民間原発事故調査委員会の報告が公表され、大震災に原発の過酷事故が重なり、日本の政府中枢が右往左往しながら対策に追われた恐怖の状況が明らかになった。原発のメルトダウンという過酷事故に対する危機管理が政府にはなかったことが証明されたがその起因するところは原発安全神話だった。
今回の事故調には肝心の東電からのヒアリングがないので全体像はまだ未知の部分が多いが、事故発生時の東電の対応で恐怖のあまり福島原発からの撤退を申し出、内閣から却下されたことから、東電自体が先ず、安全神話でメルトダウンに対する危機対応訓練がなされてなかったことが判った。
事故当時、内閣を補佐するべき原子力保安院や原子力委員会が、日本の原発では多重防護でメルトダウンは起こらないという安全神話で思考停止、危機管理ができてなかったことも判った。「原子力災害対策のマニュアルは頭に入っておらず、当初、事務方からの説明もなかった」などと首相をはじめ政治家の証言。官僚の補佐がない状態で、爆発を防ぐべく原子炉のベントを開くことまで首相が指示したということは他国ではあり得ない。他国では現場の責任者の判断(今回の場合東電吉田所長)でやることだ。
その後、水素爆発が起き、放射性微粒子が空中に飛び散って事故が大きくなり、住民避難や待避の範囲を決めたが、微粒子の飛散するシミュレーション「スピード」の存在を内閣では知らずそのデータを利用できなかった。運用する文部科学省が内閣に知らせなかったという大きなミスも日常の危機対策訓練がなされてなかったことが原因で、これも日本の原発では危機に陥る事故はないという安全神話に起因する。