『浪花の恋の物語』

これは決して感情移入できる作品ではない。
それでもこの映画を高く評価する。
許婚がいながらしかも養子ゆくゆくは飛脚問屋の主、そういった道が敷かれながらも、それを打ち捨てるような強い惹かれあい。
そういうストーリーもあっていいと思う。
たまさかな出会いに身の程を忘れた恋狂い。

片岡千恵蔵演じる近松はその経緯と結末を見ながら温情溢れる狂言に仕立て上げる。

学生時代にこの映画を見て、ＶＨＳにも録画したが、今あらためて見てここまでの恋情には圧倒される。
まさに「恋は盲目」とはこういうことだ。
問屋がどうなろうと、そこのおかみさんがどうなろうと、許婚がどうなろうと、使用人がどうなろうと・・・
そして恋の相手の梅川がどうなろうと

仲代達也が映画「切腹」で娘の夫の死に「よくぞ狂うた」と、その言に通底するものを感じた。


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原題 Distressed/Their Own World
製作年 1959年
製作国 日本
配給 東映
上映時間 105分

監督 内田吐夢
脚色 成澤昌茂
原作 近松門左衛門 『冥途の飛脚』『恋飛脚大和往来』から

キャスト
亀屋忠兵衛 萬屋錦之介
妙閑 田中絹代
おとく 花園ひろみ
長吉 白木みのる
梅川 有馬稲子
丹波屋八右衛門 千秋実
槌屋治右衛門 進藤英太郎
おえん 浪花千栄子
布袋屋藤兵衛 東野英治郎
近松門左衛門 片岡千恵蔵