前回記事の続きです。温泉旅館でもらった割引券を早速使ってみたかったし、前回は時間がなくて見送った頂上までのルートを今度こそ踏破しようと思ったので、また昨日の公休日に犬鳴山に行ってきました。
その前に、前回記事で書きそびれた事を一つ補足しておきます。犬鳴山という山が単独である訳ではありません。元々は、麓の七宝瀧寺(しっぽうりゅうじ)という寺の山号だったものが、燈明ヶ岳(558メートル)や大天上岳(612メートル)、経塚権現山などの周囲の山々を総称して犬鳴山と呼ぶようになったのです。つまり、高野山と同じ形のネーミングです。高野山も、元々は総本山・金剛峯寺(こんごうぶじ)の山号だったものが、楊柳山など付近の4つの峰の総称になったものです。
前回は犬鳴トンネルを訪れた所まで書きました。今回はそこから更に奥の、紀泉高原の頂上にあるハイランドパーク粉河(こかわ)のロッジを目指しました。
七宝瀧寺(しっぽうりゅうじ)から上に上がると犬鳴トンネルに向かう林道犬鳴東手川(とてがわ)線に出ます。林道横の道標には「五本松展望台のある頂上まで2.7キロ」とあります(左上写真)。「それぐらいの距離なら、上り坂を考慮に入れても1時間あれば充分だ。正午には頂上に着くだろう」と、最初思っていました。ところが、いざ林道を歩き始めると、どうにか平坦だったのはトンネルを抜けるまでで、後は歩くほどに勾配がきつくなってきました。
コースの所々に森林組合の道標が立っていて、現在地の標高が記されていました。その道標によると、トンネル入口付近ではまだ標高340メートルだそうです(右上写真)。
やがて林道の分かれ道にさしかかります。林道は左にカーブし、右に分かれる林道には車止めのゲートが設置されていました。近くの案内板によると、この右の林道は途中で行き止まりになっています。だから車両進入禁止のゲートが設置されているのですね。南海電鉄のパンフレット(記事冒頭の地図)にも「車止めゲートを入る」とあります(左上写真)。
ちなみに、「左の林道は15.7%の勾配」との道路標識もこの近くにありました。「15.7%の勾配」という事は、「1000メートル走ると157メートル上がる」という事ですね。
ところで、私の進んだ右の林道ですが、車両進入禁止の林道なので、今までとは比べ物にならないほど落ち葉が積もっています。まだ舗装道路なので普通に歩けますが、落ち葉で路面が濡れて滑りやすくなっています。
やがて、その林道とも分かれ、いよいよ地道の登山道に入ります。登山道(階段)の入口に道標と目印の柵が設置されているので迷う事はありませんでしたが、その登山道の傾斜のきつさに思わずたじろぎました(右上写真)。でも、そんな物はまだ序の口でした。
だって、後はもうこんな急な岩場や階段の上りばかりなのですよ。傾斜が急なだけでなく、谷側が完全に「崖」なのですから。途中の尾根道が少し平坦なだけで、後は全部こんな感じです。少しでも足を滑らせたら谷底まで真っ逆さまです。それでも、まだ上りは良い。問題は下りです。この写真のような風景を目の当たりにしながら、うねうねと曲がった急な坂道を下って帰らなければならないのですよ。せめて、曲がり角の部分だけでも、転落防止用の柵を設置してもらいたいと思います。(上記写真)
そして、途中で林道を2度横断します。下からは登山道だけでなく林道でも上がって来れますが、林道は自動車が通るので、等高線のへりに沿って、グネグネと蛇行を繰り返しながら、徐々に高度を上げていきます。これを歩くとなると、頂上に着くまで4時間ぐらいかかってしまいます。それでは、頂上に着く頃には日が暮れてしまいますので、時間短縮の為に登山道が作られたのです。その登山道と林道との交差地点に、さっきの森林組合の道標が立っています。その道標には標高600メートルとありました。麓のトンネル手前の標高が340メートル、車止めゲート付近でも大体400メートルぐらいなので、前述のパンフレットの地図で見ると、わずか2~300メートル移動する間に200メートルも上った事が分かります。(上記写真及び記事冒頭の地図参照)
下から上がってきた林道と再び合流し、ようやく高原の頂上に着きました。頂上の標高は約740メートル。頂上といっても、山と山の間の鞍部(あんぶ=峠)みたいな所ですが、それでも高原には違いありません。既に生駒山の標高(641メートル)を超えています。再合流点の道標には「七宝瀧寺まで3.4キロ」とあります。そのわずか3.4キロの間に、標高300メートルぐらいから740メートルまで約400メートルも一気に上がってきたのです(右上写真)。登る時は冬でも汗でぐっしょりでしたが、さすがにここまで来ると寒さを感じます。
ここから更に葛城山や岩湧山の方にも道が通じていますが、そちらはまた別の機会にでも行ってみたいと思います。
そして、これが前述したハイランドパーク粉河のロッジです。1階が農産物の直売所と管理事務所、2階が食堂も兼ねた喫茶店となっています。私が事前にネットで調べた時には「一時休業中」と書かれていたので、ハイキングに入る前に泉佐野のスーパーで昼食弁当とお茶を買ってきたのですが、どうやら営業を再開したようです。仕方がないので、喫茶店のマスターに頼んで、店内でお弁当を食べさせてもらう事にしました。(実は、1階には休憩室もあったので、そこで食べても良かったのですが、その時はそこまで気付きませんでした)
お弁当を食べた後、コーヒーを注文してマスター夫婦としばし雑談。その中で、「道に迷うハイキング客が多い」とマスターがしきりにぼやいていました。そして、「その原因は、南海電鉄の案内パンフレットにある地図にあるのではないか」「実際に、このパンフレットの地図が分かりにくいというハイキング客の声を耳にする」と言っていました。
私は、それを聞いて、「この地図には結構詳しい情報が載っているのに」と、最初はいぶかしく思っていました。でも、よくよく見ると、林道も登山道も同じ茶色で塗られ、どこから登山道に入るのかハッキリしません。それに、あくまでも「ハイキング」とあるので、登山道が石ころだらけで、谷側が崖で柵もない事にも一切注意喚起がされていません。これでは、せっかく詳しい所まで載っていながら、「ハイキングではなく登山のつもりで来るべし」という、一番大事な注意事項がスッポリ抜け落ちてしまっています。
それと、道に迷う原因については、もう一つ、車止めゲートの横に、「こちらのゲートの横を入れ」と明確に書かれた道標が設置されていない事もあるのではないでしょうか。確かに、パンフレットには「車止めゲートを入れ」旨の注意書きがありますが、ハイカーがまず見るのはパンフレットよりも道標です。現に私も、近くの案内板をたまたま見たから良かったものの、もし見ていなければ、左の林道に迷い込んだかも知れません。もちろん、道標や案内板を設置するのは、一私鉄にしか過ぎない南海電鉄ではなく、犬鳴山も含めた金剛生駒紀泉国定公園を管理している大阪府の仕事ですが、南海電鉄の方も、パンフレットでハイキングの宣伝をする以上は、ただ宣伝するだけでなく、安全対策の働きかけを大阪府や関係先に対して行うべきではないでしょうか。事故が起こってからでは遅いのですから。
頂上には、麓の大阪府側や和歌山県側から自動車道路が通じています(左上写真)。しかし、その自動車道路や林道は、前述したように、蛇行を繰り返す大回りなルートになっていて、日帰りのハイキングには向きません。勢い、ハイカーは傾斜が急な登山道を利用せざるを得ません。もっと言えば、犬鳴山自体もただのハイキングコースではありません。標高こそ低いものの、表行場や裏行場のような、鎖伝いでしか行けない場所もある、険しい修験道の行場でもあるのです(参考資料)。そういう事もパンフレットに記載すべきではないでしょうか。「たとえハイキングと言えども、近郊の野山に行くような安易な気持ちで行ってはダメだ」と言う事も、ちゃんと書くべきだと思います。
頂上には前述のロッジ以外に、有料の展望台もあります。五本松の展望台です(右上写真)。有料と言ってもわずか200円ですが、和歌山県側については別にそんな所に登らなくても、頂上からでも充分眺望がききます。大阪府側のみ、樹木が生い茂って眺望がきかないのです。でも、その程度なら、別に展望台に登らなくても、ロッジの2階からでも何とか見れます。
左上写真は、ロッジの写真集に載っていた大阪府側の眺望です。ロッジのマスターが仰るには、はるか彼方の四国の山々までうっすらと写っているそうです。私はよく確認できませんでしたが。そして右上写真が、私が頂上から和歌山県側を撮影したものです。
なお、「犬鳴トンネルの心霊スポットとしての噂の真偽」についても、ロッジのマスターに聞いてみましたが、「私ら毎日、あのトンネルを通って麓に買い出しに行っているが、今まで幽霊に出くわした事なぞ一度もないですよ」との事でした。
そう言えば、この近くの、泉南市の金熊寺(きんゆうじ)から和歌山県の岩出の方に抜ける根来街道(府県道泉佐野岩出線)の途中にも、風吹峠のトンネルがありますが、そこも心霊スポットで有名です。トンネルの上には火葬場もあります。しかし、そこも、昔、私が生協の商品管理担当だった時に、農産物の納品に来るドライバーにその峠の事を聞いたら、「いつも、納品にそこのトンネル通ってくるけど、別に何もないで」と言っていましたっけ。
ハイキングの帰りに、再び犬鳴山温泉の前回と同じ旅館に立ち寄りましたが、ちょうどその日は「温泉デー」という事で、割引券よりも更に安い、わずか375円で日帰り入浴を楽しむ事が出来ました。そして、自宅に帰った後、南海電鉄と国定公園を管轄する大阪府環境農林水産部みどり推進室に、以下のような趣旨のメールを送っておきました。
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犬鳴山ハイキングコースの安全対策について
初めまして。先日12月14日(月)の公休日に、大阪府が管理している金剛生駒紀泉国定公園内にある、犬鳴山のハイキングコースを、麓の温泉郷から頂上のハイランドパーク粉河まで往復踏破して来た者です。そこで感じたのが、七宝瀧寺から先のコースの安全対策の不備です。特にコース後半の、林道犬鳴東手川線から分かれ登山道に入る付近から後は、急峻な岩場や石段を上らなければなりません。しかも、谷側はすぐ横が崖です。にもかかわらず、この区間には柵が一切設置されていません。これでは、上る時はまだしも、下山する時に転倒して石段に頭を打ちつけたり、滑落して谷底に転落する可能性があり、非常に危険です。せめてカーブ区間だけでも、谷側に転落・転倒防止用の柵を設置していただけないでしょうか。
また、犬鳴東手川線の車止めゲートから行き止まりの林道に入り登山道に折れる区間で、車止めのゲートがある為に勘違いして、そのまま犬鳴東手川線を直進してしまい、大幅な遠回りをしてしまうハイカーも少なくないと聞きます。私が歩いた時も、確かにゲートの周囲には国定公園の案内図があり、それを見ればゲートの方の道を行かなければならない事は分かります。しかし、その案内図がゲートの真横にはない為に、ゲートだけを見て、林道をそのまま直進してしまうハイカーが少なくないのではと推察します。車止めゲートの横にも案内の道標を設置してもらえたら助かります。
大阪府の財政が逼迫しており、国定公園内では施設の新設・改造が制限される事も承知していますが、この案件は人命に関わる内容です。事故が起こってからでは遅いです。何卒宜しくお願い致します。
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