暴動の背景には失業問題があると前々回ブログで指摘したが、もう少し詳細に見ると、
* 8月18日英国国民統計局によると、若年層(16~24歳)の失業問題が深刻化している。これら層の失業率は20.2%に上昇。若者の失業が目立ち、「失われた世代」と言われた1980年代以来の高水準に近づいている。
*大学に入学できない若者がこの問題を悪化させる恐れがある。2012年からの学費引き上げを避けるため、2011年の大学志願者数は過去最高を記録。約21万人が大学に入れない見込みで、失業問題に拍車をかけるとみられている。
*たとえ大学を卒業しても2割は就職できない厳しい現実。
*16~24歳の失業者数94万9000人のうち、10万人は少なくとも2年間失業手当を受け取っている長期失業者。全年代を含む総失業者数は250万人
*大陸欧州先進国と決定的に異なるのはアングロサクソン流の改革だ。保守党・自民党の連立政権は、公共支出削減策の一環として、前労働党政権が実施していた若者向け学業・就労支援プログラムの一部を廃止しており、若年層を更なる苦境に追い込んだ。
*まず、連立政権は最近、義務教育後も教育を受け続ける低所得家庭出身の若者に対する補助金である「教育継続手当(EMA)」を廃止した。更に、半年以上にわたって失業している18~24歳の若者 を対象とした雇用対策プログラム「未来の雇用創出ファンド」についても、廃止を決定した。
*昨年の大きなニュースであったイングランドの大学授業料限度額引き上げの決定も、特に低所得家庭出身の若者から高等教育の機会を奪い、彼らの将来の選択肢を狭めるものだ。
これだけ痛みつけられると、何かのきっかけで暴発するという事例が今回の暴動だ。2700人が拘束され、取り調べると、一斉蜂起の手段がツイッター、フェイスブックといったソーシャル・メディアということが判った。そして真っ先に起訴され4年の刑を受けたのが暴動には参加してないが煽った2名のブロガーだった。
英警察によると、神出鬼没の暴徒はSNSで「略奪スポット」を知らせ合い当局の裏をかくように破壊を繰り広げた。 キャメロン首相は11日、フェイスブック、ツイッター、多機能携帯端末「ブラックベリー」の通信機器大手リサーチ・イン・モーション(RIM)の3社に対し、掲載内容に責任を持つよう警告した。
25日付ニューヨークタイムスによれば、23日、政府当局とフェイスブック、ツイッター、ブラックベリーの3者が非常時の規制について話し合いを持った。メイ内相はこれはSNSを規制することでなく犯罪行為を防ぐための取り締まりだと言っているが、言論の自由に反するといった批判にさらされている。これまで市民の自由弾圧を追及されてきたイランやシリアは英国の「二重基準」を批判をし始めた。
早速、この英国の措置を歓迎したのが中国政府系新聞で「インターネット規制を話し合うことは世界にとって良いことだ」と喜んでいる。ネットが悪いのではなく、上記のような暴動の背景をあらためることが先ではないのか。スマホの写真で犯人を逮捕することができたことも忘れては困る。