ここ10年ほど目立ったテクノロジーが出てこなかったハンググライダー。
しかし、最近ちょっと気になるグライダーが出現しました。
エアボーンはもともとはトライクメーカーで、20年ほど前からハンググライダーも作るようになり、少し前までは日本でも結構このメーカーのグライダーは飛んでいました。
なかなか野心的なメーカーで、新機が発表されるごとに革新的な機構を導入していました。
そして、今回のREVにもある革新的な機構が導入されています。
それは「CCS」というシステムです。
これはどういうものかというと、フライト中にVGと連動し、翼の厚み「キャンバーライン」が変更できるという仕掛けです。
実はこの機構、初めてのものではなく、過去アメリカのメーカーで採用されたことがありましたが、その時はまだその機構の効果が表れず、「お蔵入り」となってしまっていました。
それではなぜ、この「CCS」は再び脚光を浴びるようになったか?
一つは今の競技で使われるルール、「GAPシステム」の計算の仕方にあります。
GAPではより早くゴールした者が有利に得点が得られる計算方法になっています。
つまり、機体の「巡航速度」が、たとえ1キロでも早いほど有利になってくるのです。
そのため、ここ近年のハンググライダーの巡航速度は大幅に早くなりました。
CCSはこの要求に対し、見事な効果をあげることができるのです。
まず、CCSはVGを引くことによりキャンバーが少なくなりますが、この結果、揚力係数CLが小さくなり滑空速度が上がります。
これだけでも効果があるのですが、CCSの優れたところは、これプラスダイブスティック、リミッターの設定値を今までの設定値よりも、より下げることが出来ることだと思います。
キャンバーが小さくなれば、実はピッチの安定が増します。
ということは、ダイブスティック、リミッターもより下げることが出来て、さらに滑空性能を上げることが出来るのです。
早くなった巡航速度は、そのままレイノルズ数(流れの状態を数値化したもの)的にも滑空比をあげるのに有利となります。
つまり、フライト中キャンバーが変えられるということは、今のGAPシステムのルールの中ではとても有利なことになるのです。
と言ってもこのCCS。魔法のシステムではありません。
空力的により性能を上げるには、翼の前の部分をつぶす方が効果がありますが、そうするとピッチの安定が損なわれるため、ダイブスティックやリミッターの設定値をあげなければならず、効果が半減してしまいます。
逆に後ろをつぶしても、空力的に効果が表れにくくなります。
REVは2年以上前からエアボーンで作られていましたが、その辺の細かな煮詰めがようやく結果となって表れてきたようにも思います。
事実、REVは各大会で優秀な成績を残しています。
そして次の世界選手権は、オーストラリアのフォーブス‥。
REVのCCSが新しいテクノロジーとしてハンググライダー界に浸透していくかどうかは、この大会の結果次第のようにも思われます。