脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

正常から認知症への移り変わり「部屋で鶏でも飼わなくっちゃあ」

2008年05月22日 | 正常から認知症への移り変わり

前回は食事つくりでした。今日は食べることに絞ってまとめてみます。
臨床心理士の研修会が東京九段の大妻講堂でありました。テーマは「子育て支援・情緒の発達」。今日の写真は昼休みに靖国神社へ散歩したときのものです。
 
食事の作法は、その国の文化に左右されるわけですが、その地方やその家の持っている固有の習慣もあります。
けれども、大人になれば大体みんなが同じような食行動をとることが、単一民族、単一国家たる日本ではごく簡単に想像できますね。特に一歩家の外に出て、社会の中で食行動を起こすときには、その傾向は一層顕著でしょう。  高齢者が多数いて、食事やお茶の時間になりました。
・係りの人が用意をしています(その間、高齢参加者はじっと待つかおしゃべりをする)。
・準備万端整ったところで、「それではいただきましょう。いただきま~す」だけかもわかりませんが、とにかく挨拶があってから、一斉に皆さんがお箸を取ったりお茶を口にしたりする、のが普通。
ところが、まだ全員にいきわたらないのに、涼しい顔をして食べ始める人がいるでしょう?お茶のときならまだしも目立ちませんが、お弁当だととても変。周囲から奇異の目で見られてしまいます。

実はここが小ボケ。前頭葉の状況判断力が低下している証拠です。
元来小ボケは「社会生活に支障がおきるレベル」ですから、家庭生活ではほとんど気に留められません。
例えば、おじいちゃんが食卓に出てきたものを一人だけ食べ始めたとします。
「あらあら。おじいちゃんちょっと待っててください」といわれる可能性はあるでしょうか。
家族がたくさんいて、家族そろって「いたただきます」の挨拶をして食べることが、その家の家風ならばいわれるでしょうが、普通は黙認。
夫婦2人ならば、待たずに出てきたものから勝手に食べ始めるのが家風の場合だってあるかもしれません。

でも、いったん外に出て社会の中に入ったら、「全員にいきわたるまで待って、揃っていただく」のが厳然たるルールです。
このように同じ行動でも、家庭内と家庭外では許容のレベルが全く違います。大好物があるとき、家庭内ならある程度までかもしれませんが、好きなだけ食べることが許されます。
でも、外で他人と食べるときは違います。
大勢で舟盛りのお刺身を食べるとします。
そのときメインのもの例えばマグロのトロとか上等のエビとか貝があれば、どのくらい食べていいのか量と人数とを天秤にかけて、取り分ける分量を決めます。
それから箸を動かすでしょう。
古武道新陰流の奉納が行われていました  

この仕事は、もちろん前頭葉の状況判断力によって行われた訳です。だからこそ、そのときに多少の違いはうまれてくると思います。
前頭葉は、経験を重ね、自己評価を繰り返していくうちに自分らしく出来上がってくるのですから。
でも、日本の文化の中で許される範囲の違いのはずです。
こういう状態のときに好きなものを、あるいは高価なものをパクパク食べて平気なのが、前頭葉がうまく機能していない小ボケです。家庭の中では、お行儀よかった場合にだけ「アレッ?おじいちゃん/おばあちゃんじゃないみたい」と家族から思われます。
箸の使い方のルール違反が起こります。
「今までは見たこともなかったのに、突き箸・迷い箸・舐り箸・掻き箸etcをやるんです」と家族がびっくりしながら伝えてくれます。
「食べ残すときに、残し方が汚くなりました」
「食器にこだわりがあったはずなのに、発泡スチロールのトレイでも平気なんです」
以上すべて「以前と違って」というところがキーですよ。もともとお行儀が悪かった人はそれがその人の生き方ですから・・・
そして、加齢とともにそんなこともおきるんじゃないかと疑う人もいるでしょうが、そのときにはきちんと言い訳が付きます。つまり本人がこのやり方はいつもの自分のやり方ではないことをちゃんと意識しているならば、小ボケのサインと思う必要はありません。
お正花が展示されていました。ガラスに反射してますが。

中ボケになると脳機能は「家庭生活にも支障が出てくるレベル」です。
さあ、具体的に並べてみましょう。
おじいちゃんが隣の孫のおかずに黙って手を出す。
これが外で起きたら、みんなで会食しているときに隣の人のおかずのうち自分の好物に手を伸ばすことになりますから、みんな仰天します。
同じ状況で、トイレなどに席を立って帰ってきた時、自分の好きなおかずがある席が空いているとそこに座って平気で食べ始めるのです。これは、たまたま空いている席だから座って、見ると好物があるので食べているだけかもわかりませんが。
結婚式披露宴のような席だと考えると、冷や汗が出ますね。
中ボケは、日付があやふやになります。とすると、冷蔵庫のもので賞味期限が過ぎたものでも平気で食べることになります。
さらに進むと、味覚が鈍くなりますから、「料理がうまく作れず、味付けが変」といわれるようになります。
そのとき一番に鈍くなるのが塩辛さです。だから味付けの失敗はほとんどが「塩辛すぎて食べられない。なのにおばあちゃんは平気でパクパク食べるんです」に集約されます。このように味覚が鈍くなってしまったときには、腐って味が変になったものでも平気で食べるようになりますが、その前にこういうことが起きてきます。
混ぜてはいけないはずの料理を混ぜて食べるのです。
酢物と煮物。サラダにご飯。ヨーグルトにご飯。カレーご飯のうえにスープ。うどんの汁にリンゴをくぐらせる。
そしてこぼす。
ちょっと心躍る?

小さなお幼稚園のお孫さんに食事をさせながら、おじいさんが笑いながら言っているのを耳にしたことがあります。
「こんなにこぼすんだったら、部屋で鶏でも飼わなくっちゃあな」

中ボケの介護をしているお嫁さんがいやな顔をして訴えます。
「言うことだけは一人前なんですが。食事の後なんかは惨憺たる有様。まるで幼稚園なんです」中ボケの脳機能は幼稚園レベル。こんな風に一致するんですね。
せめてチャボでも飼ってみますか?!

 


 


 



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