昨日私が相談役を務める国際労働財団主催の労使紛争未然防止セミナーが開催され、日本企業が投資を加速させているインド、インドネシア、ベトナムに焦点を当てて労組のトップや経営団体などが話し合った。
その内容自体は国際労働財団のホームページにいずれ掲載されるので、ここでは私が金属労協時代に支援したインドネシア労働組合総連合のイクバル会長との10年ぶりの邂逅に焦点を当ててみる。イクバル会長とはインドネシア松下寿電子の組合役員を経てインドネシア金属労組書記長時代、インドネシアソニーの労使紛争解決に私がジャカルタに赴き、協働した経過があった。今やインドネシア労働運動のトップリーダにのし上がり、政労一体となって労働条件の向上に取り組んでいるが、多数の労働者を動員する大衆デモストレーションなど、彼の過激とも思える指導に企業の反発も出て心配していた。
今回率直なイクバル会長の発言の中から、意外な言葉も出てきた。
先ず、「インドネシア労働者の賃金の低さを底上げする最低賃金闘争の狙いは内需の拡大という経済戦略で、基本的には政府も支持をしている。ただ、インドネシアはタイの3倍のGDPだが賃金は3分の1であり、最低生活もできない最低賃金を何とか改善したい故に大幅な最低賃金の改善を要求している」「生活に必要な85品目の調査をし、最低賃金額を出す支援を訴えたい。現行は60品目しか認めてない(60品目では生活できない)」
そして「生産性を上げるためにはそれなりの処遇をし、労働者を大切にしなければならない。人を大切にする経営は松下幸之助さんの教えだ。医療保険、年金制度も実現したい」
「低い最低賃金をも守らない企業があり、典型は台湾、韓国や製靴、縫製の外資だ。また賃金の安い違法アウトソーシングを利用する。日系企業は遵法だが、時には台湾、韓国の企業を真似することもあり、紛争の基となる」
労使紛争を防止するには労使で労働者の生活を思い、進出国の発展を思い、企業の成長を思うことだろう。