フランスの本である
題して、
『出世をしない秘訣』
Jean-Paul LACROIX著
http://booklog.jp/users/tooriame/archives/1/4875592566
タイトル通り、「出世しない」技術を
ユーモアを交えながら解説している。
この本では、出世というものを
徹底的に「悲劇」として描いている所がおもしろい。
出世するということは、
打ち続く社用パーティーで肝臓は膨れ上がり、
受話器で耳は変形し、殺伐とした忙しい時間とストレスで
夜もおちおち寝られぬロボットとなり、
癌などを患って病死することだ、と
金はなくとも暇と友情に恵まれ、
流れる雲を眺めたり、幼い日の思い出に気を取られたり……
そうした日々には、もう帰れない。
「成功者はみんな、生まれて初めて、
自分が認められた日をどんなに呪っていることか」
とまで言っている。
では、出世しなければいいじゃないか??
それが難しいことは、多くの方が実感するところであろう。
「出世しない権利」というのは、
現実的にはないに等しい
長い間同じ場所にいれば、ちょっと油断した隙に
「責任者」に仕立てあげられてるのが落ちだ
たとえば、40年間勤め上げて、
新人と同じポジションをキープするというのは、
3日で社長まで出世する以上に難しいのではないか。
そればかりでない。
身の回りの先輩、肉親、教師、上司などが
幼い頃から、隙あらば、あの手この手で、
「出世させよう」「ひとかどの人間にしよう」
としてくるはずだ。
それらをかわすのは、並大抵のことではない。
いかにして優秀と見なされないか、
いかにして、買かぶられないか、
いかにして、トンマに見られるか……。
そんなことが、ユーモラスに述べられている。
そういえば、明治安田生命?の調査によると、
「どこまで出世したいか」
というアンケートに対して、
「出世に興味ない。仕事より自分の時間を大切にしたい」
という考え方が、最近主流になっている。
また、数年前だったと思うが(たしか香港)、
ある企業の入社式で、社長が、
「自分がいかに努力して、今の地位を手に入れたか」
という話をしたところ、新入社員の一人が、
「なぜ努力して出世しないといけないのですか?
私たちは会社の奴隷じゃない」と発言したところ、
拍手喝采が沸き起こったという
価値観が大きく変わりつつある。。。
「身を立て名をあげやよ励めよ」の時代が終わり、
新しい価値観を理解するためにも、
この本は、大きく活躍しそうだ。
ちなみに、出世しなくてよいベストな職業例として、
作家・画家などの自由業を挙げていた。
まかり間違って、力を発揮してしまっても、
見習い作家→作家→作家長→作家部長……
なんて、段階が上がってしまう心配はない。
三十年も四十年もの間、
気の向くままに足踏みする自由も、
その気なら、退歩する自由もあるからだ。
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