなんか炊いても、煙は下にしか流れないので、壁の隙間に隠れたトコジラミには効きません。むしろ、煙から逃れようとして、更に生息域を拡大する事になってしまいます。トコジラミを駆除するには、専用の薬剤で、この様にピンポイントで駆除するしかないのです。
その中でも、特に業者が念入りに調べたのが、すのこベッドと書類です。すのこベッドは、凹凸があり板の厚みもあるので、トコジラミの格好の隠れ家になります。後、書類も特に普段観る事のない生命保険などの証書類がトコジラミの格好の巣になります。業者曰く「証書類などの大事な書類ほどトコジラミの餌食になる」そうです。
私の過去の手帳も、何年も前のやつはほとんど見ないので、トコジラミが卵を産みつけていました。これらは速攻で処分しました。しかし、さすがに証書類などの重要書類は処分できないので、薬剤が乾くまで陰干しするしかありません。預金通帳のページも全て開いて、トコジラミの卵や死骸が残ってないか徹底的に調べます。まるで家宅捜索のような感じになって来ました。
壁の隙間、すのこベッドのネジ穴もこまめに薬剤散布。ネジ穴の上にトコジラミの痕跡確認。
手帳や暑中見舞いの側面にもトコジラミの卵や血糞が…。
業者は重要ポイントの駆除だけで手一杯なので、洗濯・乾燥で対処出来る衣類の駆除は私が受け持つ事になります。トコジラミは害虫の中でも一番駆除に手がかかるので、依頼者も共同で対処せざるを得ないのです。今朝コインランドリーで洗濯した衣類も、駆除開始までに虫が付いた可能性を否定出来ないので、再び洗濯・乾燥しなければなりません。冬物の衣類も含め全ての衣類が対象です。もうそうなると、マンションのコインランドリーだけでは対処出来ないので、近くの大型コインランドリーまで足を運ぶ事になります。
しかも、洗濯・乾燥しなければならないのは衣類だけではないのです。いつも通勤で肩に背負っているリュックサックにも、トコジラミの痕跡が付いていたので、これも洗濯機と乾燥機にかけて殺菌しなければならなくなりました。まさかリュックサックまでコインランドリーで洗濯する羽目になるとは思ってもみませんでした。
大型コインランドリーは一度に多くの衣類を洗濯・乾燥する事が出来ますが、半乾きになる衣類も多く出ます。半乾きの分は乾くまで乾燥機にかけなければなりません。午後からはもうひたすらコインランドリー詣となってしまいました。昨日1日だけでコインランドリーで2千円以上使いました。
トコジラミはパソコンやテレビなどの家電製品の中にも侵入します。コンセントやモジュラージャックの隙間がトコジラミの格好の棲家となるのです。しかし、家電製品や精密機器には薬剤散布は出来ません。周囲を両面テープで囲い込んで、出てきた所を捕獲するしかありません。両面テープがいわばゴキブリホイホイの役割を果たす事になります。
トコジラミの成虫の寿命は約1年なので、1年かけて気長に兵糧攻めにする作戦です。でも、万里の長城ならいざ知らず、こんなチャチな両面テープで兵糧攻めにする事なぞ出来るのでしょうか?とりあえず、パソコン使用中に手が両面テープに引っ付かないように、注意喚起の張り紙を貼りました。
段ボール類はトコジラミの巣となるので全て廃棄しなければなりません。サロンパスも外箱は全て廃棄しなければならないので、裸のサロンパスの袋を別の袋に入れて収納しなければなりません。衣類の洗濯・乾燥に加え、外箱を失った小物類の収納に追われ、夜8時も回った頃になって、ようやく一息つけるようになりました。
トコジラミの被害を最初に確認してから約3ヶ月。避難先のホテル代に約4万円、引越代に約2万3千円、転居先の初期費用に約13万円7千円、昨日の駆除費用に8万8千円、廃棄した家具類や粗大ゴミ収集代がざっと1万円、新たに買い揃えなければならなかった家具類が約3万円。合計で約32万8千円。一旦トコジラミの被害に遭うと、これだけの時間と金額を費やす事になります。
トコジラミが厄介なのは、噛まれた時の痒さよりも、この駆除の大変さなのです。1匹の成虫から毎日5個も卵が産まれ、1年間では500匹に増えると言われています。たとえ、これだけの時間と費用を費やしても、トコジラミを完全に駆除出来るとは限らないのです。とりあえずは、1ヶ月以内であれば、もしトコジラミが再び出て来ても、無料で駆除してくれる事になっています。しかし、それ以降に出てきた場合は、再び有料で駆除してもらわなければなりません。実際、トコジラミの被害が広がっている米国では、ホテルチェーンや衣料品チェーンが店舗閉鎖に追い込まれたりしています。
西成のあいりん地区でも、住環境が劣悪な為に、昔からトコジラミの被害に悩まされて来ました。そこに、更に外国人観光客がトコジラミを持ち込むようになり、今や大阪市内の中でも、最もトコジラミの被害が集中する地域になってしまいました。ところが、マンション管理会社も行政も、「衛生環境が改善された日本国内には、トコジラミはもはやいない。もし被害に遭っても、外から持ち込んだ住民自身の手で駆除しなければならない」と知らん顔です。本来は家主や行政の責任で駆除しなければならないにも関わらず。
それどころか大阪市は、トコジラミ駆除もせずに、「新今宮ワンダーランド」「新世界・西成ワンダーランド」の観光キャンペーンをやり始めました。無責任にもほどがあります。しかし、損害賠償を請求しようにも、個人の力では因果関係を立証するのは困難です。私はこれが自己責任だとは、とても思えません。こんな理不尽な事があって良いのでしょうか?