今日(11月9日・金)は、今から本部での講演会のために那覇を出るところだが、昨日、送られてきた特定外来生物の高熱処理実験の報告書についてまとめておきたい。
今回、辺野古の埋立に使われるのは岩ズリである。岩ズリとは、採石の後に残る石混じりの土砂だ。西日本各地と沖縄島から1640万㎥もの岩ズリが運ばれるのだが、県外からの岩ズリの場合、アルゼンチンアリやセアカゴケグモ等の特定外来生物が混入することが危惧されている。沖縄県には土砂条例が制定されており、知事が特定外来生物の駆除策等を指示し、駆除ができない場合は持込みの中止を勧告することができる。
以前、那覇空港第2滑走路埋立事業で、奄美大島から持ち込まれた石材の場合は、全ての採石場で特定外来生物が見つかり、ダンプに石材を積んだ状態で120秒以上、洗浄することが指示された。ところが、岩ズリの場合は洗浄すればほとんどが流れてしまう。いったいどのような方法で特定外来生物の駆除をするのかが問題になっていた。
昨秋、防衛局が打ち出したのが、高熱処理等の実験である。高熱処理、燻蒸処理、海水処理で、特定外来生物の死滅状態を確認するための実験を始めたのだ。岩ズリの場合は洗浄という方法が取り得ず、他の駆除策が必要なことを認めたことにもなる。
その実験の調査報告書(シュワブ(H27)水域生物等調査報告書)の公文書公開請求行なったが、4ヶ月近く経過した10月31日にやっと開示決定の通知が来た。多忙なため、すぐには受け取りに行けなかったのだが、11月7日、防衛省は国会議員や報道機関にその報告書を配布した。すぐに国会議員さんから私にも報告書が送られてきた。
植物の場合は、実際の特定外来生物を使って実験をすることが出来ず、11種の代替種の種子等を使って高熱処理、燻蒸処理、海水処理の実験が行なわれた。動物については、アルゼンチンアリ、セアカゴケグモを捕獲し、高熱処理の実験を行なっている。
結論としては、燻蒸処理、海水処理は「有効性が低い」。高熱処理は、植物、動物のいずれも、「全て死滅させるためには200度Cで20分、または300度Cで1分の処理が必要」で、「有効性は高い」というのだ。
膨大な量の実験データがついているが、実験室の中で、植物の種子や、アルゼンチンアリ、セアカゴケグモ等をシャーレに入れて温度を上げる実験にいったい何の意味があるのか。実際に搬入される1640万㎥もの膨大な岩ズリを、これだけの温度に加熱するためには、途方もなく巨大なプラントが必要となる。大規模な施設を設け、時間をかけて高熱処理することなど実際には不可能であることは明かだ。アリやクモを高熱下におけば死ぬことなど誰でも分かる。巨額の費用をかけたあまりに馬鹿げた「実験」である。
西日本各地の採石場では、きちんと調査すれば何処でも特定外来生物が見つかる。岩ズリの場合、採石場で特定外来生物が見つかれば、駆除策はない。沖縄への搬入を中止する以外に方法はない。
報告書の最後に、「専門家の指導・助言」の内容が付けられている。氏名も専門分野も明かではない「専門家」だが、その中に次のようなやり取りが記載されている。
専門家が、「高熱処理を行なうためのプラントを造る予定か?」と聞いたところ、防衛局は、「プラントを造ることを想定している」と答えている(P643)。とんでもない規模のプラントになると思われるが、防衛局はその詳細を明らかにしなければならない。