元大阪府知事の橋下徹や、彼の創設した「維新の会」がヒトラーやナチスに例えられたと、ツイッターで大騒ぎになっています。騒ぎの発端となったのは民主党政権時代の元総理・菅直人のつぶやき(下線部)で、それに「維新の会」(以下「維新」と略す)代表の松井一郎・大阪市長がかみつき、騒ぎになったのですが、これには伏線がありました。少し長くなりますが、その直前のつぶやきから順を追って見て行きます。あらかじめ断っておきますが、ここでは芸能人等と同じ扱いの「準公人」橋下徹も含めて、全ての公人(政治家)に対して敬称略で呼ばせていただきます。
①「維新」と戦う立憲有志の会の準備をしている。「身を切る改革」をスローガンに支持を伸ばした維新。しかし大坂都構想が「身を切る改革」とは思えない。かつて東京都の23区の区長は任命制であった。それを公選制にして23区が行政区から自治体になった。大阪都構想はその逆をやろうとした失敗した。(菅直人、1月19日)
②「身を切る改革」というスローガンは今も「維新」の売り物だ。無駄を省くことは賛成だが、自治体を統合して集権化すればよくなるとは思えない。 次の総選挙は自民党はもとより、東京に進出を図る維新との戦いだ。立憲民主党は政策的に真正面から維新と戦わない限り東京は維新に席巻されてしまう。(菅直人、同日)
③私の「維新」と戦う有志の会構想に対し、色々な意見が寄せられている。大阪都構想は2度の住民投票で否決され、「維新」自体も断念を表明。今は「身を切る改革」をスローガンに知事や市長経験者がテレビをジャックし、既成政党からの鞍替え政治家を集め、既存の与野党に飽き足らない人に強くアピール。(菅直人、1月21日)
④橋下氏をはじめ弁舌は極めて歯切れが良く、直接話を聞くと非常に魅力的。しかし「維新」という政党が新自由主義的政党なのか、それとも福祉国家的政党なのか、基本的政治スタンスは曖昧。主張は別として弁舌の巧みさでは第一次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす。(菅直人、同日)
⑤元総理であり現在も立憲の最高顧問の菅さん、貴方何を言ってるか?解ってるんですか!民間人と我々をヒットラー呼ばわりとは、誹謗中傷を超えて侮辱ですよね。 立憲は敵と思えばなんでもありという事ですか? 正式に抗議致します。(松井一郎、1月22日)
菅直人のつぶやきを「ほめ殺し」と捉えれば、確かに言われた方はカチンと来るでしょうが、このつぶやきだけでは「ほめ殺し」とまでは断定できません。現に石原慎太郎も、かつて自分の所属する「太陽の党」が維新と合流する時に、橋下徹の事を「彼の演説のうまさ、迫力っていうのは若い時のヒトラーですよ」と、今の菅直人と同じ事をつぶやいていました。それに対して、橋下徹は、「ほめてくれた事は有難いが、ヒトラーに例えるのはちょっとまずいんじゃないの?」と、石原にこっそり注意したそうです。
同じようなつぶやきに対して、石原慎太郎にはやんわり注意しただけなのに、菅直人が言った途端に、何故、松井一郎は激高したのだろうか?石原は同じ保守派だが、菅直人はリベラル派で、「改革保守」を標榜する維新にとっては「敵」だからか?その辺がイマイチ謎でしたが、これを見てようやく分かりました。「維新と戦う立憲有志の会」の運動が広がる事を、維新が恐れているからだと。
確かに、この「有志の会」の動きは、まだ大きな動きにはなっていません。言い出しっぺの菅直人のつぶやきについても、大阪在住の私から見たら「あれ、これは違うのでは?」と思う点は多々あります。そんな「未熟」な動きに対しても、警戒心、敵対心をあらわにして叩きに来るとは、よっぽどこの動きが広がるのを維新は恐れているのではないでしょうか?
私に言わせれば、橋下徹がヒトラーに、維新がナチスに例えられるのは、それ相応の理由があるからです。2008年に初めて橋下徹が大阪府知事選挙に出馬表明した時も、それまで散々「出馬しない」と言っていたのに、急に手のひらを返すように出馬しました。それに対して橋下徹は、当時、ある民主党代議士に学歴詐称疑惑が生じていたのに対して、「学歴詐称して何が悪い」と言わんばかりに、こんな事を当時の自著の中で述べています。
「政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ。自分の権力欲、名誉欲を達成する手段として、嫌々国民のため、お国のために奉仕しなければならないわけよ。ウソをつけない奴は政治家と弁護士にはなれないよ!ウソつきは政治家と弁護士の始まりなのっ!」(橋下徹「まっとう勝負!」小学館)
この論理こそが、ヒトラーが自著の「わが闘争」の中で述べていた「嘘も百篇つけば真実になる」「民衆は小さな嘘には騙されないが、大きな嘘にはコロッと騙される」「嘘に騙される民衆が多ければ多いほど我々には好都合だ」「我々の主張が正しいかどうかなんて、どうでも良い」「嘘やハッタリだと分かっていても、さも、もっともらしく振舞え」「その為には、難しい理屈なぞ抜きにして、一番アホな奴にも分かるように、ただ一つのスローガンだけ(例えば「郵政民営化」等)を、ただひたすら連呼せよ」というデマ扇動、今風に言えば「フェイク・ニュース」拡散の手法と、全く同じなのです。
実際、維新がこれまで大阪でやって来た事は、全てこの手法を踏襲したものでした。最初の住民投票で都構想が否決されたのに、その後のクロス選挙で、当時の松井・大阪府知事と橋下・大阪市長が互いに相手のポストに出馬する事で、法の網の目をかいくぐって任期延長をはかり、再び住民投票を仕掛けて来ました。知事や市長が何度も任期途中で辞職し、再選挙で当選を繰り返していたら、幾らでも任期延長する事が出来、事実上の「独裁」になってしまう。それを防ぐために、恣意的な辞職を法律で禁じているのに、示し合って市長が知事に、知事も市長に出馬する事で、再選を可能にし、その勢いで再び住民投票を強行してしまいました。
その二度目の住民投票でも都構想は否決され、大阪市が存続する事になりましたが、維新はそれに対しても、「広域行政一元化条例」を大阪市議会で強行可決して、自ら進んで大阪市の権限を大阪府に譲渡する事までやってのけました。この「ズルしても勝ったモン勝ち」の論理こそ、まさにヒトラーやナチスの論理そのものではないですか。ヒトラーは政権をとるやいなや、自分で国会議事堂に放火しておきながら、その罪を野党の社会民主党や共産党に擦り付け、ナチス以外の全政党を解散に追い込みました。今、維新が「改革」の名でやっている事も、これと全く同じではないですか。
そう言うと必ず「維新は別に国会に放火なぞしていない。そこまで言うのは言い過ぎじゃないか」という人が現れます。それに対して、私はこう言い返すようにしています。「そこまで出来ないのは、維新がまだ国政を握っていないからだ。国政与党になったら、その害悪は公明党の比ではない」と。現に今も、私たちは維新に対して「ヒトラーと同じような事をするな」と言っているだけなのに、維新はそれを「ヒトラー呼ばわりするな」という形に、こっそり論点をすり替え、「ヒトラー批判」そのものを封じ込めようとしているではないですか。
だから、維新に対しては、私たちのような左派・リベラルの人間だけでなく、自民党や右派、保守派の中にも「維新のやり方はおかしい」という人が現れるようになったのです。大阪市阿倍野区のJR阪和線美章園駅近くのガード横で唐揚げ屋を営んでいる方も、そのうちの一人です。「唐揚げまーちゃん」というお店で、店頭には「維新、イラン!」という張り紙と共に、「奉祝 紀元節(建国記念の日)」という張り紙が貼られています。私から見たら根っからの右翼で、到底その主張には賛同できません。
しかし、それでも「パソナの竹中平蔵のような金持ちばかり優遇して、万博やカジノ誘致にばかり金をつぎ込み、コロナ対策や福祉・教育を切り捨てる維新のやり方では、結婚も出来ない貧しい非正規雇用の人間ばかりになってしまう」「それでは天皇陛下の子どもも産めなくなってしまうではないか」という、その商店主の主張の、後者はともかく前者については、私も完全に納得できます。
だから、意見の違う後者については一旦保留した上で、前者の一致点で、私もこの商店主を応援する事にしたのです。唐揚げ1個65円で、近くにはもっと安い60円で売っている店もありますが、量や味は全然違います。6個買って帰り、駅のホームで添付の串に刺して1個試食してみましたが、柔らかくて頬がとろけそうでした。今日のお昼は、この唐揚げをカレーに載せて食べました。今夜は唐揚げ丼にして食べようかと考えています。住之江公園から美章園まで買いに行くのはなかなか大変なので、たまにしか買いに来れないのが残念ですが。
私が大阪では自民党と共闘するのも、これと同じ理屈です。共闘するにはそれなりの理由があります。今の維新のやり方はまるでナチスみたいだ。自民党も、大阪府に限ってはそこまで酷くはない。だから「ヒトラーのような維新の政治には、自民党や他の保守派とも一緒になって反対する」。勿論その為には「意見の違いを持ち込まない」というのが大前提ですが。私も商店主の「天皇陛下万歳」の主張には異を挟まない代わりに、私の「天皇制廃止」の主張にも意を挟ませない。そうして、両者の違いは一旦棚上げしてでも、目の前の維新の酷い政治には共に闘う。これは「野合」でも何でもありません。むしろ、大阪に外国人観光客を呼び込む為に、表向きは在日朝鮮人差別に反対する振りしながら、戦前の大日本帝国を美化して、教育現場に「日の丸・君が代」斉唱を強要する維新の方が、よっぽど「野合」じゃないですか。
唐揚げ屋の店頭には「奉祝 紀元節」と並んで「維新、イラン!」の張り紙が並びます。その横には、「れいわ新選組」のポスターと」共に、「竹中平蔵が日本を非正規雇用だらけの貧しい国にした」「維新政治がずっと続いているのに大阪の経済も全然成長していない」「大阪都構想も公務員減らしてパソナの派遣社員に置き換え竹中平蔵を儲けさせる為にやろうとした」との張り紙が。その裏にも「夜間中学閉鎖反対」の張り紙。
これがその唐揚げ。大きくてジューシーで、コンビニで売っている唐揚げとは味が全然違います。ちなみに2月1日・2日は皇紀ウン十年かに当たるおめでたい日なので、20歳以下の若者については千円分まで半額セールにするそうです。詳しくは店長に聞いて下さい。
私は、むしろ今の維新は、「ヒトラーと同じ」どころか、「ヒトラー以下」だと思っています。ヒトラーは反対勢力を片っ端から弾圧し、ユダヤ人やロマ(ジプシー)、障がい者の人たちを片っ端から毒ガスで殺しました。その事については、もう一切弁解の余地はありません。しかし、その反面、福祉にも力を入れました。ナチスの正式名称は「国家社会主義ドイツ労働者党」です。彼らなりに「社会主義」の理想を掲げ、失業対策でアウトバーン(高速道路)も作りました。貧しい人でも旅行や自動車購入が出来るようにしました。但し、それはユダヤ人などの少数派に対する虐殺や搾取の上に乗っかった「デタラメな社会主義」ではありましたが。
それに引き換え維新はどうですか?その程度の「福祉」すらやろうとしないじゃないですか。お陰でコロナの重症者は全国最多。コロナ給付金の支給も全国で最も遅かった。もう「ヒトラーと同じ」どころか「ヒトラー以下」じゃないですか。ある維新の政治家は「日本には立憲民主党なぞ不要」と言ったそうですが、これこそがナチスのやり方じゃないですか。それを「ヒトラーと同じ」と言って何が悪いのか?逆に「ヒトラーに対してすら失礼だ」と私は思いますね。何故なら「維新はヒトラー以下」なんだから。
返信ありがとうございます。
>私は橋下にしても維新にしても、彼らはヒトラーと言うよりも、むしろ「似非ヒトラー」ではないかと思うのですよ。
ええ、確かに。
機動戦士ガンダムのデギン・ザビ公王いわく「ヒトラーの尻尾(公王の息子で軍総帥のギレン・ザビに対してのセリフ)」
本多勝一いわく「矮小ヒトラー(先日亡くなった石原慎太郎をこう評していた)」
なのでしょう。
ただ、橋下&維新が世界でフォロワーを産んだことも事実なんですよね。
ヒトラーやファシズムの運動が一時ではあるものの世界各国でのムーブメントになったように。
その代表が「ドナルド・トランプ前アメリカ大統領」「ジャイル・ボルソナロ現ブラジル大統領」です。
特にボルソナロはニュース等で「ブラジルのトランプ」と言われていましたが過去に女性運動をののしるシーンなどが流れていた時「トランプというよりも橋下ではないか?」と思いました。
>それよりも、もっと具体的に、維新が実際に大阪で何をやって来たのか?都構想や万博、カジノばかりに入れあげて、福祉や教育は全て切り捨てて来たではないか?その結果、医療崩壊を引き起こし、コロナの重症者も人口比では全国最多、コロナ給付金の遅延も全国最悪の状況を引き起こしてしまったではないか。
>このように、「地上戦」で、もっと具体的に、維新の失策を追及して、それに代わる対案を提示した方が、より説得力ある批判が展開できるのではないでしょうか。維新を批判するなら、ナチス批判、ファシズム批判よりも、むしろ新自由主義批判の方が、彼らにとって打撃になると思います。
この辺は私もまったく同感です。結局は関西財界、関経連の代理人(山本太郎氏風にいえば「関経連の下請け」)でしかありませんし。
そして維新に対抗できるのはれいわ新選組くらいでしょう。
そういえばれいわ新選組の大石あきこさん、橋下に訴えられたらしいですね。あきらかなSLAPP訴訟で許せません。
今、庶民はずっとコロナに振り回されています。幾ら弱毒化したと言っても相手はコロナ。いつまた変異して強毒化するかも分からない。そのたびに庶民は自粛を強いられ、今や医療も経済も崩壊寸前。その一方で、一部の大金持ちだけは焼け太りで更に内部留保を積み増し。貧富の格差は広がる一方。
それなのに、かつては自民党政治への対抗勢力として、それなりに力のあった労働組合や革新勢力は、組織力の低下や「ベルリンの壁」崩壊で、今や見る影もなし。その間隙を縫って、維新が、かつてのヒトラー・ナチスの様に台頭してきている。
それに対して、橋下をヒトラー、維新をナチスになぞらえ批判したくなる気持ちも、決して分からなくはない。しかし、余りそこばっかりに拘泥しても、逆に庶民から浮いてしまうだけではないか?
何故なら、庶民は今やそれどころではないからです。それでなくとも大変な状況なのに、今さらヒトラーやナチスなどの過去の話を持ち出されて批判されても、そんなのに付き合っている余裕はない。確かに、維新には胡散臭いところがあるが、それでも、橋下や吉村の「蛮勇」に一縷の望みを託したい気持ちもある…。
これが、多くの大阪府民の感情ではないでしょうか?そんな状況の中で、いたずらにヒトラー批判を展開されても、「空中戦」にしかならないのでは?
それよりも、もっと具体的に、維新が実際に大阪で何をやって来たのか?都構想や万博、カジノばかりに入れあげて、福祉や教育は全て切り捨てて来たではないか?その結果、医療崩壊を引き起こし、コロナの重症者も人口比では全国最多、コロナ給付金の遅延も全国最悪の状況を引き起こしてしまったではないか。
このように、「地上戦」で、もっと具体的に、維新の失策を追及して、それに代わる対案を提示した方が、より説得力ある批判が展開できるのではないでしょうか。維新を批判するなら、ナチス批判、ファシズム批判よりも、むしろ新自由主義批判の方が、彼らにとって打撃になると思います。
本当に、「ヒトラーみたいだ」と感想を述べただけで抗議をしてくる維新もさることながら、マスコミ屋連中も維新の言い分の垂れ流し、あるいは「こたつ記事(〇〇がツイッターでこうツイートした、インスタで写真をアップしたなど、あたかもこたつに入ってパソコン等でタイムラインを追うだけで簡単に配信できる内容の記事のこと)」ばかり…
ヒトラーは死ぬ間際に「私が死んでも100年後にはナチズムは宗教のようによみがえる」と述べたそうですね。(ソースはNHKスペシャル「新・映像の世紀」。ちなみにRPGなどの大魔王がよく言うセリフ「私が死んでも第二・第三の私が登場するだろう」というのはここから着想を得たものと私は思っている)
ヒトラーらによる武力蜂起「ミュンヘン一揆(1923年)」から来年で100年ですね。
今の日本、特に大阪の状況を見ていると、ヒトラーの死に際の予言が当たりそうな気がします。
岸和田・貝塚で維新市長が再選・当選しましたし…