行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

自動車産業で世界的地殻変動

2024-12-15 17:31:32 | 経済
かつて私が子供の頃、米国は羨む自動車社会、当にcarnationで、キャデラックは憧れの車だった。1980年代でも日本企業の駐在員はシボレーを乗り回していた。その後、自動車の源流を自負するドイツがフォルクスワーゲンからベンツ、BMWまでの品揃えで世界を席巻した。その牙城に迫ったのが日本のトヨタ、ホンダ、日産などで、トヨタは生産台数で世界一となった。

ところが、フォルクスワーゲン(VW)の経営権を持つポルシェSEは13日、保有するVW株について最大200億ユーロ(約3兆2000億円)の減損損失を計上する可能性があると発表した。VWは業績悪化から独国内工場の閉鎖を検討、労働組合は賃金減など提案しているが会社は強行するとしている。労働組合は9日、本社のあるウォルフスブルクなど国内9工場でストを実施した。
欧州では、VWに象徴されているように、EV生産の失速でアウディ,フォード、テスラなどとサプライチェーンの部品企業などVWの3万人を含め5万人の削減と報道されている。特にドイツのコストは東欧などと較べて2倍とVW幹部は語っている。

背景には、中国のEV生産の成長が上げられる。VWはいち早く中国に進出、2000年上海に行ったときはほとんどのタクシーはVWだった。いまやEVシフトに国家を上げて取り組んだ中国が世界のEV市場を席巻している。トップメーカーのBYDは生産台数でトヨタに迫る勢い。日本企業も中国から撤退する動きもみられ、かつてのレジェンドGMもVWと同じく中国でシボレーなど生産していたが、工場閉鎖に追い込まれ7500億円の特損を計上している。タイ、インドネシアと云った日本車がトップシェアを占めていたが、安価な中国製EVに替わりつつある。

自動車業界での世界的地殻変動は日本の主要産業自動車業界に及んできそうだ。

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103万円の壁は政治がさぼってきたことからできた

2024-11-30 15:02:55 | 経済
現在、103万円の壁が争点になっており、連日マスコミも報道している。サラリーマンは源泉徴収で確実に税金を納めている。原則として生活費など経費は一切認められていない。その代わり見なし経費として給与所得控除が適用されている。

所得税は収入から一定額を除いた金額に税率をかける。収入から差し引けるのは納税者全員が対象の基礎控除が48万円、会社員などの給与所得控除が最低55万円だ。計103万円が所得控除となる状況は1995年から続き、課税最低限となってきた。1995年以来物価は上がっているが所得控除は給与所得控除を含め据え置きとしてきた。本来なら毎年物価の上昇に見合う分所得控除を引き上げるべきだが、政治はさぼって放置してきた。今になって是正すると7兆円も財源がいると云っているが、逆に言えばこれまでサラリーマンは7兆円も余分に税金を納めてきたことが明るみに出た。

源泉徴収という日本独特の徴税をサラリーマンに適用し続けるなら、インフレ時代、経費増を所得控除として毎年認めて行くべきだ。

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米国消費の強いわけ、配当・利子収入がガッポリ

2024-08-28 16:40:54 | 経済

年金生活者のマネー運用、日本人は2000兆円損した?

日経の脅迫的な記事が目を引いた、「日本人は世界的に見て、資産を現金で保有する割合が高いといわれています。家計金融資産のうち株式や投資信託が占める比率は約15%。一方、米国では......

日経が昨年に続き、日米の金融所得の格差を報じている。4~6月期の配当・利子収入は米国では年間換算で540兆円で過去最高で、日本の22年度の配当・利子収入14.5兆円の40倍にもなる。人口が倍違うとしても、消費に与える影響は大きい。20年間の金融資産の伸び率も米国は3倍、日本は5割増に留まり、金利のある米国との差は大きい。この背景には米国では金融資産の5割が株式・投信が占め、現金預金は15%、日本は逆に5割が現預金で株式・投信が2割弱という構造的な違いがある。米国経済を資産を持つ人の消費が支え、失業率の急増を避け、景気のソフトランディングに寄与している。




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日本経済はお大尽型に、構造変化??

2024-08-09 17:22:32 | 経済
財務省の国際収支統計で、投資の収益を示す第1次所得収支の黒字は19兆1969億円と過去最大を更新した。一方、貿易収支は赤字が続いている。おかげでモノやサービス、投資など海外との取引状況全体を表す経常収支は12兆6817億円の黒字で前年同期から59.2%増えた。黒字幅は上期として過去2番目の規模となった。

日本企業の海外子会社からの配当などで得られる「直接投資収益」で、黒字額は11兆4022億円と前年同期から4.5%伸び、株や債券の投資で得た「証券投資収益」は7兆1219億円の黒字と、前年同期から2割伸びた。新NISAでオール・カントリー、S&P500への個人投資も寄与している。

貿易赤字は2兆6118億円、円安で石油・LPGなど高騰した資源価格など輸入額は高い水準、海外生産で輸出額が伸び図ず、差し引きの収支は21年下半期から6半期連続で赤字が続く、かつては自動車、電機、機械の輸出で巨額の貿易黒字を生み、日米貿易摩擦の因だったが様変わりだ。今や輸出にカウントされるインバウンド増による旅行収支の黒字が頼りだ。黒字幅は2兆5939億円と前年同期の1.6倍を超え、半期として過去最高だった。訪日客数が1700万人余りと半期過去最高を更新したことが大きい。

人口減少、人手不足、高齢化等を反映した国際収支に日本経済は変わりつつ有る。海外からの配当、利子など投資収益にたよるお大尽型経済になったのだろうか、このままでは静かに沈滞した経済となる。
日本はかつて、1980年代エレクトロニクス化、ロボット化で経済大国になった実績がある。これからは、投資大国だけでなく、観光大国、ものの生産ではAIロボット大国にチャンスを見いだしてもらいたい。

年金生活者は投資収益だけが頼りだ。観光インバウドでホテルや飲食店、小売店が栄え、半導体や自動車・機械・電機でのものづくり産業が栄え、配当を確実なものにしてもらいたい。




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昨今流行るもの、ステレス値上げ

2024-05-08 17:17:55 | 経済
インフレ時代、日本ではステレス(steal)値上げなる新語が流行っている。こっそりと値上げをするという意味で、値段を抑えるため、中身を減らすことのようだが、やり方はアイスクリームやヨーグルトで見られるずばり量を減らす方法、一方お菓子などは個数は同じにして一個一個のグラムを減らすやり方、だがだまし討ちの感があり、細君はたびたび憤激している。もっと凄いのは弁当など底上げをしておいて見た目では判らないが食べ終わってから気がつくものもある。

経済学ではこの現象をシュリンク(縮む)フレーションという新語で表現している。インフレ時代の新語で、インフレ先進国の欧米ではこちらが使用され、ステレス値上げとは言わない。フランスでは、シュリンクしたら明示しなければならないと省令を政府が次のように定めた。
「この製品は(重量や容量が)XからYとなり、単位当たり〇%または〇ユーロ値上がりした」と、商品のそばに表示する。表示の義務を怠った場合、個人には3,000ユーロ、法人には1万5,000ユーロの行政罰が科される。

明示したらステレスにはならないので新しい表現が必要だ。日本には昔から、松、梅、竹という区別をつけるやり方があるが今風に何かないのだろうか?

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電力が余っているというお話

2024-05-02 23:56:58 | 経済
イタリアのトリノで開かれていた主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は30日、石炭火力発電の2035年までの廃止などを盛り込んだ声明を採択し、閉幕した。議長国ドイツの提案は2030年までに廃止であったが、国内発電量の4分の1以上を石炭火力に依存する日本が反対し、2035年となった。日本は期限を設定していないので早急に対処しなければならない。

一方、国内では太陽光発電の電力が使い切れないので、止む得ず出力制限することが2023年に急増するという奇妙なことが起きている。折角官民挙げて再エネルギーを開発したが19.2億キロワット約45万世帯分余った。一度ブログでとりあげたが特に九州ではひどく、13.7億キロワットにのぼる。

送電網がきちんとしていれば、他地域へ送電できるのだが、今のところできないようだ。九州は山が多いので余った電力で揚水する水力発電所の建設が可能だが、そうした知恵もない。群馬に玉原揚水発電所(出力1,200,000kW)があるが、自然と調和しダムは観光資源にもなっている。

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日本大バーゲン、円安は160円まで下落

2024-04-30 17:55:02 | 経済
先日の日銀政策決定会合では金利には手を付けず、現状維持とした。その後の記者会見で植田日銀総裁は記者会見で、「現時点ではいまの円安が基調的な物価上昇率に大きな影響を与えているわけではない」とインフレファイターとしての言明で、円安は一挙に160円台へ、あわてた政府は介入に踏みきり(正式発表は無し)、何とか154円まで戻した。介入は一時的効果でまた160円に戻る可能性が大。

この円安、輸入品特に石油や食料などの価格が上がると日本中が騒いでいるときに日銀総裁が影響はないとんちんかんなことを言ったことで円の暴落につながった。2011年、2012年の年間平均ドルレートは80円弱、10年ちょっとで160円になった訳だ。しかも日本の物価はほとんどこの10年間上がっていないからドル保有者にしてみれば日本大バーゲン状態に突入した。

良く比較されるビッグマックの価格、日本は450円、1ドル160円で米国890円、EU930円、訪日観光客が喜ぶわけだ。便乗した京都の定食屋のランチ4000円のメニューが訪日観光客に大受けというのも肯ける。
この程度なら、笑い話で済むが、不動産となるとそうは行かない。また、かつてのように若者が出稼ぎに行くような時代になってしまった。欧州への旅行も1ユーロ130円台になるまでお預けのようだ。

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コンピュータ電気無ければただの箱の最新版

2024-03-23 19:00:24 | 経済
かつて、PCが出始めの頃、詠われた川柳だが、最先端のAI革命では「人工知能電気無ければ回らない」ということになりそうだ。

データセンターの増設に伴う電力需要は、AIの急速な普及とクラウドコンピューティングの拡大により急増している。
いくつかの試算と調査結果
1、国内データセンター内のAI向け電力:
ユーザー企業が毎年最新モデルのAIサーバーを購入する「積極投資」のシナリオでは、2024年末から2027年末にかけて、AIサーバー向けのデータセンター電力は約1.5倍になると推計されています。さらに、2027年末時点のAIサーバー向けDC電力は、ハイパースケールデータセンターの2~3棟分に相当する規模になるとされています。
2,世界のデータセンターの電力消費
生成AI(人工知能)の利用拡大により、国際エネルギー機関(IEA)は2026年のデータセンターの電力消費量が2022年から最大で2.3倍になると試算しています。
アメリカのデータセンターが必要とする電力供給量は、2030年までに2倍以上になるとされています。

さらにEV車の普及が電力需要を加速することが予測され、産業政策の古くて新しい課題は如何にして電力供給を確保するかだろう。

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GDPがマイナスなのに株価は史上最高値の不思議?

2024-02-23 18:03:36 | 経済
日経平均株価が史上最高値を付けた22日、一般紙を含め日本中が沸いた。しかし、記事の中で「ピンとこない、生活は物価高でたいへん」という声が多かった。1週間前に10~12月期GDP0.4%減、2期マイナス(経済学では不況に入ったと判断)という見出しが出たばかりで、現実の生活実感と株価の落差が目立ったのだろう。

日本の国民の所有する金融資産の7割は利子のほとんど付かない預貯金、株や投資信託を持ってる人は少数派、株価が史上最高値になっても恩恵を受けない。米国は真逆だから、株価が上がれば7割の人はラッキーとばかりに消費にまわす。従って米国景気はなかなかしぶとく金利が高くても続く(ソフトランディングとかノーランディングと言ってる)。

日本企業の業績が良いのだから株価が高く、いずれ日本も景気が良くなるというが、いくら新NISAで貯蓄から投資へといってもその効果は長期になり、すぐ金融資産の大部分が株や投資信託に回るわけは無い。

高株価を景気浮揚に結びつけるにはこの春闘で5%ぐらいの賃上げを実現することが必要だ。幸い先日の労使交渉初日に満額回答が出たホンダ(5.6%)やヤマハ(5.1%)マツダ(6.8%)が幸先の良いスタートを切った。

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日独GDP逆転、労組の力の差が主因

2024-02-16 21:43:28 | 経済
ドイツが、名目の国内総生産(GDP)で日本を超える。国際通貨基金(IMF)の予測では2023年に逆転し、米国と中国に次ぐ世界3位に浮上したようだと大きく報道されている。「世界第3位の大国日本」という枕詞が使えなくなる。技術開発力の差だとか、いろいろ分析されているが、要はGDPの大半を占める消費支出の伸びの差が影響していると見るのが妥当だ。

では、何故だとなるが、庶民の懐具合の差が大きく影響している。OECDのデータで日独の実質平均年収の推移を見れば日本は2000年以来4万ドルからほとんど増えてないのにドイツは5万ドルが6万ドルに増えている。


日本とドイツの賃金は毎年労使交渉で決定されることに変わりはない。労組の交渉力の差が1万ドルの差となった訳だ。企業の力はトヨタにしろベンツにしろ大きな差は無い。むしろ日本企業の方がドイツ企業を凌駕していることは最近の株価が示している。

一人当たりのGDPでも国際通貨基金(IMF)のデータでは、2020年の日本の一人当たりのGDPは4万6,827ドル(約532万円)で世界31位、いつの間にかアジアのシンガポール(3位)、台湾(15位)に大きく差をつけられ、韓国(28位)に引き離された。



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