で高橋アキさんのリサイタル。色々考えさせられる演奏会だった。
高橋アキさん。高橋悠治氏の妹さんで、現代音楽をレパートリーとするピアニスト、というのはずいぶん前から知っている事なんだけど、ご本人の演奏を聴けたのはこれが初めて。曲目は、ジョン・ケージ、一柳 慧、サティ、武満さん、等々・・・。なんというか、こういう演目のみで客を呼べる人ってそう多くはないのではないかしら。ジョン・ケージのピアノ曲は、ピアノ自体に色々細工というか仕掛けをして、発音を変化させて演奏する、という曲。これが、ガムラン音楽みたいで、非常に面白かった。こういう曲を聴くと、ピアノって基本打楽器でしたねえ、と思い出す。
サティの曲は超有名な奴2曲+1。「3つのジムノペティ」を初めて生で聴いた。一柳さんの曲は、YMOをピアノにしたような奴。武満さんの曲は、聴いたことはなかったんだけど、初めて聴くのになんか懐かしい・・・・。今回のリサイタルは、曲の合間に高橋さんの曲紹介が入ったんだけど、結構ショックな話も。武満浅香さんが去年亡くなられていたそうで・・・・・・。そうか。武満さんが亡くなったときのことはまだ憶えているのだが、浅香さんは、武満さんが見たかった(んじゃないかと思ってるんだけど)平成を全て見て亡くなったんだなー。武満さんが、今の音楽の現状を見たらどうお考えになるのか?
クラシックは本当に死に体だ、と思っちゃうんだ。高橋さんの弾かれた曲は、かつて「現代音楽」なんて言われてた、はずなんだけど、今や40年以上昔の曲になってしまっている。で、で、その辺の曲が200年前のベートーヴェンよりも全然演奏されない。同時期の井上陽水の曲は、未だにご本人も普通に取り上げてるし、カバーもされてるのに。当時、別の旗手と言えばYMOこと坂本龍一。YMOでヘンテコ音楽をつくって、しかもそれが「ベストテン」で流れてた、のになあ。その後、耳当たりのいい、全く噛み応えのない音楽を量産しちゃって。70年代のとんがってた音楽はすっかり消え失せてしまった。
というかねえ、そもそも論になってしまうが、音楽に「思想」だの「主張」だの、必要なんだろうか?シェーンベルク以降、音をあれこれこね回す音楽ばかりになっちゃって、結局聴く側からそっぽ向かれてしまった、そんな気がして。
ジョン・ケージの曲は、高橋さんの解説によると、ダンスの伴奏の仕事をしていたケージが、舞台に打楽器オケを載せられない、困った、じゃーピアノ1台でそれっぽくビート&音楽をつくれるようにしちゃおう、っていうニーズに基づいて作曲してるから、面白く聴ける、んじゃないかな。
と思いつつ、しかし、高橋さんの演奏はとても魅力的で、楽しかったです。やっぱりそれとも、演奏する側の演出の問題なんだろうか?でもねえ、今は映画音楽とかの方が凄いもんね。「バードマン」のドラムとか。
そういえば、武満さんの映画音楽も演奏されたんだけど、それを聴きつつ思い出したこと。武満さんは、中国製のB級・C級ホラー映画が大好きで、よく観に行ってたそうなんです。ある時、観てた映画の音楽が、なんか聞き覚えあり、あれ?これ?もしかして、自分の曲 武満さんの曲が勝手にぶった切られて中国製しょーもないホラー映画の伴奏をしていたそうな・・・・。暗闇で呆気にとられつつ。大昔、著作権もいい加減だった頃のお話ですけど。この話をエッセイで読んで、爆笑しましたっけ。
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