10年少し前に出版した『幸せの島・サマール』の表紙は、カルバヨグ北部の小さな漁村・バンティアンの子どもたちの写真だ。
この写真を撮ったのは1996年。当時、私は、カルバヨグの市役所で働き始めたばかりだった。休みの日にはよくこの村に来て、浜辺で、漁師の舟を覗き込んだり、皆とお酒を飲んで過ごすことが多かった。浜ではいつも大勢の子どもたちが遊んでいて、カメラを向けると、皆、大騒ぎでいろんなポーズをとってくれた。この写真を見ると、静かな漁村の雰囲気と、かわいい子どもたちの姿が、鮮やかに思い出されて懐かしい。
9月9日、そのバンティアンの村を久しぶりに訪ねた。表紙の写真の9人の子どもたちは、もうすっかり大きくなっているはずだが、その後、元気にしているのだろうかと気になっていたのだ。もし会えれば、この14年前の写真を渡してやるつもりだ。
浜を歩いていると、ばったりバランガイ・キャプテンに会った。本を見せて話をすると、なんと写真の右端の3人は彼の子どもだという。すぐに家に誘われ、子どもたちを呼んでくれた。
長女のCさん(22歳)は、もう結婚して子どももいる。次女のIさんも、もう20歳。そして弟のN君は18才の大学生。3人とも嬉しそうに写真や本を見ている。すぐに村の人たちが大勢集まってきて、大騒ぎが始まった。
結局、写真の9人の子どもたちのうち、2人はマニラに行ったが、その他の子どもたちは、皆、この村に残っているという。サマールは、地元での仕事もなく、マニラへの人口流出の多いところなので、若い連中はほとんどマニラに行っているだろうと思っていたので、これは意外だった。
死んでしまった子どももいるかもしれないと思っていたが、全員、元気だというのも素晴らしいことだ。結婚して子どもがいるのは2人だった。
浜に戻り、大ぜい集まってきた子どもたちを集めて、本の表紙と同じ場面の写真を撮る。
ニッパ造りからコンクリートになっている家も多いが、14年前とほとんど変わらない。
懐かしい思いにひたっていると、同行のHさんから、「いやあ、今日はチョイさんの感傷の旅につきあわせてもらいました。」と冷やかされてしまった。