向島のM銃砲店に整備に出していたオーストリア、フェルディナンド・フリューヴィルト製のM1849ライフル、途中経過を見に行ってきました。Mさんのやり方は破損部分等も極力オリジナルの部品を生かして再生するという方法です。また過去の使用で生じた傷等も敢えて消さずにそのまま残します。それがその銃に刻まれてきた “歴史の証" であるという考え方なのでしょう。また、修理した部分を古く見せる・・・いわゆる “時代付け” をしないという点も私が共感できるポイントです。
この銃のオリジナルの仕上げは白磨きですが、もし知識のない所に出していたら、コールドタイプのガンブルーで安っぽい黒染めにされちゃったかもしれません。実際、そういうインチキな修理で台無しにされてしまった古式銃は少なくないんですよ。一見きれいに見えるんで、素人受けは良いんですけどね (笑) 。
古式銃は文化財であり、その修理、修復の範囲に関しては、1989年に文化庁(文化財保護委員会)との間で取り決められた厳格なガイドラインがあるので、それを逸脱することがないように十分に注意する必要もありますね。
木部の補修などは仕上がった状態では分かり難いのですが、この画像の元の状態と比べれば、その差は歴然でしょう。欠損部分は似た色、木目の旧い木を使って埋め木されています。パテ盛って、木目書いて、濃い目の色付けて誤魔化してしまえば簡単ですけど、そんなのは本物の職人さんの仕事じゃありません。アンティークの家具とかもそうですが、 色が不自然に濃い物は、元の程度が悪いのを誤魔化しているというケースが少なくありません。
再使用ができない部品は、ネジ1本、ピン1本に至るまでオリジナルに合わせて削り出して作ります。既製品なんか使いません。一見ストレートに見えるようなピンにも、ちゃんとテーパーが付けられていたりするんですよ。
レストアをお願いしたときにはラムロッドの形状が分からなかったので、フリントロック時代のフランスのマスケットの様な物を作っていただいたのですが、その後の調査でやや形状が異なることが判明しました。申し訳ないのですが、この部分は作り直していただくことにしました。でも皆さんお気づきですか?。このボツになったラムロッド、先端だけじゃなくて、根元の部分からテーパーに加工してあるんですよ。凄い手間が掛かってます。
そして最後はこれ、前回紹介し忘れた銃身内部の状態。薬室から銃口まで、12条のライフリングがきっちりと残っています。幕末に入ってきた銃で、ちゃんとライフリングが残っている銃は希少です。これを見た瞬間、「おっ、この銃、まだ生きている!」と思いました。
まだ錆がありますけど、ある程度の数を撃てばピカピカになるでしょう。ここまでくれば、完成まではあと一息。今から凄く楽しみです。