※本記事では、青葉被告を擁護する意図はありません。
とはいえ、戦後最悪の殺人事件とされた
京アニの事件について、物書きの端くれとしても
記事を書いておこうと思う。
被告は「小説をパクられたことに恨みを募らせ、犯行に至った」
と供述している。
まず、この記事を読んでいる方は
「ワナビ」ばかりでないと思うので、
基本的な背景を説明しようと思う。
※ワナビ:元々は「作家になる」と言いつつプラプラしている、
昔からいるあの人種を差す言葉。
最近は、真剣に創作に挑んでいる人や
自分の食い扶持を稼いでいる人、家庭を持っている人も含め、
作家志望者全般をワナビと呼ぶ傾向があります。
ただし、お世辞にも敬意の込められた言葉ではないので、
他人に対しては使わないほうが無難でしょう。
ここで、ワナビと出版社(アニメ制作会社)の関係を見てみる。
一般に会社が「お客さま」、ワナビが「店員」の構図である。
それで、会社がワナビに対しては
強気に出る文化が色濃く残っているのだ。
大きな賞では、応募作が何百、何千と送られてくるので、
全部を丁寧に読むわけにいかず、
予選委員(下読み)がほとんどを落とす(多くても5%くらいしか残れない)。
賞によるのだが、この選考過程が実に不透明であるため、
不信感を抱くワナビが多いと言われている。
ネットで、とある下読み経験者が
「俺ならこんなの、1、2枚見ただけで落とす」とか
「こんな原稿送ってきやがったら、唾吐いてケツ拭いてやる」
などと宣っていた影響も大きいだろう。
下読み全員を公表している賞もあるが、
まったく公表していない賞も多い。
(短編純文学や童話などで非公表が多い)
公表していないということは、信頼に足る人物が担っていないのではないか
と邪推することもできるし、
たった一人の好き嫌いで落とされてる可能性が否めない。
程度は異なれ、ワナビは魂を込めて創作をしている。
血を吐き、血尿を出し、幻覚を見るほどまでに
ストイックに自らを追い込んで修行に励む人もいるだろう。
そして、落とした作品のアイデアを会社が「パクっていない」
という証拠はどこにも残らないのだ。
一次で落ちるようなアイデアは
誰にでもすぐ思いつくようなものだ、
という説明が為されることが多いが……真相は……。
最近はどこの会社も、パワハラなどに非常に厳しくなってきている。
ここに来て、昔から伝統となっている
ワナビと会社のイビツな関係を見直すタイミングに来ているのかもしれない。
いくつかの賞では「他の新人賞に落ちた作品は送らないで」
と募集要項に書いてあるが、これも不信感を増す一因になる。
なぜ落ちた作品を送られると困るかというと、
「一次落ちした作品が別の賞で大賞を取る」
という現象が起きたときに、お互いにバツが悪いからだろう。
そしてこれは、現実にときどき起こってきた現象である。
現にW氏などは
「今回〇〇大賞を取った作品は、もし私が下読みだったら絶対に一次で落としていた」
みたいな発言をよくしている。
※因みに、当落がわからない作品を同時に複数の賞に送るのは
「二重投稿」といって絶対にご法度です。
万一、複数の賞で大賞になった場合、権利の問題で揉めて
裁判沙汰になり、作家人生に大きな傷をつける可能性が高い。
面倒であっても、担当した下読みは誰で、
どんな理由で落としたのかを公表したり、
下読みを二人以上の体制にしたりする必要があるかもしれない。