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長野県佐久市の香坂山遺跡(旧石器時代の遺跡)

2021年12月13日 03時48分25秒 | Weblog

長野県佐久市の香坂山遺跡は日本列島でも最も古い年代をもつ旧石器時代遺跡のひとつです。

2021年12月7日(火)神戸新聞の夕刊に「香坂山遺跡 3万7千年前 旧石器人の家?石刃や

火を使った痕跡」という見出しで紹介記事がありレビューすることにしました。

代表的な報道の内容は下のリンクのとおり。

 長野の香坂山遺跡で3万7000年前の「旧石器人の生活拠点」か - 社会 : 日刊スポーツ (nikkansports.com)

 長野の石刃、国内最古と判明 現生人類流入の手掛かり: 日本経済新聞 (nikkei.com)

発掘調査は奈良文化財研究所の国武貞克第1研究室長らのグループの手で進められています。

共同研究者は須藤隆司さん、池谷信之さん(明治大学黒耀石研究センター)

堤 隆さん(八ケ岳旧石器研究グループ)

香坂山遺跡はガラス質黒色緻密質安山岩の原産地で著名な八風山遺跡群の東側の

標高約1080mの尾根上に立地する。

発見は平成8年(1996年) 日本道路公団による上信越自動車道の第2トンネルの立坑の

地上部施設の建設事業に伴い、(財)長野県埋蔵文化財センターによって試掘調査が

実施されて旧石器時代の遺跡と確認されて新規に香坂山遺跡として登録された。

引き続き、翌平成9年(1997)に本発掘調査が実施された。

その後、本格的な調査が2020年からスタートし1次調査から第5次調査まで実施されて

います。

石刃(せきじん)として国内最古の3万6,800年前の遺物が発掘確認が発表され新聞各紙が

報道され初めてこの遺跡を知りました。

上の写真は香坂山遺跡と八風山遺跡群の位置を示したものです。

出典:資源環境と人類第11号 (meiji.ac.jp)

ここで旧石器時代の一般的な知識を書いておきます。

 世界レベルで旧石器時代を概観すると

  旧石器時代前期(400万~20万年前)  12万5千人

  旧石器時代中期(20万~4万年前)   100~120万人

  旧石器時代後期(4万~1万3千年前)  220~300万人

 日本の人口は1万3千年前の縄文草創期で約2万人と言われているが旧石器時代では
 寒冷期が長かったので人口1万人以下であろうと推測する。
 日常生活は10人前後の小集団で生活しており、住居は移動に便利なテント式小屋
 や洞穴や岩陰での夜営生活であったと考えられています。

 日本においては樺太と北海道が陸続きになっており気候は現在より寒冷でナウマンゾウや

 ヘラジカ、オオツノジカ等の大型の動物を追って狩猟生活をしていた。

 石器時代の遺跡は現在のところ、全国で約5,000箇所の遺跡が確認されています。

 旧石器時代で現在最古とされるのは金取遺跡(岩手県宮守村)で中期石器時代で

 約8万年前~3万8千年前と鑑定されています。

 日本列島に旧石器時代が存在しないと考えられている時期もあったが1946年に
 相沢忠洋(あいざわただひろ)氏が群馬県の岩宿遺跡で打製石器を発見し
 1949年に再調査が行われた結果旧石器時代の人類・文化の存在が確認された。

出典:NHK高校講座 2021年4月9日放送「原始社会の生活と文化」

次に人類の進化の過程を纏めてみました。

約400万年前 猿人 アウストラロピテクスに進化(上の2枚の写真)

出典:NHK Eテレ 高校講座「地学」

上の写真は猿人以降、ホモサピエンスまでの進化過程を示したものです。

約400~160万年前 猿人 アウストラロピテクス

約160~13万年前  原人 ホモ・エレクトゥス

約13~4万年前   旧人 ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス

約4万年前~    新人 ホモ・サピエンス・サピエンス

現代         現代人(新人) ホモ・サピエンス・サピエンス

出典:明石市立文化博物館の常設展示

奈良文化財研究所の国武貞克第1研究室長によれば香坂山遺跡からは大型石刃を含め、アフリカで誕生し、ユーラシア大陸を東に拡散した現生人類に特有の石器群が、国内で初めてそろって出土。同様の石器群は、中央アジア、南ロシア、中国などで5万~4万年前のものが出土。朝鮮半島でも4万1千年前の大型石刃が見つかっている。日本列島への現生人類の到達にも関わる事例で、国武氏は「ユーラシアの系譜を引く石器群が、朝鮮半島を通じて流入したという評価も可能」と指摘。

また、3万6,800年前頃は樺太と北海道も陸続きであったので北から南下してきた可能性もあると考えられる。

旧石器時代の狩猟

上の写真は兵庫県立考古博物館の展示でナウマンゾウの狩猟の場面です。撮影:2021-7-4

ナウマンゾウのいた時代は3万年前頃で気候は今より涼しくナウマンゾウの他にオオツノジカ

などの大きな動物を狩猟していました。大きな動物をしとめると解体し、肉や皮や骨を

無駄なく利用していました。

年代を簡単に評価できる地層として2万5千年前に大噴火があった姶良(あいら)カルデラ層

があります。その他代表的な地層としては下記のようなものがあります。

 7,300年前、鬼界カルデラの海底火山の爆発により垂水地区においても50~60cm
 の火山灰が堆積した層として明確に確認できるのは10cm程度。
 鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)と呼ばれる火山灰層で地下を掘っていった時の時代鑑定に
 用いられています(7,300年前)
  姶良テフラ(Tn):2.2~2.5万年前
  阿多テフラ:9~11万年前
  阿蘇テフラ:7~9万年前

上の写真は同じく兵庫県立考古博物館の展示でナウマンゾウの狩猟の解説

旧石器時代の気候

200万年前というと地質学でいう新生代第4紀が始まった頃であり、地球は氷期と

間氷期を繰り返しています。日本では旧石器、縄文の時代に相当します。

上の写真は旧石器時代(新生代第4紀)の年代を示したもので氷期と間氷期の時期を

確認できます。

出典:詳説日本史図録 第2版 山川出版社(2008) Page11

 

旧石器時代、大型動物の渡来

上の写真は大型動物の渡来を説明したものです。

出典:詳説日本史図録 第2版 山川出版社(2008) Page11

 

旧石器時代の主な遺跡を列挙しておきます(除く岩宿遺跡、明石人、金取遺跡)

 置戸安住遺跡(北海道)
 白滝遺跡群(北海道)
 樽岸遺跡(北海道)
 野尻湖立ケ鼻遺跡(長野県)
 茶臼山・上ニ平遺跡(長野県)
 葛生人(群馬県)
 茂呂遺跡(東京都)
 月見野遺跡群(神奈川県)
 浜北人(静岡県)
 牛川人(愛知県)
 国府遺跡(大阪府)
 早水台遺跡(大分県)
 聖岳人(大分県)


 神戸市における旧石器時代の遺跡を列記する
  -北区の神出町の遺跡

  -灘区の桜ヶ丘B地点遺跡
  -垂水区の大歳山遺跡
  -垂水区東石ケ谷遺跡
  -垂水区境川遺跡
  -垂水区鉢伏山遺跡
  -灘区の滝の奥遺跡
  -兵庫区会下山遺跡

 上記の遺跡の数から現在の神戸市域の人口は100人程度か?

旧石器遺跡の発掘現場例

上の写真はたつの市の碇岩南山遺跡の石器ブロック(旧石器時代)

姶良Tn火山灰層と三瓶U2火山灰層の間でナイフ形石器を中心に発掘された。

出典:櫃本誠一、岸本一宏著「兵庫県の古代遺跡」1.摂津・播磨 口絵

 

過去の香坂山遺跡の発掘成果については下に添付のYoutube動画で纏められています。

香坂山旧石器遺跡:第5次発掘調査 現地説明会

香坂山旧石器遺跡:第4次発掘調査 現地説明会

香坂山旧石器遺跡:第3次発掘調査 現地説明会

香坂山旧石器遺跡:第2次発掘調査 現地説明会

香坂山旧石器遺跡:第1次発掘調査 現地説明会

 

浅間縄文ミュージアム(長野県御代田町)での速報展示

【初公開】香坂山旧石器遺跡2020年発掘資料速報展示!!


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