今朝(2024年11月22日産経新聞)の新聞記事には驚かされました。
驚いたとき、その気持ちを表すための言葉は愕然とか驚天動地とかありますが、何かちょっと違う。体を使った表現だとどうなるかちょっと考えてみました。
「腰が抜ける」「心臓がバクバク」「立ち尽くす」これもいまひとつ。
驚いたとき、その気持ちを表すための言葉は愕然とか驚天動地とかありますが、何かちょっと違う。体を使った表現だとどうなるかちょっと考えてみました。
「腰が抜ける」「心臓がバクバク」「立ち尽くす」これもいまひとつ。
「目が点!」これなら「えっ」と驚いた私の気持ちに沿ってくれそう…
その記事は「認知症疑い『3問』で検出」という見出しでした。
(私たちは遺伝子異常によるアルツハイマー病と、正常老化が加速されたアルツハイマー型認知症を明確に区分けしますが、この記事のアルツハイマー病はアルツハイマー型認知症を意味しているので、そのままに使います)
写真は今年は紅葉が遅いので2022年秋の旅から。
写真は今年は紅葉が遅いので2022年秋の旅から。
京都の満月
「アルツハイマー病とMCI(軽度認知障害)の疑いがある人を早く見つけるために問診時に「医師の質問に直接答えようとせず同伴者に助けを求める」様子はないかどうかを観察しておく。そのうえで
①困っていることはあるか
②楽しみはあるか
③最近の気になるニュースは何か
②楽しみはあるか
③最近の気になるニュースは何か
という3質問への回答で、容易に検出できる」というものです。
それぞれに突っ込みどころがたくさんあります。後でゆっくり、説明をすることにして、一番最初の「目が点!」についてお話ししましょう。
尾道水道の朝焼け
この手法を開発する前提として「アルツハイマー病は『アミロイドβ』の蓄積がその原因である」という立場をとっています。
このブログでも何度も解説しているように、アミロイドβを除去しても認知機能は改善しない。だから沈着する前に除去するレカネマブやドナネマブが開発されているのですが、そもそもアミロイドβと認知症発症が無関係ということだって考えるべきではないでしょうか?
このブログでも何度も解説しているように、アミロイドβを除去しても認知機能は改善しない。だから沈着する前に除去するレカネマブやドナネマブが開発されているのですが、そもそもアミロイドβと認知症発症が無関係ということだって考えるべきではないでしょうか?
ちなみに二段階方式では生活ぶりそのもの(前頭葉を中心とした脳の使い方が足りない。生きがい・趣味・交遊がなく運動もしない)が認知症を発生させると主張しています。
前提の話を語り始めると止まらなくなりそうです。
具体的な質問に対して感じた「目が点!」について話していきましょう。
具体的な質問に対して感じた「目が点!」について話していきましょう。
二段階方式では、症状を理解するときに脳機能の物差しを当てます。しかも世の中では認知機能検査というと長谷川式とかMMSE(世界中で一番多く使われている簡易な認知機能検査)なのですが、それらとは違う機能が脳にはあります。
前頭葉機能です。
このグラフを見てください。縦軸MMSはMMSEのことで、かなひろいは独自に開発した前頭葉機能テストです。ある一地区高齢者人口303人中231人に、この2つの検査を個別で同時に行いました。実施率76.2%。
前頭葉機能です。
このグラフを見てください。縦軸MMSはMMSEのことで、かなひろいは独自に開発した前頭葉機能テストです。ある一地区高齢者人口303人中231人に、この2つの検査を個別で同時に行いました。実施率76.2%。
MMSEはカットオフ値は23/24ということになっています。つまり24点以上だと認知機能は正常とされているのです。世界中で!
縦軸MMSを見てください。24点以上の人たちの中には、かなひろいテストが合格群と不合格群(10点以下)がいることがわかります。
MMSE24点以上あっても、前頭葉検査をすれば不合格の人がいる。MMSEが合格と確認できても認知機能は正常とは言えないということです。さらにかなひろいテストに合格して初めて脳の機能は正常といえるのです。
簡単に言えば、かなひろいテストはMMSEよりも難しい、まったく別の機能を測っているテストだということです。
人が生きていくことは、三頭建の馬車を走らせているようなものです。脳には下図で馬で表されている左脳や右脳が担う認知機能があって、MMSEをはじめ世界中で使われている脳機能検査(認知機能検査・高次機能検査)はそこを測ります。前頭葉機能は三頭建ての馬車で言えば御者の働きをしています。最高次機能というべきものです。
この記事が対象にしているのは、アルツハイマー病やその前段階である軽度認知症害(MCI)の疑いがある人となっています。アルツハイマー病とMCIを一緒に鑑別するというのは意味が分かりませんので少なくとも早期のアルツハイマー病と考えたらいいかと思いました。
MMSE24点以上は正常なので23点以下。
MMSE24点以上は正常なので23点以下。
そして一般的には認知症といえば、徘徊や夜中に騒ぐ、粗暴行為、妄想、家族もわからない、家庭生活全面介助などでしょうから、このグラフからいえばMMSE10点以下が想定されます。
その前の段階でないといけませんから、グラフで言えばだいたい中ボケから大ボケに入ったところというレベルだと思われます。
そもそもMCIをきちんと定義できていませんけども、それは置いておくことにするしかありません。
レカネマブやドナネマブ投与の条件はMMSE20点以上ですが、それも置いておくことにします。とにかくきちんとした症状を出している認知症よりも前の段階で見つけるという姿勢だろうと決めました。
そもそもMCIをきちんと定義できていませんけども、それは置いておくことにするしかありません。
レカネマブやドナネマブ投与の条件はMMSE20点以上ですが、それも置いておくことにします。とにかくきちんとした症状を出している認知症よりも前の段階で見つけるという姿勢だろうと決めました。
京都の紅葉
さあ、具体的に各質問について不思議に思ったことを話していきましょう。
①現在困っていることは:
「『ない』もしくは『物忘れはあるが年のせいで、困っていない』と答えた場合はアルツハイマー病のリスクが高い」
①現在困っていることは:
「『ない』もしくは『物忘れはあるが年のせいで、困っていない』と答えた場合はアルツハイマー病のリスクが高い」
実は、上のグラフで黄色でプロットしてある小ボケ群(正確に表現すると、前頭葉機能低下、MMSE24点以上で合格とされる脳機能レベル)は脳機能がよいほど、自分の現状を「どこか変」と訴えます。「意欲が出ない」「興味がなくなった」「物忘れがある」「とにかく以前の自分らしくなくなってるんです」などなど。
だんだん脳機能低下が進んでオレンジ色の中ボケ群(正確に表現すると、前頭葉機能がさらに低下、MMSE23点から15点の脳機能になっているレベル)になるとたしかに異口同音に「物忘れはあるが年のせいで、特に困っていない」といいます。記事中の表現が中ボケの人の表現をなぞったようなので、発表者は多分このレベルの方に実際に会われたのだろうと想像しました。
MMSE20点以下になっていくと、日付がわからない、服薬管理ができない、料理の味付けが変など家庭生活にも支障が出てきます。ただ世の中で言われる認知症の症状ではないからまだ認知症ではないといわれるレベルに相当します。
そのレベルをアルツハイマー病のリスクが高いと指摘するのは、一歩の前進ですが、さらにその前の段階があることと、このレベルの脳機能になると本人はまさにそう思っているわけで、家族はとても困っている段階ということを理解する必要があります。
だんだん脳機能低下が進んでオレンジ色の中ボケ群(正確に表現すると、前頭葉機能がさらに低下、MMSE23点から15点の脳機能になっているレベル)になるとたしかに異口同音に「物忘れはあるが年のせいで、特に困っていない」といいます。記事中の表現が中ボケの人の表現をなぞったようなので、発表者は多分このレベルの方に実際に会われたのだろうと想像しました。
MMSE20点以下になっていくと、日付がわからない、服薬管理ができない、料理の味付けが変など家庭生活にも支障が出てきます。ただ世の中で言われる認知症の症状ではないからまだ認知症ではないといわれるレベルに相当します。
そのレベルをアルツハイマー病のリスクが高いと指摘するのは、一歩の前進ですが、さらにその前の段階があることと、このレベルの脳機能になると本人はまさにそう思っているわけで、家族はとても困っている段階ということを理解する必要があります。
②現在の楽しみは:
「具体的に回答したら、アルツハイマー病のリスクが高い」
「具体的に回答したら、アルツハイマー病のリスクが高い」
「②で具体的に答える理由は、アルツハイマー病の患者では、相手の話に合わせて自然に振る舞おうと取り繕う傾向があるため」
私にはこの項目は理解ができません。具体的な回答を「具体的」に示していただきたいです。
例えば、生きがいを感じられるようなこと、趣味のようなものを具体的に回答できたら、前頭葉機能はイキイキしていて小ボケになっているはずもありません。前頭葉機能が低下し始めたタイミングでは、趣味は続けていることもありますが、「楽しくはない」「やめようかと思っている」という答えが返ってきます。そしてさらに前頭葉機能低下が進むと小ボケの段階に留まっていても、それなりの理由はつけて止めてしまうものです。
私にはこの項目は理解ができません。具体的な回答を「具体的」に示していただきたいです。
例えば、生きがいを感じられるようなこと、趣味のようなものを具体的に回答できたら、前頭葉機能はイキイキしていて小ボケになっているはずもありません。前頭葉機能が低下し始めたタイミングでは、趣味は続けていることもありますが、「楽しくはない」「やめようかと思っている」という答えが返ってきます。そしてさらに前頭葉機能低下が進むと小ボケの段階に留まっていても、それなりの理由はつけて止めてしまうものです。
小ボケレベルの脳になっても、なにか言われたときにそれに対応して発言し、会話は充分できているような印象を受けることは多いです。少し追及すると的が外れてきますが。中ボケレベルでも話していることだけ聞くとそれなりで、家族が「話だけ聞いているとボケていないみたい」と戸惑う原因にもなります。
ただ、「楽しみは?」と尋ねられて、自分から自発的に言いだすということは、中ボケレベルになるとかなり難しいものです。
③最近3か月以内の気になるニュースは:
「『ない』か3ケ月以上前のニュースや具体性のない回答をした場合にアルツハイマー病のリスクが高い」
「『ない』か3ケ月以上前のニュースや具体性のない回答をした場合にアルツハイマー病のリスクが高い」
この質問は「目が点!」というよりも、言葉は悪いですが「腹が立つ」。
MMSE20点を切るようになったということは、今が何月かわからなくなったということなのです。その人たちに対して「3ケ月」と切る意味はどこにあるのでしょうか?この質問は困惑させるだけです。
実は小ボケレベルの脳機能になると、テレビや新聞のニュースは欠かさないといいながら、少し具体的な話になると、最初はそれなりに会話が成立するようですが、すぐにつじつまが合わないことが起きてきます。MMSEが24点以上ではっきり合格していてもです。
MMSE20点を切るようになったということは、今が何月かわからなくなったということなのです。その人たちに対して「3ケ月」と切る意味はどこにあるのでしょうか?この質問は困惑させるだけです。
実は小ボケレベルの脳機能になると、テレビや新聞のニュースは欠かさないといいながら、少し具体的な話になると、最初はそれなりに会話が成立するようですが、すぐにつじつまが合わないことが起きてきます。MMSEが24点以上ではっきり合格していてもです。
そのくらいこの質問は難しい質問です。
つまりここにあげられた質問は脳機能からいえば、あまりにもターゲットが定まっていない。もう少しいわせていただくと、客観的な脳機能という物差しを使うという考えがないのではないでしょうか。共通の物差しを使えば、その人について話し合うときでも指導するときでも的が定まると思います。
蒜山高原
問診時の態度については「医師の質問に直接答えようとせず、隣にいる同伴者に助けを求める場合リスクが高い」と言及されています。
小ボケレベルから中ボケレベルの前半なら、助けを求めることもありますがMMSE20点を切ると、助けを求めるというよりは答えないか、適当に答えているとしか思えない答えで終了することが多いのです。
ちなみに、私たち二段階方式では、予測を立てて検査をするように指導します。
歩き方(とぼとぼ歩きかどうか)
表情(無表情かどうか)
あいさつ(大人として適切かどうか)
着衣(おしゃれ具合、ボタンのかけ方、季節感、こざっぱり感、食べこぼし、虫食いの有無など)
礼容(整髪、ひげそり具合、お化粧の具合)
上記は小ボケレベルになったところでチェックが入る項目で、同行者に助力を求めるかどうかの前にチェックする項目です。
by 高槻絹子