バングラデッシュから来るICUで平和実現へ研究する若者(平和フェロー)A君をカウンセラーとして羽田でアテンドした。バングラはアジアでの最貧国の一つ、A君は徒手空拳2年間生活する衣類だけで来日した。決められたアパートへ送りながら先ずスポンサーのロータリークラブからの奨学金を渡し、部屋では電気器具の使い方など日本での生活について話し合った。いくつか愕然としたことがあり、勉強不足を感じた。
先ず連絡用スマホがないので、とにかく買わなければならない。ところが銀行口座を持ってないとスマホは買えないという。銀行口座を開設するには電話番号が必要だという。解決不能のループみたい。ICUの事務局の支援でとにかく銀行口座を開設して貰うしかない。多くの学生はそうしてきたようだが、ゆうちょ銀行は電話番号が無くても口座開設ができるので突破口になるというアドバイスを留学生を受け入れている方から聞いた。
A君はバングラの家族に無事着いたということを知らせたいというので自分の携帯を貸したがどうゆうわけかバングラには通じない。では公衆電話をと探したが見当たらない。昔?あれほどあったのに、コンビニはアパートの近所にいくらでもあるので、食糧の調達には不自由しないが、いつの間にか公衆電話は消えてしまった。国際電話は高く付くのでアジアからの学生は皆LINEを利用している。ところがバングラにはLINEは無いという。スカイプの利用を薦めたが、今更ながらLINEの存在に気づいた。
部屋ではエアコンのリモコンのスイッチ類が全て日本語、英語しか分からないA君にとって大変な問題、とにかく温度設定して、オン・オフの部分だけ触るように教えたが、最低限の日本語教育を出身地でやることが必要だ。またリモコンには英語を併記して貰えると良いのだが、別れ際に何かあったら電話してと言ってから公衆電話を先ず探さなければと気づいた。
昨日、初代連合会長山岸章さんの送る会が帝国ホテルであった。私が山岸さんを知ったのは全電通委員長時代以降で、電機連合と全電通の会合でよくお目にかかった。官公労の親分だからという先入観があり、身構えたが、話を聞いてその柔軟な考え方に共鳴したのを覚えている。話がうまく、彼が話し始めると皆耳を傾け始めた。全電通には政治局というのがあって、組合の中でも最も政治力があり、政治局員には多くの社会党国会議員が入っていたと記憶している。
連合会長になって、その政治力を大いに発揮、打倒自民党政権を前面に細川政権実現にこぎつけ、民主党政権への足がかりとなった。与野党を問わず政界との連携は強く、昨日の送る会には、森、麻生、菅、鳩山の元首相を始め多くの国会議員が献花したほどだ。
山岸さんは1948年富山の石動郵便局で職業人生をスタート、翌年には全逓富山地区本部執行委員となり、その後、電電公社が郵便局から分かれ、全電通委員長にまで上り詰めた。学歴のない山岸さんが不世出のリーダーに何故なれたのか彼の遺影を見ながら考えさせられた。戦後の労働運動の昂揚はマッカーサーの政策もあり、盛り上がった。労働組合は民主主義の学校といわれ、企業以上の教育研修に多くの資源をさいた。とりわけ全電通の各級組合役員に対する研修は熱心で、稲取に立派な研修センターを設けたほどだ。山岸さんはそうした研修会で資質を磨き、あらゆる努力をされたのだと思う。民営化でNTTができたときには全電通も民間労働組合の分析、学習に全力を注ぎ、私も北海道や兵庫県の全電通地区組織の研修会に講師として呼ばれ、労使経営協議会の運営について半日ぐらい話した。最近は労組指導者もNTT労組を含め、大卒が多くなったが、山岸さんほどのリーダーは残念ながら出てきてない。
石原慎太郎が田中角榮は天才だという本を出して以来、角榮本が相次いで出され、角榮を見習いたい等と言う現役国会議員も出て来るくらいのブームだ。田中角榮はロッキード事件で5億の金を受け取り、逮捕され、受諾収賄罪等が確定された。首相の犯罪であり、当時の政治家の金権体質の権化だった。この5億円事件は氷山の一角で、たまたま?米国議会でロッキード問題が発覚したから表に出て石原は運が悪かったと評している。列島改造論で土木建築業界からの献金、裏金など多くの政治家が懐を潤したまさに巨悪の犯罪が当たり前の時代であった。一例を挙げると、角榮の子分で自民党の幹事長、副総裁を務めた金丸信は佐川急便からの5億のヤミ献金を受け取り、東京地検特捜部により政治資金規正法違反で略式起訴され、東京簡易裁判所より20万円の罰金で済んだ。ところが税務署が脱税容疑で家宅捜査したら金の延べ棒を含め数十億の隠し財産が発覚した。
こうした巨悪の政治家を美化し、銅像まで建てている日本人の政治感覚は情け無い。今月上旬欧州に滞在したが、BBC放送は「イラク参戦が正しかったか検証する独立調査委員会の報告書」で当時のブレア首相の政策判断が間違っていたと指摘していた。ブレア元首相は「嘘はついてないがフセイン政権が大量破壊兵器を保有しているという間違った情報に基づき米軍に歩調を合わせ侵攻した」とし、過ちを犯したと謝罪している。
米国でも、ウオーターゲートスキャンダルで犯罪者となったニクソン元大統領を美化したり、評価することはない。
政治と金の問題はつい最近も舛添前都知事の政治資金規正法違反が問われており、角榮評価本より金権調査委員会でも立ち上げ、政治資金規正法をどう改正するか議論し報告書本を出して貰いたい。