今回は、ハングフライヤーなら誰もが馴染みのある機体をご紹介いたします。
アメリカ ウイルスウイング社のファルコンです。
私は、この機体は名機だと思います。
「初級機」というと、ややもすると手を抜いて開発しそうな風潮が否定できない中、このファルコンは、あのウイルスが本気で取り組んだ機体なのです。
ウイルス社も、先にご紹介した「SPORT]のビジネス的な成功より、「よりたくさんの人に乗ってもらえる機体こそが大事」と悟り、初心者にもやさしく扱える機体の開発に本腰を入れます。
当初は、インストラクターの平日の仕事を作るため、キットグライダー(プランと材料のみウイルスより購入し、スクールでグライダーを製作するというコンセプト)の発想もありましたが、やはり、信頼性などの問題によりそのアイデアは却下。通常の製造ラインにて量産することになります。
ウイルスは世界中からあらゆる講習機を取り寄せ(なんと日本のSTEPも!)、徹底的に研究‥。
それにウイルスがもともと持っていた高い技術力をあわせて、FALCONは完成したのです。
それだけあって、このFALCONは今までにない扱いやすい特性を持っていました。
とにかくクセが全くない‥。これがFALCONの最大の特徴です。
加えて、ハンググライダーの中では最も理想的な失速特性を持っており、ベースバーを無理やり押し出しても、ノーズをストンっと落とすハンマーヘッドストールには決して入らず、ブカブカと失速しながら垂直降下に入るもっとも安全な失速特性を持っています。
加えて、ほぼ完全な失速に入りながらも、コントロール性はある程度生きているという、まさにパーフェクトな操縦性を持っていたのです。
これだけ完全に理想的な操縦特性を持っている機体は、私は後にも先にもFALCONしか知りません。
幸運にも私は昔、このFALCONのほんの一部ですが、その開発を手伝わせていただくことが出来ました。
私が担当したのは、主にスモールサイズの最終的な煮詰め‥。
ウイルスには軽量テストパイロットがいなかったからです。
と、いっても、私が意見できたのは、せいぜい重心位置とラフラインの細かな長さ調整くらい‥。
それ以外は口を出すことが出来ない、最初からほぼ完成されたグライダーになっていました。
この開発のお手伝いをしている中、最終的なチューニングを担当していたウイルス社のジムおじさんが、テストフライトエリアのクレストライン(ロサンジェルスから東に一時間ほどのエリア)で、この開発中の講習機FALCONの前で、「私は、この新しい機体で多くのフライヤーがハンググライダーを覚えることを夢見ている‥」と、私に話してくれたのが、いまだに脳裏に焼き付いています‥。