アルピーヌA110を車両火災で失った私が、次に購入したのがこの90年モデルのエッティンガー・カラヴェルWBX 3700Eでした。CG誌1987年7月号で、「ポルシェのようなスーパーバン」と紹介された記事を読んで以来、ずっと憧れの一台でした。新車当時には逆立ちしても購入できるクルマではなかったものの、たまたま当時の正規代理店、TOY'S BOXに出戻って来たクルマがあり、格安で私の所に回していただけることになりました。1997年の11月25日のことでした。
ノーマルのVWカラヴェル/ヴァナゴンでは最上級モデルでも2.1ℓの4気筒(95HP)ですが、このWBX6シリーズにはエッティンガー社がブロックから製作した水平対向6気筒が搭載されていました。当初は排気量が3.2ℓ、165HPで、88年の途中からは3.7ℓ、180HPになりました。この画像は3.2ℓ時代のドイツ語版カタログです。同じ6気筒でもポルシェの流用ではなく、このクルマの専用エンジンなんで、間違いなくポルシェのB32やルーフのカレラ・バスよりお金掛かってます。
もちろんエンジンだけではなく、ブレーキは4輪ディスクになっているし、85ℓの大容量燃料タンクが標準になっているなど、細部に至るまでノーマルとは別物のクルマになっていました。これはTOY'S BOXの日本語版カタログ。輸入台数は全種類で7台ですが、その後並行輸入で少なくとも1台は輸入されています。
このエンブレムが6気筒エンジン搭載車の証。さすがに空力的には不利な形状なので、最高速度は大したことはない(3.2ℓ版で、ドイツの雑誌の実測テスト値が181km/h)ものの、トルクは厚くフラットで、一般道での追い越し加速の鋭さは到底この形状のクルマとは思えないほどでした。
しかし、このクルマも私の所に長く留まることはありませんでした。1998年5月16日、某自動車整備専門学校の創立記念パーティーに出席した帰り道で、またしても車両火災が発生してしまったのです。前回、アルピーヌA110が燃えてから、わずか7ヵ月後のことでした。
一般道を走行中、何かが燃える臭いがしたのでクルマを停めて確認したところ、左側の最後部のピラー内側から出火。そのまま前方に燃え広がり、全焼してしまいました。この写真を見ても、クルマの上のほうが燃えていることが分かりますね。
ピラーの内部には火種はないはずなので、当初はエンジンから出火し、その炎がピラーの内側を伝わって燃え広がったのでは?と思っていました。しかし、エンジン・コンパートメント内はこの通り。ダメージがほとんどない状態でした。ここが原因とは考えられません。それじゃ一体どこから出火したんだろう?。しかし、その謎はまもなく解けることになりました。
これは1998年8月28日の朝日新聞に掲載された記事。このリコールの対象になっているエアコンの配線こそが、まさに出火場所であった最後部左側のピラーの内張りの中を通っていたのです。
もう少し早くリコールが出てくれていたら、貴重なクルマを失わずに済んだかもしれないと思うと残念でなりません。
■追記
まつ様よりのコメントで、このクルマのエンジンが別のクルマに換装され、今でも元気に走っていることを知りました。このクルマが全て灰燼に帰してしまったわけではないことを知り、少しだけ救われた思いがしています。