最近の企業評価でROEという基準が脚光をあびてきた。野村證券の定義ではReturn On Equityの略称で和訳は自己資本利益率。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合。計算式はROE=当期純利益÷自己資本またはROE=EPS(一株当たり利益)÷BPS(一株当たり純資産)。米国では株主構成に機関投資家が増加し、これらの投資家が「投下した資本に対し、企業がどれだけの利潤を上げられるのか」という点を重視したことも背景となって、最も重要視される財務指標となった。
私が最初に携わった仕事が約20社ぐらいの取引企業の財務分析だったが、半世紀前にはROEなる基準はなく、良い企業とはもっぱら借金がなく、自己資本比率が高い企業であった。昨年11月6日に発表された東証の新指数、「JPX日経インデックス400」。2014年1月から運用されてるが、この指数の重要な選定条件の一つとなっているのがROEで、パナソニックなどが選定からもれて俄然企業経営者がROEにこだわりだした。
ところが、計算式を検討してみると、ROEが高ければほんとに良い企業なのか疑問が残る。特に米国の企業のROEを高く見せるやり方を日本に持ち込んで欲しくない。それは計算式の分母、自己資本ないし一株当たりの純資産を小さくすれば同じ純利益でもROEは高くなるからだ。米国のファンドは貯め込んだ利益で自社株買いを株主総会で要求する。東証上場企業の貯め込んだ100兆円は従業員の処遇とか古い設備の更新で使うのが常道で、米国流自社株買いはその後だ。
昔の流儀で言えば、自己資本比率は40%以上が優良企業の指標で現代も同じ、自己資本比率が10%そこそこでROEランクが上位といういびつな会社は評価に値しない。もちろん分子である純利益が増えるような努力がなされることが一番であるが。