ジョー・ヘンの後半のキャリアは1985年、新生BLUE NOTEにVillage Vanguardでのライヴものを録音し、それまでの不遇と言う長いトンネルを抜け、ジャズ・シーンの表舞台に舞い戻った、というが通説となっている。
「完全ブルーノート・ブック」にこのVillage Vanguardでのライヴもののレビューが載っている。「ロリンズの1581を約30年後に全く同じ趣向でそれを凌がんとする傑作を残したことに、言葉も出ないほど感動を憶えたファンも多いはず。彼にとってのマイルストーンであるばかりではなく、80年代ジャズをも代表する1枚」と、最上級の賛辞が送られている。新生BLUE NOTEの再スタートとジョー・ヘン復活への花束贈呈にいちゃもんを付けるつもりはさらさら無いけれど、腑に落ちなかった。名演、名盤を義務付けられたジョー・ヘンのtsは悲しいかな委縮していた。
本当の不遇時代は、むしろ、皮肉にもこの後、1992年にVERVEから新作”LUSH LIFE”をリリースまでの7年間ではないか。その不遇時代に手を差し伸べたのが、イタリアのRED。REDはBLUE NOTE盤を確りと分析し、ジャズ・クラブとは逆に開放的なジェノバ・ジャズ・フェスティバル(1987年7月)のステージを用意した。
”AN EVENING WITH JOE HENDERSON, CHARLE HADEN, AL FOSTER”、ジェノバの夏の夜空の下、ジョー・ヘン、会心のプレイを聴くことができる。それにしても、この夜のジョー・ヘン、余程、調子がよかったのでしょう、肩の力が抜け、自由自在にtsを鳴らし切っています。
収録曲はお馴染みの4曲。モンクの‘Ask Me Now’、オリジナルの‘Serenity’、S・リバースの‘Beatrice’、そしてジョー・ヘン、18番の‘Invitation’。
中でも‘Serenity’における一気に畳み掛けるようで、見事にコントロールされたソロ・ワークは圧巻! お得意の‘Invitation’では余裕あるアドリブを披露してくれます。
ただ、イタリア盤なのか、一部のファンを除き、広く知られなかった事が真に残念です。我が国のジャズ・メディアはもっとファンに伝えればよかったのに。
録音も良く、ライブというハンディをまったく感じさせず、ステレオ録音とクレジットされているが、ほぼモノラルに聴こえ三者が一丸となっている点がイイ。少しパワーを入れると、臨場感がすごく、ステージの真ん前でかぶりつき状態です。
”Bluespirits 20130310”
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