米国には日本みたいな全員加盟義務のある国民健康制度はなく、医療保険は生命保険会社に加入する以外に方法はない。企業にも健康保険組合というものはなく、企業自身が福利厚生の一環で生命保険会社と契約する。日系企業が1980年代米国に工場をつくる時、その従業員の健康保険料を生命保険会社に払うというコストに面食らった。そしてもう一つの問題は医療費があまりにも高いという事実に直面した。現在医療費の水準は日本の2.3倍だという。
オバマ大統領は選挙で「国民に保険加入を義務付け、保険料の支払いが困難な中・低所得者には補助金を支給することにより、保険加入率を94パーセント程度まで高める」というオバマケアを公約して当選した。ところが超保守派は何事も国に頼らず、アメリカンドリームを追い求めるという西部開拓以来の伝統で、2000万人いる貧困層には目を向けず、いかなる社会保障でも大きな政府につながるとして反対し、保険料への補助金は違憲だと連邦最高裁判所に提訴していた。そしてこの度の違憲ではないという判決で、オバマ大統領の愁眉は開いた。米国史にとって画期的な出来事だが、もう一つの問題医療費の削減にオバマ大統領も踏み込めないままで、補助金は増加するだろう。毎年何百万という移民が押しかける米国民がこの制度を維持できるかが注目される。
ただでは起き上がらないウォール街では財政圧迫要因の補助金増には目をつぶり、早速病院に低所得者も来ると言うことで病院関連株価は一気に上昇、医療費の削減の目玉であった薬価引き下げにオバマ大統領は手をつけないということで、大手製薬メーカーの株価はオバマ大統領就任以来2倍のままで動いていない。