jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

「今でしょ!」 万年脇役の潔さ・・・・・ NOW IS THE TIME / IDREES SULIEMAN

2023-10-28 | ジャズ・tp

 

50年代後半、プレスティッジの多くのノン・リーダー・セッション作品に名を連ね、一時「幻の名盤」と騒がれた”MAL 1”の”Yesterdays"での味のあるソロ、コルトレーン、フラナガン、バレル達と共演した”THE CATS”等々で知られるI・シュリーマンの事実上の初リーダー作(1976.2.16&17)。M・ガードナーのライナー・ノーツに”Always the bridesmaid never the bride”(常に花嫁に付き添うけれど、決して花嫁にはならない”と言う諺が引用されている。

言葉は悪いけれど、本国・アメリカで需要がなくなったジャズ・マンを蘇生させる能力に長けたスティープルチェイスのオーナー、ニルス・ウィンターは以前からシュリーマンの能力を買っており、いつか彼のリーダー作を考えていたところ、ハード・バップ・リバイバルの最中、ジョージ・コールマンの欧州ツアーの際、リズム・セクションを借りて録音した文字通り”NOW IS THE TIME”(今でしょ!)のワン・チャンスを生かした作品がコレ。今まで、B-1のパーカーの”Now's The Time”をそのままタイトルにしたものとばかり思い込んでいましたが、今回、”NOW IS THE TIME”とした意味が初めて分かりました。なお、シュリーマンは50年代末、既にヨーロッパに渡っている。

 

で、現実問題としてエサ箱で置かれていたとしたら、どうしょう?チラっと見ただけで、そのままスルーしますか? 一応、パーソネルを見て「おっ、tpカルテットかぁ」と思いつつ、「ま、シュリーマンだからなぁ~」と元へ戻すか、それとも「当たるも八卦、当たらぬも八卦」とレジへ運ぶか、なんせ、数少ないtpカルテットですからね。寧ろ、大丈夫?と心配に(笑)。
さぁ、蛮勇を奮って(ゴメン!)レジへ。恐る恐る(笑)針を下し、一曲目、オリジナル‘Mirror Lake’が流れる。呆気にとられ口をポカーンとしている自分の姿が目に浮かびます。このカヴァから想像するシュリーマンのペットとは180度違う明るく、ハツラツと、しかも淀みのないソロに驚きを隠せません。これが、あのシュリーマン?と必ずカヴァを見直しますよね。
で、次のD・ジョーダンの‘Misty Thursday’、このバラードがまたイイんだなぁ。G・ショーの「掠れる」ような音出しとH・マギーの「翳」をミックスした感じのプレイに「おい、おい」と、つい膝を乗り出してしまいます。ここまでくると、もう、シュリーーマンのペースに完全に嵌っていますね。
3曲目の‘Saturday Afternoon At Four’、これもシュリーマンのオリジナルですが、シンプルなリフ・ナンバーで軽快な曲調なのに妙に味が有り、ソロも弾け、とってもGooです。本作の中で一番好きです。A面ラストの‘A Theme For Ahmad’(ホレス・パーラン作)の洒落たボサ・ロックも小粋ですね。

B面に移り、タイトル曲のバップ・ナンバー‘Now’s The Time’他、シュリーマンのオリジナルが2曲続く。‘The Best I Could Dream’なんかもイイなぁ。

俗に「tp
カルテット」はトランペッターの力量同様にpのアシストが重要とされ、作品数が限られている中、ウォルトンのピアノがイイ仕事してますよ。ウォルトン・ファンも、聴き逃せない一作です。敢えてtpワンホーンにチャレンジしたN・ウィンターの意図がずばり成功している。

同世代でリーダー作を何枚も録音している他の一流トランペッターと比べ、スケール感、華やかさ、引き出しの豊富さ等々、確かに引けを取るけれど、自分なりにベストを尽くし、晴れて「主役」に。万年脇役の潔さが一本、貫かれている。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿