権萃（ごんずい）の実

権萃の実に惹かれきし女どち



　



ミツバウツギ科の落葉小高木。

関東以西の山地に自生。

晩秋、さく果が紅熟すると裂けて、中にある黒紫色の

種子を露出する。

権萃の実という季語はないが、木の実の一つとして詠

んでみた。

権萃の実を見つけた女性達が「何の実かしら」と言って

寄ってきた。

名前を知ると、「メモしないとすぐに忘れるからね」と

言って、早速メモ帳に書いていた。





権萃の実や一皮の剥くるなら



　

合歓の実

合歓の実や晴天なれば歩かむと



　



マメ科の落葉小高木。

花の後に、長さ１０センチほどの莢となり、その中に扁

平な実を結ぶ。







茶色くなった合歓の実が多数垂れ下がっていた。

晴天なので、歩こうと思った。






合歓の実に聞えてきたる母の声



　

コスモス(2)

コスモスや犬に曳かるる女ゐて



　



一面にコスモスが咲いていた。







コスモスは後ろから見ると日を透かして輝いていて最も

美しい。







それは、白でもピンクでも変わらない。




イエローキャンパス



珍しい黄色のコスモスも一面に咲いていた。







丘の斜面に咲くコスモスもまた美しい。

午後の日が傾くと最もよい光線になり、コスモスが輝

く。






風纏ふことも美（は）しきや秋桜



　

銀杏

銀杏の落ち残りしを青空に



　



銀杏（いちょう）の実のこと。

いちょうは中国原産。

雌雄異株。

晩秋に果実が熟し、黄褐色の悪臭のある外種皮に包まれ

て落下する。

白くて硬い内種皮の中に種子があり、焼いたりゆでたり

して料理に用いられる。







いちょうの木の下に夥しい数の銀杏が落ちていた。

見上げると、青空を背景に銀杏がまだいくつか残ってい

た。






銀杏を踏んでしまひぬ吾も彼も



　

秋の暮

山見ゆる町に来てをり秋の暮



　



秋の日暮れを意味し、「暮の秋」のことではない。

秋のしみじみとした情緒は夕暮れにあり、昔から多くの詩

歌に詠まれてきた。







旅をして山の見える町にやってきた。

家々の明りが点る夕暮れは、殊のほかしんみりとした情

緒があった。






自転車に乗りし一日の秋の暮