松岡圭祐先生の『探偵の探偵』。
2015年にドラマ化され、
2016年には漫画化もされている大ヒットなので、今さら感もあるが、
万人にお勧めできる名作だと思うので書き留めておく。
松岡先生は意図したのかわからないけれど、
『走れメロス』がテーマに織り交ぜられていると感じました。
未読の方のためにネタバレな詳細は避けますが、
善意が勝つか悪意が勝つか、の違いはあります。
走れメロスは童話調で、健全な「善意」が勝つが、
人間の醜さが浮き彫りになるような「悪意」が勝つよう
別味に料理されたのが本作なのではないでしょうか。
嗚呼、人間って嫌だ! 汚らわしい!
という厭世的な気分ももたらすが、
その様は文学的にも圧巻、息を飲むほど”美しい”。
『JK』のように脳が飛び散ったり、眼球を抉り取るほどの
グロテスクな暴力シーンはないので、安心してください。
ヒロインの紗崎玲奈は、『JK』の有坂紗奈や
『高校事変』の優莉結衣と違い、
人間離れした身体能力を持っているわけではありません。
しばしば罠に嵌められたり、重傷を負わされたりします。
涙を流したり、比較的感情を露にしたりもします。
だが三人に共通するのは、
はねっかえりなのに心底優しい心を持ち、
頭のキレが凄まじい美人であること。
「普通の生活」には戻れない天涯孤独であること。
※個人的に頭のいい人が大好きなので、
このようなヒロインに強く引かれてしまう面は否めない。
松岡先生もきっとこういった女性が好きなのだろう。
「萌え」とは異なり、人間として尊敬できる女性だ。
今までに紗崎玲奈、有坂紗奈、優莉結衣みたいなレベルで
頭のキレる人間には、お目にかかったことがありません。
実在するのかもわからないし、いたとしても
きっと能力は、ひた隠しにするものと思われます。
たとえば
さらし粉にアルコール、硫化ソーダー、
洗剤、菓子の詰め合わせ、ライター、バッテリー液……
有機化学の専門家でもないのに、
これらを見ただけでマスタードガスの可能性を一瞬で思いつく人が、
はたしてこの世界に何人存在するでしょうか。
マスタードガスの化学式をパッと書ける人すら
レアであるのが現実でしょう。
こういった人物を創作する松岡先生は、
彼女たち並みのキレモノなのか、とも思ってしまうが、
何ケ月、何年とアイデアを暖めて考え出していることでしょう
そう信じたい笑……。