なんとなくクラシテル

獣医という仕事をしている人間の生活の例の一。
ほとんどが(多分)しょーもない話。

救急医療

2008年10月24日 | 仕事
について、今回の事件、なんか、医療従事者としては実にいやな感じだ。なにがってマスコミの取り上げ方がさ。こんなことは書きたくないのだが、もうちょっと限界だな。

 脳内出血か、遠い親戚なんだけど、彼女も脳内出血で脳死状態に陥って、で、子供はなんとか帝王切開で助かった。で、これ、新聞記事になったのよ、「美談」としてね。子供だけでも助けられて良かった、というのが、それを記事にした新聞の論調だった。10年以上前のことだが。

 今ね、高度医療云々ってマスコミがはやし立ててるせいかどうか知らないが、「助かって、後遺症0、が当たり前」と思ってないか?皆さん。医療で「当たり前」はありえないのに。脳内出血というのは、命にかかわる。で、助かったとしても、重い後遺障害が残る可能性だって高い。未熟児を抱えて、さらにそういう人を看護する、できますか?それだけじゃないぞ、金もメチャクチャかかるぞ、対応できますか?

 なんかねえ、「生まれる」だの「死ぬ」だのを安直に舞台設定にしてるじゃない、ドラマだの映画だの、本でも、だからさ、すごく安易に考え過ぎてると思うんだよね、医療つうものをさ。どのくらい金がかかるか、とかそういう部分は全く取り上げないでしょ、その手の話って。医療はボランティアじゃないんですよ。

 時々「時間外診療して欲しい」ってTELがかかる。当院の患者さんじゃない人物からね。その理由が、最近すごく安易になってきている、のはどういう訳なんだろうか?例えば、こんな例。

1)ずうっと調子が悪かった。で、別の病院で診て貰ってるんだが、今かなり具合が悪い、が、その病院に連絡がつかない。から、診てくれ。

 そういう病院をどうして主治医にしてるんですか?ずっと調子が悪いのなら、こういう場合どう対応するべきか、どう対応してもらえるのか、主治医と打ち合わせしておくのが当然ではないか。そういう話し合いに応じないのなら、応じてくれる病院を意地でも探し出しておく、のが飼主の務めだろう。横着すぎます。

2)自分の仕事の都合に合わせて予約したい、時間外診療してくれ。

 病院はコンビニじゃありません。

とかね。

 で、こういう人物は、診てほしい動物が何か、も言わないんだよね。犬ですか?猫ですか?カメですか?と聞いて、ようやく「犬です」あのさ、犬ったって、チワワからセントバーナードまでいるでしょ、どれよ?
 こういう風に、基本的な情報0で初診で診る、というのは医療側からすると物凄いリスキーなことなのだ。だから、普通の診療時間に来院して、健康な状態を見てもらって、カルテにそれを記録して、極めて重要なプロセスなんだが。で、そういう情報を話から集めようとすると、今度は逆ギレするんだ「もう結構です!!ガチャン」なんて。まあ、いいけどね。
 そうじゃなければ、「時間外診療費を頂きますが」と言った途端に態度が変わる「じゃ、様子見ます」とかね。ふーん、その程度の「具合が悪い」んですか。

 あとね、駆け込んできた時は大騒ぎだったくせして、翌日来たときはぶんむくれてて、金を投げつけるように置いてった奴もいる。多分、冷静になってから「こんなに金かけることなかった」って思ったんじゃないかな。うちの時間外診療費は安い方だと思うんですがねえ。

 ので、もう、当院は「時間外診療は当院患者のみ受付」に変更しよう、初診患者の無礼な態度にはアタマに来るから、と真剣に検討し始めている。ほら、こうやって、患者側が医療を追い込んでしまうんだよ。

 医療をなめてるよな、と感じざるを得ない。
コメント
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